アンケート票の作り方、調査票設計のノウハウ解説と企業事例

セルフ型アンケートツールが各社から多数提供されており、調査会社に依頼しなくても自分でアンケート調査を実施することが比較的手軽にできるようになってきました。

しかし、実際にアンケート票を作る際には、質問項目や選択肢の設計についての知識が必要です。

アンケート票を設計する際の手順とノウハウについて解説するとともに、実際に企業が実施したアンケート票の質問項目と選択肢の実例を紹介します。

アンケート票の設計

アンケート票の設計は、調査の目的に沿って課題を明確化し、それを質問項目にブレイクダウンしてアンケート票の質問として構成していくことが基本的な流れです。具体的には以下のステップを踏んでアンケート票を作成します。

1.アンケート調査の目的を明確にする

アンケート調査の典型的な例として顧客満足度調査が挙げられます。

顧客満足度調査を行う場合、提供される商品やサービスの違いや、業界・業態の違いによって顧客の満足につながる要素は異なり、アンケート票で質問すべき項目も異なってきます。

自社の商品やサービスについて質問すべき項目をリストアップするためには、さまざまな視点から自社の商品やサービスと顧客との関係性を明確にする必要があります。

そのための方法として6W2Hを基本として顧客満足につながる要素をあぶり出す作業が有効です。

アンケートの目的を明らかにする6W2H

Who(誰が)主体人材、パートナー企業、情報発信者
Whom(誰に)相手顧客層、ターゲット
Where(どこで)場所コンタクトポイント、販売方法、デリバリー
What(何を)目的ニーズ、ベネフィット
Why(なぜ)理由競争力、価値、魅力
When(いつ)時間消費・利用時間、販売・デリバリータイミング
How to(どのように)方法機能、手段
How much(いくらで)金額販売価格、コスト

顧客満足度調査を例にあげましたが、他のテーマでアンケートを行う場合でも同様です。

どの項目が重要かはそれぞれのテーマやケースによって異なり、6W2Hすべてを明確にする必要はありませんが、さまざまな視点からMECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive:漏れなくダブりなく)を意識して検討することが重要です。

MECEを意識するとともに、調査目的をアンケート票の質問項目に分解していく際に役に立つのがロジックツリーです。

下の図は「売上の増加」という課題の解決策を検討する場合のロジックツリーです。「売上の増加」という命題に対し「How」(どのように)という問いを繰り返すことで具体的に何をしなければならないかという要素に分解することができます。

【ロジックツリーの例】

上記の例は課題解決のための手段を考えるために「How」という問いをもとに要素分解するものですが、「Why」という問いを繰り返せば原因を分解していくことになります。

2.質問項目の整理・決定

調査目的から「何を明らかにするために、何を聞く必要があるか」をリストアップすることができたら、それらを整理する作業に入ります。

スプレッドシートを用いて、リストアップした質問項目に対する回答形式とカテゴリー(選択肢)の数と内容を決めていきます。

質問項目の種類

アンケート票の質問は、以下のような種類に分けることができます。

  • 回答者の属性を問う質問

(性別、年代、職業、居住地など)

  • 事実を問う質問

(認知、経験、行動、状況、理由など)

  • 嗜好・興味など心理的側面を問う質問

(イメージ、満足度、好き・嫌い、意向など)

  • 理由や意見など非定型的な質問

(理由、意見、感想など)

質問の種類によって回答形式が決まるため、各質問の種類分けを意識しておくことが必要です。

回答形式

回答形式は、選択肢のなかから1つだけを選ぶSA(シングルアンサー)、複数選ぶMA(マルチアンサー)とテキストや数値を記入してもらう自由回答形式に大きく分けられ、以下のような分類があります。

2項目選択

事実を問う質問のうち、認知(知っているか、知らないか)や、経験(購入したことがあるか、ないか)など、必ずどちらかに当てはまる質問に対応する回答形式です。どちらか以外の回答も想定されると回答者が答えられない質問になってしまいます。

多項目択一選択

3つ以上の選択肢からひとつだけ選ぶ回答形式です。回答者が当てはまる属性に分けるための質問や事実を問う質問に適しています。

必ずいずれかの選択肢に当てはまり、かつ、2つ以上に当てはまることがない選択肢とする必要があります。選択肢が多すぎると回答者の負荷が大きくなります。

また、選択肢として挙げたものが適切でない場合に「その他」を選ぶ回答が多くなってしまったり、金額や頻度などの範囲を区切って一つだけ選ぶ場合、区切る範囲が適切でないと、結果を分析する際に意味のないものとなる可能性もあるため慎重に検討することが重要です。

