コンジョイント分析とは|簡単解説
コンジョイント分析のカンタン語句解説
コンジョイント分析は、複数の構成要素が全体の評価にどのように影響しているかを分析する手法です。商品開発のなかで、最も消費者に受け入れられる仕様の組み合わせを検討する際などに使われます。コンジョイント分析は選好の要因を定量的に把握する分析手法といえます。
コンジョイント分析の概要
消費者が商品を購入する際、機能や品質、デザイン、価格、アフターサービスなど、どの要素(属性)を重要視するかは人によって違いますし、商品の種類によっても競争要因となるポイントが異なります。
コンジョイント分析は商品のそれぞれの属性が消費者の購入にどの程度寄与しているかを集団全体の重要度として算出します。
選好に関わる要素の優先順位と影響の大きさを可視化することで、各要素の最適な組み合わせを決定することができます。
コンジョイント分析の手順
消費者が商品に対して求める要素(属性)をあらかじめ抜き出し、何パターンかの組み合わせを調査対象に提示し評価してもらいます。その結果から、商品の選好に関わる各属性の寄与の程度(部分効用値)を算出し、集団全体にとっての重要度を明らかにします。
①属性と水準の決定
評価したい要素を属性、各属性の中身となる程度や種類を水準と呼びます。コンジョイント分析で最初に行うことが属性と水準を決定することです。
具体例として、ワンルーム賃貸マンションの物件の仕様について属性と水準を設定するケースを考えてみます。
属性 | 水準 |
部屋の広さ | 30㎡未満・30㎡以上 |
駅からの距離 | 10分未満・10分以上 |
角部屋かどうか | 角部屋・角部屋でない |
この場合の属性の数は3つ、各属性の水準の数は2つずつです。すべての組合せは23=8通りです。
②直交表による水準の組み合わせの割付け
上記の例では、組合せが8通りなので、8つの組合せを調査対象に提示して評価してもらうことは可能です。
しかし、2つの水準を持つ属性が5つあった場合は25=32通り、2つの水準の属性が4つ、3つの水準の属性が1つの場合では、組合せが24✕31=48通りとなり、組合せの数が多い場合、アンケート調査として調査対象に評価してもらうことは現実的ではありません。
このような組み合わせのパターンを評価する場合、25個=32個の場合は8通り、24✕31=48の場合も8通りを試すことで、すべての組み合わせを試した場合と同じ結果が得られることがわかっています。それを表で示したものが直交表です。
直交表は属性と水準の数から、最小限の組合せと組み合わせられる水準のパターンをあらわすもので、属性と水準の数に合わせて既に作られているものを活用します。
直交表の種類は以下のような表し方をします。
いくつかの直交表の具体例を挙げてみます。以下に挙げたもの以外にも多くの直交表が既に作られており、L934型、L1643型、L122332型、L12213141型、L1645型など数多くの種類があります。
属性の数が3つ、水準は1と2の2つです。できあがる組合せの数は23=8通りですが、L423型の直交表により、2つの水準を3つ組合せた4つのプロファイルを作れば事足りることがわかります。
属性の数が7つ、水準は1と2のつの場合のL827型直交表です。できあがる組合せの数は27=128通りです。属性の数が4つから7つまでであれば、L827型の直交表を使って8つのプロファイルで評価することが可能です。
属性の数が5つ、そのうち水準が1と2の2つの属性が4つ、水準が1,2,3の3つの属性が1つの場合の直交表です。水準の組合せは24✕31=48です。この場合も8つのプロファイルで評価可能です。
最初に例として挙げたワンルーム賃貸マンションの属性と水準は以下のように整理できます。
属性 | 水準 | ||
部屋の広さ | 属性1 | 30㎡未満 | 1 |
30㎡以上 | 2 | ||
駅からの距離 | 属性3 | 10分未満 | 1 |
10分以上 | 2 | ||
角部屋かどうか | 属性5 | 角部屋 | 1 |
角部屋でない | 2 |
これを、L423型の直交表に当てはめると以下のようになります。直交表で示された水準の値に従い、具体的な属性の内容に置き換えることを割付けといいます。
部屋の広さ | 駅からの距離 | 角部屋かどうか | |
プロファイル1 | 30㎡未満 | 10分未満 | 角部屋 |
プロファイル2 | 30㎡未満 | 10分以上 | 角部屋でない |
プロファイル3 | 30㎡以上 | 10分未満 | 角部屋でない |
プロファイル4 | 30㎡以上 | 10分以上 | 角部屋 |
③実査
3つの属性それぞれの2つずつの属性を組合せた4つのプロファイルができあがったので、この4つのプロファイルを調査対象に提示し評価してもらいます。
