定点調査は同じ指標を継続して測定し、時間の経過に伴う変化を把握するための調査です。単発調査とは異なり、各回で必要な情報を集めながら、過去のデータと比較できる条件を一定に保つ設計が求められます。
本記事では、定点調査で追う変化や指標の選び方、実施スケジュールの組み立て方をはじめ、結果の読み取り方について解説します。施策の振り返りや次の改善判断に役立つ調査計画を立てる際にお役立てください。
この記事を読んでわかること
定点調査の特徴と、単発調査との違い
調査目的に合った指標・実施期間・調査間隔の決め方
有意差や標本誤差を踏まえ、数値の変化を正しく読む方法
設問を変更しながら、過去の調査結果との比較を続ける方法
QiQUMOの配信リストと除外リストを定点調査に活用する方法
1. 定点調査とは
定点調査とは、一定の期間をおいて、同じ設問・同じ方法で繰り返し実施する調査です。
たとえば、自社サービスの満足度を四半期ごとに同じ設問で測れば、各回の数値に加えて、前回からの差や長期的な推移を確認できます。
そのほか、ブランドの認知率や顧客満足度、従業員の意識などについて前回からの差や長期的な推移を確認することを目的として実施します。
1-1. 単発調査との違いは、時間の経過に伴う変化を追うこと
社会調査の分野では、時間による変化をとらえる調査デザインを横断的調査と縦断的調査に大別しています。
横断的調査は、ある1時点で対象を測定する方法です。一方の縦断的調査は、同じ集団を2時点以上で測定し、変化をとらえる方法を指します。
定点調査は縦断的調査に位置づけられ、対象者の選び方によって2つの方式に分かれます。
調査デザインと定点調査の位置づけ
比較項目 | 横断的調査(単発調査) | 縦断的調査(定点調査)、トラッキング調査 | 縦断的調査(定点調査)、パネル調査 |
|---|---|---|---|
測定する時点 | 1時点 | 複数時点 | 複数時点 |
対象者 | 1回だけ選ぶ | 毎回、同じ条件で選び直す | 毎回同じ人に聞く |
わかること | 調査時点の状態や課題 | 顧客層や市場全体の数値の推移 | 同じ人の意識や行動の変化 |
結果の使い方 | 現時点の課題を整理し、対応を検討する | 推移を踏まえて、施策の継続や見直しを検討する | 評価が上がった人と下がった人の違いを確認し、対応を検討する |
マーケティングリサーチの分野では、時系列調査、継続調査、トラッキング調査といった用語が定点調査と同義として使われます。
トラッキング調査については、定点調査全体の別名として使われる例と、対象者を選び直す方式に限って使われる例の両方があります。本記事では表の区分に合わせ、後者の意味で使用しています。
1-2. 変化を捉えるには、比較できる測定条件が必要
定点調査では各回の数値を比較できる状態に保つことが求められます。
たとえば、前回はすべての利用者に満足度を尋ね、今回は利用頻度の高い人だけに尋ねた場合、結果の差には回答者の構成の違いも含まれてしまいます。
質問文や選択肢を変えた場合も、尋ね方の違いが回答に影響する可能性があります。
そのため、最初に何を判断するために、どの変化を追うのかを明確にし、測定する指標、対象者、実施期間と間隔を決めます。
そのうえで、設問や対象者条件を各回でどう引き継ぐかを定めることが、変化を読み取るための土台になります。
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2. 定点調査で追う変化と指標を決める
定点調査の設計は、調査結果を使って何を判断したいかを整理することから始まります。判断の目的が定まると、追う変化、測定する指標、調査を続ける期間と実施間隔を具体化できます。
2-1. 変化を把握した先の判断を明確にする
まず、調査結果を受けて何を判断するかを具体化します。たとえば、以下のようなケースが代表的なものです。
調査テーマ | 追う変化の例 | 結果を使って判断すること |
顧客満足度 | 問い合わせ対応の改善後に、利用者の評価がどう変わったか | 対応体制を維持するか、追加の改善を行うか |
