マーケティングプロセスに対応したマーケティングリサーチのやり方

マーケティングプロセスに対応したマーケティングリサーチのやり方

マーケティングリサーチは、効果的なマーケティングを実施するために不可欠な情報収集活動であり、その目的は、新たな価値を適切な顧客に届けるための手掛かりとなるインサイトを発掘することです。

マーケティングプロセスに応じたマーケティングリサーチは答えを探し出すための過程であり、課題解決にたどり着くために最も効果的な手段を選択する必要があります。

結果につながるマーケティングリサーチを実施するための方法と手順についてご紹介します。

マーケティングプロセスとマーケティングリサーチ

マーケティングプロセスは、自社が顧客に提供する価値に対して「誰に」「何を」「どのように」届けるための戦略と戦術を検討するプロセスです。マーケティングリサーチはそれを決めるための情報収集活動と位置づけられます。

マーケティングプロセスとマーケティングリサーチ
誰に 戦略 環境分析
S(セグメンテーション)
T(ターゲティング)
P(ポジショニング)
マクロ環境分析 ミクロ環境分析 消費者調査
何を 4C分析
・Customer Value(顧客にとっての価値)
・Cost(コスト)
・Convenience(利便性)
・Communication(コミュニケーション)
どのように 戦術 4P分析
・Product(製品)
・Price(価格)
・Place(流通)
・Promotion(プロモーション)
受容性調査
PSM
製品テスト
広告効果測定

マーケティング戦略は、自社の属する市場のなかで最も需要を見込める顧客層を特定し、その顧客層に求められる商品やサービスを、どのような方法でアプローチするかを決めることです。

この段階のマーケティングリサーチは、3C、PEST、5フォースなどのフレームワークによる環境分析とSTPと4Cを掘り下げるための消費者調査が挙げられます。

具体的になった4Cをマーケティングミックスの4Pに落とし込むのが戦術の段階です。

4Cを形にしたプロトタイプの評価を求める受容性調査や価格を決めるためのPSM分析、効果的な広告やプロモーションを実施するための効果測定などをマーケティングリサーチとして実施します。

マーケティングリサーチとは|基礎から応用まで徹底解説

マーケティングリサーチの意味、目的、条件、方法、必要なことなどを詳細解説。マーケティングリサーチの必須情報が詰まっています。

環境分析

環境分析には以下のようなフレームワークが用いられます。

3C分析

Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの関係を整理して分析します。

PEST分析

Politics(政治)、Economics(経済)、Society(社会)、Technology(技術)を対象とする、自社を取り巻く外部環境を明確にするための項目です。

VRIO分析

自社の、Value(経済的価値)、Rarity(希少性)、Inimitability(模倣困難性)、Organization(組織)を外部環境のなかで、または、競合他社と比較した場合の客観的な評価を明らかにします。外部環境を明らかにするPESTに対してVRIO分析は内部環境を対象とします。

5フォース分析

1. 既存事業者の競争関係、2.新規参入の脅威、3.代替品の脅威、4.売り手の交渉力、5.買い手の交渉力の5つの力関係を分析するためのフレームワークです。ミクロ環境の分析に位置づけられます。

GCS分析

Genre(ジャンル)、Category(カテゴリー)、Segment(セグメント)商品やサービスの位置づけを明確にするための階層分けを目的とします。ターゲティングと競合の影響を把握するために必要な分析です。

SWOT分析・TOWS分析

市場環境のなかでの競合他社に対する自社の、Strength(強み)、Weakeness(弱み)、Oppotunities(機会)、Threats(脅威)を明らかにするための要素分解を行います。TOWS分析はSWOTの要素を解決策に落とし込むためのものでクロスSWOT分析とも呼ばれます。

STPの設定

マーケティングプロセスのなかで、商品やサービス届けるべき顧客層を明確にすることの優先順位は高く、S(セグメンテーション)、T(ターゲティング)、P(ポジショニング)が間違っていれば、価値のある競争力の高い商品やサービスであっても販売にはつなげることはできません。

環境分析の結果から顧客セグメントを洗い出し、さらにターゲットを精緻化してどの切り口からアプローチしていくかを決めることがSTPの設定にあたります。

S:セグメンテーション

環境分析により把握した商品カテゴリーの市場規模や有望と考えられる市場機会に対して、想定される顧客セグメントを明確にするために、消費者・需要家を対象とするマーケティングリサーチを行います。

toCの市場に対しては人口動態や地域などの既存の統計調査を大枠として、消費者の価値観やライフスタイル、購買行動を把握します。消費者を対象とするアンケート調査やグループインタビューなどのほか、購買データやアクセスログなど行動追跡データを使って分析を行います。

toBの市場に対しては業種や企業規模、業界構造を基準とするセグメンテーションを行った上で、顧客の業務や取引上の力関係など、より個別的な購買要因を明らかにするための情報収集が求められます。

