アンケートを効果的に使ってWebサイトのユーザビリティと作り方を見直す

アンケートを効果的に使ってWebサイトのユーザビリティと作り方を見直す

Webサイトのパフォーマンスはユーザビリティを改善することで高めることができます。改善によるWebサイトの最適化を実現するためには、アクセス解析による定量的な数値から改善のための判断材料を把握することに加えて、ユーザーの主観にフォーカスした検証を行うことが欠かせません。

そのための手法として有効なのがアンケート調査を実施することです。その際にどんな質問項目を設定する必要があるか、また、アクセス解析と合わせてWebサイト改善のための判断材料を収集するための手法について解説します。

ユーザビリティの重要性

企業のWebサイトには、自社についての情報を発信するだけでなく、商品やサービスの販売、リード顧客の創出、ブランド認知を高めるなど、さまざまな機能があります。

特に、オンラインでの事業活動が主体であるECやSaaSでは、ユーザーにとって使い勝手のよいWebサイトを作ることが重要であることは言うまでもありません。

魅力のある商品や優れたプロダクトの価値を理解してもらい、購入に向けての行動に結びつけることがWebサイトが果たすべき役割です。

しかし、商品やサービスの価値が伝わらない、あるいは、興味があるにも関わらず購入に向けた行動につながらないなど、Webサイトのデザインや設計がその原因となっているケースは少なくありません。

売上やCV(コンバージョン)といった結果としてのパフォーマンスが上がらない場合に、Webサイトのユーザービリティを検証してみることが必要です。

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Webサイト評価指標の現状把握と改善指標の明確化

アクセス解析を設置することはWebサイトを運営する上での常識といえます。アクセス解析から得られる情報を精査し改善すべき指標を明確にすることが、Webサイトの改善点を模索するうえでの前提となります。

アクセス解析からは以下のような情報が得られます。

ユーザー数、セッション数、ページビュー数などの基本的なウェブ解析データ

ユーザーの潜在的な規模や自社についての認知度を測る上での最も基本的な情報です。閲覧ページについても、ユーザーの興味関心を知る手がかりとなります。

ユーザー属性:年齢、性別、地域などのデモグラフィック情報

Webサイトがターゲットとするユーザーにマッチしているかどうかを確認するための情報です。

デバイス情報:デバイスタイプ、ブラウザ、オペレーティングシステム、画面解像度など

ユーザーの行動はWebサイトを閲覧しているデバイスの制約を受けます。Webサイトを設計する上で重要な情報です。

ソーシャルメディアでのシェア数やいいね数などのソーシャルメディアデータ

コンテンツが共有されること、話題になることは商品やサービスの知名度を高める上で重要であり、商品やサービスの価値を評価するための指標になります。

カスタムイベント:特定の動作を行った場合のトラッキングデータ

クリックしたリンクなどWebサイト上でのユーザーの行動が、Webサイトの目的や機能を達成するための障害や課題を発見する糸口となります。

コンバージョンデータ:目標達成に関するデータ(購入、問い合わせ、登録など)

実際に成果につながったユーザーの行動を把握することは、ターゲット設定の精度を高め、Webサイトの設計を最適化するために必要です。

パス解析:ユーザーがどのページからどのページに移動したかの解析

ページの閲覧動線をたどることでユーザーが行き詰まったり、混乱している場所を特定できます。滞在時間の長いページや離脱する割合の高いページを知ることがWebサイトを改善するための有力な情報になります。

ページの読み込み時間やエラー率などのサイトパフォーマンスデータ

Webサイトのユーザビリティの障害となる要素を見つけ出し問題を把握します。カスタムイベントやコンバージョン、パス解析と合わせてユーザーのWebサイトの使い勝手に直結する要因を特定します。

アクセス解析以外のWebサイトの評価手法

アクセス解析のデータを分析しユーザーの行動の結果を把握することはできますが、ユーザーが、なぜWebサイト上でそのような行動を取るのかという原因や理由までは知ることができません。

この点からユーザーの声を直接聴取するアンケート調査は、Webサイトのユーザービリティの改善を図る上で重要な役割を果たします。

アンケート調査以外にもWebサイト上でのユーザーの行動を深掘りするための手法があります。これらの手法と合わせてアンケート調査を実施します。

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ヒューリスティック分析

ヒューリスティック分析は分析者の経験則と一連のルールにもとづきWebサイトの問題点や課題を判定する手法です。Webサイトのユーザビリティに関するルールとしては、ヤコブ・ニールセンの10原則が知られています。

