上手なWebアンケートの作り方、はじめの一歩|アンケート作成ツールの違いを知る
ネットアンケートが一般的になり、調査会社が提供するセルフ型アンケートツールのほか、フォーム作成ツールを使ったアンケートの作り方が多数紹介されてるのを目にするようになりました。
それらの多くは無料で利用できること、あるいは、操作が簡単であることを選択する上での基準として紹介しています。
確かに、コストと使い勝手はツールの評価ポイントとして重要な要素に違いはありませんが、アンケート調査の目的にそぐわないツールを選択してしまうと、調査としての成果が得られないばかりか、調査そのものが実施できないケースも考えられます。
アンケート調査に取り組んだことのない方に向けて、数多くあるアンケートツールの種類と使い分けについて解説します。
アンケート調査の種類と調査対象
ひとくちにアンケート調査といっても、さまざまな目的をもって行われます。典型的なアンケート調査の目的とそれに対応する調査対象として以下のような例が挙げられます。
対象分野 | 調査内容 | 調査対象 |
マーケティングリサーチ | 市場セグメンテーション | 一般消費者・生活者 |
新製品開発 | ||
ブランド認知・イメージ | ||
広告・キャンペーン効果測定 | ||
顧客満足度 | ユーザー・会員など | |
組織 | 従業員満足度 | 従業員 (全従業員・新入社員・中途社員・管理職) |
人材育成 | ||
組織風土 | ||
ストレスチェック | ||
社会調査全般 | 世論調査 | 一般市民・特定の属性を持つ対象 |
社会調査 | ||
学術調査 |
アンケート調査はマーケティングリサーチや組織を対象とする調査と社会調査全般に分けられます。マーケティングリサーチも社会調査に含まれますが、商業目的か公益目的かという点で区別しています。
アンケート調査の最も基本的な要素は、誰を調査対象とし、対象となるサンプルをどうやって集めるかということです。
マーケティングリサーチのなかでも、不特定多数の一般消費者・生活者を対象としてサンプリングを行う調査と、顧客満足度調査のようにユーザーを対象とする調査ではサンプルの集め方が異なります。言うまでもありませんが、顧客満足度調査は自社の商品やサービスの購入者・利用者が対象となるからです。
組織を対象とする調査の調査対象は組織の構成者であり、調査対象は限定されています。一方、世論調査や社会調査は一般市民や特定の属性を持つ人が調査対象であり、不特定多数からサンプリングするケースがほとんどです。
このように、アンケート調査のサンプルの集め方に着目した場合、不特定多数の消費者・生活者・市民から一定規模のサンプル数を集める場合と、顧客満足度調査や従業員満足度調査のように、調査対象のリストが自社で管理される場合とではアンケートの配信方法が全く異なります。
アンケートツールの選択基準はアクセスパネルを利用できるかどうか
セルフ型アンケートツールは、アンケートフォームの作成を調査会社に依頼せずに自身で行うためのものです。アンケートフォームを作成できることは、どのアンケートツールに共通することですが、アクセスパネルにアンケートを配信できるかどうかによって実施できるアンケート調査の種類が決まることになります。
もともと、インターネット調査が普及した最も大きな理由は、アクセスパネルを調査対象とし、短期間に大量のサンプルを集めることができるという点です。この仕組みを利用することで調査期間とコストを大幅に削減することができるようになりました。
アクセスパネルにアンケートを配信することができない無料のGoogleフォームのようなフォーム作成ツールは、調査対象を自前で管理できる場合に用途が限られてしまいます。
不特定多数の調査対象から大量のサンプルを集める調査を実施する場合には、アクセスパネルに配信できるセルフ型アンケートツールでなければ、サンプルを収集するための手段も自前で用意しなければならないことになります。
実施するアンケート調査の調査対象が誰かを明確にした上で、アクセスパネルを利用できるツールが必要か、アンケートフォームを作成できれば事足りるのかを選択する必要があります。
目的別セルフ型アンケートツールの種類
セルフ型アンケートツールは、サンプルの収集にアクセスパネルを利用できるか、配信先を自社で管理する必要があるかという点で大きく2種類に別れ、それぞれのアンケートの目的が異なります。
それぞれの目的に適した具体的なセルフ型アンケートツールをご紹介します。
マーケティングリサーチ・社会調査に適したセルフ型アンケートツール
ネットリサーチを主力とする調査会社のセルフ型アンケートツールは、調査会社が受託調査で調査対象としているアクセスパネルを活用することができます。調査会社はアンケート調査についてのノウハウが豊富なだけに、セルフ型アンケートツールも行き届いた設計がなされています。