尺度選択

質問に対する回答に程度や段階を設けて当てはまるものを回答してもらう形式です。心理的側面を問う質問で多く用いられます。一般的には5~7段階に分けたスケールを用いて中立から両極に対する段階を聞く形式と、0からプラス方向に対する段階を聞く形式に分けられます。

両極に対する位置を選ぶ場合には中立が選ばれやすい傾向があるため、回答者が迷いにくい質問にする必要があります。

多項目複数選択・多項目制限選択

多項目択一選択に比べると、当てはまるものをいくつでも選ぶことができるため回答者の負荷は低くなります。

事実に関する質問、心理的側面に関する質問に使うことができます。多項目制限選択は選ぶことのできる数をあらかじめ指定する方法です。

順位付け・配点

選択肢に対して優先順位をつけるのが順位付けです。各選択肢に対する割合を配分するのが配点です。どちらも事実に関する質問や心理的側面に関する質問で使うことができます。

自由回答(FA、OA)

文章や単語、数値などを自由に記述してもらう回答形式です。文章で回答してもらう場合には、前の質問で選択肢を選んだ理由や選択肢以外の回答を聞く場合、また、意見や評価、印象などについて総合的に聞きたい場合に用います。

単語で回答してもらう方法では、知っている商品名やブランド名などを選択肢を用いずに挙げてもらうことを純粋想起といい、指名買いにつながる可能性が高いとされています。

金額や頻度などを数値で回答してもらうことで尺度による集計段階の制約がなくなり、統計的な分析の選択肢が広がる場合があります。

自由回答は回答者に負荷がかかる質問であり、多用すると回答離脱を招く可能性が高まります。また、文章と単語による回答を定量的に分析する場合はアフターコーディングが必要になり、集計段階の負担が大きくなります。

3.質問文の作成

質問文の文章は回答結果を左右するため、アンケート票の質問として適切なものにする必要があります。質問文の文章の作り方をワーディングといいアンケート票のワーディングには以下のような原則があります。

質問文は短く、平易な言葉を使う

一般的なアンケートでは回答者は調査に協力するという立場であり、アンケートに対して積極的に労力と時間をかけて取り組む動機は持っていません。

質問がわかりにくかったり、回答しにくい質問がある場合、質問に答えることをやめてしまったり、正しい回答が得られない可能性が高まります。

平易な言葉を使った短い文章で完結する質問とすることが、誤解のない理解しやすい質問文とするための基本です。

言葉の定義や範囲が不明瞭な質問を避ける

定義や範囲の解釈が人によって異なる言葉を使うと、回答者は判断に迷うことになります。「高級品」や「不健康」など人によって定義が異なる言葉、また「最近」や「ときどき」など時間や頻度に関する範囲が不明確な言葉を質問文のなかに入れないようにします。

二重質問(ダブルバーレル)を避ける

ひとつの質問で2つのことを聞くことを二重質問(ダブルバーレル)といいます。詳しい解説は、こちらの調査票作成方法を徹底研究した記事をご覧ください。

「このクルマの操作性と安全性に満足していますか」という質問は、操作性に対する満足と安全性に対する満足の2つを同時に聞いていることになり、言葉の定義や範囲と同様に回答に困る質問となってしまいます。

誘導質問を避ける

「〇〇を美味しいと思いますか」「〇〇の購入を検討しますか」といった質問文に対してyes / noで答える2項目選択の選択肢を設定するとyesが選ばれやすい傾向があります。社会的な望ましさなど、質問に前提を置く場合も回答を誘導することにつながります。

4.質問順・質問量の決定

質問文の順序は回答者の思考の流れを意識する

例えば、ペットボトルのお茶についてのアンケートで、銘柄の認知、(その銘柄の)購入経験、(その銘柄の)購入頻度、(その銘柄の)購入場所を質問項目とした場合、購入頻度や購入場所に関する質問を銘柄の認知や購入経験の前に持ってくることは不自然であり、回答者の思考の流れが混乱します。

質問項目の流れに不自然さやギャップが感じられないような、質問項目の順番を意識することが重要です。

答えやすい質問を先に質問する

マトリックス形式の尺度選択の質問など、回答負荷の高い質問を最初に置いた場合、回答者の回答意欲を削いでしまうことにつながりかねません。最初の質問には2項目択一や多項目複数選択など回答しやすい質問が適しています。

重要な質問は前半部に置く

回答者がアンケート票の記入にかかる時間が長くなると、回答から離脱する可能性が出てくるとともに、回答に対する意欲が低下し正確な回答が得られなくなる可能性が指摘されています。

