BtoBマーケティングにアンケートを積極活用 営業プロセスのなかにアンケートを組み込む

BtoBマーケティングにアンケートを積極活用 営業プロセスのなかにアンケートを組み込む

アンケート調査を活用した市場調査は、BtoC系商材の消費者を対象とする場合のほか、BtoB系の商材を扱う企業も対象として実施されます。

BtoC系商材をテーマとするアンケート調査は消費者理解が主要な目的となりますが、BtoB系商材を扱う企業を対象とする場合は、リードの獲得や営業のきっかけとして活用されることも少なくありません。

BtoB企業のマーケティングにおけるアンケートの活用法に焦点を当てて、法人顧客を対象とするアンケートについて解説します。

BtoBとBtoCの顧客特性の違い

BtoBのマーケティングでは、顧客特性がBtoCの場合とは全く異なることを知っておく必要があります。個人の主観が選択の基準となるBtoC商材に対し、BtoB系商材の場合は組織の意思決定により購入の可否が判断されるという点で異なっています。

BtoB系商材購入の意思決定には、予算や対費用効果などの客観的基準に加えて、さまざまな組織レベルの担当者の意向が加わってきます。

また、顧客が商材を認知してから販売に至るまでのプロセスもBtoBとBtoCでは異なります。BtoCでは、顧客が店舗やECサイトを訪問したその場で決済までに至るのに対し、BtoBの場合、試用やオンボーディングなどのプロセスが必要になるケースがほとんどです。

BtoBとBtoCの顧客特性の違いとして次のような点が挙げられます。

BtoCBtoB
マーケティングの対象生活者個人企業・団体
購買目的課題解決・所有・体験課題解決
購買関与者個人または家族複数・部署
購買意思決定者と利用者ほとんどは同じほとんどは異なる
主要な検討要素価格・ブランド・付加価値機能・信頼性・対費用効果
商品・製品の理解容易専門知識が必要
購買単価低い高い
ブランド・ベンダーの変更容易困難
販売方法リアル店舗・EC営業担当者・Webサイト
BtoC/BtoBの顧客特性

BtoB商材の顧客の購買プロセスと製品認知経路

BtoCを対象とするマーケティングでは、消費者が商品の購買に至る認知行動プロセスとして、AIDMAやAISAS、マーケティングファネルといったフレームワークが知られています。

AIDMA、AISASでは以下のプロセスが示されています。

AIDMA
Attention(注目)
AISAS
Attention(注目)
Interest(興味)
Interest(興味)

Desire(欲求)
Search(検索)
Memory(記憶)
Action(行動)
Action(行動)
Share(共有)

これに対し、BtoBの場合の購買プロセスは複雑で、商材の種類や企業それぞれによって異なりますが、米調査会社Gartner社のレポートでは、BtoBの買い手側企業の典型的な購買プロセスの例が挙げられています。

BtoBの購買プロセス1
Problem Identification(課題の特定)
BtoBの購買プロセス2
Solution Exoloration(ソリューション探索)
BtoBの購買プロセス3
Requirements Building(要件定義)
BtoBの購買プロセス4
Supplier Selection(購入先の選択)
BtoBの購買プロセス5
Validation(検証・確認)
BtoBの購買プロセス6
Consensus Creation(合意形成)

上記プロセスを想定した場合に、BtoB系商材の売り手側としては、1の製品が提供できるSolutionが存在するマーケットを高い精度で特定することと、4の購入先候補に入り込むための認知向上が重要です。

4の段階で購入先候補に入り込むために、BtoB系商材の買い手側の担当者がどのように製品情報を入手しているのかを知っておく必要があります。

以下は株式会社メディックスがBtoB商材の売り手企業マーケティング担当者516名と買い手企業の製品選定担当者1,030名を対象に行ったアンケートの結果です。

買い手側の、製品の「認知のきっかけ」を「IT製品選定者」と「製造製品選定者」に分けて聞いています。(単位:%)

認知のきっかけIT製品選定者製造製品選定者
①検索エンジン55.557.7
②Webメディア39.231.7
③出入り業者(システム会社、Sierなど)に聞く26.435.5
④展示会・専門イベント20.826.4
⑤ベンダー・メーカーの営業担当17.725.6
⑥テレビ番組・CM16.321.7
⑦知人から聞く1918.3
⑧ベンダー・メーカー主催のイベント・セミナー16.316.9
⑨ベンダー・メーカーのホームページ19.43.7
⑩交通広告(デジタルサイネージ、タクシー広告など)4.116.9
⑪SNS13.29.3
⑫メールマガジン8.511.7
⑬雑誌10.15.8
⑭FAX、郵送DM75.8
⑮営業電話59.3
⑯書籍5.43.9
⑰自社内の他部門へ相談する12.221
⑱その他0.60.8
⑲そのフェーズに情報収集はしていない10.55.8
(コロナ前後で、BtoB企業のWebマーケティングの割合は増加。ユーザの情報収集は、デジタルへシフト。「2021年版アンケート調査」結果発表)より作成
コロナ前後で、BtoB企業のWebマーケティングの割合は増加。ユーザの情報収集は、デジタルへシフト。「2021年版アンケート調査」結果発表 | 株式会社メディックスのプレスリリース