ヤコブ・ニールセンのユーザビリティ10原則

  • システムの状態の可視化
  • 実環境・実世界と整合性を保つ
  • ユーザーに制御の主導権と自由度を与える
  • 認知に一貫性と統制感を与える
  • エラー発生の防止
  • 記憶しなくても、見ればわかるデザイン
  • 柔軟性と効率性を持たせる
  • 不必要な情報を排除したシンプルな美観
  • エラーや不具合の解決につながるヘルプとサポート
  • 問題解決のためのドキュメントの提示

A/Bテスト

Webサイトや広告のタイトル、レイアウト、クリエイティブなどが異なる2つのバージョンを作成し、実際に運用して成果の違いを比較する方法です。

A/Bテストの結果はCVや滞在時間などWebサイトのパフォーマンスをダイレクトに表す結果として現れるため、成果に直結する要素を見出すことにつながります。

アイトラッキング

Webページを閲覧するユーザーの視線の動きを解析して、注目している箇所や見過ごされている箇所を特定することができるのがアイトラッキングです。

視線を検出した結果は、視線の置かれる頻度を色分けして表示するヒートマップと、視線の移動順序を追跡するゲイズプロットの2種類の方法で把握することができます。

アイトラッキングは専用のハードウェアを使用する場合とWebカメラを用いるものがあります。

ヒートマップには視線の動きによって色分けする方法と、マウスの移動やクリック、スクロールによってページの操作を記録する方法があります。熟読されているエリアや終了エリア、クリックの場所を特定することができます。

アンケート

Webサイトのユーザビリティを検討する上で何よりも重要なのはユーザーの主観的な満足度です。ここまで述べた分析やテストではユーザーの行動の理由や背景を知ることはできません。この点からも、Webサイトの改善を図る上で直接ユーザーの声を聞くことは重要な意味を持ちます。

Webサイト改善のためのアンケートの質問項目

Webサイト改善のためのアンケート調査の位置づけは、ここまで述べた各種分析やテストの結果から判断することができない、ユーザーの主観的な満足度やWebサイトのパフォーマンスを阻害する理由を明らかにすることです。

アクセス解析を始めとする定量的なデータから仮説を立て、それをアンケート調査の質問項目に反映させていきます。

Webサイトの目的や機能により、質問項目は個別具体的に設定する必要がありますが、汎用性のあるWebサイト改善のためのアンケート調査の質問項目として、富士通株式会社と株式会社イードが開発した質問尺度をご紹介します。

【Web Usability Scale】

好感度このウェブサイトのビジュアルの表現は楽しいこのウェブサイトは印象に残るこのウェブサイトには親しみがわく
役立ち感このウェブサイトではすぐにわたしの欲しい情報が見つかるこのウェブサイトにはわからない言葉が多く出てくるこのウェブサイトを使用するのは時間の浪費である
信頼性このウェブサイトに掲載されている内容は信用できるこのウェブサイトは信頼できるこのウェブサイトの文章表現は適切である
操作のわかり易さこのウェブサイトの操作手順はシンプルでわかりやすいこのウェブサイトの使い方はすぐに理解できるこのウェブサイトでは、次に何をすればよいか迷わない
構成のわかり易さこのウェブサイトには統一感があるこのウェブサイトはメニューの構成がわかりやすい自分がこのウェブサイト内のどこにいるかわかりやすい
見やすさこのウェブサイトの文章は読みやすい(行間、文章のレイアウトなど)このウェブサイトの絵や図表は見にくいこのウェブサイトを利用していると目が疲れる感じがする
反応の良さこのウェブサイトでは、操作に対してすばやい反応が返ってくるこのウェブサイトを利用しているときに、画面が正しく表示されないことがあるこのウェブサイトを利用しているときに、表示が遅くなったり、途中で止まってしまうことがある
ウェブサイトユーザビリティアンケート評価手法の開発

これらの質問項目に対する回答は5段階のスケール評価を行い、仮説のなかで不明要素が多い箇所はその理由を自由回答で尋ねるなどの工夫が必要です。

また、ヒューリスティック分析で指摘された評価とアンケート調査で得られた結果を比較分析することも設計の際の問題点を明らかにする上で有効です。

これ以外の調査項目として、閲覧経路や訪問頻度、目的とするページなどを聴取し上記の項目と紐づけて分析することや、自由回答で要望や意見などを広く集めることでWebサイトに存在する個別具体的な問題箇所を特定することにつながります。

まとめ

Webサイトを開設する段階ではどの程度の成果を獲得できるかは未知数であり、実際にコンテンツを入れ込んで運用してみないと、問題点や課題を把握できないのが実際のところです。

Webサイトを運用していくなかでアクセス解析の結果に目を配り、常に改善を意識することがパフォーマンスの向上につながります。