アンケートを使ったブランドエンゲージメントの測定方法

アンケートを使ったブランドエンゲージメントの測定方法

マーケティング分野では顧客との関係性、人材マネジメントの分野では従業員との関係性を指すエンゲージメントという概念に注目する企業が増えています。エンゲージメントを高めることが企業のパフォーマンス向上に結びつくことがその要因です。

エンゲージメントは関与、契約、約束などと訳されますが、企業と顧客、企業と従業員の間のエンゲージメントが何を指しているのかが、わかりにくいと感じられる方も少なくないのではないでしょうか。

この記事ではマーケティング分野における企業と顧客の関係性に関わるエンゲージメントについて解説します。

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エンゲージメントとは

マーケティング分野におけるエンゲージメントとは企業・ブランドと消費者、顧客の間の結びつきやつながりの「強さ」や「程度」のことです。

結びつきやつながりが指しているものの端的な具体例が、GoogleアナリティクスのWebサイトの評価指標であるエンゲージメント率です。

Googleアナリティクスでは、ユーザーがページがスクロールしたり、次のページに遷移したりする操作が発生している状態をエンゲージメントとし、訪問者数のうちエンゲージメントのあった訪問者の割合をエンゲージメント率として、Webサイトのパフォーマンスを指標化しています。Webサイトの訪問者がページをスクロールしたり、次のページに遷移したりしているということは、コンテンツの内容に興味や関心をもっていると判断できるからです。

Googleアナリティクス以外にも、SNSの「いいね」やコメントの書き込み、ゲームへの課金なども、SNSのコンテンツやゲームアプリへの関心・興味・好み・愛着といったポジティブな心理にもとづく行動と考えられます。

それ以外にも、投稿のシェア、ユーザーコミュニティへの参加、他者への推奨行動などがオンライン上でのエンゲージメントの具体的な行動といえるでしょう。

デジタルコンテンツにとってこれらのエンゲージメントが高いことは、ユーザーとのつながりや結びつきが強いと判断でき、結果として収益につながる可能性が高くなるということです。

エンゲージメントが着目されるようになった背景として、インターネット環境の日常化とSNSの普及といった市場環境の変化が要因として挙げられます。ネット上でのつながり以外にも、ブランドと顧客とのエンゲージメントという観点では、電話による問い合わせや来店行動など、業種やビジネスの種類によって多様なエンゲージメントの形が考えられます。

マーケティングの研究分野では、消費者の「認知」「感情」「行動」の要素からなるブランドとの関わり方であり、ブランドとの相互作用で形成されるものがブランドエンゲージメントとされています。

エンゲージメントの顧客満足度とロイヤルティとの関連

顧客の企業やブランドとの関係性という点では、顧客満足度やブランドロイヤリティもブランドエンゲージメントと近いところにあり、エンゲージメントと弁別するのが難しい概念であるといえます。

顧客満足度

JCSI(日本版顧客満足度指数)をまとめている公益社団法人日本生産性本部サービス産業生産性協議会では、顧客満足度を顧客期待、知覚品質、知覚価値の3つの要素から構成されるものとしています。

知覚品質は顧客の主観にもとづく商品やサービスの品質評価です。知覚価値は心理的コストや信頼性といった無形の要素を含む感覚にもとづく顧客にとっての価値を指します。また、知覚品質と知覚価値は、製品やサービスを使用する前の事前の期待(顧客期待)と実際に消費した時の差が満足度として知覚されることになります。

顧客満足度が消費時点の製品やサービスの評価であるのに対し、エンゲージメントは継続的なブランドとの関わり方に関する概念であるという点で異なっています。

参考:顧客満足度調査とは|簡単解説

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ブランドロイヤルティ

ブランドロイヤルティは顧客のブランドに対する愛着や支持のことを指します。エンゲージメントがブランドと顧客の双方向のやり取りを指すのに対し、ロイヤルティは再購買、関連購買、継続購買などの結果につながる顧客の側の要因に着目した概念です。

満足度、エンゲージメント、ロイヤルティの関連については、研究分野において多角的な考察が試みられており、以下のような関係性についての指摘があります。

  • 満足度がエンゲージメントを高める
  • 満足度が高くてもエンゲージメントにつながらないケースがある
  • エンゲージメントが高まる過程で満足度も高まるケースがある
  • エンゲージメントが満足度を高め、満足度がロイヤルティを高める
  • ロイヤルティは満足度を強化する

参考:顧客ロイヤルティとは|簡単解説

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ブランドエンゲージメントを向上させることのメリット

ブランドエンゲージメントが企業のパフォーマンスに結びつくのは次のような理由によるものです。

ブランド競争力の強化

高いエンゲージメントをもつ顧客は、ブランドに対して積極的な態度でブランドと関わる行動を取ります。SNSなどを通じてポジティブな心理にもとづいて発信される情報はブランドイメージ向上につながり、他社との差別化、競争力の強化につながります。