ブランド認知 | 広告の実施に伴い、認知がどの程度広がったか | 次の出稿計画や訴求内容をどう調整するか |
従業員の意識 | 人事制度の改定後に、制度への納得感や仕事への意欲がどう変わったか | 制度の説明を追加するか、運用を見直すか |
あわせて、誰が、いつ判断するかを決めます。数値が上がった場合、横ばいの場合、下がった場合に、それぞれ何を検討するかも考えておくと、調査で集める情報が明確になります。
変化が起こりそうな項目のうち、その把握が施策の見直しや状況判断に役立つものを、継続して追う対象に選びます。
2-2. 追いたい変化に対応する指標を選ぶ
次に、判断に必要な変化を、どの指標で捉えるかを決めます。調査目的と指標の対応例は、以下のようなケースが考えられます。
追いたい変化 | 指標・評価項目の例 | 確認する内容 |
サービス改善後の評価 | 総合満足度、対応速度への満足度、説明のわかりやすさ | サービス全体と、改善した箇所への評価がどう変わったか |
利用者との関係 | 継続利用意向、NPS | 今後も利用したい気持ちや、他者に勧めたい気持ちがどう変わったか |
ブランド認知の広がり | 助成想起による認知率、純粋想起による想起率 | ブランドを知っている人や、自発的に思い出す人の割合がどう変わったか |
従業員の意識 | 仕事への意欲、組織への貢献意欲、制度への理解・納得感 | 仕事や組織への意識、制度の受け止め方がどう変わったか |
各テーマの評価項目や設問の考え方は、以下の記事で詳しく解説しています。
2-3. 判断する時期から、追う期間と実施間隔を決める
指標が決まったら、いつまで変化を追い、どの間隔で測るかを設定します。判断の予定日と、変化が現れるまでに必要と考えられる時間を手がかりに、調査時期を組み立てます。

たとえば、3か月間の広告キャンペーンを実施するなら、開始前に認知率を測り、期間中、終了直後、終了から一定期間後に調査する設計が考えられます。
期間中の結果は出稿内容の調整に、終了後の推移は認知がどの程度維持されているかの確認に役立ちます。
サービス改善の場合は、利用者が改善後のサービスを体験する機会も考慮します。月に一度程度利用するサービスなら、変更の翌日に調べても、改善後の体験に基づく評価は集まりにくいためです。
対象者が利用するまでの時間に加え、結果の集計・検討に要する時間も見込んで日程を決める必要があります。
商品評価も、何を判断したいかによって調査の時点が変わります。今回の商品案の採否を決める調査なら、判断に必要な時点で評価を集める設計です。
一方、発売後の評価を追うことが目的であれば、発売直後、利用が進んだ時期、その後の継続利用の段階など、確認したい変化に合わせて測定時点を設けます。
最終的に一つの計画にまとめるのは、判断の目的、対象者、追跡する指標、実施間隔、実施予定日です。
3. 変化をどう読むか
定点調査の結果は、各時点の数値と、その差や推移を合わせて読み取ります。第2章で定めた判断の目的に照らし、数値の変化から何が言えるか、判断に向けて何を追加で確認するかを整理します。
3-1. 2時点間の差を偶然のブレと区別する
2時点のアンケート結果に統計的な有意差があるかは、観測された変化の大きさ、標準誤差、検定の判定基準で整理できます。さらに、その変化を適切に解釈するには、2時点の調査条件がそろっているかも確認します。
アンケートを2回実施して結果に差が出たとき、その差は次の3つの要素が足し合わされたものとして現れます。


① 母集団の真の変化:知りたい対象。全員に調査しない限り直接は観測できない。
② 標本誤差の差分:母集団の一部だけを調べたことで生じるズレ。大きさは標準誤差で推定する。
③ 非標本誤差の差分:質問の聞き方や回答者の集まり方など、標本抽出以外の要因で生じる誤差の、前回と今回の差。
非標本誤差には偶然に生じる誤差と、一定方向に偏る系統的な誤差が含まれます。通常の有意差検定だけでは、その影響を切り分けられません。また、系統的な偏りは、回答者数を増やすだけでは解消しません。
