マーケティングリサーチを簡単解説 市場と消費者を理解するために知っておくべきこと

マーケティングリサーチを理解するために押さえておくべきこと

高度化する消費社会のなかでマーケティングリサーチの位置づけは重要性を増しています。

マーケティングリサーチの目的は、マーケティング課題の解決に関わる意思決定の判断材料を提供することであり、マーケティングリサーチはどんな企業にとっても不可欠なものとなっています。

質の高いマーケティングリサーチを実施するためには、マーケティング全体の枠組みを知るとともに、具体的な調査手法に関する理解も必要です。

この記事では、マーケティングリサーチについての理解を深めるための知識を解説します。

マーケティングリサーチとは

利益を上げるための仕組みづくりがマーケティングであり、仕組みづくりを行うために必要な情報を集めて分析することがマーケティングリサーチです。

仕組みを作るために必要な情報とは、「誰に」「どんな商品やサービスを」「どうやって」提供すればいいかということであり、この3つを知るためには商品やサービスの市場について調べることが必要です。

マーケティングリサーチの目的

企業にとっての効果的な販売のための仕組みづくりがマーケティングの目的であるとすると、そのための判断や意思決定に関わる情報を集めて分析することがマーケティングリサーチの目的です。具体的には以下のような目的があげられます。

市場機会の発見と脅威の特定

マーケティングリサーチによって自社の商品やサービスを購入する可能性の高い顧客層を見つけ出し、特定した顧客層により多く販売する方法を考え出すことができます。

また、同じ市場に参入している競合他社についての情報を集めることで、自社が競争優位に立つための戦略を検討するための判断材料となります。

マーケティング戦略の策定

マーケティング戦略の基本は「製品(Product)」「価格(Price)」「流通(Place)」「プロモーション(Promotion)」の4Pを決めることです。

顧客に選ばれる製品はどんなものか、購入金額として受け入れられる価格帯はどの程度か、どの販売ルートで売るのが適切か、広告や販促はどういう方法で行うか、といったことがマーケティング戦略の全体像です。

これらの情報もマーケティングリサーチによって収集します。

マーケティング課題の発見

マーケティングリサーチでは顧客からの反応や意見を情報として取り込みます。それによって、利益獲得を妨げる問題やマーケティング上の課題が明らかになり、対策を施したり改善することにつなげることができます。

販売予測

市場規模や競合他社の動向を調べ、自社製品のポジショニングを想定することによって、獲得できそうな市場シェアや販売規模を予測することが可能になります。

新製品の企画の是非を判断したり、販売計画を検討するうえでの判断材料とすることができます。

企業価値の向上

マーケティングリサーチによって市場環境を分析し顧客の動向を把握することは、企業価値を向上させるための事業の方向性を見出すことにつながります。

マーケティング課題の発見はCSR(企業の社会的責任)やCSV(共有価値の創造)を明確なものにするために有効な気付きを得る機会のひとつになります。

バリューチェーンの最適化

顧客動向に加えて、流通段階について調べることもマーケティングリサーチのカバーする範囲です。取引企業の動向や流通段階の課題を把握し改善することは利益を生み出す機会を広げることにつながります。

マーケティングリサーチとは|基礎から応用まで徹底解説

マーケティングリサーチの意味、目的、条件、方法、必要なことなどを詳細解説。マーケティングリサーチの必須情報が詰まっています。

マーケティングリサーチの種類

マーケティングリサーチの種類は調査の目的や調査対象、収集する情報の違いによって分類することができます。

収集する情報の違い

マーケティングリサーチで調査分析の対象とする情報には種類があります。アンケート調査をはじめとする数値データを扱う定量調査と、主に文字情報として記述される情報を集める定性調査です。

また、収集する情報の種類としては、実際に調査を行って得られたオリジナルの情報である1次情報と、政府統計や文献など既に収集されまとめられた2次情報があります。

定量調査

アンケート調査の集計データやWeb解析データ、販売時点で収集されるPOSデータなどが定量調査の分析対象です。

アンケート調査に代表される調査主体が計画的にデータを集める調査と、Web解析やPOSデータなど自動的に集まるデータに分類できます。

定性調査

インタビューや観察法、投影法といった調査方法を用いて意見・感想・認識・状況・事実などについて、客観的な数量データとして表せない情報を対象とするのが定性調査です。

マーケティング施策を検討する際の探索的な段階で用いられます。

1次情報

自社で企画するアンケート調査やインタビューによる取材など、直接的な形で集めたオリジナルの情報が1次情報です。

2次情報が他者も入手可能であるのに対し、1次情報は自らしか持ち得ない情報であり、鮮度と質の高い1次情報を持つことは大きな強みとなります。

2次情報

政府や業界団体がまとめた統計情報や調査会社が販売する調査データ、新聞や雑誌、学術文献などのオープンデータが2次情報です。

市場に関するマクロデータやエリアマーケティングを実施する際に必要となる自治体による地域データ、専門家がまとめた文献などもマーケティングリサーチによって収集される2次情報に該当します。

調査タイプの違い

調査のタイプとは調査目的の意味づけの違いによる分類です。調べることが何につながるのかによっても、調査の種類を分類することができます。

探索型リサーチ

具体的な問題や課題が明らかになっていない段階での調査活動です。

事業機会の発見、マーケティング課題の把握、仮説の立案などの目的で実施される調査を指します。一般的には、定性情報や2次データを中心に、あらゆる可能性を排除しない形で広く情報収集を行います。

