ネーミングテストにアンケートを活用するには?重要な視点とやり方を解説
商品開発の当事者にとって商品のネーミングは思い入れの強いものである場合が多く、工夫を凝らしたであろうと感じられるものの、何を意図した商品・サービスかイメージしにくいものや語感が不自然なものをよく目にすることがあります。
それに対して、大手企業のヒット商品はイメージが湧きやすく、話題にする際も言葉にしやすいものである場合が多いのではないでしょうか。
この違いは、しっかりとしたネーミング決定プロセスを踏んで、消費者の感覚や意見をネーミングに取り込んでいるからに他なりません。
新商品開発に不可欠なネーミングテストについて、どのような考え方とやり方で行えばいいのかを解説します。
ネーミングの重要性
ネーミングが売上を大きく左右した事例は、さまざまな商品カテゴリーに見ることができます。
伊藤園の「お〜いお茶」は、30%以上のシェアを持ち、緑茶飲料市場でトップシェアを占めています。この商品が最初に発売されたのは1985年であり、当初の商品名は「缶入り煎茶」でした。1989年にブランド名を「お〜いお茶」に変更したところ、初年度に6倍の売上を記録し、以降、ペットボトル緑茶などのラインナップを拡張しながら、業界トップを維持しています。
王子ネピアのボックスティッシュ「鼻セレブ」もネーミングを変えたことが売上の拡大につながった例です。保湿ティッシュという商品カテゴリーが確立されていなかった1996年に「ネピアモイスチャーティッシュ」という商品名で発売されたのが「鼻セレブ」の前身であり、2004年にネーミングを変更したことによって売上が10倍に増えたといわれています。
また、ユニークなネーミングで次々とヒット商品を生み出している小林製薬は、わかりやすさを第一義に置くネーミングの手法が企業理念を体現することにもつながっています。
芳香剤のさわやか「サワデー」、おりもの専用シートの「サラサーティコットン100」、冷却ジェルシート「熱冷まシート」など、これまでになかった商品でありながら、わかりやすいネーミングが消費者の理解と支持を得て成功を積み重ねている事例といえます。
小林製薬では、ニッチな潜在ニーズを捉えて、トップシェアを獲得できる商品カテゴリーを多く持つことが高い利益率を確保することに結びついており、同社のブランドスローガンである「あったらいいな」をネーミングが象徴しています。
ネーミングの要素
マーケティングを行う上でネーミングが効果的な役割を果たしている成功例は、いずれも「わかりやすい」ことが共通しています。商品やサービスのネーミングにおける「わかりやすさ」には以下の要素が含まれ、それぞれの要素が関連し合っています。
シンプルであること
読みやすい文字のつづり方、言いやすい発音で構成されているネーミングはシンプルであり、シンプルであることが、以下に挙げる要素にもプラスに働きます。
理解しやすいこと
小林製薬のネーミングは名前を聞いただけで、商品カテゴリーや商品の目的をイメージすることができます。商品コンセプトがストレートに伝わるネーミングは消費者の商品理解を助ける役割を果たしています。
覚えやすさ
シンプルであり理解しやすいネーミングは消費者の記憶に残りやすく、ブランド選好に有利に働きます。特定のカテゴリーのなかの代表的な商品であると再認・再生できるネーミングが購買行動に影響を与えます。
ユニークであること
多数のブランドが存在するカテゴリーのなかから消費者に選んでもらうためには、他のブランドとの違いや特徴をアピールするネーミングである必要があります。オリジナリティがありユニークなネーミングは消費者の記憶に残りやすくなります。
選好度
ターゲットとする消費者層にとって親しみやすく、好ましいと感じられるネーミングであることは商品やサービスを受け入れてもらう上で重要です。ネーミングによって喚起すべきイメージは、商品カテゴリーやターゲットによって異なるため、ネーミングの受容性を定量的に確認することが求められます。
その他
上記以外に、ネーミングには以下のような制約が加わります。
- 商品カテゴリーにふさわしい
- 商品ラインに整合している
- 企業イメージにふさわしい
- ネガティブな要素を含まない
- 商標登録
ネーミングテストの実施方法
ネーミングテストは、候補となるネーミングを調査対象者に提示して、ネーミングの要素に挙げた内容を満たしているかどうかを確かめるものです。具体的には以下のようなものがあります。
記憶テスト
記憶テストは、ネーミングの候補を一定の回数や時間だけ調査対象に提示した後に、ネーミング候補を隠した状態で覚えているものを回答、または、自由回答で記入してもらいます。
会場テスト(CLT)で行われることが一般的ですが、セルフ型アンケートツールQiQUMOを使い、ネーミング案を提示するページと回答ベージを分けることで、オンラインアンケートでも実施することが可能です。
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(ネーミング案のリストを提示して)これらの名前はある商品の名前の候補です。ご覧いただいた後に次のページで質問にお答えください。(ネーミング案のリストを見ることができない回答ページに遷移させて)前のページでご覧頂いた商品の名前のなかで、思い出せるものをご記入ください。
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1番目( ) 2番目( ) 3番目( ) ・・・
