出現率とは|簡単解説
出現率のカンタン語句解説
出現率とは、サンプリングを行ったときに対象とすべき条件に該当する人がサンプルに含まれる割合のことを指します。出現率の高低がアンケート調査の費用面や難易度に大きく関わります。
出現率の概要
出現率は特定の事象が起こる・現れる確率のことです。アンケート調査ではサンプルのなかに条件を満たすサンプルが含まれる割合のことを指します。
出現率は必要サンプル数を決める際の重要な要件のひとつであり、出現率の大小が調査実施の可否やコストにも影響するため、条件を指定してサンプルを集める場合には把握しておく必要のある指標です。
アンケート調査における出現率
アンケート調査は、調査テーマに関連する特定の条件に当てはまる人を調査対象とすることがほとんどです。例えば、「20〜40代の子育てをしている女性」といった形で調査対象を絞り込みます。
「20〜40代の子育てをしている女性」の全数調査を行うことは現実的ではありませんが、「20〜40代の女性」から一定数の標本(サンプル)を抜き出し、そのなかから「子育てをしている」人にアンケート調査を行えば、調査の目的を達成することができるでしょう。
このときの、抜き出した標本のなかに「子育てをしている人」が含まれている割合が出現率です。
上図において、40人の母集団のなかに特定の条件を満たす人が何人か含まれています。そこから20人を無作為に選んだ場合に、条件を満たす人が5人含まれていたとすると出現率は25%です。
この結果から40人の母集団に条件を満たす人が40人✕25%=10人いるであろうと推定します。
母集団から一定数の標本を抜き出したときの出現率は、母集団にもともと含まれる条件を満たす人がどれぐらいいるかに左右されます。
実際に条件を満たす人がどれぐらい存在するかは標本を抽出してみないと割合として計算することはできません。母集団から抜き出す標本の数が多いほど出現率は実態に近づき、標本の数が少なければ母集団を反映していない可能性が高くなります。
必要サンプル(標本)数に影響する要素
アンケート調査の実務では、調査テーマに対してサンプル数をどれだけ集める必要があるかが問題となります。
サンプルの数が多ければ高い精度の調査を行うことができますが、集めるサンプルの数によって調査コストが決まるため、調査に必要とされる精度と調査コストを勘案して集めるサンプル数を決めることになります。
必要なサンプル数を決めるためには出現率のほか、標本誤差とクロス集計、回収率について検討する必要があります。
標本誤差とは
必要なサンプル数を見積もる場合に最初に考えなければならないのは、調査結果から導き出される数値に許容される誤差がどの程度かということです。統計調査では、調査結果が母集団の実態と乖離している度合いを誤差として表します。
誤差を生じさせる要因はいくつかありますが、ここで問題となるのは母集団から無作為抽出を行うことで生じる標本誤差です。
全数調査を行う場合に標本誤差は生まれないのに対し、無作為抽出でサンプリングを行う場合には、抽出するサンプルの数によって個々のサンプルが抽出される確率が変わるため、標本誤差の大きさも変動します。
標本誤差は統計的に計算することが可能で、一般的には信頼度95%とした場合の母集団比率(同じ回答を選んだ割合)とサンプル数によって誤差の値をまとめた一覧表を使って許容誤差から必要なサンプル数を割り出します。
全体の大まかな順位や傾向を把握することが調査の目的であれば、± 5.0%程度の標本誤差を許容し、400サンプル程度を集めることで調査の目的は達成できます。それに対し、± 1.0%程度の違いでも調査結果の評価に違いが生じるようなケースでは10,000サンプルを集める必要があります。
クロス集計の位置づけ
地域別や年代別など分類されたセグメント間の比較が調査の目的に含まれる場合、クロス集計を行うことも必要サンプル数を決める際に考慮する必要があります。
