『失敗しない』バイラルマーケティングとは? 口コミをマーケティングに活用するための基本を解説
SNSが普及した現在、マーケティングにおける口コミの影響はより一層その重要性を増しています。口コミを上手く活用することがバイラルマーケティングのポイントですが、効果を予測することが難しく、時にはマイナスの効果をもたらすリスクがあることには注意が必要です。口コミを効果的に活用するために、バイラルマーケティングの基本について解説します。
バイラルマーケティングとは
バイラルマーケティングとは認知拡大や顧客獲得の手段として口コミを利用するマーケティング手法のことを指します。
SNSを中心に、インターネット上での個人による情報発信が盛んになり、ユーザーが自発的に商品やサービス、ブランドについて発信・共有する行動をマーケティングに取り込んでいこうというのがバイラルマーケティングの考え方です。
リツイートやシェアボタンといった情報の拡散・共有が簡単に行える機能がSNSに備わっていることも、ネット空間で口コミが拡散しやすい要因のひとつとなっています。
バイラルマーケティングのメリット
バイラルマーケティングは消費者の主体性に依存する部分が大きいことが、広告主体のマスマーケティングと大きく異なります。そのことがもたらすメリットとして以下の点が挙げられます。
広告に比べて(広告)費用がかからない
商品やサービスの認知度を高めるためのマーケティング施策は広告・宣伝が主要な方法ですが、広告制作費や媒体費用が嵩(かさ)みます。
それに対し、商品やサービスを実際に使用した際の感想や映える商品画像として拡散される口コミ情報は、ユーザーの意思にもとづいて発信されるものであることから、十分な拡散効果が得られた場合の費用対効果は広告を使う場合と比べて圧倒的に優れています。
ターゲット層にアプローチできる可能性が高い
SNS上での個人のつながりやネット空間での情報伝達ネットワークは、同質なユーザー同士で形成されていることが多く、口コミの情報は共通する属性を持つユーザー層に拡散されます。
ターゲットとする層に情報を拡散することができれば、不特定多数に向けて発信される広告に比べて、効率的にターゲット層の認知を高めることが可能です。
認知バイアスの影響
消費者は企業が自らの利益のために発信する広告メッセージを信用しない傾向があります。一方、SNSで発信される商品やサービスに関する情報は第三者による社会的な評価であることから信用しやすいというバイアスが働きます。これをソーシャルプルーフバイアス(社会的証明のバイアス)といいます。
この性質を利用するのがバイラルマーケティングです。消費者からのポジティブな反応や評価が得られれば、商品やサービスの購入に結びつきやすくなり、さらに情報が拡散されるという好循環を生み出します。
バイラルマーケティングのリスク
消費者の主体性に委ねられる部分がメリットをもたらすというバイラルマーケティングの特性は、裏を返せばリスクにつながる要素も大きいことを理解する必要があります。
ネガティブな情報の拡散
口コミはユーザー個人の意思にもとづいて発信されるため、拡散される情報が必ずしも企業側にとって都合のいいことばかりではないというリスクも存在します。
企業側が意図しないネガティブな情報が拡散される可能性もあるため、バイラルマーケティングを行う場合には、一定数のネガティブな反応があることを想定した上で取り組む必要があります。
情報の拡散をコントロールできない
一旦情報が拡散されてしまうと、その評価や広がりの範囲をコントロールすることができません。誤った情報が拡散されたとしても、それを訂正しネガティブなイメージを払拭するためには多大な時間と労力を要します。
そのため、拡散されることを想定する情報については、ネガティブな反応を引き起こす可能性がないかどうかを十分検討した上で発信することが重要です。
適法性と倫理面への配慮が必要
認知度を高める、購買に結びつくための情報を発信するという点では、バイラルマーケティングも広告と同じ目的を持っているといえます。広告には虚偽や誇大表示など消費者保護と公正な競争を保つために景品表示法をはじめとする法規制がかかっています。
バイラルマーケティングは第三者に宣伝をしてもらうという効果を目的とするものですが、広告であることを隠して自発的な口コミや個人の感想であることを装うことは、ステルスマーケティングとして法規制の対象となります。
企業としてはポジティブな反応を引き起こしたいという動機があるため、過度に情報発信者に介入することは避ける必要があります。
バイラルマーケティングの種類
口コミを利用するバイラルマーケティングと同様な考え方に、バズマーケティングやインフルエンサーマーケティング、ステルスマーケティングがあります。
バズマーケティング
話題性や注目度の高い口コミほど、広い範囲に速いスピードで拡散され、大規模かつ急速に口コミが広まることに対してバズるという表現がなされます。この性質を積極的に利用するのがバズマーケティングであり、注目を集めやすい情報を意図的に選ぶ、または、作り出すことでバズらせることを狙うのがバイラルマーケティングです。
しかし、事実にもとづかない情報や過度な演出、過激な発言により、注目を集めることの側面のみが強調される場合には、炎上商法というマイナスイメージが発生します。
インフルエンサーマーケティング
SNSの個人アカウントやブロガーには、多くのフォロワーやファンをもつインフルエンサーと呼ばれる影響力を持った人物が存在します。企業がインフルエンサーに宣伝を依頼し、インフルエンサーの情報拡散力を利用して商品やサービスの認知を高める手法をインフルエンサーマーケティングといいます。