記述型リサーチ

調査対象の特性を明らかにするために行う調査活動を指します。

アンケート調査などの定量調査、実験、観察など客観的な事実として捉えられる情報を集めて、調査対象の特徴や傾向を説明することを目的とします。計画された構成的なアプローチで行われる調査が該当し、仮説の発見と検証のどちらにも用いられます。

因果型リサーチ

要因を突き止めて仮説を検証するのが因果型のリサーチです。

探索型リサーチで立てた仮説の検証や記述型リサーチで得られた特性の因果関係を分析することを目的とします。量的データの因果関係の分析には統計手法や条件の統制についての知識が必要とされます。

調査対象の違い

マーケティングリサーチや市場調査と言った場合、消費者を対象とする調査というイメージが持たれがちです。

しかし、消費者調査だけがマーケティングリサーチではなく市場に関わるすべての情報がマーケティングリサーチの調査対象です。

消費者・生活者

消費財を扱う企業にとっては最も比重の置かれる調査対象です。経済環境や社会システムの変化に最も敏感に反応するのが消費者の行動です。

この点からマーケティング理論やフレームワークも消費者や生活者を対象とするものがほとんどであり、マーケティングリサーチの中心的な調査対象となっています。

供給・販売事業者

生産財を扱う企業をはじめとするtoB企業にとって、消費者・生活者は直接的な販売対象ではありません。一般的にこれらの企業は営業担当者を通じて業界の情報を収集していますが、販売先の事業者を対象として定量調査を行うケースがあります。

また、多数の流通事業者が販売に関わる規模の大きな消費財メーカーでも、中間事業者を対象とするマーケティングリサーチを行っています。

マーケティングリサーチと市場調査は違うのか

実務の現場では、この2つの言葉に加えてマーケットリサーチや消費者調査、サーベイも同じ分野の調査活動を指す言葉として使われています。

マーケティングという言葉自体、1900年代初頭のアメリカで生まれた効率的に売上を増やすための方法論であり、1920年代に広告の販売効果を調査分析した例がマーケティングリサーチの最初といわれています。

国内では戦後、世論調査や品質管理の分野で行われていた統計調査が、1950年代に入って現在のマーケティングリサーチと同様な概念となり、当時から市場調査とマーケティングリサーチは平行して使われていたようです。

言葉の定義としての区別はあいまいであり、調査対象や調査方法によって使い分けをする場合もあるという認識で間違いではないと考えられます。

マーケティングリサーチの調査手法

マーケティングリサーチはインターネットとモバイル端末の普及によって新しい調査手法が次々と開発される一方で、従来から用いられている手法でしか調べることができない内容があります。マーケティングリサーチの調査手法についてオンライン調査とオフライン調査に分けて紹介します。

オンライン調査

現在、マーケティングリサーチを行う際の主流となっているのが調査会社に登録したパネルを対象にしたアンケート調査です。訪問調査や郵送調査といった従来のアンケート調査の実施方法に比べて、調査期間と調査コストの点で大きなメリットがあります。

オンライン調査を依頼する場合、こちらの比較記事を参考にしてください。 オンラインでインタビュー調査を実施する場合は、こちらの記事が参考になります。

オフライン調査

従来からの調査方法でしか実施できない定性的な調査はオフラインで行います。近年ではビデオコミュニケーションツールが普及してきたこともあり、インタビュー系の調査でもオンラインで実施されることがあります。

グループインタビュー

定性情報を得るための代表的な手法です。6〜8人程度のグループで行うディスカッション形式の調査方法です。生活者の心理的側面や普段言葉にしない本音を引き出すことができます。

デプスインタビュー

1人の調査対象に対して対面で行うインタビュー調査です。グループインタビューと同様に、定量調査には現れない、行動に対する動機を深く理解するための定性調査の手法です。

デプスインタビュー(個人深層面接)とは|簡単解説

デプスインタビューは定性調査の一手法 マーケティングリサーチでは、消費者を調査対象として情報を集めることが行われます。どんな顧客層をターゲットとすべきか、消費者…

店頭調査

売場レイアウトや商品パッケージ、店頭POPなど、実店舗の現場で消費者の購買意識に影響する要因を調査する手法です。

ホームユーステスト(HUT)

新商品や試作品を実際の生活の中で使用してもらい、商品の評価を得ることを目的とします。実際の使用状況や使用感、商品に対する態度や購入意欲などを知ることができます。ホームユーステストについて、さらに理解を深める必要がある場合は、こちらからご確認いただけます。

会場調査(CLT)

HUTと同様に実際の商品に対する消費者のダイレクトな反応を見るための手法です。会場に調査対象を集め、試食や商品に触れることを通して評価してもらいます。HUTとの違いは評価する際の条件を同じにできるという点です。会場調査について、詳細に解説をしていますのでこちらも参考になさってください。

質の高いマーケティングリサーチを実践するために

マーケティングリサーチは商品開発や広告・販促だけにとどまらず、企業の事業活動全体を左右する重要な役割を担っています。

実際にマーケティングリサーチを行うには、マーケティングの枠組みを理解するとともに調査分析に関するさまざまな知識が必要です。質の高いマーケティングリサーチを実践するために、調査会社を活用し市場と顧客の理解を深めていくことをおすすめします。

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