マトリクス回答形式とは|簡単解説

マトリクス回答形式の意味とは

マトリクス回答形式のカンタン語句解説

マトリクス回答形式はアンケートの回答形式の1つ。複数の評価対象を同じ質問/選択肢で比較する場合に用いられる表を使った回答方法です。複数の商品やブランドについて、使用経験や頻度、選好の度合いなどを共通する選択肢(尺度)で比較するケースで利用。

マトリクス回答形式の概要

一般的には、表側(行)を評価対象、表頭(列)を選択肢とするマトリクス(表)を作成し、回答者は表側に列挙した評価対象に共通する1つの質問に対し、共通する選択肢(尺度)のなかから該当するものを選択して回答します。

通常マトリックスの設問

上の例は、単一回答(選択肢から1つだけ選択する)質問の内容です。ただし、複数回答(選択肢をいくつでも選ぶことができる)の質問を設定する場合もあります。

【次のラジオ放送のイメージについて当てはまるものをいくつでも選んでください。】

楽しい正確な情報が得られる役に立つ生活に密着している
1.TBS放送
2.文化放送
3.ニッポン放送
4.NHKラジオ第1放送
5.TOKYO-FM
6.J-WAVE

マトリクス回答形式の使用場面

マトリクス回答形式の設問を使うことが適切なのは以下のようなケースです。

商品の品質、価格、デザインについて段階評価を行う場合。独立した3つの設問を設定するよりも、1つのマトリクス回答形式とするほうがスッキリします。

質問1:商品の品質についてどの程度満足していますか?非常に満足満足どちらともいえない不満足非常に不満足
質問2:商品の価格についてどの程度満足していますか?非常に満足満足どちらともいえない不満足非常に不満足
質問3:商品のデザインについてどの程度満足していますか?非常に満足満足どちらともいえない不満足非常に不満足

↓         ↓         ↓

質問:商品の品質・価格・デザインについて、それぞれの満足の度合いを1つずつ選んでください。
品質非常に満足満足どちらともいえない不満足非常に不満足
価格
デザイン

マトリクス回答形式における表側と表頭の設定

マトリクス形式の設問では、評価対象と選択肢を表側・表頭どちらにも設定できます。ですが、表側(行)に評価対象、表頭(列)に選択肢(尺度)を割り当てるのが一般的です。

(例1)【以下のブランドについて当てはまるものをいくつでも選んでください。】

品質が高い信頼できる価格が手頃スタイリッシュ安心感がある自慢できる
ブランドA
ブランドB
ブランドC
ブランドD

(例2)【以下のイメージが当てはまるブランドをいくつでも選んでください。】

ブランドAブランドBブランドCブランドD
品質が高い
信頼できる
価格が手頃
スタイリッシュ
安心感がある
自慢できる

表側にブランドを配置した(例1:ブランドに対してイメージを選ぶ)の場合。回答者はブランド一つひとつについてイメージを想起することになります。選択肢のブランドを比較しながら回答がなされる、という点に留意しましょう。

対して(例2:イメージに対してブランドを選ぶ)表側にイメージを配置/表頭にブランドを配置する場合。回答者の負荷が上がることが想定されます。なぜなら回答者にとって、イメージよりも評価対象物(ブランド)を想定するほうが容易だからです。

表側と表頭の配置に関する留意点

例1の表側にブランド/表頭にイメージを配置するのが必ずしも正解とは言い切れません。

スマートフォンを利用する回答者が多いと想定される場合を考えてみます。評価対象(例ではブランド)と選択肢(例ではイメージ)の「数が多い方」を表側がわに持ってきて、タテに長く配置する方が画面が見やすいことで回答負荷の軽減につながります。

次に、回答者の負荷が上がると紹介した表側にイメージを配置/表頭にブランドを配置する場合(例2)の考え方です。回答負荷の増減よりも、知覚品質など特に強く感じられるものを選ばせたい、などの意図が存在します。

回答者に連続して考えることを強制する回答負荷の高い回答形式であるため、表側・表頭の設定は慎重に検討する必要があります。

マトリクス回答形式のバリエーション

設問の項目と選択肢を表形式で表現するのが、マトリクス回答形式です。質問の種類と選択肢の設定にさまざまな形に応用することができます。

順位マトリクス設問

回答者に評価対象の順位付けを求める場合を例にあげましょう。自由回答で順位の番号を記入してもらう方法や、Webフォームの場合はプルダウンで番号を選ぶ方法などが考えられます。またマトリクス回答形式で順位づけを回答してもらうこともできます。

Webフォームでの入力を想定すると、自由回答による番号記入は、同じ番号を記入することを防ぐための回答制限の設定が難しくなります。ところが、プルダウンの場合は、回答にクリックやタップが2回必要になり回答者の負荷を高めることになります。

マトリクス形式で順番を選ぶようにすれば、フォーム作成側の手間を減らすと同時に回答者の負担も軽減できます。

【あなたがドライブ中に、よく聞くラジオ放送を1~3位まで教えてください】

1位2位3位
1.TBS放送
2.文化放送
3.ニッポン放送
4.NHKラジオ第1放送
5.TOKYO-FM
6.J-WAVE

複合マトリクス設問

クロス・マーケティングのアンケートサービスでは、複数回答の選択肢と単一回答の選択肢を同じマトリクスに含めることが可能です。

以下の例では、デジカメの購入理由についての検討要素を複数回答で挙げてもらい、なかで最も重視するものを単一回答で選択するという、回答者の思考に沿った聞き方を行っています。

【(1)どのような理由から、デジカメの購入を検討されますか?(いくつでも)(2)その中で最も大きな理由はなんですか。一つだけお選びください。】

(1)検討理由(2)最も大きな動機
今のデジカメが壊れたから
今のデジカメの機能が古くなったから
予算にあったデジカメがあったから
今のデジカメが大きすぎるから
ほしいデジカメがあったから

SD法によるマトリクス設問

SD法は、評価対象について抱くイメージや感情を、対立する修飾語の対を用いて測る方法です。

5〜7段階のスケールの両側に反対の意味を持つ修飾語(形容詞・形容動詞・副詞)を配置し、評価対象に抱くイメージについてどちらが近いかを単一回答で回答してもらいます。すなわち、イメージを表す修飾語は一組だけではなく複数設定されるため、マトリクス回答形式が適しています。

SD法では複数の商品やブランドの比較ではなく、一つの評価対象についてより詳細なイメージを分析する際に用いられます。

【ブランドAについて、最も当てはまると思うものをお選びください。】

非常にまあまあどちらでもないまあまあ非常に
温かい冷たい
新しい古い
派手な地味な
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

マトリクス回答形式は回答負荷に配慮することが必要

マトリクス回答形式は、「10項目×10選択肢まで1問換算」などのように、複数の評価対象があっても質問カウント上は1問という扱いになっていることが多いようです(調査会社により基準は異なります)。そのため、質問カウント上は1問扱いでも、回答者側には何度も選択を繰り返す回答負荷の高い回答方法です。

特に、評価対象と選択肢がそれぞれ多すぎる場合、耐えられず離脱する回答者が増える可能性が高まります。マトリクス回答形式の設問がある場合には、回答負荷が適切かどうかを事前調査などを行いチェックすることが重要です。