統計的に差がある(統計的有意差がある)と判断する作業は、見かけの差が、偶然のズレだけで説明できる限界を超えているかを判定することです。
これを判断する基本的な計算の骨組みは、次の計算式で表されます。

分子(差の大きさ)に対して、分母(偶然のブレ)が十分に小さければ、単なる偶然とは考えにくい変化が起きたと判定します。
3-1-1. 偶然のブレ(標準誤差)の大きさを決める要素
分母に入る差の標準誤差を大きくしたり小さくしたりする要因です。ここが狂うと、判定そのものが正しくなくなります。
回答者の人数(サンプルサイズ)
単純無作為抽出を前提に、比率などの条件が同じなら、標準誤差は回答者数 (n) の平方根(n)に反比例します。人数を4倍にすると、標準誤差は約半分になるという関係です。
たとえば、互いに独立した2回の調査で、ある回答の割合が50%から55%へ上昇した場合を考えます。
重み付けを行わず、母集団に対する抽出割合が十分小さい条件で、5%水準の両側検定を行うと、結果は次のとおりです。
各回の回答者数 | 差の標準誤差 | 検定統計量 | 判定 |
|---|---|---|---|
1,000人 | 約2.2ポイント | 約2.24 | 基準の1.96を超え、有意差あり |
80人 | 約7.9ポイント | 約0.63 | 基準に届かず、有意差なし |
同じ5ポイントの差でも、人数が少ない場合は標準誤差が大きくなり、偶然のブレと区別しにくくなります。
※表は、2回の回答を合わせた比率52.5%を使う、独立した2群の比率の差の検定による計算です。
差の標準誤差を√[0.525 × 0.475 ×(1/n + 1/n)] 、検定統計量を (0.05÷標準誤差) として算出しています。
※nは各回の回答者数を表します
元の比率の高さ
割合のばらつきは、確率が50%付近のときに最も大きくなり、0%や100%に近づくほど小さくなります。
そのため、48%から53%に増えた場合よりも、5%から10%に増えた場合のほうが、同じ5ポイントの差でも有意差として検出されやすくなります。
毎回別の人に聞いたか、同じ人を追跡したか
2回の調査対象者の関係によって変わるのは公式に含まれる共分散の値です。
差の分散 = 1回目の分散 + 2回目の分散 - 2 ×(1回目と2回目の共分散)
ここでいう分散は、個々の回答のばらつきではなく、各回の割合などの推定値が、標本の選ばれ方によってどの程度ばらつくかを表します。共分散は、2回の推定値が連動して動く程度を表すものです。
各回の標本が互いに独立している場合
2回の推定値の共分散はゼロとなるため、各回の分散を足して差の分散を求めます。
ただし、毎回抽出し直していても、同じモニターパネルから回をまたいで同じ人が含まれる場合などは、独立とみなせるかの確認が必要です。
同じ人を追跡して2回聞いた場合
同じ人の前後の回答には正の相関が見られることが多いものの、その強さは指標によって異なります。
2回の推定値の共分散が正なら、各回の分散が同じ条件では、独立した標本の場合より差の分散は小さくなる関係です。
正の共分散があるのに独立した標本として計算すると、差の標準誤差を大きく見積もり、変化を検出しにくくなります。
全員を追跡する場合だけでなく、一部の回答者が重複する場合も、その関係を反映した計算方法を選びます。
集計の重み付け(ウェイトバック)
調査対象全体の構成比に合わせて標本データの性別や年齢などの歪みを補正する手法を、重み付け(ウェイトバック)と呼びます。回答が少なかった層には大きなウェイト、多かった層には小さなウェイトを掛けて集計します。
ウェイトのばらつきが大きいほど、一部の回答者が推定値に与える影響が強まり、標準誤差は大きくなります。
この推定精度を、単純無作為抽出での同等なサンプルサイズに換算した指標が有効標本サイズです。
たとえば1,000人分の標本であっても、重み付け後の推定分散が均一ウェイトの単純無作為標本700人分と等しい場合、有効標本サイズは700となります。
有効標本サイズが減少している状況下で、標本サイズ1,000人を前提とした単純な標準誤差を用いると、分散を過小評価し、第1種の過誤(実際には差がないのに有意と判定すること)の確率が増加します。
