調査票作成の最重要ポイント、構成づくり|Webアンケート作成まるわかり解説2

インターネットアンケートで必要となる調査票作成について、注意点から実際の調査票づくりまで、全7回にわけてご紹介します。

第二回となる本稿では、調査票作成の最重要項目となる、Webアンケート調査票の構成についてです。注意点と決まり事の基礎については、第一回で解説していますので、合わせてご確認ください。

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QiQUMOなど既存アンケートツールを利用して、自身でリサーチを実施する方は必見。調査票(質問項目)作成の注意点とコツについて理解し、効果的なアンケートリサーチに成功しましょう。

【本連載が参考となる人】

  • 自社で調査票を作成する必要があり、実践的にポイントを学びたいと思っている方
  • 調査票作成はリサーチ会社に依頼しているが、基本知識など理解したうえで依頼したいと感じている方
  • リサーチ担当者がおらず、既存のアンケートツールを使って自社でリサーチを行っているが、この機会に基本を学び精度をあげたいと思っている方

【本連載で学べる内容】

調査票作成で最重要、構成の考え方

Webアンケートの調査票を作成する上で、一番大切になるのが構成を練ることです。

いきなり質問文章を作ってもかまわないのですが、多くの場合で抜け漏れが発生します。正しいアンケート調査を実施するためにも、調査票の構成を練ってから質問文の作成に移ることをお勧めします。

調査課題

アンケートを作成する上で最も重要な事は「調査課題を明確にすること」です。

アンケートを実施しようと思うときには、必ず「明らかにしたい」目的や課題があります。目的や課題を念頭に置いた上で、明らかにするために「何が必要なのか」=調査項目を設定しましょう。

調査項目

調査項目については、目的・課題を以下と設定した場合で詳しく解説していきましょう。

調査の目的:ブランドAの市場での浸透状況/評価の把握。広告の影響の把握。

これを調査目的とした場合は、

  • ブランドや製品・銘柄の認知
  • 使用(購入)経験
  • 使用状況
  • 銘柄評価、イメージ
  • 今後の意向
  • 広告認知

のような項目を挙げることができます。

質問項目

調査項目を検討したら、次に質問項目を考えます。Webアンケートの調査票を作成するにあたり、設定した調査項目に対して必要となる質問項目は以下のようなものが該当します。

調査項目:ブランドや製品・銘柄の認知

純粋想起による知名

助成想起による知名

調査項目:使用(購入)経験

・過去の使用

・最近1週間の使用

調査項目:使用状況

・使用銘柄、使用頻度

・使用目的、使用理由

調査項目:銘柄評価、イメージ

・全体評価、要素別評価

・評価の理由

・銘柄イメージ

調査項目:今後の意向

・今後の重視点

・今後の使用意向

調査項目:広告認知 

・最近1ヶ月に見た広告

・広告の印象

質問文

各調査項目に対して質問項目を入れた後に、質問項目に対する質問文を作成します。選択式の設問であれば、選択肢をつくり、アンケートが完成するという流れです。

調査票の質問作成で意識したい、適切な設問ボリューム

調査項目とそれに対する質問項目の検討を行ない、具体的な質問文章を考えて、調査票を作成するタイミングで、もう一点考えていただきたいことがあります。

適切な設問数と回答時間

回答者にとってストレスが少ない=最後までWebアンケートに回答してもらえる、適切な設問数と回答時間を考慮しましょう。

「設問は何個まで」で「回答に必要な時間は何分か」は、マトリックス設問の数や質問の難易度によって異なります。参考までに概ねの設問数と回答時間をご紹介しましょう。

設問の数は20〜30問程度に収めることが、回答の回収率という観点で基準になります。また回答時間は、10〜15分以内で終えられるWebアンケートの作成に挑戦してみてください。

上述した基準より多い設問数・時間であっても、回答される可能性はありますが、途中で回答をやめてしまう離脱が増えてしまい、偏った回答になってしまうリスクがあります。

若年層に多いスマホでの回答に注意

Webアンケートを実施する際、回答者の属性が若者の場合には、スマートフォンでの回答が多い傾向を掴んでおきましょう。スマホでの回答はPCと比較して、離脱率が高い傾向にあります。