質問項目のなかで、特に重要視したいテーマの質問については全体のなかの前半部分に配置するようにします。

属性に関する質問は最後に置く

性別や年代、職業、年収など個人の属性に関わる質問については、最後に配置するほうが離脱することが少ないとされています。個人の属性に関することを回答することに抵抗感が生まれやすいことが理由として挙げられます。

質問量の決定

一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会の「インターネット調査品質ガイドライン」では、アンケート調査の回答者に登録したアクセスパネルを対象とする場合でも、回答所要時間を10分以内とすることを推奨しています。

また、大手ネット調査会社の調査によると、アンケートの回答者が途中で回答をやめてしまう質問数として36.8問という調査結果が公表されています。

質問数は質問と回答の設計によって異なるため一概には言えませんが、いずれにしても、アンケート票の質問のボリュームには適切な分量に収める必要があります。

5.事前テストを行い、質問文と選択肢をチェックする

前に述べた、質問量のチェックとともに、作成した質問文と回答選択肢に不備がないかどうかをチェックするために、アンケート票作成者以外の第三者を対象として作成したアンケート票の事前テストを行うことをおすすめします。

事前テストでは以下の項目をチェックして、回答時間と質問文や選択肢が適切かどうかをチェックします。

  • アンケートの回答にどれくらいの時間を要したか。
  • 回答負荷を感じる質問文や選択肢
  • 選択肢が適切かどうか
  • 質問項目の流れ

6.アンケート票の体裁調整

アンケート票の体裁は質問文と選択肢の体裁が適切なものかどうかという点のほか、表紙に当たる部分に記載する、回答者への挨拶や調査への協力依頼、調査内容・謝礼の説明等の内容も含みます。

質問文と選択肢については、Googleフォームなどのセルフ型アンケートツールを使う場合は体裁を編集することができませんが、質問文や選択肢の自動的に改行される箇所など、わかりにくくなる要素がないかどうかをチェックします。

表紙にあたる部分は、回答者の回答に対する態度や回答内容にも影響を与える部分です。調査タイトルも含めて回答傾向に影響が出るような情報をふくめないよう配慮する必要があります。

実際のアンケート票の事例

最後に、実際のアンケート調査に使われたアンケート票の質問項目と選択肢をご紹介します。「アサヒグループ食品株式会社」が実施した「ダイエットに関する意識調査」です。

【「ダイエットに関する意識調査」調査概要】

調査期間:2015年11月4日~5日

調査方法:インターネット調査

調査対象:全国のダイエットに関心のある20~49歳の女性計900人

※20代、30代、40代 各世代300人

Q.あなたはダイエットを行う際、どのように目標体重を設定しますか。

A.(SA)

マイナス 1kg~マイナス 2kg未満 / マイナス 2kg~マイナス 3kg未満 / マイナス 3kg~マイナス 4kg未満 / マイナス 4kg~マイナス 5kg未満 / マイナス 5kg~マイナス 8kg未満 / マイナス 8kg~マイナス 10kg / 未満マイナス10kg以上 / 現状維持特に目標は設定しない / その他

Q.あなたが、ダイエットを行う際に設定する目標期間を教えてください。

A.(SA)

3日以内 / 1週間 / 2週間 / 3週間 / 1ヶ月 / 2ヶ月 / 3ヶ月 / 半年 / 1年 / 常に目標を意識して行動している特に設けない / その他

Q.ダイエットを行うと決めた時、あなたが最初にとる行動はどれが近いですか。

A.(SA)

間食をやめる / 自宅や自分自身でできる運動を始める / 低カロリーとされる食品・食材を選ぶ / 徹底して食事制限をする(糖質制限、炭水化物制限など) / ジムに通う / ダイエットサプリを利用する / ダイエット食品を使用する / その他

Q.ダイエットに関する正しい知識をもっと知りたい

A.(SA)当てはまるものを選択

非常に当てはまる / まあ当てはまる / どちらともいえない / あまり当てはまらない / 全く当てはまらない

Q.ダイエットは、好きなものを我慢してでも目標を達成したい

A.(SA)当てはまるものを選択

非常に当てはまる / まあ当てはまる / どちらともいえない / あまり当てはまらない / 全く当てはまらない

Q.自分の生活スタイルを変えずにダイエットしたい

A.(SA)当てはまるものを選択

非常に当てはまる / まあ当てはまる / どちらともいえない / あまり当てはまらない / 全く当てはまらない

アンケート調査年鑑(並木書房)より引用
アンケート作成において、質問項目と選択肢の作り方について紹介しました。さらに深く解説したセミナー内容をこちらの記事にまとめています。本稿の復習はもちろん、アンケート設計をより正確にする目的で、ご覧になってください。

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