3-1-2. 判定ルールをどう決めるか
分母と分子の計算値が同じでも、判定のルール設定によって結論がどちらにも動きます。
有意水準(偶然とみなす基準線)
有意水準は、本当は差がないのに差があると誤って判定する確率の基準です。一般には5%を用います。
増加と減少の両方を調べる場合は、両側検定を選びます。一方、片側検定は、増加または減少のどちらか一方向に絞って調べる方法です。
同じ有意水準なら、事前に想定した方向の差は両側検定より有意になりやすいものの、逆方向の差を有意と判定するためには使えません。
定点調査で上昇と低下の両方を捉えたい場合は、両側検定が基本です。片側検定を使うなら、一方向だけを検証する合理的な理由を、結果を見る前に明確にしておきます。
多重比較(項目や区分を増やして比べるときの注意点)
たくさんの項目を一度に比べると、本当は差がないのに、たまたま出た差を本物と誤判定する確率が高くなります。
たとえば、顧客満足度の20項目を有意水準5%で前回と比較する場合 、どの項目も実際には変化していないとしても、20項目あれば平均して1項目ほどは偶然の偏りで有意と判断される計算です。
各項目の結果が互いに無関係なら、全体として少なくとも1つの項目で誤った差を見出す確率は、計算上は約64%に達します。年代別や地域別などで細かく分けて比較を重ねる場面でも、同様の過誤を招く恐れがあります。
これを避ける手立てとして、本当に確かめたい重要な項目を事前に絞り込む方針が挙げられます。あるいは、数多くの項目をまとめて検証する際に、判定のハードルを一段と引き上げる措置も有効な選択肢です。
仮に20項目全体での誤判定を5%以下に抑えたいなら、1項目ごとの判定基準を20で割り、0.25%という厳格なラインを設定して見極めます。
3-1-3. 計算式の外にある、調査のやり方のズレ
調査方法や回答者の集まり方が変わると、意見や行動そのものが変わっていなくても、調査結果に差が生じることがあります。
非標本誤差の影響は、有意差検定だけでは判断できません。前後の結果を比較する際は、次の点を確認します。
回答手段の変更
電話、対面、Webなどの回答手段を「調査モード」と呼びます。モードの変更に伴って変わるのは、調査員の有無や、質問を耳で聞くか画面で読むかといった回答時の条件です。
同じ質問でも、こうした条件によって受け止め方や答え方に違いが生じる可能性があります。モードを変更した場合は、数値の差に回答条件の違いが影響していないか、確認が必要です。
質問文や選択肢の順番
質問文が特定の答えを誘導したり、選択肢の並び順によって一部の選択肢が選ばれやすくなったりすると、回答に偏りが生じます。これが、質問の設計や提示方法によるバイアスです。
前回と今回で表現や並び順を変えた場合には、偏りの現れ方も変わる可能性を考慮する必要があります。比較する際は、質問文に加え、選択肢の内容や順序、ランダム表示の設定も点検します。
回答者構成の変化
回答を断る人や途中で離脱する人が特定の層に偏ると、回答者の構成が変わることがあります。回答しなかった人と回答した人で、調べたい意見や行動に違いがある場合に生じる偏りが非回答バイアスです。
たとえば、忙しい層の回答が集まりにくくなれば、その層の評価が結果に反映されなくなります。こうした偏りを点検する手がかりになるのが、回答者の集め方や属性別の回収状況です。
これらの影響は有意差検定だけでは、意見や行動そのものの変化と切り分けられません。
まず、質問文や調査方法、回答者の集め方などを点検し、2時点で比較可能な条件が保たれているかを確認します。
変更がある場合は、その内容を記録し、第4章で紹介する新旧設問の並行実施などによって、影響を検証します。
3-1-4. 結論を誤らないための確認ステップ
前後の結果を比較するときは、以下の順番で確認を進めることが重要です。
比較可能な条件が保たれているかを確認する
質問文や調査方法、回答者の抽出手順に変更がないかを確認します。仮に変更が生じている場合は、その影響を検証した結果を踏まえ、過去データとの時系列比較が可能か見極めます。
