ネットリサーチとは? 他の調査手法との特性の違いを正しく理解する

日本マーケティング協会の資料では、2021年度のアドホックで行われた量的調査のうち74.4%をネットリサーチが占めており、アンケート調査などの定量調査の多くは郵送調査や訪問調査からネットリサーチに置き換わっています。

マーケティングリサーチの主要な方法であるネットリサーチについて、そのメリットと活用方法、実施方法について改めて整理します。

ネットリサーチとは

ネットリサーチとは、マーケティングリサーチを含む社会調査全般をインターネットを通信手段に用いて実施することです。ネットリサーチはインターネットリサーチを略したもので、Webアンケートやインターネットサーベイなどともいわれます。

調査会社に登録したアクセスパネルから回答を得ることで、不特定多数のサンプルを大量に収集する仕組みを利用することができます。

主にアンケート調査などの定量調査を行うために活用されていますが、ビデオチャットツールの普及によりグループインタビューなどの定性調査を行う場合もインターネット経由で行われるようになってきました。

顧客や会員を対象とする顧客満足度調査や従業員を対象とする従業員満足度調査など、特定の集団を対象とするリサーチの場合もインターネット経由で実施するものについてはネットリサーチの範囲に含まれます。

マーケティングリサーチとは|基礎から応用まで徹底解説

マーケティングリサーチの意味、目的、条件、方法、必要なことなどを詳細解説。マーケティングリサーチの必須情報が詰まっています。

ネットリサーチのメリット・デメリット

ネットリサーチは調査対象とのやりとりがインターネット通信に置き換わることとデジタルデバイスを活用することにより大きなメリットが生まれます。

反対に、アクセスパネルを調査対象とするネットリサーチでは、サンプリングが従来の方法と異なる点や回答品質に関する点がデメリットとされています。具体的には以下の点がそれぞれ挙げられます。

メリット

短期間、低コストで調査ができる

郵送調査や訪問調査では数週間から数ヶ月といった調査スパンを設けることが一般的です。

アクセスパネルからサンプルを集めるネットリサーチでは、従来の方法と比べて実査の工数と労力が少なくて済むため、調査に要する期間が数日程度に短縮されます。調査の工数の削減と期間短縮は調査コストを大幅に抑えることにつながります。

大規模調査や属性別サンプル収集が行いやすい

大手の調査会社は数百万人という規模でアクセスパネルを保有しているため大規模な調査にも対応できます。アクセスパネルは一定の個人情報が登録されていることから、年代・性別など属性を指定してサンプルを割り当てるといったことが可能になります。

回答エラー・集計ミスが低減され、すぐに集計結果が得られる

ネットリサーチはスマートフォンやPCに表示されるアンケートフォームから回答を行い、回答結果は集計・分析を行うアプリケーションソフトに直接反映されます。

紙の質問票を使ったアンケートでは、集計・分析ソフトに回答結果を入力する必要がありますが、ネットリサーチではその工程が不要であり、入力ミスなどの回答エラーを低減させることに加えて、直ちに調査結果を得ることができます。

多様で複雑な調査が可能

Webフォームとアプリケーションを使うことで回答者の属性や回答結果によって質問項目を変更したり、質問を分岐させたりといった複雑な調査項目を設計することが可能になります。画面の遷移を利用することで煩雑な回答指定を省くことができ回答者の負荷も低減されます。

また、質問項目のなかでの動画視聴や画像の切り替え、回答に画像のアップロードを求めるなど多様な調査を行えることもネットリサーチで実現される大きなメリットです。

顧客管理ツールやマーケティングツールと回答者を紐づけることが可能

ネットリサーチは不特定多数のアクセスパネルを対象とするものだけでなく、自社の顧客や会員など個別の調査対象が特定できる場合にも用いられます。

顧客管理ツールやマーケティングツールのなかにはアンケート機能を備えたものもあり、回答結果を顧客情報の一部として管理することが可能です。

デメリット

郵送調査や訪問調査、電話調査など従来型の方法では、調査の目的とする母集団に対して調査対象のサンプリングに偏りが出ないようにするため、信頼のおける母集団のリストから無作為に調査対象を選ぶ方法が取られます。

それに対し、調査会社が保有するアクセスパネルは、ネットリサーチに回答することでポイントなどのインセンティブを得ることを目的に会員登録した調査への協力者です。

アクセスパネルを調査対象とする種類のネットリサーチでは、調査対象を確率的に抽出したものではないため、回答の得られたアクセスパネルが本来調査すべき集団の意見を代表しているものかという点を担保できません。

場合によっては偏った回答者からの調査結果をもとに、誤った意思決定をしてしまう可能性も排除できないことになります。

当初はアクセスパネルがインターネット利用者に限られるといった指摘がありましたが、インターネット端末としてPCが主流であった時代からスマートフォンの世帯普及率が拡大した現在ではこの点は解消されてきました。

また、アクセスパネルは回答に至る手続きが簡易である反面、インセンティブのみを目的とする真剣に回答しない調査対象が多く含まれていることもデメリットといわれています。

これらの点については、ネットリサーチが普及しはじめた当初からさまざまな議論がなされ、調査会社では不正回答や虚偽回答を排除する仕組みを構築し、回答品質を高める取り組みを行っています。

