アンケート調査の設計:質問票の回答形式と適切な選択肢の作り方
アンケート調査の質問票を作成する際には、質問項目に対応する回答形式の選択と調査の目的と集計を意識した選択肢の設計を行うことが重要です。
アンケートに特有の作法ともいえる回答形式は質問項目との論理的な整合性が必要であり、バランスの取れた選択肢にすることが回答者への配慮と集計結果の有効性に大きく影響します。
アンケート調査を有効に活用するために、知っておかなければならない回答形式の種類と選択肢の作り方についてご紹介します。
質問票における選択肢の重要性
アンケート調査で質問への答えを選択肢という形で聴取するのは、調査対象を選択肢によって数量として把握し、分類したり代表させたりすることができるからです。
言い換えれば、設定した選択肢という基準によって、想定する母集団の特性や傾向を把握するということであり、質問項目と選択肢の設定はアンケート調査の目的に関わる重要な要素であることはいうまでもありません。
回答形式と選択肢を設定することは質問に対する答えをあらかじめ想定することなので、設計者側の意図を適切に回答者に理解してもらうことが求められます。
回答形式の種類
アンケート調査の質問に対する選択肢は回答形式に合わせて作成します。回答形式には種類があるため、質問項目に応じた回答形式を選び、質問の内容と回答形式に応じた選択肢を作成する必要があります。
回答形式には以下のような種類があります。
単一回答 / シングルアンサー(SA)
選択肢のなかから一つだけ選ぶ回答形式を単一回答形式、または、シングルアンサーといいます。
2項目選択型
「はい / いいえ」、「知っている / 知らない」など、どちらか一方の選択肢を選ぶ回答形式です。認知・経験の有無や事実に関する質問に適用できます。
「思う / 思わない」「満足している / 満足していない」など回答者の心理的な側面を問う場合など、中間的な立場も想定される質問項目には向かない回答形式です。
多項目択一選択型
3つ以上の選択肢を設けて、そのなかから一つだけ選ぶ回答形式です。デモグラフィック属性など、回答者にとって一つだけに決まることを問う質問項目の場合に使います。いずれかの選択肢に必ず当てはまり、かつ、複数の選択肢に該当することがないことが原則です。
金額や年数といった数量を階級に区切って選択肢に設定する場合、分析する際に意味のある形で範囲を区切る必要があります。
また、多項目から一つだけを選択する場合に、当てはまる選択肢がない場合や選択肢の数が多すぎると回答負荷が大きくなり、「その他」への回答が多くなったり、有効回答が得られなかったりする可能性が高まります。
尺度選択
評価や態度・意識などについての程度に関する質問に対し、複数の段階を設けてそのなかから一つを選ぶ回答形式で、評定尺度法や単にスケールといった呼び方があります。中立的な選択肢を設けて奇数の段階を設ける場合と、中立が選ばれるケースが多くなることを想定し選択肢を偶数とする場合もあります。
「満足 / 不満足」や「同意 / 不同意」などポジティブとネガティブな選択に対する中間的な態度に対して段階的な選択肢を設けるものをリッカート尺度といいます。5段階、または、7段階の区切りを設けることが一般的です。
【リッカート尺度の例】
とても満足 | やや満足 | どちらとも言えない | やや不満 | とても不満 |
◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
イメージや概念を象徴する対立関係にある一対の形容詞を両極に配置し、どちらに近いかを段階的に答えてもらう回答形式をSD尺度といいます。ブランドイメージやデザインに対する評価を聴取する場合に用いられます。複数の形容詞対を設定し競合商品とのイメージ比較を行うケースが典型的な用例です。
【SD尺度の例】
派手な | ◯ ← | ◯ ← | ◯ | → ◯ | → ◯ | 地味な |
複数回答 / マルチアンサー(MA)
マルチアンサー(MA)は選択肢のなかから複数選ぶことができるという意味で、選ぶ個数に制限を設けない多項目自由選択と、「上位3つまで」といった形で選べる個数に制限を設ける多項目制限選択に分けられます。
複数回答とする質問項目は、集計段階で全体を100とした構成比を見ることができないことに注意が必要です。
多項目自由選択
ブランド名や商品名の認知、購入動機などを問う場合、普段接触するメディアの種類といった具体的な候補が挙げられる場合などに用いる回答形式です。
多項目単一選択の回答形式と比較して回答者の負荷は軽くなることから、可能性のある選択肢をできるだけ網羅することを心がけます。