交絡因子(原因と結果の両方を動かす別の要因)となる影響を切り分けられないのであれば、数値の差をそのまま意見や行動の変化と解釈することを避けます。
分母をそろえる
「無回答」や「わからない」と答えた人を全体の分母に含めているか、除外しているかを両時点で統一します。適切なサンプルサイズを使う
集計表の見かけの数字ではなく、実際にその質問に答えた人数や、重み付けを考慮した実質的な回答者数(有効標本サイズ) を用います。追跡関係に合わせた検定方法を選ぶ
同じ人を追跡した調査なのか、毎回別人を集めた調査なのかに応じて適切な検定手法を選びます。検定した総数に注意して結果を読む
一度に大量の項目を比較している場合、数個の有意差は偶然生じた差を有意と判定したもの(偽陽性) である可能性を考慮して評価します。
統計的に有意な差が出なかったことは変化がなかったことの証明ではなく、人数不足で変化を捉えきれなかった可能性もあります。
逆に有意な差が出たからといって、現実の課題として意味のある大きな差であるとは限りません。検定の結果に過度に囚われることなく、差の絶対的な大きさや調査の背景まで含めて総合的に見ることが大切です。
アンケートは何人に聞けばいい? サンプルサイズの目安と決め方
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3-2. 2時点の増減と、複数時点の傾向を区別する
前回と今回の比較でわかるのは、その2時点の差です。上昇が続いているのか、一時的な増加なのかを考えるには、それまでの結果も並べて確認します。

たとえば、認知率が前回より上がっていても、過去から上下を繰り返している中の上昇と、数回にわたって上昇している状態では、読み取り方が変わります。複数時点の数値をグラフにすると、変化の方向や持続性を把握しやすくなります。
グラフには、数値のほかに次の情報を添えます。
併記する情報 | 読み取る際の確認点 |
|---|---|
調査日・回収期間 | 調査の間隔や回収期間に違いがあるか |
各回の回答者数 | 回答者数の増減によって、推定の精度が変わっているか |
季節・繁忙期など | 意見や行動に、毎年同じ時期に起こる変動が含まれているか |
施策の実施時期 | 施策の開始・終了と数値の変化が、時間的にどう対応しているか |
設問・対象者条件の変更 | 測定条件を変えた時点で、数値の動きも変わっているか |
大きなニュース・社会的な出来事 | 施策以外に、意見や行動を動かした可能性のある出来事があったか |
調査間隔が不規則な場合は、横軸にも実際の時間の間隔を反映します。また、縦軸の範囲を狭くすると小さな差が大きく見えるため、目盛りや単位を明示し、数値と合わせて確認できる形にします。
3-3. 初回値・目標値・参照値を使い分ける
初回の調査結果は、調査開始時点からどの程度変化したかを確認する基準になります。結果の良し悪しを評価する際には、事前に設定した目標値や、比較条件の近い参照値も用います。
たとえば、初回の満足度が60%、今回が65%、事前の目標が70%だったとします。この場合は、次のように整理できます。
初回との比較: 集計値は5ポイント上昇している
目標との比較: 目標まで5ポイントの差がある
追加の確認: 上昇幅の不確実性や、改善した評価項目を確かめる
初回から上昇したことと、目標に達したことを分けて扱うと、進捗を具体的に説明できます。
過去の調査などから得られた基準値であるノーム値を参照する場合は、対象者、設問、評価尺度、調査時期などを確認します。条件が異なる数値は、その違いを踏まえて参考情報として扱います。
3-4. 数値の推移から判断できることと、追加確認を分ける
数値が変化した場合、季節性や競合の動き、回答者構成の変化なども影響している可能性も考えられます。施策の因果効果を判断するには、こうした要因も検討します。
問い合わせ対応の改善後に満足度が上昇した場合を例に、結果の整理方法を示します。
整理する内容 | 記述例 |
|---|---|