連想テスト
連想テストは、ネーミングからイメージされるものが、商品コンセプトやブランドイメージに結びつくかどうかを検証することを目的とします。
ネーミング案の候補一つひとつに対し、自由回答で連想されるものを自由回答で記入してもらいます。
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(ネーミング案の候補を一つひとつ提示して)商品の名前から連想されるものやイメージを具体的にご記入ください。
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ネーミング案A ( )ネーミング案B ( )ネーミング案C ( )・・・
順位付け
商品コンセプトとネーミング案を提示して、商品コンセプトにふさわしいと思うネーミングに順位付けをしてもらう方法です。
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(商品コンセプトとネーミング案を提示して)この商品コンセプトにふさわしいと思われる商品名について、次の商品名の候補に順番をつけてください。
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1番目( ) 2番目( ) 3番目( ) ・・・
マッチングテスト
順位付けと同様に商品コンセプトとネーミング案を提示する方法です。順位付けと異なるのは、商品コンセプトを複数用意し、それぞれにマッチするネーミング案を組み合わせて回答してもらいます。
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(複数の商品コンセプトとネーミング案を提示して)以下の各商品コンセプトにふさわしいと思う商品名を次のなかからひとつづつ選んでください。
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商品コンセプトA ( )商品コンセプトB ( )商品コンセプトC ( )・・・
イメージテスト
各ネーミング案のイメージについて、想定する形容詞が当てはまるかどうかをSD法(対になる形容詞のどちらに近いかを選んでもらう)で質問する方法です。ネーミングがブランドイメージや企業イメージと整合性があるかどうか、商品の機能や特性に合致するものかどうかを確認します。
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商品名〇〇から受ける印象やイメージが以下のどちらに近いかをお答えください。
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非常に やや どちらともいえない やや 非常に 明るい ○ ○ ○ ○ ○ 暗い 親しみやすい ○ ○ ○ ○ ○ とっつきにくい 大人っぽい ○ ○ ○ ○ ○ かわいらしい 高級な ○ ○ ○ ○ ○ 手頃な 先進的な ○ ○ ○ ○ ○ 伝統的な ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
属性テスト
商品コンセプトが持つ属性をネーミングが体現しているかどうかを確認することを目的とします。独自性や新奇性、信頼性、安心感など、商品コンセプトが意図しているイメージとネーミングが整合するかどうかを確かめます。
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(商品コンセプトを提示して)このような商品(商品コンセプト)に対して商品名〇〇はどの程度当てはまりますか。
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非常にそう思う そう思う どちらともいえない そう思わない 全くそう思わない その商品にふさわしい ○ ○ ○ ○ ○ その商品に新しさを感じる ○ ○ ○ ○ ○ その商品が信頼できる ○ ○ ○ ○ ○ その商品を買いたいと思う ○ ○ ○ ○ ○ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
選好テスト
調査対象にとってネーミングが好ましいものかどうかを確認するための質問項目です。ネーミング案のリストを提示し、順位付けを行ってもらいます。
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これらの商品の名前について、あなたの好きな順番をお答えください。
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1番目( ) 2番目( ) 3番目( ) ・・・
まとめ
ネーミングの巧拙はセンスという言葉で片付けられてしまいがちですが、大手企業の成功している商品の名前は、数百のネーミング案の中から絞り込まれた後にネーミングテストを経て決定されるケースも少なくありません。
ネーミングの検討はコンセプトテストに含められるケースも多く、この記事で紹介した質問方法以外にもさまざまなテスト方法があります。
セルフ型アンケートツールQiQUMOはコンセプトテストやネーミングテストもコストをかけずに実施できる、マーケティングリサーチには欠かせないツールです。
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