パソコンの大きな画面でWebアンケートに回答するケースと比べて、スマホでは手のひらサイズの画面で回答することになります。スクロールの手間やページ切り替えの回数が多いことから、スマートフォンでのアンケート回答が想定される場合は、設問数や回答時間を短く設定することがお勧めです。

スマホを利用する層が多く含まれる場合、PCでの回答数の半分程度を目安に調査票を作成してください。

回答途中での離脱が増えるため、選択肢をランダマイズ(選択肢の順番や内容をランダムに表示する)しても、正確な回答が得られない可能性があります。

マトリックス質問の脱落率に注意

大型のマトリックス質問(表頭表側が20以上)の場合、設問総数が少ないとしても、当該質問での離脱率が高くなります。

マトリックス質問とは、表形式の質問を指します。上記サンプルを例にすると、「Q1. 画像Aを見て感じた印象を教えてください」という質問が表頭であり、質問数は1とカウントします。

ところが回答者にとっては、画像Aを見て感じた印象について、「格好いい」「可愛い」「柔らかい」「清々しい」「神々しい」「美しい」と6個の印象に対して回答が求められている状態です。

ひとつの画像を見た印象についてのWebアンケートですから、単純に6問分の回答ほどの手間ではありません。しかし、1問分の回答ではないことが理解いただけるでしょう。

調査項目によっては、マトリックスが大型になることを避けられないケースもありますが、回答する人が最後まで実施できるWebアンケートの設計を意識していただきたく思います。

Webアンケートの回答率とバイアスに注意

Webアンケート=インターネット調査の特徴として、大量スクリーニング(=特定の条件に該当する対象者を絞り込むための調査)が可能です。

よって、設問数が多くなることで回答の協力率が低下したとしても、本調査の回収は可能になります。

一見するとWebアンケートならではのメリットに感じられますが、ひとつ注意が必要です。大量質問によるスクリーニングから本調査を実施した場合、回答者の属性として「大量質問に耐えられる回答者だけになる」という可能性が考えられます。

必ずしも「大量の質問に答えられない人が除外されている」わけではありませんので、経口の読めないバイアスが発生するリスクがあります。

大量スクリーニングを実施した場合には、上記のリスクがあることを念頭に置いてください。傾向が読めないため、できる限り、大量スクリーニングは避けることが無難です。

質問文を作成するうえでの注意点、質問文のワーディング

Webアンケートの調査票を作成するにあたって、調査項目を明確にする、質問項目を整理して、質問文章をつくるという流れについて、留意すべきポイントを紹介しました。

その上で、更に調査票の設計を完璧に近づけるために、質問文の作成における注意点を解説します。適切なワーディング(=文言選び)についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

難解/曖昧

難解であったり曖昧さのある質問文を作成すると、答える人が困ってしまう=適切な回答を得られなかったり離脱率が高まってしまいます。

難解であったり、曖昧な質問の例は以下の通り。

難解な質問文章の例:

あなたは乙類の焼酎をどのくらい飲みますか

焼酎について詳しい人であれば、乙類と甲類があると理解できます。ところが、「焼酎は飲むけど、そこまで細かい話は……」という回答者にとっては難解な質問であるといえます。

曖昧な質問文章の例:

あなたは、焼酎を飲む時に何をしますか

焼酎を飲むときに何をするかという質問に対しては、ほんの一例ですが「テレビを見ながら」「つまみを食べながら」「友人と一緒に」「何をするもなにも、焼酎を飲んでいる」などの回答が想定できます。聞かれている意図が曖昧で、何について回答するかが判断しにくいといえます。

誘導質問

誘導質問の文章の例:芋焼酎は悪酔いしないと言われていますが、あなたは焼酎を飲んで悪酔いするほうですか

ハロー(威光)効果

ハロー効果が発生する質問の文章の例:芋焼酎が血糖値を下げるとの研究発表がありますが、あなたは健康のために焼酎を飲みたいと思いますか

誘導質問やハロー効果に陥りがちなのですが、「健康に良さそうな研究発表がある」といわれたら、回答する側は「そりゃ飲みたいよね」となってしまいますので、こういう形の質問をしないように心がけてください。

