名義尺度とは|簡単解説

名義尺度の意味とは

名義尺度のカンタン語句解説

名義尺度とは、データ間の比較が等しいか異なるかのみで可能な変数の種類を指します。変数の持つ性質の違いによって4つに分類した変数の扱い方の基準を尺度といい、名義尺度はそのなかの1つです。

名義尺度とは

名義尺度は、マーケティングリサーチをはじめとする統計調査で扱う変数のなかで、他のデータと同じか異なるかという点にしか意味を持たない変数の種類のことを指します。

アンケート調査では回答者の属性を答えてもらいますが、性別や職業、居住地、未既婚、子供の有無、最終学歴などが名義尺度として扱われる代表的なデータです。

例えば、現在の会社での勤続年数を答えてもらう質問項目があったとします。3年という回答と5年という回答があった場合、3年よりも5年のほうが勤続年数が長いという評価を行うことができます。また、3年の人が1人、5年の人が2人、10年の人が2人だった場合の平均勤続年数は6.6年と算出されます。このような平均を求めたり加減乗除ができる変数の種類を比例尺度といいます。

それに対し、名義尺度に該当する居住地の回答として、渋谷区が1人、練馬区が3人、八王子市が1人というデータが得られたとすると、居住地に順序関係や大小関係はありませんし、平均や中央値などの代表値を求めることはでず、その意味もありません。

名義尺度の他のデータとの区別しか表さないという意味は上記のようなことを指しています。

尺度とは

統計データは量的な情報として集計・分析することを目的としますが、その際に、例として挙げた名義尺度である性別や勤務地と、比例尺度として扱う勤続年数は変数としての特徴が異なるために区別する必要があります。

この変数の種類の区別のことを尺度水準と呼びます。尺度を4つに分類したスティーブンスの尺度水準が知られており、以下のように分類されています。

【スティーブンスの尺度水準】

統計データ定性 / 質的 / カテゴリカルデータ名義尺度(Nominal Scale)
順序尺度(Ordinal Scale)
定量 /量的データ間隔尺度(Interval Scale)
比例 / 比率尺度(Ratio Scale)

統計データは定性データと定量データに分けることができます。

統計データの種類としては名義尺度と順序尺度で表されるデータを定性データ、間隔尺度と比例尺度で表されるデータを定量データと区別します。

マーケティングリサーチのなかでは、インタビューや自由回答で得られたデータのことを定性データ、アンケートなどの集計することを目的に収集されたものを定量データと呼びます。

4つの尺度は以下のような性質を持っています。

名義尺度

例で述べたように、名義尺度の変数はデータの分類や区別することしかできず量や序列の概念はないため、名義尺度で与えられる変数のデータ同士を比較する場合、同じか異なるか以外の意味を持ちません。

求めることができる代表値は最頻値のみで、データを四則演算することはできません。

名義尺度の具体例としては、ID番号、性別、住所、職業、血液型、所属部署などが挙げられます。

順序尺度

順序尺度を取る変数もカテゴリカルデータに分類されます。変数間の比較には等しいかどうかに加えて、順序・序列・大小関係があり、順位付けや序列の比較を行うことができます。

しかし、順位や序列の間隔が等しいことは保証されていないため、四則演算をすることはできません。求めることができる代表値は最頻値と中央値です。

アンケート調査では選好の順位づけや段階別の評定尺度を用いた回答形式が順序尺度に該当するカテゴリーになります。

例えば、3つのデータに1位、2位、3位の順位が与えられた場合に、各データの序列はわかりますが、1位と2位、2位と3位にどれくらいの差があった結果なのかを明確にすることができません。同様に、5段階の評定尺度の各段階の差について量的な基準を具体的に示すことができないため、平均を求めたり四則演算を行うことに意味がないということです。

間隔尺度

間隔尺度で表される変数は定量データに該当します。名義尺度の変数の区別ができることと順序尺度の変数に大小関係があるという特性に、変数間の間隔が等しいという条件が加わったものが間隔尺度です。

間隔が等しいことから得られた変数どうしの差を比較することに意味があります。日付や時刻、温度などが間隔尺度を取る代表的なデータです。

例えば、西暦も間隔尺度のひとつですが、2023年と2018年の差と2018年と2013年の差はどちらも5年であり、数値の量的な比較に意味があります。

最頻値、中央値、算術平均を代表値として用いることができます。

比例尺度

比例尺度量は年齢や収入、購入回数、金額などが挙げられ、絶対的な原点を持つ数量であることが間隔尺度との違いです。

間隔尺度は変数間の差に関する情報しか持たず、原点の位置や間隔の定義を変更することが可能です。一方、比例尺度は原点0を持ち、データが0であれば量が存在しないということになります。原点が存在するため加減に加えて、積と商を求めることができます。

代表値は最頻値、中央値、算術平均、幾何平均を用いることができます。

【4つの尺度水準の特性】

絶対原点単位比較可能な演算代表値
名義尺度なしなし同値かどうかなし最頻値
順序尺度なしなし大小なし最頻値 中央値
間隔尺度なしあり大小 差和・差最頻値 中央値 平均値
比例 / 比率尺度ありあり大小 差 比四則演算最頻値 中央値 平均値

4つの尺度は、比例尺度、間隔尺度、順序尺度、名義尺度の順番で尺度水準が高いとされ、上位の尺度は下位の尺度の性質をカバーし、上位の尺度を下位の尺度に変換して扱うことができます。

例えば、年収を数値で回答してもらう場合は比例尺度のデータとして扱いますが、年収の範囲を区切って階級を作成した場合は順序尺度のデータに変換されます。

この場合、順序尺度に変換したカテゴリーの番号には金額の単位を当てはめることができないため、順序尺度には単位がないことになります。

名義尺度のデータを得る質問項目の例

マーケティングリサーチを目的とするアンケート調査では、数値で回答を得る自由回答の質問項目のほかは、名義尺度と順序尺度として扱うデータが質問項目の多くの割合を占めることが一般的です。