集計結果として確認したこと | 改善前と比べ、対応速度への満足度が上昇した |
考えられる説明 | 待ち時間の短縮が、評価の上昇に関係している可能性がある |
追加で確認すること | 実際の待ち時間、問い合わせ件数、回答者構成、評価理由の変化を確認する |
たとえば、対応体制を継続するかの検討には、満足度の推移と対応時間の記録を合わせて使えます。
施策そのものの効果を詳しく確かめたい場合は、施策を実施していない比較対象を設けるなど、追加の調査設計が必要です。
調査結果を報告する際は、確認できた変化、その背景として考えられる説明、次に確かめる事項を分けて記載します。
4. 設問の変更が必要になったとき
定点調査を続けるうちに、新しいサービスの登場や事業環境の変化によって、設問の修正が必要になることがあります。
変更を検討する際の出発点は、追っている変化と判断の目的の確認です。そのうえで、過去との比較をどこまで継続するかを決めます。
4-1. 変更が必要な理由を整理する
設問の変更が必要になるのは、主に次の3つです。
変更の理由 | 具体例 | 確認すること |
|---|---|---|
市場やサービスの変化 | 新しい利用方法やサービスが登場した | 現行の設問で、追いたい行動や評価を捉えられるか |
選択肢の陳腐化 | 終了したサービスが残り、新サービスを選べない | 現在の状況に合う選択肢を用意できているか |
初回設計の不備 | 質問文が曖昧、選択肢が重複している | 回答者の解釈や選択に、どのような影響が生じているか |
継続調査における項目の見直しは、公的統計にも見られます。総務省の家計調査が、2025年1月分から適用された収支項目分類の改定で保健用消耗品からマスクを独立した項目に分けたのも、消費実態に合わせた見直しの一例です。
調査の目的自体が変わり、今後は利用継続の理由を詳しく把握したい場合には、追跡する指標から見直します。変更理由と継続して比較したい指標を分けて整理することが、修正範囲を決める手がかりになります。
4-2. 過去との比較の必要性から、変更方法を選ぶ
対応方法には、旧設問と新設問の並行実施、切り替え時点での系列の分離、変更の見送りという3つの選択肢があります。それぞれを選ぶ場面と運用のポイントは、次のとおりです。
対応方法 | 選ぶ場面 | 運用のポイント |
|---|---|---|
旧設問と新設問を並行実施する | 設問を更新しつつ、過去との比較も継続したい | 同じ時期に両方の設問で測り、回答への影響を確認する |
切り替え時点で系列を分ける | 測定内容を大きく変える必要があり、新しい基準から追跡できる | 変更日を明示し、新設問の初回値を以後の比較基準にする |
変更を見送る | 修正の必要性が低く、現在の設問でも目的に合う情報を得られる | 追跡用の設問を維持し、追加で知りたい内容は別設問で補う |
判断にあたっては、変更の必要性、過去との比較を続ける必要性、並行実施に使える回答者数と予算の順に整理します。
4-3. 並行実施は、比較を継続したい指標に絞る
旧設問と新設問を並行実施する場合は、過去との比較が必要な指標に対象を絞ります。変更する全設問を二重に測ると、回答負荷や費用が増えるためです。
設問文の影響を確認するには、同じ対象者条件で集めた回答者を無作為に2つのグループへ分け、一方に旧設問、もう一方に新設問を提示する方法が使えます。
米国国勢調査局の所得調査でも、2014年に新旧の質問を使うグループに分けた調査が行われました。質問の改訂が所得の推計値に与える影響を検証し、翌年の全面導入につなげた事例です。
並行実施の計画では、次の3点を確認します。
調査時期と対象者条件: 同じ回収期間に、同じ条件の対象者から回答を集める
周辺の設問や提示方法: 変更の影響を確認したい箇所以外は、できるだけ同じ状態に保つ
各グループの回答者数: 見極めたい差の大きさに応じて、必要な人数を確保する
総回答者数を据え置いて2群に分けると、各設問の回答者数が減り、差を評価する精度に影響します。各群の人数を確保する場合は、追加費用を含めた計画が必要です。
