効果的なアンケート調査を行うための質問文と選択肢の作り方
アンケート調査は、生活者・消費者・ユーザー・顧客・組織・従業員など、特定の集団の特徴を明らかにするために欠かせない調査手法の一つです。
しかし、テキストで質問を行い選択肢で答えてもらうというアンケートの形式に沿った配慮と工夫がないと、明らかにしたいことと調査結果にズレが生じたり、使えない調査結果になってしまったりすることが往々にして起こります。
アンケート調査の特性を理解し、信頼の置ける調査結果にたどりつくための質問文と選択肢の作り方について解説します。
アンケート調査の特性
不特定多数の生活者・消費者を対象としたアンケートの場合は調査会社の調査モニター・パネルを活用するケースが一般的です。それ以外にも、自社の顧客や従業員など調査対象が限定されているケースや、来店客調査のような特定の場に居合わせた人に回答をお願いするケースなど、アンケートの実施形態はさまざまです。
アンケートの取り方という点ではさまざまな形がありますが、アンケートが持っている特性として次のような点が共通しています。
一対多、かつ、一往復に限定されるコミュニケーション
アンケートを実施する側は、回答者が自分の意思にもとづいて事実を誠実に回答することを期待します。
一方、アンケートに回答する側は、自分の関心の程度や自分ごととしての関連の深さに関わらず、特定の事柄についての経験、感想、意見などについて答えることを求められますが、調査に協力するかどうか、質問にどの程度答えるかは自分で決めることができます。
このような前提条件があるなかで、回答者に質問を投げかけ回答してもらうという一往復のやり取りを、多数の回答者に行わなければならないのがアンケート調査であるといえます。
信頼性のおける回答を得て調査目的を果たすために、実施主体と回答者の一対多、かつ、一往復のコミュニケーションをスムーズに行うことがアンケート調査の基本原則です。
質問と選択肢という形式
もう一つ、アンケートに共通しているのが、テキストにより質問を行い、選択肢を選んでもらうことで回答を得るという点です。自由記述の回答形式もあるため、すべてが選択肢による回答というわけではありませんが、選択肢の回答を集計して定量化することがアンケートのメリットでもあるため、選択肢による回答形式は質問全体のなかで大きな割合を占めることが一般的です。
インタビュー(面接調査)は、対面で行うコミュニケーションであることから、質問の意図を詳しく説明することができますし、回答が質問の意図とズレていた場合には、質問の仕方を変えて聞くなど質問の意図に対応する答えに導くことができます。
対して、一往復のコミュニケーションであるアンケートは、インタビューのようなやり取りができないため、質問文に複数の解釈ができる場合や質問の意図が伝わらない場合、正しい回答が得られないばかりか、回答者が回答をやめてしまうといったこともあります。
選択肢についても同様で、自分の当てはまる回答の選択肢がない、複数の選択肢が当てはまるなど、質問文に対応する適切な選択肢が設定されていない場合、回答率を大きく下げてしまうことになります。
これらのことから、質問文のテキストと選択肢の設定は、一往復しかできないアンケートにとっては最も重要なポイントです。
質問文のわかりやすさ
質問文の「わかりやすさ」は、回答者にとって何を聞かれているのかがすぐに理解できて、自分が答えるべきことがすぐに思い浮かぶということです。アンケートでは以下のような点に配慮する必要があります。
平易な表現
平易な表現とは、多数のアンケートの回答者の誰が読んでも理解できる文章であるということです。抽象度が高い言葉、特定の世代のみでよく使われる単語、専門用語などは、回答者すべてが知っている、理解できるとは限らないことを前提に置く必要があります。
文章の簡潔さ・明確さ
特定の条件や状況の説明が必要な質問文では、質問の構文が複雑になり、問われている内容が不明確になる場合があります。質問文は短く、シンプルな文章を心がけます。
ダブルバーレルを避ける
一つの質問に2つの論点が混在していることをダブルバーレルといいます。例えば「この製品のデザインは、シンプルで使いやすいと思いますか」という質問では、デザインがシンプルかどうか、デザインが使いやすさにつながっているかどうかの2つの論点が混在しています。一つの質問文で問う事柄は一つだけにします。
解釈の余地をなくす
質問の意味が何通りにも解釈できる場合、質問の意図どおりの回答が得られないことや回答者が答えに困るといったことが起こります。信頼度や満足度など評価の対象が複数存在する場合は評価の対象を限定すること、頻度を問う場合に対象とする期間や時間を指定すること、などが具体的な例です。
誘導しない
質問文に「~するべき」「思いませんか」などの文末表現を用いたり、「当たり前」「明らか」「当然」などの形容動詞が含まれる場合、一つの回答に誘導する質問になってしまいます。同様に、質問を説明するための文章を置いた場合に、回答を誘導するような効果を持つことがあるため注意が必要です。
回答方法の指定
質問の内容に応じた回答方法の説明を質問文のなかに含める必要があります。選択肢のなかから一つだけ選ぶのか複数選ぶことができるのか、また、自由記述の回答なのかについて、質問文のなかで指定します。特に同じ質問を複数の項目にわたって行うマトリクス形式の選択肢や、数量で回答する選択肢の場合、順位を回答する質問では、回答者が迷わないように明示します。
