ローテーションとは|簡単解説
ローテーションのカンタン語句解説
ローテーションはアンケート調査において、2つの意味を持ちます。1つは長期間にわたり同じ調査を実行する際に、バイアスを避ける目的で標本を組み替えることです。もう1つは、対象者の回答に影響を与える順序バイアスを排除するために、質問順序や回答リスト、あるいは、質問対象の順番(テスト品使用順やコンセプト呈示順)を対象者によって変える手法です。なお、ローテーションを行う場合は乱数表ではなく、一定のルールに従って提示順をコントロールします。
ローテーションの概要解説
ここでは、標本のローテーションと質問または回答リストのローテーションについて詳しく解説します。
標本のローテーション
統計調査では通常、各調査時点で層別の無作為抽出が行われますが、一部の調査では特定の個体が繰り返し調査の対象になる場合があります。(例:労働力調査や家計調査)このような標本の抽出方法は「ローテーション・サンプリング(部分入替え方式)」と呼ばれています。
なお、パネル調査では、同一の対象者に対して長期間にわたり調査すると、調査疲れや調査への意識の変化などが生じやすくなり、調査結果に影響を及ぼすのが懸念点です。また、標本が母集団の変化に対応できなくなる可能性もあります。そのため、対象者の一部が順次入れ替えられます。これにより、調査の信頼性を高めつつ、パネル調査の結果をより有効活用することが可能です。
質問または回答リストのローテーション
質問または回答リストのローテーションは、主に回答の順序効果を排除するために使用される手法です。
回答のカテゴリーや質問順序をローテーションする、あるいはランダムに変えることで変えることで、このようなバイアスを回避します。なお、紙の調査票では順番の変更が難しいため、複数のパターンを事前に用意しておくのが一般的です。
ローテーションの特徴
ここでは、標本のローテーションと質問または回答リストのローテーションそれぞれの特徴を詳しく解説します。
標本のローテーションの特徴
標本のローテーションの主な特徴は以下2つです。
調査コストを抑えられる
標本ローテーションをうまく活用すると、調査コストを削減できます。最初の調査が高コストであるため、継続的な調査によって費用の大幅な節約が可能です。
特に海外を対象とした調査では、国によって標本の取得が難しい場合もあり、一度取得した標本を可能な限り継続的に利用したい場合に有効です。
時間の変化を小さな誤差で推定できる
標本ローテーションは、時間の変化を正確に推定するための有効な手法です。
同じ時間の経過による変化でも、それぞれの個体は異なる特性や背景を持っているため、時間の経過による変化も個体ごとに異なる場合があります。母集団の性質は絶えず変化していくため、それを反映するには新たな標本が必要です。
質問または回答リストのローテーションの特徴
質問または回答リストのローテーションの主な特徴は以下2つです。
順序バイアスを防げる
アンケートでは、質問項目や選択肢の順番が、回答結果に影響を与えます(冒頭の選択肢が選ばれやすい、後の項目は回答がいい加減になりがち など)。評価対象の順番についても、前のテスト品が、後のテスト品の評価に影響を及ぼします。
順序バイアスが発生すると、適切なアンケートの回答が得られない可能性があるため、必要に応じてローテーションを行うことが大切です。
初頭効果を抑えられる
初頭効果とは、最初に表示されるものに対して、好意的な印象を持ちやすい心理的傾向です。アンケート調査においては、最初や左側に配置された選択肢や項目を選択する傾向が見られます。このようなアンケートの順序や選択肢の位置によるバイアスを防ぐために、ローテーションまたはランダムな順序の入れ替えが行われます。
ローテーションの注意点
ローテーションは、有効な調査結果の取得に役立ちます。しかし、ローテーションをうまく活用するには、リスクや注意点についても理解する必要があります。
質問または回答リストのローテーションの注意点
質問または回答リストのローテーションの注意点は以下の通りです。
認知バイアス(アンカリング)が発生する可能性がある
認知バイアスの1つであるアンカリング効果は、最初に提示された情報が後続の回答に影響を与える現象です。
特に、通販の割引価格(割引前の定価を提示し、後に割引価格を提示することで、割安感を演出する)やアンケートでの食品の好み回答など、複数の選択肢が一覧として提示される場合に起こりやすい傾向があります。
語句解説のまとめ
標本ローテーションは調査コストを抑え、時間の変化を小さな誤差で推定できます。質問や回答リストのローテーションでは順序バイアスを防ぎ、初頭効果を抑えることが可能です。
なお、ローテーションを行う際は、変更がしやすいアンケート作成ツールを使用するのがおすすめです。セルフ型アンケートツール「QiQUMO」であれば、ローテーションやランダマイズも設定が可能です。