NPSとは|簡単解説

NPSの意味とはの解説

NPSのカンタン語句解説

NPSはネット・プロモーター・スコア/ネット・プロモーター・システムの略で、顧客ロイヤルティを測定するための指標です。顧客に対し、製品やサービスを他者に薦めたいかどうかを11段階の評定尺度で質問し、その結果からスコアを算出します。

NPSは顧客ロイヤルティを測定するための標準指標

NPS(ネット・プロモーター・スコア/ネット・プロモーター・システム)は顧客ロイヤルティを測定するための質問尺度と指標化の方法をワンセットにしたものです。

米コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーが2003年に開発し、2006年に出版された「The Ultimate Question(日本語訳:『顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」』)を契機として広く知られるようになりました。

顧客に対して、「利用した製品やサービスを他人に薦めたいかどうか」を、11段階の評定尺度で答えてもらい、スケールの得点によって、顧客を「批判者」「中立者」「推奨者」に分類、さらに、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値がNPSです。

得られたスコアに業績との連動性が見られること、単一の質問で指標化が完結することが従来の顧客満足度調査との大きな違いであり、顧客ロイヤルティの測定指標を標準化したものとして普及しています。

NPSスコアの算出方法

NPSの算出方法

従来の顧客満足度調査で顧客から聴取するのは、製品やサービスの各要素に対しての評価とその理由です。

それに対してNPSは、「(製品やサービス、ブランド)を友人や同僚に薦める可能性を0~10点で答えてください」という1つの質問に集約させていることが大きな特徴といえます。

NPSを得るためには、アンケート調査の質問と回答を以下の形で自社の製品やサービスを利用した顧客に提示します。

NPSアンケートの雛形
勧めたくない012345678910勧めたい
質問:この(製品・サービス)を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか。薦めたいと思う度合いを0点から10点で回答してください。

得点による集計結果を以下の3つのセグメントに分類します。

NPS調査結果の分類
012345678910
〇人〇人〇人〇人〇人〇人〇人〇人〇人〇人〇人
〇〇%〇〇%〇〇%
批判者の割合中立者の割合推奨者の割合
NPS例の集計方法

分類されたそれぞれのセグメントは以下の特徴を持っています。

NPS分類の意味
9~10点 → 推奨者(プロモーター)顧客体験に対する評価が高く、継続率や再購入率の高いロイヤルティの高い顧客層他者に対しポジティブな評価を伝える可能性が高い調査にも協力的で建設的なフィードバックを得られることが多い
7~8点 → 中立者(パッシブ)支払い相当分の満足度と感じている顧客層受動的な評価であることから他者に薦める行動には結びつかない流動的な顧客層であり、離反する可能性が高い
0~6点 → 批判者(デトラクター)自社の商品やサービスに対し、不満を持ち失望している顧客層ネガティブな評価を他者に伝える可能性があり業績にマイナス影響を与える従業員にも業務負荷とモチベーション低下をもたらす
分類された3セグメント

推奨者の割合から批判者の割合を引いたものがNPSであり、%を省略して表記します。

NPSスコアの算出

NPSスコア = 推奨者の割合 ー 批判者の割合

従来の顧客満足度調査との違い

顧客に対して投げかける「友人や同僚に薦めたいかどうか」という1つの質問は、顧客と製品やサービスとの関係性において多くの要素を含んでいます。

NPSが焦点を当てるのは将来の行動

従来の顧客満足度調査の質問は、顧客が自社の商品やサービスを実際に使用して感じた過去の経験に対する評価です。

単に満足したかどうかという評価は、その顧客が商品やサービスを継続利用するかどうか、再購入するかどうかとは直接的には結びつかないことがわかっています。つまり、「満足した」からといって顧客ロイヤルティが高いということになならないわけです。

一方、NPSの質問は、評価という自身の判断を他者にも伝えるという将来の行動について聞いています。

既存顧客が他者に薦めるという行動は、口コミによって新しい顧客が増加することにつながり、薦めた顧客自身の再利用や継続利用の意向とも大きく関連しています。

つまり、顧客が「他者に薦めるかどうか」を問う質問の答えが、企業の将来的な収益に直結していると考えることができるということです。

「他者に薦めるかどうか」はストレスの高い質問である

自分が利用した製品やサービスを他人に薦めることは非常にハードルの高い行動です。もし、自分が薦めた友人や同僚に満足に至る結果が得られなければ、薦めた本人の信用が疑われることになるからです。

