OMO(Online Merges with Offline)とは?デジタルがリアルを飲み込む事例を紹介

OMO(Online Merges with Offline)とは?デジタルがリアルを飲み込む事例を紹介

日常生活のあらゆる場面にスマートフォンが浸透し、私たちの生活は常にオンラインでつながれた状態にあります。企業がマーケティング戦略を検討する上でも消費者とオンライン上での接点を持つことがもはや当たり前のことになっています。

デジタルとリアルの境目をなくすOMO(Online Merges with Offline)について、企業事例をもとに解説します。

OMO(Online Merges with Offline)とは

OMO(Online Merges with Offline)とは、経済行為を中心とした社会生活全般がオンラインとオフラインを意識せずに行われる環境を意味しています。

2017年にGoogleチャイナの元CEO李開復(リ・カイフ)氏が経済誌ザ・エコノミストで発表した考え方であり、具体的には、中国におけるQRコード決済の普及や芝麻(ジーマ)信用という個人信用のスコアリングなどがセンセーショナルに報道されたのは記憶に新しいところです。

これまでのマーケティングの文脈では消費者とのコミュニケーションチャネルをオンラインとオフラインに分けてそれぞれの施策が考えられてきましたが、リアルで事業を展開する小売業を中心に、購買行動プロセスにオンラインを組み込む動きが盛んになってきています。

O2O(Online to Online)はWebサイトやSNSなどオンラインで消費者とのタッチポイントを作り、オフライン(実店舗)の集客や購買行動につなげるという考え方です。

オンラインとオフラインでのタッチポイントで発生する顧客データを一元管理することで、顧客データを軸としてオンラインとオフラインの双方からの顧客アプローチを統合できるようになります。このような顧客へのアプローチ方法がオムニチャネルです。

OMOはそこからさらに進み、モバイルネットワークを通じて常にオンラインでつながれた状態にある消費者を前提として、リアルでの購買プロセスにオンラインから介入していこうとする考え方です。

OMOの具体例

モバイル決済が一般化し、都市部での現金使用率が3%といわれる中国がOMOの先進国といわれます。OMOを実現している海外の事例をご紹介します。

盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)

フーマーフレッシュスーパーマーケットのイメージ

フーマーフレッシュはアリババグループが運営する生鮮食品のECで、3km圏内の30分以内の無料配送を売りとしてスタートしたサービスです。

配送拠点に実店舗としての機能も持たせ、オンラインでは鮮度が不安視されるという生鮮食品ECの弱みを克服するとともに、オンラインを活用した新たな買い物体験を創出している点が、OMOの象徴的なサービスとして取り上げられる理由です。

まず、自宅で購入するのか店舗で購入するのか、購入した生鮮食品を持ち帰るのか、配送してもらうのか、店舗で食べるのかを顧客はその場で自由に決めることができます。

生け簀に展示される魚介類を購入し、併設されているフードコートでその場で調理してもらう、あるいは、店舗で商品のQRコードを読み取りECから注文し、商品は持ち帰らずに配送してもらうといったことも可能です。

さらに生鮮食品のトレーサビリティを担保するためにブロックチェーン技術が使われており、値札のQRコードを読み取ることで産地や収穫・加工日、配送履歴などが確認できることに加え、その商品を使ったレシピも提案されます。

決済にはアリペイが使われ、ターゲットとする3km圏内の「どの顧客が、いつ、何を」買ったかがすべて記録され、オンライン・オフラインに関わらない顧客の情報が集積されていきます。これらの情報をもとに、仕入れや物流が最適化され生鮮食品の鮮度が保たれるとともに、ユーザーニーズに即した品揃えを実現しています。

滴滴出行(DiDi)

タクシー配車アプリDiDIのイメージ

サービス提供側の制度設計にデジタルを取り入れることで顧客満足度向上を従業員側のインセンティブに結びつけているのがタクシー配車アプリのDiDiです。

DiDiで配車されるタクシーは4段階のグレードに分かれており、高いグレードでは運転品質とサービスがよく、その分料金も割高に設定されています。

DiDiの車両には加速度センサーやジャイロセンサーが設置され、ドライバーの運転データに加え、迎車時間・運行時間・運行ルートなどのデータを記録し、ドライバーの安全で効率的な運転を評価します。

評価が上がるとドライバーはグレードアップの昇格試験を受ける権利が与えられます。合格すればより高い運賃で運行できるランクに昇格でき、高い収入を得られるという仕組みです。

それまで中国のタクシーはルートを誤魔化したり接客態度が悪かったりと、サービス品質という概念がなかったといわれていますが、データによる相互評価という仕組みが社会の風潮を変えるきっかけになったともいわれています。

Amazon Go

アマゾンゴーのイメージ

モバイル決済の普及と各種センサー技術を応用して無人店舗やレジなし店舗(Autonomous Store)を実現したさきがけがAmazon Goです。

アプリを立ち上げ入店時にQRコードで会員認証を行い、欲しい物を手にとって店を出るまでに決済は済んでいるという破壊的イノベーションは注目を集めました。

買い物かごに購入商品を一旦確保し、レジに並んで決済するという店舗でのごく当たり前の買い物の流れを根本から変えてしまう店内オペレーションは、AIを活用したカメラやセンサーを使って実現しています。