ここでは、株式会社クロス・マーケティングが2023年に実施した「防犯に関する調査(2023年)備え編」の質問項目を例に、名義尺度として扱われるデータについて解説します。

【回答者プロフィール】

質問項目選択肢
性別男性/女性
年齢20~29歳/30~39歳/40~49歳/50~59歳/60~69歳/70~79歳
未既婚未婚/既婚
居住地北海道~沖縄(47都道府県)
子の有無子どもがいる/子どもがいない
同居者配偶者・パートナー/父母(義父母)/子ども/兄弟・姉妹/(義理の兄弟・姉妹)/単身(一人暮らし)/祖父母(義理の祖父母)/孫/その他 
職業会社勤務(一般社員)/無職/専業主婦・主夫/パート・アルバイト/派遣社員・契約社員/公務員・教職員・非営利団体職員/会社勤務(管理職)/自営業(商工サービス)/専門職(弁護士・税理士等・医療関連)/学生/会社経営(経営者・役員)SOHO/農林漁業/その他
世帯年収100万円未満/100~200万円未満/200~300万円未満/300~400万円未満/400~500万円未満/500~600万円未満/600~700万円未満/700~800万円未満/800~900万円未満/900~1,000万円未満/1,000~1,200万円未満/1,200~1,500万円未満/1,500万円以上/答えたくない わからない
自宅の階数平屋建て/地下なし2階建て/地下あり2階建て/地下なし3階建て/地下あり3階建て/その他
人が歩ける程度の庭の有無人が歩ける程度の庭がある/人が歩ける程度に庭はない
外から庭への入りやすさ門や塀があり、安易に入ることは難しい/安易に入ることができる
塀の有無ほぼ周り全体に塀を立てている/一部塀を立てている/まったく塀は立てていない
玄関以外の人が出入りできる鍵のかかる入口(勝手口)の有無玄関以外に鍵のかかる入口(勝手口)がある/玄関以外に鍵のかかる入口(勝手口)はない
犬を飼っているかどうか犬を室内飼いしている/犬を室外飼いしている/犬は飼っていない
株式会社クロス・マーケティング実施 防犯に関する調査(2023年)備え編

網掛けの部分が名義尺度のデータが得られる質問項目です。当調査の回答者の属性を問うフェイスシートでは名義尺度で得られるデータが多くを占めています。

先に説明したように、年齢と年収は数値の範囲を区切った階級で選択肢を作るケースが多いので、この場合も順序尺度のデータを得る質問項目となります。

質問項目選択肢
あなたの自宅では、防犯に対して、どの程度対策ができていますか。(SA)・しっかりできている
・どちらかといえばできている
・どちらかといえばできていない
・全くできていない
あなたの自宅で、防犯対策ができていない理由として、当てはまるものをおしらせください。(MA)・お金がかかるから
・何をすればいいかわからないから
・面倒だから
・自宅周辺は治安がよく安心だから
・時間がかかるから
・時間がないから
・その他
・特にない
あなたは、ご家族で防犯に関して話し合ったことがありますか。現在、同居していないご家族も含めてお答えください。(SA)・よく話し合っている
・たまに話し合うことがある
・あまり話し合うことはない
・全く話し合ったことはない
あなたの自宅では、以下にあげる防犯対策をしていますか(MA)・モニター付きインターフォンの設置



・防犯対策はしていない
※カテゴリー数は16
あなたが、自宅で今後行いたい・今後も行いたいと思う防犯対策はなんですか。現在行っていることも含めて、今後行いたい・今後も行いたいことをお応えください。(MA)・モニター付きインターフォンの設置



・今後防犯対策をしたいと思わない
※カテゴリー数は22
あなたは、今後1年間に、自宅の防犯対策にいくらまでならお金をかけられますか。(SA)・0円
・3,000円未満
・3,000~5,000円未満
・5,000~10,000円未満
・10,000~30,000円未満
・30,000~50,000円未満
・50,000~100,000円未満
・100,000円以上
・わからない
あなたは、近所の方と、普段から挨拶や情報交換などのコミュニケーションをしていますか(SA)・コミュニケーションをしている
・最低限の挨拶程度はしている
・コミュニケーションはしていない
あなたの自宅周辺には、防犯灯(電柱やポールなどについている明かり)はありますか。(SA)・防犯灯はある
・防犯灯はない
あなたのお住まいの地域には、見守りボランティアはありますか。(SA)・ある
・ない
・わからない
あなたは、普段防犯に関する情報を、どこから得ていますか。(MA)・テレビの番組
・ニュース


・特に情報収集はしていない
※カテゴリー数は18
あなたが、早期に行いたいと思う防犯対策がありましたら、どんなことでも構いませんので、ご自由にご記入ください。(FA)自由回答
株式会社クロス・マーケティング実施 防犯に関する調査(2023年)備え編 本質問

当調査の本質問の項目では、防犯対策が出来ているかどうか、防犯について話し合ったことがあるかどうかについて2者択一ではなく、「どちらかといえば」、「たまに話し合う」「あまり話し合わない」という中間的な選択肢を設けています。このような、明確に2者択一で答えられない場合には、評定尺度の選択肢を用いて順序尺度のデータとして扱うことになります。

尺度を理解することは正しいモノサシを手に入れること

尺度の違いを正しく理解することは、適切な調査票の設計と正しい集計・分析を行うために重要なことです。尺度はモノサシに例えられますが、正しい測定を行うためには正しいモノサシが必要であることを意味しています。