コンジョイント分析ではできあがったプロファイルをカードにして調査対象に提示する方法を取ることが一般的です、各プロファイルを1枚のカードに記載したものをコンジョイントカードと呼びます。
コンジョイントカードの評価方法は以下のような種類があります。
種類 | 質問方法の例 | 評価得点の計算方法 |
SA回答 | 最も良いと思うカードを1つ選択 | 回答比率 |
MA回答 | 良いと思うカードをいくつでも選択良いと思うカードを3つ選択 | 回答比率 |
順位回答 | すべてのカードに順位を付ける良いと思うカードを上位3位まで選ぶ | 順位平均値 |
段階評価 | 各カードにについての好ましさを5段階で評価 | 平均値 |
得点評価 | 各カードに0~10点の得点を付ける | 得点の平均値 |
④分析
調査対象者から得られた評価結果は重回帰分析という手法を使って、各属性が評価にどの程度影響しているかを数値化します。
重回帰分析は2つ以上の説明変数それぞれが目的変数に与える影響の度合いを数値化する統計手法です。
ワンルーム賃貸マンションついて、条件に優先順位を持った回答者A~Dの4人に4枚のカードを評価してもらった結果が以下の表です。10点満点で好ましい順に点数を付ける得点法で評価しています。
回答者A※優先順位1.広さ2.駅チカ | 回答者B※優先順位1.駅チカ2.角部屋 | 回答者C※優先順位1.角部屋2.広さ | 回答者D※優先順位1.駅チカ2.広さ | 得点平均 | |
プロファイル1 | 3 | 6 | 4 | 6 | 4.75 |
プロファイル2 | 2 | 3 | 1 | 1 | 1.75 |
プロファイル3 | 5 | 5 | 3 | 4 | 4.25 |
プロファイル4 | 7 | 4 | 6 | 3 | 5 |
重回帰分析はSPSS等の統計解析ソフトを使って集計を行いますが、エクセルの分析ツールでも計算を行うことができます。
上記のデータをもとにエクセルの分析ツールで回帰分析を行うと以下の結果が出力されます。
上の表の網掛けで示した部分を回帰係数といい、得点に対する影響度の大きさを表しています。
※この事例は手順を単純化するために最小限の属性と水準、サンプル数で作成したもので、統計的に意味のある結果とはなっていません。重回帰分析の結果が統計的な精度と意味を持っているかどうかの指標として、エクセルの出力結果の以下の項目をチェックすることが必要です。 ・「補正 R2」→ 0~1の範囲で1に近いほど回帰式の精度が高い ・「有意F」→ 0.05未満であれば回帰式の有用性は高い ・「P-値」→ 0.05未満であれば説明変数は目的変数に関係性がある ・「t 値」→ 絶対値が2より小さい場合、説明変数は目的変数に影響していない |
コンジョイント分析から導き出される最終結果が以下の表です。
属性名 | 水準 | 回帰係数 | 加重平均 | 部分効用値 | レンジ | 重要度 |
部屋の広さ | 30㎡以上30㎡未満 | 1.3750.000 | 0.6875 | 0.6875-0.6875 | 1.375 | 31.5% |
駅からの距離 | 10分未満10分以上 | 1.1250.000 | 0.5625 | 0.5625-0.5625 | 1.125 | 25.7% |
角部屋かどうか | 角部屋角部屋でない | 1.8750.000 | 0.9375 | 0.9375-0.9375 | 1.875 | 42.8% |
4.375 | 100% |
コンジョイント分析では回帰係数から算出した部分効用値が大きいほど、その属性が選好に大きく関わっていると考えられ、部分効用値の合計を全体とする構成比を重要度として表します。
コンジョイント分析の注意点
評価する属性と水準を慎重に選ぶ必要があります。設定する属性と水準が多いとカードの枚数が増えるため、カードの枚数が10枚以上といったケースでは、回答者が混乱してしまい適切な回答を得られなくなります。
重回帰分析を行う際の説明変数は7個程度までが良いとされており、水準が4つ含まれる属性があると直交表の組合せも10を超えます。水準の数は2〜3程度とすることが一般的です。
また、選好に影響する度合いが明らかに高いと考えられる属性や水準を設定すると、効用値と重要度が不当に高く評価され、分析の意味をなさなくなることも考えられます。
コンジョイント分析まとめ
コンジョイント分析を行うことで、単純集計やクロス集計では見えてこない、構成要素が選好に与える影響の大きさを把握することができます。
ツールを活用することで分析を行うハードルは下がりますが、意義のある分析を行い信頼性の高い分析結果を得るためには、統計の知識を身につけることが必要です。
コンジョイント分析については、この記事で詳細に解説しました。さらに別の表現で知りたい場合は、こちらの記事をご覧になってください。