市場を理解するための定量調査|市場調査におけるアンケート調査の活用法

市場を理解するためのアンケート調査

市場環境を分析し市場機会を見出すことが市場調査の目的です。市場調査というと消費者調査のイメージを抱かれがちですが、市場環境全体についての情報収集活動が市場調査であり、消費者を対象とするデータ収集は市場調査の一部という位置づけになります。

市場環境に関する情報は各種フレームワークを活用して体系的に集めることが効率的かつ効果的です。この記事では、市場調査で収集すべき情報に関わるフレームワークと、市場調査におけるアンケート調査の位置づけについて解説します。

定量調査とは|簡単解説

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市場環境の分析と市場機会の発見

企業が行う事業活動はそれぞれに対象とする市場が基盤となります。市場のなかで競争優位を獲得するためには、企業を取り巻く市場環境についての情報を集めて分析することが必要です。

それを目的として行う情報収集活動が市場調査であり、事業戦略を検討するにあたって欠かすことのできないプロセスです。

市場環境はマクロ環境とミクロ環境に分けられ、マクロ環境を対象とするPEST分析、ミクロ環境の分析には5フォース分析、3C分析などのフレームワークを使って分析を行います。

さらに、市場機会の発見という意味では、標的市場を明確にし、対象とする市場のなかでのポジショニングの取り方が、他社との差別化を図り競争優位に結びつけるためのカギとなります。

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PEST分析

マクロ環境分析は、自社のコントロールが及ばない外部環境について分析するものです。外部環境には現在の自社が置かれている状況と将来的に影響をもたらす要因が含まれます。

PEST分析は以下の頭文字を取ったものであり、それぞれの収集・分析すべき情報は以下のようなものです。

【PEST分析】

Political(政治的要因)市場競争の前提となるルール法規制・改正税制判例補助金政権の動向 など
Economic(経済的要因)バリューチェーンへの影響経済成長景気動向株価・金利・為替 燃料価格 など
Social(社会的要因)需要構造・需要動向人口動態教育水準文化・宗教消費者意識流行ライフスタイル など
Technological(技術的要因)市場競争の枠組みに影響技術革新特許情報通信技術 など

3C分析

3CはCustomer(市場 / 顧客)、Competitor(競合)、Company / Corporation(自社)を指し、CustomerとCompetitorが外部環境、Company / Corporationが内部環境にあたります。

市場の構成要素を3つに単純化したものであり、それぞれが互いに影響し合う関係にあることから、外部環境と内部環境の関係性を見るうえで有効な分析手法です。

【3C分析】

Customer市場 / 顧客市場規模、成長性、社会トレンド、消費動向、顧客ニーズ、購買行動、消費価値、など
Competitor競合参入企業、寡占度、参入障壁、競合企業の戦略・経営資源・パフォーマンス、代替品 など
Company / Corporation自社市場シェア、収益性、技術力、ブランドイメージ、組織、人的資源 など

5フォース分析

5フォース分析は「5つの競争要因」とも呼ばれ、米経営学者マイケル・E・ポーター氏によって提唱されたものとして知られています。特定の市場における企業間の競争と競争状態に影響を与える4つの要因を総合して、競争要因の観点から市場環境を分析するものです。

既存の企業間の競争関係に影響を与える新規参入と代替品による市場の外部からの要因、バリューチェーンの川上・川下に当たる売り手・買い手の存在からの影響が挙げられています。

【5フォース分析】

新規参入企業の脅威↓
売り手の交渉力 →既存市場での競争関係← 買い手の交渉力
↑代替品の脅威

既存市場での企業間の競争状態は、参入企業の数や業界の成長性、コモディティ化の度合い、コスト構造などに左右されます。

また、業界への参入障壁が低ければ新規参入企業の脅威が増し、また、代替品へのスイッチングコストが低い場合もその脅威は高まります。

製造業や流通業の場合、自社に原料や商品を供給する売り手と自社の顧客となる買い手の存在は、需要と供給や業界構造から生じる力関係が、事業活動に制約をもたらすことになります。

VRIO分析

3C分析で自社の競争力を分析する場合に、経営資源の観点から競争力の源泉を評価するためのフレームワークがVRIO分析です。自社の経営資源の価値を競合他社と比較するもので、外部環境を前提とした経営資源の配分や優先順位を検討する場合に用いられます。

【VRIO分析】

Value(経済価値)付加価値を生み出す経営資源
Rarity(希少性)経営資源の希少性
Inimitability(模倣困難性)経営資源の模倣困難性
Organization(組織)経営資源を有効活用できる組織力

経営資源の希少性が高ければ競争優位を築くことができますが、それが容易に模倣できるものであれば競争優位は一時的なものになります。一般に模倣困難性は経営資源の歴史的要因、複雑性、特許等の制約に左右されます。