選択肢のわかりやすさ
質問文に対応する選択肢の設定も、回答者が選択肢を迷うことなく選べるように配慮します。
2択の質問
経験の有無や好き嫌いなど2者択一の質問を行う場合、いずれかに該当しないケースがないかどうかを吟味する必要があります。
例えば、商品の利用経験を問う質問では、購入して利用したことがある場合のほか、一時的に借りて使ったことがある場合、店頭で使い方を実践してみた場合など、どの程度の利用経験か判断に迷います。また、好き嫌いや満足したかどうかといったなど、かならずしもyes・noで答えられないことや、程度の問題であることも少なくありません。2択の質問は回答者のスクリーニングにも使われますが、上記の点に留意します。
適切な回答形式
選択肢の回答形式には、一つだけ選ぶ単一回答、複数選ぶことができる複数回答、数値を記入する数量回答、文章を記述できる自由回答などがあり、単一回答には段階や程度を選ぶスケール尺度も用いられます。
回答形式の選択は集計・分析方法にも関連するので、各質問に対して適切な回答形式を調査設計の段階で検討します。
選択肢の漏れダブり
選択肢のなかに自分の該当するものがない時、あるいは、一つだけ選ぶ質問で複数該当する時に、回答者はストレスを感じて回答をやめてしまいます。年収や来店頻度など、数値を段階に区切って選択肢とするケースや、具体的な商品名、ブランド名などを選択肢とするケースでは、選択肢の候補が妥当であるどうかをチェックすることが必要です。
アンケート調査で生じる誤差とバイアス
アンケートは質問文と選択肢という調査方法を取る以上、測定誤差とバイアスが生じてしまうことは避けられません。そのため、ここまでに述べた質問と選択肢への配慮とともに、次のような誤差とバイアスを認識しておく必要があります。
アンケート調査で生じる誤差とは
すべての回答者が調査の内容をよく理解し、調査に積極的に協力する意思を持って誠実に回答すると仮定した場合に、その調査結果は信頼に値するものになると考えられます。
しかし実際には、ここまで述べた質問文と選択肢への配慮を行っても、避けることができない誤差と誤差の原因となるバイアスが存在します。
まず、挙げられるのがアンケート調査の実施形態が回答者に与える影響で、モード効果と呼ばれるものです。紙の質問票に回答する場合とPCやスマートフォンで回答する場合、また、来場者調査と郵送調査など、同じ質問であったとしても回答者の置かれた状況によって異なる回答をする可能性があります。
もう一つが、回答者がアンケート調査の趣旨や目的に関して提供された情報をどのように認識し、それに対してどのような印象を抱くかという点で、これをコンテクスト効果といいます。例えば、ブランドイメージ調査では、調査主体を明示した場合、回答者がもともと持っているブランドに対する印象によって回答にバイアスがかかってしまう可能性を否定できません。
なんらかの条件によって回答が偏ってしまう傾向をバイアスといい、アンケート調査では次のようなバイアスが働くことを想定して質問と選択肢を検討することが重要です。
質問文によるバイアス
質問文によるバイアスには次のようなものがあります。
社会的望ましさ | 他者から見て望ましいと判断される回答を選択してしまう傾向で、倫理観や見栄といった心理が働いて、実態とは異なる回答をしてしまうことです。 |
ハロー効果 | 全体のイメージや一部の印象に個別の回答が引きづられてしまう傾向のことを指します。 |
順序効果 | 質問項目の順番の流れによって、特定の質問への回答が影響されてしまうことです。 |
ステレオタイプ | 世間一般のイメージが強く固定されている場合、そのイメージ以外の答えが得られにくくなってしまうことです。 |
選択肢によるバイアス
選択肢によるバイアスは次のようなものが挙げられます。
同意傾向 | 同意傾向は、質問に対して肯定的な回答を選びがちになる傾向のことです。 |
中心化傾向 | 段階的な評価や心理的な程度に関する質問には、中間的な選択肢が選ばれやすい傾向があります。 |
選択肢の数 | 選択肢が多すぎると、すべての選択肢を比較検討することが難しくなり、全体を含めた判断ができなくなります。 |
回答者の回答負荷を低減する
アンケート調査の回答負荷とは、回答者が回答する際の時間的・心理的な負担のことです。
回答負荷を大きくする最大の要因が質問数であり、質問数が多ければ回答に時間がかかるのは当然のことです。一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会では「インターネット調査品質ガイドライン」のなかで、回答所要時間は10分以内にすることを推奨しています。
アンケート調査に対し回答者がどの程度積極的な態度で取り組んでもらえるかは、調査実施形態や調査のコンテクスト、インセンティブの内容などによって左右されますが、いずれの場合も、最小限の質問数にすることが回答負荷を低減することにつながります。
また、選択肢を選ぶ回数が多いマトリクス形式の質問や自由記述形式の質問も回答負荷を高める要素です。
質問文を作成した段階で、テストアンケートを実施して回答所要時間と回答負荷の程度が適切かどうかを検証しておくとよいでしょう。
まとめ
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