LTVの向上

エンゲージメントが高い顧客は再購買や関連購買、継続購買につながる可能性が高いと考えられることから、売上をはじめとする事業のパフォーマンスに大きな影響を与えます。

新規顧客の獲得

ブランド競争力の強化が新規顧客の獲得に大きな役割を果たすと同時に、顧客がSNSを通じてブランドに好意的な発信を行うことは新規顧客獲得にプラスに働きます。特に、大きな発信力と影響力を持つインフルエンサーのエンゲージメントは重要です。

フィードバックの収集

顧客の側から発信されるブランドに関わる情報は、ブランドにとって必ずしも好意的なものばかりとは限りません。しかし、エンゲージメントが活性化されるなかで、さまざまな立場からブランドへの意見が集まることは製品やサービスの改善に役立ちます。また、オープンなコミュニケーションへの窓口が開かれることで、さらにエンゲージメントが高まります。

ブランドエンゲージメントの測定方法

ブランドエンゲージメントを定量化する方法としては、ネット上のユーザーの行動履歴や取引の履歴のデータを分析する方法のほか、アンケート調査のための質問尺度が研究分野から提案されています。

認知的エンゲージメント

  • [ブランド]を使うと、このブランドについて考えさせられる。
  • [ブランド]を使っているとき、このブランドのことを色々と考える(または、頭に浮かぶ)。
  • [ブランド]を使うと、このブランドをもっと知りたいという興味が刺激される。
  • [ブランド]は私の興味を刺激してくれる。
  • [ブランド]を使っていると、全てのことを忘れさせてくれる。
  • [ブランド]と関わると時間を忘れてしまう。
  • [ブランド]は、自分と切り離せない。

感情的エンゲージメント

  • [ブランド]を使うと、ポジティブな気分になれる。
  • [ブランド]は私を幸せにしてくれる。
  • [ブランド]を使うと、気分が良くなる。
  • [ブランド]を使うことに誇りを持っている。
  • [ブランド]は私を励まし(奮い立たせ)てくれる。
  • 私の気持ちは[ブランド]と共にある。
  • [ブランド]を使うことで私を幸せにしてくれる。
  • 私は[ブランド]に熱中している(または、入れ込んでいる)と感じる。

行動的エンゲージメント

  • 他のブランドと比べて、私は[ブランド]商品を使って過ごすことが多い。
  • 私は[ブランド]を使って多くの時間を過ごす。
  • [カテゴリー]を使う時は、いつも[ブランド]を使っている。
  • [カテゴリー]を使う時に、[ブランド]はよく使用するブランドの1つである。
  • 私は[ブランド]を使うことが好きだと感じる。
  • 何か問題があったとしても、私は[ブランド]から離れない。

参考:カスタマー・ブランド・エンゲージメントの構成概念の測定と位置づけに関する考察

ブランドエンゲージメントを高める方法

ブランドエンゲージメントを向上させるためには、消費者とのタッチポイントを増やし双方向のコミュニケーションの機会を積極的に活用することが求められます。

SNS上でのプレゼンスを確立する

SNSは情報メディアとしても欠かせないものとなっています。SNS上でのプレゼンスを高めることが消費者との接点を増やすことにつながり、さらに、コミュニケーションのチャネルとして活用できます。

CX(カスタマーエクスペリエンス)の向上

各タッチポイントにおける消費者にとっての価値がCX(カスタマーエクスペリエンス)です。それぞれのタッチポイントにおいて、消費者がブランドに対する価値を見出すことがエンゲージメントを高める要因となります。発信する情報やコンテンツの有用性やユーザー側からのコミュニケーションに対する的確な対応がCX向上につながります。

顧客管理ツールの活用

ブランドエンゲージメントを高めるために欠かせないのが、顧客との関係性を可視化・定量化して把握できるようにすることであり、そのための基盤となるのがCRMツールをはじめとする顧客情報の管理システムです。

WebサイトやSNS上でのユーザーの行動を把握するためのツールと連携させることで、きめの細かいユーザー対応を実現できます。

顧客インサイトの収集と分析

顧客管理システムによって顧客との取引や行動に関するデータを収集することができますが、エンゲージメントの概念が対象とする認知や感情の要素を把握することはできません。そこで必要とされるのが、マーケティングリサーチの手法を使って顧客インサイトを収集することです。

この記事で紹介したブランドエンゲージメントの測定尺度を活用してアンケート調査を行うことで、定量データを掘り下げるための顧客インサイトを発見することにつながります。

まとめ

ブランドエンゲージメントを向上させるためには、CRMツールによって収集した顧客データとマーケティングリサーチの分析結果を総合して、CX向上のための糸口を探っていく取り組みが不可欠です。

ブランドエンゲージメントを測定するためのアンケート調査にはセルフ型アンケートツールQiQUMOが適しています。低コスト、かつ、スピーディーに調査結果を取得できることは、機動的なマーケティング施策の実施に役立ちます。ブランドエンゲージメントの測定をお考えの際にはクロス・マーケティングに是非ご相談ください。