多項目制限選択
選択肢の数が多いことに加えて、選択肢の回答数も多いと想定される場合、選ぶことのできる選択肢の数を制限することも有効です。多項目自由選択と比べると回答負荷が上がるため、選択個数の制限を設けるかどうかは慎重に判断します。
ランキング(順位付け) / 数値配分法
選好や選択の優先順位について、選択肢に順位の番号を記入してもらう回答形式です。集計段階では相対的な順位をパーセンタイルで把握することができます。
数値配分法は配点法とも呼ばれ、100点、10点などわかりやすい一定の数を各選択肢に配分してもらう方法であり、各選択肢の重要度の違いを順位付けよりも明確にあらわすことができる回答形式です。簡単な計算を伴い回答負荷があがるため、選択肢は数個程度とすることが適当です。
自由回答(FA / OA)
選択肢を選ぶのではなく、回答者が自由に文章や単語、数値を記入する回答形式です。フリーアンサー(FA)やオープンアンサー(OA)とも呼ばれます。
文章を記入する形の自由回答形式は、理由・背景・状況などをより詳細に聴取したい場合や、あらかじめ回答を選択肢としてリストアップすることが難しい場合などで用いられます。また、質問項目以外の意見や希望などを自由に書き込んでもらうことを想定する場合に適しています。
単語を記入してもらうケースとしては純粋想起されるブランド名や商品名を聴取したい場合があります。多項目複数選択で銘柄名を提示して選んでもらう助成想起に対し、認知の度合いが高いことを示す要因とされています。
金額などの数値を具体的にあげてもらう数量回答は、集計段階での分析の自由度が高まることがメリットとして挙げられます。
選択肢のある質問項目のように集計することはできないため、自由回答を設ける場合は、集計段階でのコーディングなど、どのような形で分析するかをあらかじめ決めておく必要があります。
アンケートの回答形式を選ぶときの参考記事紹介
Webフォームの回答形式の選択
ネットリサーチを使って実施するアンケート調査ではWebフォームのなかで回答形式を設定します。ネットリサーチを提供する調査会社やセルフ型アンケートによってインターフェースは異なりますが、ラジオボタンやチェックボックス、スケール、テキストボックスなどのフォーム要素が使われることは共通しています。
以下にGoogleフォームの場合のアンケートに使われるフォーム要素をご紹介します。
ラジオボタン
単一回答 ( シングルアンサー)の回答形式に使うフォーム要素です。一般的なものは◯であらわされ、選択肢として選ぶ場合はひとつしか選ぶことができません。
プルダウン
プルダウンは多項目単一選択の場合に使用するフォーム要素です。セルフ型アンケートフォームなどには使われない場合もある一方、Googleフォームでは設定することができます。チェックボックスが1クリックで回答できるのに対し、プルダウンは展開して選択肢を選ぶ2回のクリックが必要になります。
選択肢が少ない場合はチェックボックスが適していますが、選択肢が多い場合はプルダウンを設定したほうが、回答画面をスッキリ見せることができます。
チェックボックス
複数回答(マルチアンサー)の回答形式に使うフォーム要素です。一般的なものは▢で表されます。ラジオボタンと異なり複数の選択肢にチェックを入れることができます。
スケール(尺度選択)
Googleフォームでは均等目盛という設定になります。設定できる段階は2〜11段階で始点を0または1、終点を2~10に指定できます。設定した段階数のラジオボタンが表示され、選ぶことができるのは一つだけです。
【スケールの例】
マトリクス
多項目単一選択、多項目自由選択で、同じ選択肢を複数の質問項目にわたって選んでもらう場合に使用します。Googleフォームでは多項目単一選択の場合は「選択式(グリッド)」、多項目自由選択の場合は「チェックボックス(グリッド)」を設定します。
テキストボックス(自由回答)
自由回答を入力できるテキストボックスを設定する項目です。Googleフォームの場合は「記述式」または「段落」を選択します。短文を想定する場合には「記述式」、ある程度のボリュームを想定する場合には「段落」を選択します。
【記述式の例】
実際のアンケート画面と見比べながら、質問形式について知りたい方はこちらのページからご確認ください。
まとめ
質問票の選択肢の設定は集計分析の有効性に関わるだけでなく、回答負荷に影響し回収率を左右する要因にもなります。回答形式の種類と選択肢の設定の仕方の基本を押さえて、質の高い調査票を作成しましょう。