顧客が高いレベルの顧客体験に満足したことに加えて、商品やサービスに対する信頼性と愛着がなければ、他人に薦めるという行動は取らないと考えられます。

NPSで得られる指標は、高い顧客ロイヤルティを持つ顧客層を判別するための質問として理にかなっているということができます。

業績の先行指標として実用性が高い

NPSは顧客ロイヤルティが企業の成長に貢献する重要な指標であるという問題意識をもとに、さまざまな調査手法を検証した結果として開発されたものであり、NPSスコアが売上高成長率をはじめとする業績指標と連動することは多くの事例で裏付けられています。

また、NPSと再購入率・紹介率、「推奨者」「中立者」「批判者」別のLTV(顧客生涯価値)の違いなど、KPIの1つとしての実用性が高いこともNPSが取り入れられる大きな理由の1つです。

NPSは標準化された指標として使うことができるため、自社の顧客満足度に関する時系列での変動や、企業間・事業間で比較する際にも利用可能であることが指標としての有効性につながっています。

NPSの評価対象と評価理由の聴取

NPSは、「他者に薦めるかどうか」を基準とする顧客満足度の評価指標ですが、顧客が他者に薦めたいと評価したモノやコトは、ブランド全体なのか、特定の製品やサービスなのかを明確にしておく必要があります。

また、他者に薦めたい・薦めたくないと思う理由を特定しなければ、改善につなげることができないため、NPSの11段階の評価を行う質問に加えて、その理由を問う質問も組み合わせて行うことが有効です。

調査実施タイミングに留意を

他者に薦めたい・薦めたくないという評価には、購入前から購入時、購入後に至るまでの各タッチポイントでの顧客体験が直接的な影響を与えます。個別の顧客体験にフォーカスする場合には、購入時やサポート利用などタッチポイントでのイベント直後のタイミングで調査を行うのが適切です。

企業やブランド全体に対するロイヤリティは、各ユーザーの顧客体験を総合したものによって形成されていきます。一人ひとりの顧客の各タッチポイントで得られるNPSと定期的な調査で得られる企業やブランドに対するNPSを合わせて用いながら、顧客ロイヤリティを向上させるための継続的な改善活動を実施することが重要です。

NPSを運用する際の注意点

NPSを運用する目的は顧客ロイヤルティを向上させるためです。NPSはあくまで指標であり、顧客ロイヤルティを改善するための行動に結びつかなければ意味がありません。これを踏まえ、NPSを運用する際には以下の点に留意する必要があります。

顧客からのフィードバックにもとづいた継続的な改善活動

一般的な顧客満足度調査でも同じことがいえますが、単に調査によって指標を得るだけでは何も変わらないのは当然のことです。顧客の声というフィードバックをもとにした改善のための継続的な行動を日々の業務に組み込んでいくことが求められます。

顧客からのフィードバックを得て企業側が学び、学びを実践に取り入れていくサイクルを、ベイン・アンド・カンパニーでは「クローズドループ」と呼んでいます。

経営トップの関与

顧客ロイヤルティを獲得することは、多くの企業にとって不可欠な戦略上の課題に位置づけられ、顧客起点の価値観を浸透させていくことが効果的なCRMの実践につながっていきます。

また、NPSが業績の先行指標となるという点をとっても、経営レベルで意識されるべき指標です。NPS向上に向けた業務執行プロセス全体にわたる意思決定を行うために、経営陣が積極的に関与していく必要があります。この点も、NPSが現場の改善活動と一線を画す点といえます。

国内調査ではNPSが低くなりがち

他者に薦めるかどうかを11段階の評定尺度で求め、推奨者の割合から批判者の割合を引いて算出するという非常に簡潔な指標であることが、NPSがあらゆる業種の企業でグローバルに用いられるようになった要因の1つです。

注意しなければならないのは、国内の企業を対象に調査を行った場合、NPSスコアは低い値が示されることが非常に多いという点です。

日本は、商品やサービスの提供水準がもともと高いこと、また、アンケート調査の心理的バイアスとして中心化傾向が働きやすいことが影響し、0〜6までを批判者とする区分では批判者が多くなる傾向があります。他の企業のNPSと比較する場合には、この点に留意することが重要です。

NPSの語句解説まとめ

顧客満足度や顧客ロイヤルティが重要視されるようになってきた背景には、市場の成熟化、少子高齢化による消費市場の縮小、インターネットを利用したサブスクリプションサービスの増加といった要因が重なっています。

NPSが多くの企業に取り入れられている理由も、新規顧客獲得に対して既存顧客のLTV(顧客生涯価値)の向上が重視されるようになった結果といえるでしょう。

NPSはアンケート調査の1つの項目であることに違いはありませんが、経営レベルで改善に取り組むべき重要な指標であることを認識する必要があります。