海外市場を対象とするアンケート調査|国内調査との違いと注意点を解説

インターネットの普及により国境を超えた情報のやり取りが爆発的に増加し、ビジネスにおいてもボーダレスを意識せざるをえない状況が当たり前になりつつあります。

大手企業に限らず、中小企業のなかにも既に有望な海外市場への進出を果たし、巨大なマーケットを相手に成功を収めている企業は少なくありません。

海外進出を検討するにあたってマーケティングリサーチを行うことは必須ですが、言語や文化が異なる海外市場を対象とするマーケティングリサーチは、国内で行う場合とはさまざまな条件が異なります。

海外市場を対象としてアンケート調査を実施する場合の国内調査との違いと注意点を解説します。

アンケート調査を実施する前に必要な相手国の理解

海外進出のためのアンケート調査を実施するケースを考える際、海外進出の形態とそれぞれのケースで必要となるリサーチの種類を知っておく必要があります。

海外市場での需要開拓や現地生産によるコスト削減といった直接投資を行う場合、輸出入での事業展開を行う場合など、対象とする市場の範囲や取引形態によって必要とする情報は異なります。

国内で新規事業を開始する場合にも共通しますが、対象とする市場で事業を行う場合の実現可能性を評価するための調査をフィジビリティスタディといいます。

市場環境を分析する際にはPEST分析や5フォース分析といったフレームワークにもとづき、マクロとミクロ、また、外部環境と内部環境それぞれについての情報を収集します。

海外進出を図る際に、対象とする国の市場環境を分析する際には以下のような視点に着目します。

  • 政治・経済・社会情勢
  • 法制度・税制
  • インフラ・物流環境
  • 商習慣・流通事情
  • 生活習慣・文化的要素、民族の違い
  • 競合企業・先行企業の状況
  • ローカライズの程度

など

アンケート調査を実施する以前に、上記のような相手国固有の事情や国内で事業を行う場合との違いを把握しておくことが必要です。相手国についての理解が薄い状態でアンケート調査を行っても、質問項目が的を得ていないケースや意味のない質問を設定してしまう可能性を排除できません。

海外で行うアンケート調査は国内で行う場合と比較してコストがかさみます。実効性のあるアンケート調査を実施するために事前の調査と段階的なアプローチが求められます。

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海外でアンケート調査を実施する上での国内との違い

海外調査と国内調査を比較すると、対象国によって調査環境が大きく異なります。マーケティングリサーチを前提とする場合の海外と国内の違いは以下のような点が挙げられます。

SEC(Sosio-economic Class:社会経済階層)について

グローバルな視点での海外市場に目を向けると、OECD(経済協力開発機構)のリストにもとづく先進国と呼ばれる国々は、日本を含め欧米諸国とオーストラリアやサウジアラビア、チリなどに限定されます。

中国やインドを含む中央アジアと東南アジア、中南米とアフリカのほとんどの国々は中所得国以下に分類され、一人当たり国民所得は12,235米ドル(134万5,000円、2018-2020年)以下の国に該当します。

先進国以外のマーケットを対象とする場合、商品やサービスの購買者となるミドルクラス(中間層)のボリュームをつかんでおくことが重要であり、その際の指標となるのがSEC(社会経済階層)です。

SECは世帯の可処分所得をベースに職業や教育水準などを加味して分類されるもので、一般的にはA~Eの順位付けされた各階層について構成比を見る際に使われます。統一された基準があるものではなく、各国の政府統計にもとづきシンクタンクや調査機関などがまとめたものが公表されています。

SECの段階は、A、Bがアッパークラス、Cがミドルクラス、D、Eがローワークラスとするのが典型的なクラス分けですが、対象国によってA1、A2、C1、C2といった形に細分化されることもあります。

調査会社のパネルを使って海外のマーケットを対象にアンケート調査を行う場合には、SECの階層をどのようにカバーしているかを確認するとともに、場合によってはスクリーニング調査などを合わせて行い、適切な調査対象からアンケートが取れるようにすることが必要です。

回答デバイスや調査手法の違い

社会階層の分布が異なることはアンケート調査を行う際の調査手法の違いに影響します。オンライン調査を前提とすると、ほとんどの国のスマートフォン普及率は6〜8割台であり、先進国と新興国の間に違いはありません。

しかし、新興国ではオンライン調査が可能な回答デバイスの保有者が都市部に集中しているなどの偏りが著しく、対象とするSECをカバーするためにはオンライン以外の調査手法を取らざるをえない場合もあります。

国際的なマーケティングリサーチ機関ESOMAR(エソマ:European Society for Opinion and Marketing Research)によると、インドネシアやベトナムといった国では調査手法のなかで面接調査が採用される割合が高いとされており、オンライン調査で完結できる国ばかりではないことも認識する必要があるでしょう。