T:ターゲティング

対象とする顧客の解像度を高めていく過程がターゲティングです。セグメンテーションを行った顧客層から最も需要の見込めるターゲットを明確にしていきます。

この段階でペルソナの設定を行いますが、ペルソナに当てはめられる条件や属性項目はマーケターがいくら頑張って考えても的外れなものになりがちです。

インタビューなどの定性情報からインサイトを引き出し、マーケットリサーチの定性分析にもとづいた客観的な数値をもとに、解決すべき課題や本質的な悩みをペルソナに当てはめていく作業を行う必要があります。

P:ポジショニング

ブルーオーシャンな市場を見つけ出せるのは極稀なケースであり、ほとんどの商品やサービスは競合企業や代替品があることを前提として市場に送り出されます。競合品とどのように差別化を図り、市場のなかでの自社の位置づけや価値の意味付けを行うことがポジショニングに相当します。

競争上の地位にもとづくポジショニングは、コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略に大別されるほか、競争を優位に展開できるセールスポイントの軸を定めて、競合製品との関係を明確にすることがポジショニングの目的です。

STPのそれぞれを明確にする過程において、マーケティングリサーチの結果がそのための判断材料となるため、環境分析の結果を踏まえて、消費者を調査対象とするマーケティングリサーチを行います。

4Cから4Pへの落とし込み

企業と顧客との関係性や購買行動のモデルとしてさまざまなフレームワークが提唱されており、商品やサービスのカテゴリーによって使い分けられています。そのなかで古くから使われ、あらゆる商品やサービスに当てはめることができるのが4Cと4Pです。

4Cと4Pは顧客視点と企業視点それぞれの、交換価値を対比して見ることができる活用度の高いフレームワークであり、セールスポイントを明確にするうえで欠かせない分析の視点を明確にすることができます。

4C分析4P分析
Customer Value(顧客にとっての価値)Cost(コスト)Convenience(利便性)Communication(コミュニケーション)⇔⇔⇔⇔Product(製品)Price(価格)Place(流通)Promotion(プロモーション)

Customer Value(顧客にとっての価値)⇔ Product(製品)

商品やサービスによって実現することができる顧客にとっての価値を明確にすることがマーケティングにおいて最も重要な作業です。

顧客に提供する価値は、商品の仕様や機能によってもたらされる便益以外にもブランドの価値や体験価値、社会的価値などに分解することができ、顧客の購買選択に関わる要素は複雑で相互に影響しあっています。

マーケットリサーチの結果に現れる顕在化した消費者の全体像から、顧客の本質的な欲求とその解決策につながる要因を明らかにすることがインサイトの発見プロセスであり、それを商品の形にしていくことが商品開発です。

Cost(コスト)⇔ Price(価格)

企業が提示する価格は、消費者にとって商品やサービスを購入することによってもたらされる相対的な価値の一部にすぎません。購買プロセス全体に要するコストが重要性を持つとともに、価格はブランドや使用価値を判断するためのシグナルとしても機能しています。

企業にとっては利益に直結する要素であるだけに、さまざまな角度から検討しなければならないのが価格設定です。

競合他社や既存商品の価格を調べるほかに、PSM(価格受容性)分析などのマーケティングリサーチを行うことで適切な価格設定のための判断材料とすることができます。

Convenience(利便性)⇔ Place(流通)

4PのPlaceには流通という言葉が当てられていますが、Placeは消費者への商品・サービスの提供方法全般を指すものと捉え直すことができます。

提供方法は販売方法や品揃え、提供されるまでの時間、付随するサービス、購入手続き、決済方法なども含めてトータルで消費者の利便性を損なう要素を取り除くことが重要です。

商品やサービスのカテゴリーや業種、業態などの根本に関わる要素であり、Customer ValueとProductと一体として消費者の視点から検討する必要があります。

Communication(コミュニケーション)⇔ Promotion(プロモーション)

商品やサービスとしての知名度を得るとともに、その内容を正しく消費者に伝えることはすべての企業にとって不可欠な取り組みです。企業側から消費者に向けてのプロモーションとしては、広告宣伝、広報・PR、人的営業、セールスプロモーションが主要なものです。

それに加えて、ネットとモバイルの普及によるSNSを活用した双方向のコミュニケーションが盛んになってきていることを踏まえ、顧客とのタッチポイントの多様化にも対応していくことが求められます。

顧客ロイヤリティやLTVに大きな影響を与え、ブランドイメージや顧客の態度変容にも関わる要素であり疎かにすることができない重要な要素です。

マーケティングプロセスを理解して適切なマーケティングリサーチを実施する

マーケティングリサーチを解説する際に、最初の項目として取り上げられるのが「目的の明確化」です。マーケティングリサーチはマーケティングの意思決定を行うための調査・情報収集活動であり、マーケティングのプロセスを理解しないことには調査の目的を明確にすることはできません。

また、「仮説を持つこと」も同様に指摘されますが、環境分析による客観的な現状を把握することなしに仮説を立ててもマーケティングリサーチの方向性を見誤ることになります

マーケティングについての基本を整理し、適切な環境分析を行うことが効果的なマーケティングリサーチにつながります。