ジャスト・ウォーク・アウト(Just Walk Out)という決済システムはAmazon Freshや傘下のホールフーズ・マーケットで導入されるほか外販も行われており、コンビニエンスストアや空港売店などにも導入が進んでいます。

スターバックスとのコラボレーションであるStarbucks Pickup with Amazonはモバイルオーダーのみに特化したスターバックスの店舗で、併設されたイートインスペースでの決済にジャスト・ウォーク・アウトの決済システムを取り入れています。

ジャスト・ウォーク・アウトはレジ担当者が不要になるという点で人件費削減による効率化が注目されました。しかし、商品補充に人出が必要な点や設備コストが膨らむ点など課題も指摘されています。

ウォルマート

世界最大のスーパーマーケットチェーンである米ウォルマートもOMOの拡大を図っている企業のひとつです。

ウォルマート・アプリにはさまざまな機能があり、ショッピングリストに加えた商品の店内での陳列場所がGPSと連動して自動表示されるストアマップのほか、商品のバーコードを読み込ませてショッピングリストに追加する機能、また、レジ以外の売り場にいるスタッフによる決済(Check Out with Me)など、これまでにはなかったさまざまなサービスを展開しています。

オンライン・グローサリー・ピックアップというデリバリーに関連するサービスもそのひとつです。ECからのオーダーを店内スタッフがピックアップし店頭で顧客に渡すサービスですが、特徴的なのはピックアップするパーソナルショッパーというスタッフが顧客からの要望に応えて商品を選ぶという点です。生鮮食品は大きさや見栄えがわかりませんが、注文する時点で商品についての要望を加えることができます。

国内のOMOの動向

国内企業に目を向けると、NTTデータのCatch and Goという無人店舗が既に開設されているほか、アプリを利用したモバイルオーダーが大手食品・外食で既に取り入れられているなどさまざまな取り組みが見られます。

ニトリ(株式会社ニトリホールディングス)

ショッピングアプリを軸としたOMO展開を進めているのがインテリア大手のニトリです。スマートフォンのアプリ上では以下のような機能を利用することができます。

カメラ de サーチ

アプリ上での商品検索では商品カテゴリやお部屋のイメージから検索ができるほか、スマートフォンのカメラで撮影した家具の画像をもとに同様な商品を検索できる機能、検索した商品が店内の陳列場所を表示する店内商品位置表示機能が付け加えられています。

サイズ with メモ

家具を設置する自宅のスペースを写真に撮りARメジャーによりサイズを自動的に表示させるメモアプリです。

店内モード

アプリの店内モードを選ぶと売り場のマップが表示され欲しい商品のある店内の場所がすぐわかるほか、注文する商品のバーコードを読み取りレジで注文バーコードを認識させれば、注文手続きを完了させることができます。

バーチャルショールーム

ECサイトではVRを使ったバーチャルショールームを開設しています。ショールーム内を360度見渡す形で、展示商品の詳細を詳しく見ることができます。

Zoff(株式会社インターメスティック)

オンラインからの購入がなじみにくいメガネのEC化に取り組んでいるのがメガネの量販店Zoffです。

オムニチャネル化の一環として立ち上げられたECサイトは、「メガネは店舗で買うもの」というイメージを払拭するための工夫が各所に施されています。

そのひとつがバーチャル試着サービスです。アパレル等のECで取り入れられている手法ですが、17万件の顔画像データを機械学習したAIによる質問に答えるだけでスマートフォンで撮影した顔写真に似合うメガネのフレームを選べるシステムです。

また、店舗の顧客データをECに紐付けられるようにしたことで、レンズの度数やレンズの種類など購買履歴から確かめられるようになり、EC上で度数のあったメガネを購入できるようにしています。

OMOを実現するためのポイント

OMOをマーケティングに取り入れるための考え方は、オンラインの競争原理でオフラインで統合すること※だといわれています。そのためには以下のような点が重要になってきます。

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タッチポイントを増やして顧客データを一元管理する

購買行動プロセス全般にわたる顧客データを収集し、顧客体験の向上につなげていくことがOMOの最終的な目的です。データを分析することで顧客のニーズを把握しサービスの改善と向上につなげていく仕組みを構築する必要があります。

モバイルネットワークを活用してタッチポイントを増やし、データからより多くのインサイトを獲得することが重要な鍵となります。オンラインで得られるデータとオフラインの現場で得られる情報を統合して一元管理できるシステム構築が求められます。

ユーザーにとっての価値を再構築する

モバイルネットワークとデータを活用して新たに提供されるサービスは、ユーザーにとってこれまでにない価値を生み出すものでなければ受け入れられません。「便利だから使う→使われるからデータが集まる→集まったデータを分析しさらにサービスが良くなる」という好循環を作り出すことがOMOの環境を作り出すための重要なポイントです。

新しい技術を取り入れることが目的ではなく、モバイルと電子決済を前提としてオフラインでのサービスのあり方を、デジタルの視点から考え直す取り組みが必要です。

まとめ

OMOという考え方はDXと平行する形で既に国内企業にも取り入れられてきています。

モバイルオーダーを取り入れる食品関連の店舗は着実な増加が見られますし、店舗スタッフの情報発信を支援するサービスや、顧客とのタッチポイントを増やすためのLINEミニアプリの活用など、OMOを実現するための企業向けのサービスも多様化しています。

OMOを実現するためには、顧客から提供されるデータから新たな価値を作り出し、還元していくという考え方が求められています。