分割するセグメントが多い場合、1つのセグメントあたりの回答数が小さくなることで意味のある比較ができなくなるためです。このようなケースでは、セグメント別にサンプル数を割り付ける方法で必要サンプル数を決める方法を取ります。
回収率のもつ意味
調査対象に向けてアンケート調査への協力を依頼したうち、有効回答の得られた割合が回収率です。回収率はアンケート調査の実務のなかで大きな意味を持ちます。
回収率が低ければ集められるサンプル数も少なくなり標本誤差が大きくなります。回収率が低い状態で必要なサンプル数を集めるためには、調査対象数を増やさなければならず、調査コストと調査期間に影響します。
調査パネルを対象とする場合
ネット調査が主流となった現在、標本調査を行う場合の多くがリサーチ会社の調査パネルを対象にサンプリングを行います。
郵送調査や訪問調査と異なり、調査パネルに回答を依頼し必要サンプル数に達したところで調査を打ち切ることや、調査パネルの属性も細かく把握されているため、特定の属性を持つ調査パネルに限定して調査を依頼するといった柔軟な調査設計が可能です。
スクリーニング
最初に述べたとおり、マーケティングを目的とするアンケート調査では、特定の条件に該当する人を調査対象とする場合がほとんどです。性別や年代などの属性に加えてライフスタイルや嗜好性といった明確に区分することができない条件を指定したい場合もあります。
条件に合わない人にアンケート調査を行っても期待する回答は得られないため、適切な調査対象を選別したうえでサンプルを集めることが、調査の効率と精度を高めることにつながります。
調査対象を選り分けるために行うのがプレ調査や事前調査と呼ばれるスクリーニングです。スクリーニングを目的とした調査対象を選別するための1回目の調査と、条件に該当した回答者のみを対象とする本調査の2回にわけてアンケート調査を実施します。
最初のスクリーニング調査で条件に該当するかどうかを判別するための質問を行い、該当した回答者に対して改めて本調査への協力を依頼します。
調査パネルを対象としてスクリーニングを行う際には、報酬だけを目的とする調査パネルがスクリーニングを通過しないような質問を設計する必要があります。
調査パネルは報酬を条件としてアンケート調査への参加を判断する場合がほとんどです。スクリーニング調査であることがわかりやすい質問を行った場合、条件に該当しない調査パネルが本調査に参加するために虚偽の回答をする可能性があるからです。
条件に該当するかどうかは2項択一型のSAを設定すればひとつの質問で選別できますが、質問の内容で本調査の目的が推測できるような場合には、MAを組合せた質問とするなどの工夫が必要になります。
なぜ出現率が重要なのか
サンプル数を決定するための要素として、許容される標本誤差やクロス集計、回収率を挙げましたが、さらにその前提条件として出現率が大きな意味を持ちます。
性別や年代別、一般的によく知られたブランドの認知度など、出現率が高いと考えられる条件であれば、母集団からのサンプリング、スクリーニング、セグメントへの分割といった調査の実施過程で絞り込まれていくサンプルに、十分な数の条件に該当する調査対象が含まれる可能性が高いと判断できます。
それに対し、特殊な職業などの属性要件やマニア的な趣味の分野、一般的ではない経験といった条件が設定される場合は、調査を行っても有効な分析が行えないケースや該当サンプルを集めるために多くのスクリーニングサンプル数が必要になるといったことが起こります。
出現率は何を条件とするかによって左右され、調査設計の前提となる要素です。調査の難易度にも関わることから、事前に見通しを立てておく事が必要です。
出現率が低いと想定される場合はスクリーニングが重要
商品やサービスの種類によっては、限られた消費者層がマーケティングの対象となります。出現率が低いと予想される場合は、適切な調査対象からアンケートを取るための工夫が必要です。
そのためにはスクリーニングを行い、段階を踏んで調査対象にアプローチしていく方法が求められます。QiQUMOでは事前抽出アンケート機能で条件に合ったサンプルを抽出することができます。是非ご活用ください。