調査会社が行っているアンケート調査と同じアクセスパネルを利用できることから、大量のサンプルを低コストで収集できます。
QiQUMO(株式会社クロス・マーケティング)
マーケティングリサーチ大手のクロス・マーケティングが提供するセルフ型アンケートツールです。ドラッグ&ドロップによる設問の追加、1つの画面のなかで作成しているアンケートフォームを確認しながら編集作業ができるなど、至れり尽くせりの機能が搭載されています。
GMO Ask(GMOリサーチ株式会社)
2022年9月にリリースされたセルフ型アンケートツールです。セルフ型アンケートツールとしては後発ですが、属性別のサンプル提供可能数の検索機能やクレジットカード払いが可能であるなど、他社にないメリットを打ち出しています。
Questant(株式会社マクロミル)
早い時期からインターネットリサーチを手掛けてきたマクロミルが提供するセルフ型アンケートツールです。70以上のテンプレートと100以上の質問データベースが用意されており、それらを活用することで、比較的容易にアンケートを作成することができます。
何らかのコンタクトを獲得した顧客(既存・潜在)を対象としたアンケートに適したツール
自社製品・サービスの購入者や会員、あるいは、潜在顧客を対象としたリード獲得など、対象者を特定したうえでアンケート調査を行うためのセルフ型アンケートツールです。
CRM(顧客管理)やMA(マーケティングオートメーション)などのツール群の1つとして提供され、他のツールと連携させて活用することができます。
CREATIVE SURVEY(クリエイティブサーベイ株式会社)
salesforceのCRM(顧客管理)やSFA(営業支援)システムと連携させて使うことができるセルフ型アンケートツールです。顧客の声の収集をコンセプトとして、顧客と紐づけた定性情報を有効に活用することができます。
WEBCAS formulator
企業と顧客の「双方向コミュニケーション」を実践するための、顧客管理・メッセージング・問い合わせに対応するツール群の1つがセルフ型アンケートツールのWECAS formulatorです。各ツールを連携させることでニーズ収集と迅速な顧客対応を実現できます。
Qualtrics CoreXM
世界規模で活用されているXM(エクスペリエンス・マネジメントシステム)です。顧客・従業員・ブランド・製品・デザインなどの製品群で構成され、そのなかにアンケート機能も含まれており、集計結果をSAPやsalseforceなどの他社のアプリケーションで共有することも可能です。
社内システムに組み込んでアンケートを実施するためのセルフ型アンケートツール
従業員を対象としたアンケート調査は、小規模な人員を対象とするものであれば、Googleフォームのようなフォーム作成ツールで十分事足ります。しかし、プロジェクトベースでの意見収集や集計結果の閲覧権限の設定などが求められる場合には、社内で運用することを主眼に置いたセルフ型アンケートツールのほうが使いやすいといえます。
kintone(サイボウズ)
業務改善プラットフォームと名付けられたグループウェア製品です。アンケートツールとしては集計結果の共有機能やアカウントレベルでのアクセス制限など、社内でアンケートを活用する場合に便利な機能が取り入れられています。
colla
ビジネスチャットツールSlackに組み込む形で利用するセルフ型アンケートツールです。チャットウィンドウのなかにアンケートフォームを表示させて回答を集め、集計結果をリアルタイムで共有することができます。
Google フォーム
Googleフォームは新たな費用をかけずにGoogle Workspaceから利用できるという身近な点が使いやすさにつながっています。限られた調査対象にメールでアンケートを配信するなど、小規模なアンケートを実施する場合の手軽さが大きなメリットです。
目的に沿ったツールを選ぶ
インターネットを使ったアンケートは低コスト・短期間で実施できることがメリットといわれますが、これは、アクセスパネルを対象に行うネットアンケートを郵送調査など従来の手法と比較した場合に当てはまることです。
特に、消費者・生活者を対象とするマーケティングリサーチでは、アクセスパネルを対象とするアンケート調査が多くの割合を占めます。
一方で、CRMやSFAの仕組みの1つとしてアンケートを組み入れることができるツールも種類が増えてきています。効果的なアンケート調査を実施するためには、目的に沿ったツールを選ぶことが必要です。
まだまだある、Webアンケートツール50選
記事内で紹介しきれなかったツールも含めて、国内外50のWebアンケートツールを紹介しています。気になる方はこちらの記事をご確認ください。