翻訳プロセスの発生

海外調査で問題となるのが翻訳プロセスの発生です。英語への翻訳だけで済むのか、さらに現地語に翻訳する必要があるのかは対象国とSECによって変わってきます。

日本語での質問を翻訳した場合に、回答するのに過不足のない意味内容になっているか、質問の意図が、文化的背景や価値観や生活習慣の違いに影響されないものかどうかといった点にも配慮する必要があります。

この点では、翻訳の正確性を求めるよりも、現地の言葉と事情に精通しているマーケティング担当者に翻訳を依頼するほうがアンケート調査に即した翻訳品質が得られます。

調査会社を選ぶ際には、海外調査の実績とともに現地拠点や現地スタッフのネットワークが充実しているかどうかが重要な判断材料となります。

国内調査と比較して長い調査期間が必要

調査会社に依頼して国内を対象とするインターネット調査を行う場合には、数日というスパンで集計結果が得られます。一方、海外調査では翻訳プロセスが必要になることに加え、現地とのやり取りの時間も積み重なることから調査期間は長期化します。

国内調査にはない作業プロセスが増えるとともに、その作業の調整は海外との時差のあるなかで行われることになります。さらに、祝日や休日の違いや国民性の違いによって調査への協力依頼から調査票への回答・回収までの期間も異なります。

場合によっては電話調査や訪問調査などオンライン調査以外の調査手法が必要となるケースも考えられることから、海外調査のプロジェクトに対しては腰を据えて取り組むことが求められます。

海外調査を実施する際のコスト要因

調査期間が長くかかることは調査費用にも影響し、調査費用は以下の内容によって変動します。

  • 調査対象国:具体的な地域や対象国の数
  • 調査対象者:調査対象の属性や条件
  • 調査人数:収集サンプル数
  • 調査手法:インターネット調査、電話調査、面接調査、訪問調査、など
  • 調査内容:設問数
  • 業務範囲:調査企画から集計分析までのプロセスの依頼範囲

これらに加えて、対象国によっては現地調査会社との連携が必要なケースもあり、国内調査と比較すると費用がかかります。調査内容によっては希望通りの結果を得ることが難しいこともあることから、複数の調査会社を比較検討することをおすすめします。

海外でアンケート調査を実施する場合の注意点

調査環境が国内調査とは全く異なるのが海外調査です。海外調査は調査会社を活用することが一般的であり、アンケート調査を実効性のあるものとして活用できるかどうかは調査会社の選択に左右されることは否めません。

国内調査と同様な調査精度を実現することは難しい

翻訳プロセスが必要であることや回答を得るまでの工数が増えることなどにより、海外で行う定量調査で国内調査と同様な調査精度を実現することは難しくなります。この点を考慮すると、海外調査は現地のマーケティング事情に詳しい識者などへの定性調査と合わせて定量調査の結果を吟味する必要があります。

定量調査の集計結果を分析・解釈する際には、同様な調査によるノーム値※が存在する場合には比較してみるなど客観性の検証が必要です。また、調査設計の段階で相対比較できる質問項目を設定するなど解釈を単純化する工夫を加えることも有効です。

ノーム値:同一方法で継続的に調査を行った結果をもとに算出した基準値

調査会社に依存する部分が大きい

海外とのつながりが何もない状態から海外調査を行う場合には調査会社に依頼するのが現実的です。海外調査ができる調査会社にはインターネット調査などを総合的に提供する大手調査会社から海外調査専門の会社などが存在します。

まずは、海外調査の実績が豊富であることが調査会社を選ぶうえでの最も大きな選択基準となるでしょう。多くの海外調査の実績があることは、翻訳を含めた品質管理の点にも期待できます。

また、新興国や特定の国に強みを持つ調査会社など、対象とする国と地域での実績という点も着目したいところです。

インターネット調査のパネルや現地の企業、スタッフとのネットワークという点も調査品質に大きく影響します。海外リソースの充実度といった点も調査会社を選定する際の着目点です。

海外アンケート調査のまとめ

海外でのアンケート調査は国内で行う場合とは大きく異なることを認識したうえで、信頼できる調査会社を選択することが成功のカギとなります。

クロス・マーケティングでは国内に数十名体制の海外調査を専門とする部門を持ち、9ヶ国に設けた自社拠点をベースに年間300本を超える海外調査を行っています。徹底した品質管理と実績にもとづくグローバルリサーチに関する高い知見は他社にない強みといえます。
海外展開をご検討する際にはクロス・マーケティングへのお問い合わせ、ご相談をお待ちしております。

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