当初から比較すると回答端末のスマートフォンへの移行が進んでおり、PC利用者とスマートフォン利用者で回答傾向が異なるといった点も新たな課題となっています。

これらのデメリットは調査会社のアクセスパネルを利用して不特定多数のサンプルを収集する場合に当てはまります。顧客や会員、従業員など、調査対象が一定の集団に属しアンケートの配信先が特定されている調査ではこれらのデメリットは生じません。

ネットリサーチの活用目的

ネットリサーチはマーケティングリサーチを含む社会調査全般に活用されています。具体的な活用例は以下のものが挙げられます。

マーケティングリサーチ

マーケティングリサーチでは以下のような目的でネットリサーチが用いられます。

  1. 製品やサービスについての調査
  • 新製品の開発や既存製品の改善のための調査
  • 製品やサービスの満足度調査
  • 製品やサービスの利用状況や需要予測のための調査
  • 製品やサービスの価格戦略やプロモーション戦略のための調査

など

  1. 広告やキャンペーンについての調査
  • 広告やキャンペーンの効果測定
  • 広告やキャンペーンのイメージ調査
  • 広告やキャンペーンのメッセージやコンセプトについての調査

など

  1. 消費者行動や意識に関する調査
  • 消費者の生活意識や購買行動に関する調査
  • 消費者の商品に対する意識や認知に関する調査
  • 消費者のライフスタイルや嗜好に関する調査
  • 消費者のニーズや要望に関する調査

など

  1. オンラインインタビュー

オンラインインタビュー

オンラインフォーカスグループ

※ネットリサーチの具体的な利用事例は、こちらからご覧いただけます。どのようなケースでネットリサーチを活用できるのか、参考になさってください。

社内サーベイ

会社の従業員や組織の構成員を対象とする調査にもネットリサーチは利用されています。

  1. 従業員満足度調査
  • 従業員の意見や不満を集約し組織の問題点や改善点を把握する
  • 組織の雰囲気や風土、労働条件、報酬制度などを評価する指標として用いる
  • 従業員のモチベーションの向上や離職率の低下、生産性向上などにつながる
  1. 組織文化調査
  • 組織の価値観や信念、ビジョンなどを明確にするための調査
  • 組織のアイデンティティを確立し、従業員やステークホルダーの共感を喚起する
  • 組織文化にもとづいた意思決定や戦略立案に役立てる
  1. 360度評価
  • 上司や部下、同僚など、従業員の周囲からの評価を収集する
  • 従業員自身の自己評価と比較し自己啓発や職務能力の向上を促す
  • 組織内のコミュニケーション改善やチームビルディングにつながる
  1. 社内コミュニケーション調査
  • 社内の情報共有やコミュニケーションを見える化する
  • 組織内の情報格差やコミュニケーション不足を明確にし問題点を把握する
  • 社員のモチベーション向上や業務効率化につなげる
  1. ストレスチェック
  • 従業員のストレス状態の測定
  • ストレスの原因の特定
  • ハラスメントの予防対策

社会調査・学術調査

国や自治体などが行う社会調査や研究機関が行う社会科学系の学術調査でもネットリサーチが使われます。企業が行うマーケティングリサーチと比較すると、サンプリングの代表性がより重視されるため、郵送調査や訪問調査などの手法も使われています。

しかし、ネットリサーチはこの分野でも徐々に活用が進み、2015年からは国勢調査も一部でインターネットによる回答ができるようになっています。

  1. 公共部門が実施する調査
  • 国勢調査や産業統計調査
  • 政策調査
  • 災害・防災対策調査
  • 自治体のサービス満足度調査

など

  1. 学術調査
  • 社会学
  • 心理学
  • コミュニケーション学
  • 教育学
  • 経済学

など

ネットリサーチの実施方法

ひと口にネットリサーチといっても、さまざまな実施形態があります。特定の消費者層など不特定多数のサンプルが必要な場合は調査会社に依頼しアクセスパネルを対象とした調査を行うことが現実的です。

一方、顧客満足度調査や従業員満足度調査では質問票の配信先が特定できるため自社で行うことが可能です。

また、不特定多数を対象とした調査を行う場合でも、アクセスパネルを利用できるセルフ型アンケートツールを使うことで調査会社に頼ることなく自社で調査企画から集計までを行うことができます。

これらの条件を踏まえると、不特定多数のサンプルを対象とするマーケティングリサーチで自社に調査ノウハウや経験がないケースでは調査会社に依頼することが優先的な選択肢となります。

調査ノウハウがある場合や継続的な調査が必要なケースではセルフ型アンケートをツールの導入も視野に入ります。

顧客や会員を対象とする顧客満足度調査を実施する場合でも、調査会社のノウハウを活用することで高度な分析による質の高い調査結果を得ることができる一方で、CRMツールなどにリサーチを取り込んで自社のノウハウを蓄積していくことも検討に値します。

調査目的にあった調査手法を選択する

スマートフォンの世帯普及率が9割近くに達する現在、従来のリサーチ手法がネットリサーチに置き換わっていくことは自然な流れであり、新しいネットリサーチ手法の開発や信頼性の向上への取り組みはさらに進んでいくと考えられます。

しかし、サンプルの代表性を担保しなければならない調査や一定の環境で行うことが必要なCLT(会場調査)など、インターネットが使えない調査もあるため、調査目的に沿った調査手法を選択することが重要です。

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