インフルエンサーマーケティングを行う場合には、インフルエンサーと広告主である企業側との関係を明らかにし、そこで発信される情報が広告であることを明示することが法的に義務付けられています。
また、インフルエンサーマーケティングはバズマーケティングの範疇に含まれるとされています。
ステルスマーケティング
ステルスマーケティングは法規制の対象であることを述べましたが、2023年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法(景表法)の規制対象となりました。
景表法による規制は、発信された情報に広告であることを表示しているかどうかが問題となります。企業が発信する広告であるにも関わらずそれを隠している場合、個人が発信する情報であっても企業の介入によって広告されたものでありそれを表示していない場合、などが規制違反となります。
違反した場合の課徴金等はありませんが、消費者庁の調査により措置命令の内容が公表されることになります。
業界団体である一般社団法人クチコミマーケティング協会(WOMJ)では、ステルスマーケティングを以下のように定義しています。
- 「広告主がいるにもかかわらず、広告主が明示されない広告」
- 「広告という形態をとらずに行われるマーケティング活動で、主体が明らかにされないもの」
- 「本来の広告主とは異なる名称の主体によって行われる、広告・マーケティング活動のこと」
バイラルマーケティングのプラットフォームの種類
そもそも口コミとは、人伝(ひとづて)に伝わる情報のことを指し、対面で伝わる噂や評判のことをあらわします。しかし、バイラルマーケティングと言う場合には、インターネット空間で情報が伝播していくことと捉えられており、情報伝達が行われるプラットフォームにも種類があります。
SNS
バイラルマーケティングの主戦場となるのはSNSの各種プラットフォームです。テキストメッセージが中心のXやFacebook、画像や動画をコンテンツとするInstagram、Pinterest、動画主体のYouTube、Tictokなどが挙げられます。
各プラットフォーマーごとにコンテンツが持つ特性と主要なユーザー層が異なるため、どのメディアでバイラルマーケティングを行うかが重要になってきます。
大手プラットフォーマー
GoogleやAmazon、Appleなどもそれぞれにユーザーから発信される情報を活用するメディアを持っています。
GoogleマイビジネスはGoogleマップを活用したビジネスオーナーのためのリスティングサービスで、オーナーが登録する情報に加えて、ユーザーの評価が集められています。
Amazonでは商品のレビューが集積されており、実際に購入・使用したユーザーの評価がほとんどである点が特徴です。
AppleのAppStoreはApple社のデバイス向けのアプリケーションダウンロードサービスですが、Amazonのレビューと同様にユーザーの声を知ることができるのに加えて、サプライヤー側とのインタラクションが可能です。
バイラルマーケティングで企業が発信するコンテンツの内容
バイラルマーケティングは、企業やブランドによって発信された情報に最初に触れたユーザーが他のユーザーと共有し、拡散された情報を受け取ったユーザーがさらに拡散するというネットワーク効果によって情報拡散の範囲が拡大していきます。
バイラルマーケティングにおいて企業側が関与できる部分としては、最初の情報発信の段階が主要な部分となりますが、リツイートや口コミ投稿に対してインセンティブを付与するなど、2次拡散に介入することもバイラルマーケティングの手法のひとつです。
また企業やブランドが発信するコンテンツの種類は以下のような内容が典型的なものです。
商品やサービスの使用例やレビュー
商品やサービスの効果的な利用方法や使い方のバリエーション、また、ユーザーの日常生活の中での具体的な使用例の紹介など、商品やサービスの魅力や価値を具体的に訴求することができます。
新製品の発表やキャンペーンなどの告知情報
iPhoneの新機種発表などに見られるように、熱心な支持層やファンの多いブランドの新製品に関する情報はよく拡散されます。また、新奇性の高い商品やサービスについても関心を集めることができる要素となります。
技術解説や業界事例など専門性の高い情報
技術やノウハウなど、そのカテゴリーならではの専門的な知識や、一般的には知られていない企業や業界についての情報は好奇心を刺激する材料です。
チャレンジやコンテスト、ハッシュタグキャンペーンなどの参加型コンテンツ
ユーザー参加型のコンテンツは、関与することによる満足感や達成感が積極的な応募や投稿を促し、インセンティブを設けることでその効果を高めることができます。
ユーモアのあるメッセージ・やり取り
SNSの企業アカウントで発信される気の利いたメッセージや、ライバル企業のアカウントとのユーモアあふれるやり取りなど、企業イメージとのギャップにユーザーは親近感を抱きます。ブランディングやファンを増やすための情報発信として有効です。
効果的な情報発信のためのリサーチの重要性
バイラルマーケティングを成功させるための最も基本的な要素は、どのプラットフォームを選択し、どんなメッセージやコンテンツを発信するかということです。
各プラットフォームごとのユーザー特性を理解することと同時に、商品やサービスに対するユーザーの認知や態度を事前にリサーチしておくことが、予測の難しいバイラルマーケティングにおいては必須です。ターゲットを特定し、刺さるコンテンツを作り込むためには、アンケートを使った事前調査が役に立ちます。
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