5. QiQUMOのリスト管理機能を定点調査に活用する
QiQUMOで国内モニターへアンケートを配信する場合は、過去に実施したアンケートの回答者を登録するリスト管理機能を利用できます。
作成したリストは、次回以降の配信リストまたは除外リストとして設定可能です。複数のリストを作成できるため、調査テーマや実施回ごとに回答者を管理できます。

5-1. 同じ回答者を追うか、入れ替えるかで使い分ける
過去の回答者を配信リストに設定すると、同じ人へ再度アンケートを依頼できます。サービス改善前後の評価や、利用意向の変化を継続して確認する追跡調査に適した使い方です。
ただし、次回の調査では回答が得られない人が生じる可能性があります。各回の回答者数や回答者の重複状況を確認し、追跡関係に合った集計方法を選びます。
一方、除外リストを設定すれば、過去の回答者を対象から外し、新しいモニターを集められます。同じ人が繰り返し回答することによる回答慣れや調査内容の記憶を避けながら、市場全体の認知率や満足度の推移を追いたい場合に活用できます。
5-2. リストの設定とあわせて比較条件を揃える
各回の結果を比較するには、リストの設定に加えて、設問文や選択肢、対象者条件、回収期間、目標回答者数なども、できるだけ同じ状態に保つ必要があります。
除外リストを使う場合も、性別や年代などの回答者構成が前回と大きく変わっていないかを確認します。リストの設定内容と各回の調査条件を記録しておけば、数値が変化した理由を検討する際の手がかりになります。
6. まとめ・チェックリスト
定点調査は、時間の経過に伴う変化を捉え、施策の継続や見直しに役立てるための調査です。何を判断するために変化を追うのかを明確にし、指標と実施時期、各回で引き継ぐ比較条件を決めます。
調査を始める前や次回の準備にあたっては、以下の5点を確認してください。
変化を把握して何を判断するかが明確か
結果を受けて検討する行動と、判断する担当者・時期を具体化する。目的に対応する指標を選んでいるか
全体の評価と個別の評価を組み合わせ、判断に必要な変化を捉えられる設問を用意する。追う期間と実施間隔が適切か
変化が現れるまでの時間、判断の予定日、季節性を踏まえて調査日程を組む。比較条件と変更履歴を記録しているか
設問・選択肢、対象者条件、回収期間などを保存し、変更時には過去との比較の扱いも明記する。結果から判断できることと、追加確認が必要なことを区別しているか
差の不確実性や調査条件を確認し、数値の変化、考えられる背景、次に確かめる事項を分けて整理する。
調査を続ける中で、設問や方法の更新が必要になる場面もあります。変更の影響を確認し、比較を続ける範囲を明らかにすることも、定点調査を継続するための取り組みです。
アンケートの設計から配信・集計までの基本は、Webアンケートの解説記事をご覧ください。QiQUMOのサービス内容や登録方法は、公式サイトで確認できます。
定点調査に関するよくある質問
Q. 定点調査は何回実施すれば傾向を判断できますか?
A. 2回の調査では、2時点間の差を確認できます。上昇や下降が続いているか、一時的な変動なのかを検討するには、3時点以上の結果が必要です。
ただし、実施回数だけで傾向の確かさは決まりません。回答者数や調査間隔、季節性、調査条件も含めて判断します。
Q. 定点調査とパネル調査にはどのような違いがありますか?
A. パネル調査は、原則として同じ回答者を継続して追跡する調査です。個人ごとの意識や行動の変化を確認する目的に向いています。
定点調査では、同じ回答者を追う方法に加え、同じ対象者条件のもとで毎回異なる人を集める方法も使われます。後者は、市場や顧客層全体の指標を継続的に測る場合に適しています。
Q. 定点調査を終了または見直すタイミングはいつですか?
A. 追跡している指標が意思決定に使われなくなったときや、事業環境の変化によって調査目的とのずれが生じたときが見直しのタイミングです。
数値が長期間安定している場合は、調査を終了するほか、実施間隔を延ばす選択肢もあります。開始時に見直し時期を設定し、調査の活用状況と費用を定期的に確認します。