キャリーオーバー

キャリーオーバーのある質問文章の例:(上の質問の後に)あなたが健康のために、今後行いたいことを教えてください

前の質問が、後述の質問の回答結果に影響を与えてしまうという問題です。

ダブルバーレル

ダブルバーレルのある質問文章の例:あなたは焼酎や日本酒を飲むとき、ブランドをどのくらい重視しますか

ダブルバーレル質問とは、1つの質問文に2つ以上の意味や論点を含んでいる質問のことです。

例文ですと、「『焼酎』を飲むときにブランドをどのくらい意識するか」「『日本酒』を飲むときにブランドをどのくらい意識するか」となっており、『焼酎』『日本酒』ふたつの質問をひとつの質問で投げかけています。

欠落/重複

質問内容が「MECE」であるかという点にも、調査票の質問文章を作成する際には注意してください。

「ミーシー」と呼ばれ、「モレなく、ダブりなく」の意味に捉えられるロジカルシンキングのフレームワークです。総合的な視点から必要な事実を分類して、問題に対して正しくアプローチするための考え方になります。

Mutually:相互に

Exclusive:排他的

Collectively:まとめて

Exhaustive:余すところなく

質問を考えるとき、どうしても「答えてほしい回答」ばかりを考えがちで、あてはまらない人の事が抜け落ちてしまいます。ちょっとひねくれた気持ちで「そうじゃない人は回答できるかな」と思いながら見直してみると、意外と「このままでは回答できない人がいる」という穴が見つかります。

Webアンケートの質問作成に用いられる回答形式の種類と違い

質問に対する回答のさせ方=回答形式についても、それぞれの違いを理解してから質問文章を作成しましょう。

選択式

選択肢(カテゴリ)を事前に設定し、そこから選んでもらう回答形式です。

質問に対して、ひとつの回答が欲しければ「単一回答」、いくつでもよければ「複数回答」。複数回答のなかで制限をかけたければ「制限回答」で回答個数を制限するという方式がありますので、聞きたい答えに対してどんな答えが欲しいのかを考えて選んでください。

  •  1つ選択 (単一回答) (SA)=Single Answer
  •  複数選択 (複数回答) (MA)=Multiple Answer :制限なし
  •  制限選択 (制限回答) (LA)=Limited Answer :個数制限あり

記述式

選択肢を用意せず、回答者に自由に記述(入力)してもらう回答形式です。

選択式で選んでもらうことは重要ですが、選択肢に現れない「回答者の普段生活している気持ちの部分」を回答いただきたい場合は、自由回答は効果的な形式になります。

Webアンケートにおいて自由回答の数が多いと、書いてもらえないリスクがありますが、極めて重要な質問については、自由回答形式を選ぶことも必要です。

  •  自由回答 (OA)=Open Answer/(FA)=Free Answer

設問例

最後に、簡単な設問例をご紹介します。聞きたい内容に応じて、適切な回答形式を設定していることが理解いただけるかと思います。

Q1.性別(SA)

1:男性 2:女性

Q2.年齢(SA)

1:10代以下 2:20代 3:30代 4:40代  5:50代 6:60歳以上

Q3.職業(SA)

1:会社員 2:自営業 3:パート・アルバイト 4:専業主婦 5:学生 6:無職

Q4.個人年収(OA)

( 記述欄 )万円くらい

Q5.所有家電製品(MA)

1:テレビ 2:冷蔵庫 3:電子レンジ 4:洗濯機 5:掃除機 6:その他( )

Q6.家電製品に対する要望(FA)

( 記述欄 )


Webアンケートを実施する際の、調査票作成について基本的な注意事項を説明しました。次回以降(「ブランド認知・利用実態把握調査の作り方」公開中)、この注意事項に沿ったWebアンケートの作り方を紹介してまいります。Webアンケート制作のレベルアップにお役立ていただけるよう、有意義な情報をお送りしますのでご期待ください!