株式会社メディックスのプレスリリース(2022年3月30日 10時30分)コロナ前後で、BtoB企業のWebマーケティングの割合は増加。ユーザの情報収集は、デジタルへシフト。「20…

上記の結果を見ると、「①検索エンジン」「②Webメディア」が多くの割合を占めており、営業担当者からの売り込みなど外部からの働きかけよりも、買い手側担当者は自分で情報を集め購買活動を進めていく傾向が強いことを示しています。

IT製品と製造製品を比較すると、製造製品では、「③出入り業者に聞く」「④展示会・イベント」「⑤ベンダー・メーカーの営業担当」の割合が高くなっています。

リアルの製品を扱う製造業関連の場合は、ネットを活用した情報収集の次の段階として、製品現物を目の前にした評価・比較が重要視されることが見て取れます。

また、BtoCの場合は、マーケティングチャネルとしてSNSの活用が取り上げられますが、BtoBの場合はその比重がそれほど大きくはないこともこの調査結果から読み取ることができます。

BtoBで必要な営業情報の収集活動

BtoBの営業対象先の購買プロセスを把握するためのマーケティング活動にアンケートを活用することには意味があります。

従来、営業先から的確な情報を聞き出し、それに沿った提案を行うことは、営業担当者の属人的なスキルに位置づけられていたことです。

前述の調査で明らかなように、買い手側担当者のネットを介した情報収集活動が重要視されるようになった現在では、ネット上でのタッチポイントから始まる購買検討プロセスのなかでリードとなる対象先の情報を捉えることの重要性が高まっています。

BtoBを対象とするWebマーケティングでは、リード顧客を生み出す方法としては以下の6つが主なものです。

  • 広告
  • コンテンツマーケティング
  • 無料お試し期間
  • 問い合わせフォーム
  • オンラインイベント
  • SNS運用
  • テレマーケティング

これらのマーケティング施策を行うなかに、ユーザーとのコミュニケーションのひとつの手法としてアンケートを取り入れることで、これまで営業担当者が行っていた情報収集活動を効率化することができます。

アンケートの聴取項目

顧客の購買プロセスの段階によって聴取すべきアンケート項目は異なります。先に挙げたBtoBの顧客特性の違いから、以下のような項目を聴取することが有効です。

現状・課題提供するプロダクトが顧客の課題解決につながるかどうかを判断するための情報となります。特に、SaaS製品などのパッケージは顧客が求める要件と提供できるソリューションが必ずしも一致しないことも多く、より詳細な情報を得ることが重要です。
選定・評価ポイント予算を始めとして、仕様、機能、サポートなど顧客が重視する選定・評価のためのポイントを把握する必要があります。
検討状況競合製品があるのかどうか、購買プロセスの具体化の程度など、購買につながる可能性を判断するための情報となります。
予算・納期検討状況と同様に、購買につながる現実性とセールスを行うための時間軸を把握します。
意思決定・決裁の流れ取引金額が大きいほど意思決定と決裁の流れが複雑になるため、営業アプローチのポイントを定める上で重要な情報となります。
ユーザーの属性要件業種や職種、企業規模など、ターゲティングとの整合性の確認し、マーケティングの方向性を見極める上でも必要な情報です。
アンケート調査の聴取項目
アンケートの調査設計|マーケティングリサーチの目的別設問の作り方

マーケティング領域で行われるアンケート調査の調査設計では、マーケティング課題をリサーチ課題に落とし込む作業を行います。 マーケティング課題はそれぞれのケースによ…

アンケートの実施タイミング

上記の聴取項目は購買に至る前の段階で必要な情報ですが、契約に至った直後の段階でアンケートを行うことで営業アプローチや営業プロセスのなかでの課題を抽出することにつながります。また、失注したケースについてアンケートを回収することができれば、その要因を明らかにすることができます。

契約後も利用状況や満足度、不満要素等について、アンケートを使って継続的なコミュニケーションを保つことで、LTVの向上やプロダクトの課題抽出などにつながります。

インセンティブの重要性

リードジェネレーションの手法すべてに共通しますが、Web広告やコンテンツマーケティングからの反応はインプレッションに対して非常に小さい割合であることが一般的です。そのなかで、反応のあったユーザーにメールでアンケートを依頼したとしても、回収できるアンケートの数は限られます。

リードジェネレーションへの反応率を高める目的と合わせて、ソリューションや製品に関連する情報をホワイトペーパーやケーススタディ、インフォグラフィックスなどにまとめたものをインセンティブとして用意しておくことが、アンケートを実施する場合にも役に立ちます。

まとめ

営業にアンケートを活用する方法は、保険の訪問営業などでも使われるテクニックであり、売り込みの印象を抑えて顧客の課題や悩みを聞き出すきっかけとして用いられます。

Webマーケティングにおいてもリードジェネレーションの段階でアンケートのワンクッションを組み込むことで、ユーザーの情報が整理されスムーズな営業アプローチに変えられる可能性があります。

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来場者とのコミュニケーションのきっかけに利用できることに加えて、回答をもとにリードナーチャリングの選別を行うことも可能になります。

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