マインドシェアとは|簡単解説
マインドシェアのカンタン語句解説
マインドシェアは一人ひとりの消費者が持つ、そのブランドを買うかどうかを判断する際の優先順位や重要度についての認識のことです。単にブランドを知っているかどうかに加えて、好みの強さやブランドに対する愛着、信頼感といった心理的側面が含まれます。マーケティングリサーチにおいては定量化することが難しい概念ですが、想起の強さによって測定することが一般的です。
マインドシェアとは
マインドシェアとは、特定の商品カテゴリーにおいて、個々の消費者がブランドについて持っている認識の大きさをシェア(占有率)と表現したもので、消費者の認知・意識のなかで特定のブランドが持つ存在感や影響力をあらわす指標として用いられます。
購買行動において消費者は選択を行います。例えば、スナック菓子や洗剤、家電製品、自動車など、さまざまな商品カテゴリーにおいて、個人にとっての商品カテゴリーの重要性や各ブランドの購入・使用経験、広告への接触頻度などがマインドシェアの大きさに影響を与えます。マインドシェアが高いブランドは、購入に至る可能性が高まることが考えられます。
ブランド認知の測り方
マインドシェアは人間の認知についての概念であることから、何らかの方法を用いて定量化する必要があります。
ブランド認知とは、「消費者があるブランドについて特定の商品カテゴリーに属していることを認識、または、想起することができる」ことです。商品カテゴリーが提示された時に、商品カテゴリー=ブランドという強い結びつきで認識している状態から、ブランド名を見たり、聞いたりしたときに、なんとなく見たことがあるという曖昧な記憶まで、認知のレベルには違いがあります。
ブランド認知のレベルは以下のような4つの段階であらわされます。
TOMA(第1想起)Top of Mind Awareness | 商品カテゴリーが提示された時に、最初に想起されるブランドです。 |
ブランド想起(純粋想起) | 商品カテゴリーが提示された時に、何の手がかりもなしに自発的に想起することができるブランドです。 |
ブランド認識(助成想起) | 外部からの手がかりをもとに想起することができるブランドです。 |
ブランド未知 | ブランドについて知らない状態を指します。 |
純粋想起とは
助成想起とは
マインドシェアに影響を与える要因
マインドシェアは個々のブランドや消費者ごとにさまざまな要因によって形成されるものです。マインドシェアに影響を与える要因として次のようなものが考えられます。
商品やサービスの品質
優れた商品やサービスが高い認知を得られるのは当然のことであり、マインドシェアの形成に最も影響する要素です。
商品やサービスそのものの品質に加えて、購入からアフターサービスまでのユーザーエクスペリエンス全体がマインドシェアの獲得に影響します。
プロモーションとマーケティング施策
広告などをとおして消費者の目に触れる機会を増やすことで、ブランド認知を高めることができます。消費者がブランドに接触する機会を増やす取り組みは、広告だけにとどまらずさまざまなマーケティングチャネルを通じて行う必要があります。
評判・口コミ
SNSが普及している現在、消費者の評価やおすすめは短期間に拡散し、直接的なプロモーションを行う以上にブランドを信頼してもらえる確率が高まります。
プロモーションのためのチャネルとしてSNSの重要性は高まっています。
イノベーション
これまでになかった商品や新たな価値観にもとづくサービスは、新たな商品カテゴリーの開拓者として消費者に印象づけられます。マーケットリーダーとなれる可能性が高いことから、多くのマインドシェアを獲得することにつながります。
共感と説得力
認知は消費者の心理的・精神的な状態に大きな影響を受けることから、人の感情に訴える要素はブランド認知の形成に影響を与えます。ブランドが持つ共感できる価値観や説得力のある物語性を持つことはマインドシェアの形成に役立ちます。
マインドシェアのマーケティングリサーチへの応用
マインドシェアを測定することでブランド間のポジショニングを明確にすることができます。
第1想起、純粋想起、助成想起はアンケート調査によってデータを取得します。質問項目としては以下のような質問を設定します。
第1想起 | 自由回答で以下の質問を設定します。「〇〇について最初に思い浮かぶブランドを記入してください。」※〇〇は商品カテゴリー名 |
純粋想起 | 自由回答で以下の質問を設定します。「〇〇について、知っているブランドをいくつでも記入してください。」 |
助成想起 | 商品カテゴリーにブランド名を挙げて複数選択の質問を設定します。「〇〇について、知っているブランドをいくつでも選んでください。」 |
純粋想起率(第1想起率)×助成想起率
アンケート調査の結果から純粋想起率と助成想起率を算出し、以下のような散布図を作成します。
純粋想起率が高いことをブランド認知の「強さ」、助成想起率が高いことをブランド認知の「広がり」と捉え、各ブランドの純粋想起率と助成想起率の高低の比較から、各ブランドのポジショニングについて以下のような解釈が得られます。純粋想起率を第1想起率に置き換えても分析の意味合いとしては同じです。
右上:純粋想起率(高)×助成想起率(高)
純粋想起率と助成想起率がともに高い場合、そのブランドは幅広く知られ、かつ、よく知っている人も多いブランドであると考えられます。市場シェアの上位に位置するブランドが当てはまります。
右下:純粋想起率(高)×助成想起率(低)
純粋想起率が高いにも関わらず助成想起率が低い場合、ブランドについてよく知っている人が存在しているものの、幅広く知られるまでに至っていないことが想定されます。
左上:純粋想起率(低)×助成想起率(高)
助成想起率が高いということは、そのブランドをなんとなく知っている、聞いたことがあるという人が多いことを示しており、純粋想起率が低いことは商品カテゴリーを代表するブランドとしてのイメージが弱いことを意味しています。
左下:純粋想起率(低)×助成想起率(低)
純粋想起率、助成想起率が共に低いことから、市場におけるマインドシェアが低いブランドに位置づけられます。
純粋想起率×推奨率(NPS)
NPS(ネットプロモータースコア)は顧客ロイヤルティを測る指標です。NPSと純粋想起率を比較することにより、ブランドに対する認知と信頼感・愛着によってポジショニングすることができます。
右上:純粋想起率(高)×推奨率(高)
純粋想起率と推奨率が共に高いブランドは、よく知られており、ブランドに対する信頼や愛着も高いブランドです。
右下:純粋想起率(高)×推奨率(低)
純粋想起率が高いにも関わらず、推奨率が低いということは、よく知られているものの愛着のわかないブランドであるということができます。ロイヤルティを高めるためのマーケティング施策が必要です。
左上:純粋想起率(低)×推奨率(高)
推奨度が高いため、ブランドに対する信頼や愛着は得られているということになります。知名度を高めるためのマーケティング施策に注力することが求められます。
左下:純粋想起率(低)×推奨率(低)
ブランドの知名度、ロイヤルティともに低いブランドです。
まとめ
マインドシェアを測定する際に注意しなければならないのは、単に認知度が高くてもそのすべてか肯定的な評価によって形成された認知度ではない可能性もあるということです。ネガティブな評判によって知られたブランドであれば、高い認知度は業績に対してマイナスに働くのは当然のことです。
アンケート調査を実施する場合には純粋想起と助成想起を聴取することに加えて、その理由も記入してもらう質問項目を設ける必要があります。