さらに、持続的な競争優位を維持するために重要となるのが、経営資源を有効活用できる組織体制と組織文化、人材育成能力などを総合した組織力です。

SWOT分析

ここまで紹介したフレームワークによって集められた市場環境に関わる情報を、外部環境が作用する機会と脅威、内部環境に存在する強みと弱みとして整理するのがSWOT分析です。

整理した4つの象限に示された環境要因を縦軸と横軸に取り、以下の4つの組合せから事業戦略を導き出すためにクロスSWOT分析を用います。

  • 「機会」✕「強み」→ 市場環境のなかで有利に事業展開ができる
  • 「機会」✕「弱み」→ 事業展開に有利な点を活かすための改善・強化策が必要
  • 「脅威」✕「強み」→ 強みを活かして差別化とリスク回避を図る
  • 「脅威」✕「弱み」→ 脅威を回避するための防衛戦略を取る

【クロスSWOT分析】

内部環境
強みStrengs弱みWeakness
外部環境機会Opportunity積極化戦略弱点強化戦略
脅威Threat差別化戦略防衛戦略

SWOT分析で対象とする環境要因に関する情報は、ここまでに挙げた各フレームワークで収集・整理された情報がもとになるもので、何もない状態からSWOT分析を行おうとしても、実際に活用できるものにはならないことに留意する必要があります。

環境分析に用いるアンケート調査

ここまでに挙げたそれぞれのフレームワークを活用するために、市場調査を行い環境要因に関わる情報を収集します。

一般的に、外部環境に関わる情報は各種統計情報やメディア記事、業界団体資料などの2次データを対象とします。想定するターゲットの顧客に関する情報については、アンケート調査から定量的な情報として収集する必要があります。

市場環境を把握するためのアンケート調査

PEST分析の社会的要因に関わる需要動向や、3C分析の市場/顧客に関わる情報はアンケート調査を行って定量情報として収集します。いわゆる消費者調査といわれるものがこれにあたります。

事業領域とする商品やサービスの市場と、対象とする消費者層によってアンケート調査の調査項目と調査手法は異なりますが、消費者調査の調査項目は以下のようなものがあげられます。

  • 消費者意識(価値観、ニーズ、ライフスタイル、マインド、態度・志向、など)
  • 消費行動(購入銘柄、購買頻度、購入理由、購入先、利用経験、利用意向、など)
  • 認知度(商品認知、ブランド認知、ブランド想起、広告認知、など)
  • 商品・サービスの評価(満足度、評価理由、推奨度、比較要素、使用感、官能度、など)
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市場機会を分析するためのアンケート調査

SWOT分析の段階に至り、どこに市場機会があるのかが明確になってきます。しかし、ここまでの市場調査で収集した情報では不十分であり、事象戦略を精緻化していくマーケティングの段階に入ります。

マーケティングは「誰に」「何を」「どのように」提供するかという視点に立つのが基本です。そのなかの「誰に」を明確化するためSTP分析を行います。STPはSegmentation・Targeting・Positioningを定めるためのフレームワークです。

セグメンテーション・ターゲティング

セグメンテーションは最も購買に結びつく可能性の高い消費者層を見出すために市場の細分化を行うことを指します。

市場にはどんな顧客層が存在するのか、あるいは、どんな基準で分類することが自社の商品・サービスによって適切かを判断します。さらに、分類したセグメントの優先順位付けや重み付けを行うのがターゲティングです。

分類の基準として以下のような指標が用いられます。

  • 人口動態変数(年齢、性別、職業、所得、家族構成、など)
  • 地理的変数(地域、気候、人口密度、生活習慣、文化・宗教、など)
  • 心理的変数(価値観、ライフスタイル、趣味・趣向、志向性、など)
  • 行動変数(購買行動、認知状況、経験・知識、情報入手先、など)

アンケート調査の集計で因子分析を用いることにより、表面的には見えてこない潜在ニーズを抽出したり、クラスター分析でデモグラフィックデータとは異なるセグメンテーションを行うことができるようになります。

ポジショニング

標的とする市場を明確にしたうえで、その市場で競合関係にある他社商品やブランドとの相対的な位置関係を明確にするのがポジショニングです。

価格帯や機能、品質などの商品特性以外に、ブランドイメージや志向性といった心理的な評価軸を使ってポジショニングを評価できることが、アンケート調査による定量分析を行うメリットです。

ポジショニングには多変量解析のひとつであるコレスポンデンス分析を用います。アンケート調査のクロス集計からは見出すことのできない、アンケートの質問項目と分析基準となる属性項目の関係性を2次元マップ上に表現することができます。

市場調査でアンケート調査を効果的に活用する

市場調査はアンケート調査による定量情報に加えて、2次データや定性調査による総合的な情報収集と分析が求められます。アンケート調査を効果的に活用するために市場調査全体の枠組みを理解しておきましょう。アンケート調査の活用方法について、詳しい事例や解説はこちらからご覧いただけます。

マーケティングリサーチとは|基礎から応用まで徹底解説

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