定量調査とは|簡単解説
定量調査のカンタン語句解説
定量調査は、量や割合など数値で表されるデータを収集することを目的として行う調査です。多数の調査対象の全体の特徴や傾向を数値に集約することで、市場や顧客を客観的な指標をもとに理解することを目的とする調査です。
定量調査とは
定量調査の代表的な例がアンケート調査です。アンケート調査では選択肢による回答を得ることで、調査対象全体のなかで特定の選択肢を選んだ人の数や割合を、数値として把握することができます。このような数値として示されるデータを定量(量的)データといいます。
それに対し、自由回答に記述された回答者の意見や要望など、数値に換算することができないデータを定性(質的)データと呼びます。
自由回答の記述を何らかの基準で分類し、分類した結果を数量で捉え直した場合は定量データに置き換えられます。
マーケティングリサーチの手法は、調査対象全体の特徴や傾向を量的データに集約すること目的とする定量調査と、インタビューのなかの言説や観察で見られる特定の事象から意味づけや解釈を発見することを目的とする定性調査に大別できます。
アンケート調査の例で挙げたように、ひとつの調査手法のなかで定量データと定性データを同時に収集することも少なくありません。観察調査も一般的には定性調査に分類されますが、観察調査とされるTV視聴率調査は視聴率という定量データを収集するための標本調査です。
特定の母集団を対象に行う定量調査は、母集団のすべてを調査対象とする全数調査と、母集団のなかの一部を調査対象とする標本調査に分けられます。
標本調査では、抜き出した調査対象から得られた調査結果が母集団の実態を反映するものかどうかという代表性が問われます。母集団のなかの偏った一部の情報を取得しても全体を集約することにはならないからです。そのため、標本調査を行う場合は、サンプル(調査対象)の抽出方法を工夫する必要があります。
定量データを収集する調査の種類
定量データを収集することを目的とする調査には以下のようなものが挙げられます。
質問調査
質問調査はいわゆるアンケートのことで、何らかの条件に当てはまる多数の人を対象として同じ質問を行い、回答結果ごとの数量を集計して全体の傾向をつかんだり、分類したりすることを行います。
マーケティングリサーチの分野では以下のリサーチ手法が質問調査(アンケート調査)にあたります。
アンケート調査
質問項目に対する選択肢や自由回答欄を質問票にまとめて、調査対象に記入してもらう場合と調査員が口頭で調査対象に質問しその答えを記入する場合に分けられます。アンケート調査の実施方法には以下の種類があります。
ネットリサーチ
ネットリサーチは、質問票をインターネットを介して調査対象に提示し、スマートフォンやPCに表示されるアンケートフォームから回答してもらうアンケートの方法です。リサーチ会社に登録したパネルを対象とすることで短期間で大量のサンプルを集めることができます。登録パネル以外にアンケートを配信することも可能です。
- ネットリサーチについて詳細に解説した記事
- 「ネットリサーチとは? 他の調査手法との特性の違いを正しく理解する」では、ネットリサーチのメリット/デメリット、他の調査方法との比較を紹介しています。
郵送調査
郵送調査は、紙の質問票を調査対象に郵送し、記入後に返送してもらう方法です。特定の地域に限定した調査や具体的な調査対象のリストが存在する場合、ネットリサーチでは調査対象にリーチできない場合などに用いられます。公共部門の社会調査や世論調査などでも活用されています。
訪問調査・留置調査
訪問調査は調査員が調査対象に出向いて質問票に記入してもらう、または、調査員が口頭で質問した回答を記入するアンケート調査の方法です。
留置調査は調査員が調査対象を訪問し、調査内容や回答方法などを説明した上で質問票を配布し、一定期間後に記入してもらった質問票を回収する方法です。
調査員が介在することで質問内容や回答方法を詳しく説明できるため、回答誤差の発生を抑えて正確な回答を得ることができます。
来場者アンケート
イベント会場や店頭など、その場で調査員がアンケートへの協力を依頼、もしくは、インセンティブを用意して協力者を募るなどの方法でアンケートに回答してもらう方法です。
その他の調査
製品テストやパッケージテスト、広告クリエイティブテストなど具体的な評価対象を提示して、質問票への回答を求める形で定量的な評価を行います。
会場テスト(CLT)やホームユーステスト(HUT)も具体的な製品や飲食品などの試用・試食を前提とした定量調査です。
これらの調査では商品開発の段階で受容性を評価するため行われますが、より幅広い評価や意見を収集するために定性的な手法も併用して使われます。
観察調査
質問調査が人を対象に、質問に対する回答者の主観にもとづいた答えを聴取することを行うのに対し、調査対象の行動や現象の観察結果を記録したり、評価付けを行ったりするのが観察調査です。
観察調査では定量的な分析のほか、観察者の主観にもとづく定性的な評価も行われます。
行動・動線分析
店内動線調査では、店舗や施設などの消費者の動線や行動を定量的に把握します。移動経路や停留時間などが定量的に分析する対象です。観察者がこれらの情報を記録して調査を行う方法のほか、カメラやセンサーなどの機器を用いて取得したデジタルデータを定量化する方法もあります。
視聴率調査
テレビ放送(地上波、BS放送、CS放送)の視聴率調査も定量調査のひとつです。視聴率は全国32エリア、5,100世帯(2021年10月時点)を調査対象とする標本調査であり、モニター世帯に計測機器を設置して視聴された番組やCMを計測しています。
販売情報・購買情報
コンビニやドラッグストアなどの小売店パネルからPOS情報を収集できる仕組みを構築して販売情報を提供している調査会社があります。
また、スマートフォンで購入レシートを読み込む家計簿アプリは、レシートで収集した購買情報を提供するサービスを行っています。
これらの販売情報や購買情報はマーケティングに活用される定量データです。
デジタルログ
Webサイトの訪問者数や滞在時間、離脱率、ソーシャルメディアの登録数やコメント数、いいねの数などのデジタルログも定量データに該当します。
デジタルログの時系列での変化やマーケティング施策を行った際の増減などの定量データは、顧客の評価や反応を示す重要な指標です。
ミステリーショッパー(覆面調査)
ミステリーショッパーは、主に店舗のオペレーションを運営者側が自己評価するために行う調査です。提供商品・サービスの品質のほか、従業員の接客やサービス、店内環境等について項目を設けて調査員が評価します。評価基準の達成度合いを定量化するケースや調査員の定性評価を重視するケースなどがあります。
定量調査のまとめ
定量調査を行うことで、顧客ニーズの最大公約数を探ることや、顧客層を分類する切り口を見出すことが可能になります。目的とする市場全体を分析し理解する方法として定量調査は効率的かつ効果的な方法であり、定性調査で明らかにできることとは異なります。
マーケティングリサーチでは定性調査によって課題を探索し、立てた仮説の検証を目的に定量調査を行うというのが一般的な認識です。
定量調査と定性調査を相互補完的に活用していくことがリサーチの質を高めることにつながります。