「マーケティングリサーチと市場調査」 マーケティングにどう活かされるのかを解説

マーケティングでの市場調査利用

普段マーケティングに関連する業務に携わっていても、マーケティングリサーチとマーケットリサーチの違いや、何を調べることが市場調査なのかを改めて問われると、明確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。

マーケティングリサーチとマーケットリサーチは区別され、マーケティングを体系的に理解する上でその位置づけを知ることは重要です。一方、市場調査はどちらにも使われる言葉ですが、「市場=マーケット 」を調べるという意味を持っています。

マーケティングリサーチを理解するためにはマーケティングの全体像を知り、情報収集活動であるリサーチがどのように関連しているのかを知る必要があります。

この記事ではマーケティング活動のなかでマーケティングリサーチが担う役割を解説します。

マーケティングリサーチとは|基礎から応用まで徹底解説

マーケティングリサーチの意味、目的、条件、方法、必要なことなどを詳細解説。マーケティングリサーチの必須情報が詰まっています。

「マーケティング・リサーチ」と「マーケット・リサーチ」、「市場調査」それぞれの違いは?

消費者がたくさんある商品のなかから欲しい物を選んで購入に至るのは、企業のマーケティング活動の結果であるという側面があります。

企業側は購入する可能性の高い消費者を見つけ出し、商品やサービスの存在を知らせてその価値を伝えること、そして、どうすれば消費者の購買意欲を高められるかを考え、その仕組みづくりを行います。それがマーケティングです。

現代のマーケティングはAMA(アメリカマーケティング協会)の考え方にもとづいており、AMAでは1985年に次のように定義しています。(※)

Marketing is the process of planning and executing the conception, pricing, promotion and distribution of ideas, goods and services to create exchanges that satisfy individual and organizational objectives.
(和訳)
マーケティングとは個人と組織の目的を満足する交換を創造するために、アイデア、商品、サービスに関する概念形式、価格、プロモーション、チャネルを計画し統制するプロセスである。

マーケティングリサーチとは

マーケティングのさまざまな活動を行うためには、提供する商品やサービスが含まれる市場について知ることが前提となります。

まず調べる必要があるのは、商品やサービスを投入すべき市場はどこか、そして、その市場を形成する参入企業や顧客層についてです。

それらの情報にもとづき、商品やサービスの詳細や価格設定、顧客に届けるための販売ルートや認知を高めるための広告についての手段や方法が決められます。

その際にも競合他社の商品や価格・流通、自社の商品・サービスが想定する顧客に適した広告やプロモーションなどについて調べる必要があります。

これらをすべて含めたものがマーケティングリサーチです。整理すると以下のようになります。

マーケットリサーチ・市場調査とは

マーケットリサーチは文字通り「マーケット」について「リサーチ」することであり、自社の商品・サービスが対象とすべきマーケットの成り立ちを明らかにすることです。以下のような項目について調べることを指しています。

  • 市場規模
  • 競合・参入企業
  • 市場占有率(シェア)
  • 顧客属性
  • 市場環境 など

これらを調べることに対して、「マーケットリサーチ」または「市場調査」という言葉を使います。

それに対して、ターゲットとする消費者側にフォーカスし、自社の商品やサービスとの関係性を明らかにするために行う調査は、マーケットリサーチとは区別されます。

欧米ではカスタマーリサーチがマーケットリサーチに含められて使われることがあり、また、国内で消費者調査が市場調査と同じ意味で使われることもあることから、マーケティングリサーチ、マーケットリサーチを区別せずに市場調査という言葉が使われているのが実情です。

マーケティングのフレームワークのなかでのマーケティングリサーチの役割

マーケティングではさまざまなフレームワークを使って取るべき戦略を検討し、具体的なマーケティング施策を計画していきます。そのために必要な情報を集めて分析するのがマーケティングリサーチの役割です。

何を調べる必要があるかを考えるための「3C」「4P」「4C」

マーケティングリサーチで何を調べるかを考える際の基本となるのが、マーケティングの要素を分析するための「3C」「4P」「4C」というフレームワークです。

3C4P4C
Customer(顧客)Company(自社)Competitor(競合)Product(商品)Price(価格)Place(流通)Promotion(販売促進)Customer Value(顧客価値)Customer Cost(顧客のコスト)Convenience(利便性)Communication(コミュニケーション)

3Cによって自社の商品やサービスが置かれているマーケティング環境を分析し、それにもとづいて自社のマーケティング戦略の中身である4Pを決定します。

4Pはマーケティングミックスといわれ、具体的なマーケティング施策の中身を決めるものです。4Pを決定する際には、4Pを顧客視点から把握するための4Cについて調査・分析を行います。

3Cについて分析するために必要な情報を集めるのがマーケットリサーチです。3Cは自社を取り巻く外部環境について分析するために行いますが、それ以外に、マクロ環境を分析するためのPEST分析といった手法もあります。

4Cは顧客視点に立った場合に分析する要素を挙げたものです。これらについては消費者を調査対象とするマーケティングリサーチを行います。

4C分析についての詳しい解説は、こちらのクロス・マーケティングの記事をご覧ください。

マーケティングプロセスのなかでの「STP」

マーケティングのさまざまな活動を行う流れをマーケティングプロセスと言い、以下のような順番を基本としてマーケティング戦略や具体的な施策を検討します。

市場分析
セグメンテーション
ターゲティング
ポジショニング
4P
実行・検証

このなかのセグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の頭文字を取ったものがSTPで、どんな顧客層に対してどんな商品・サービスを送り出していくかを検討するために使われるフレームワークです。それに基づいて4Pが決定されます。

S(Segmentation):顧客の分類

T(Targeting):標的とする顧客層

P(Positioning):自社の商品・サービスの立ち位置

S(Segmentation):顧客の分類

どの顧客層に向けて商品やサービスを開発し販売するかを明確にするために、市場=顧客層を細かく分類した切り口を見つけます。

顧客層の分類は、年齢・性別・職業といったデモグラフィックデータ、価値観やライフスタイルなどの心理的変数、購入頻度や使用用途などの行動変数といった基準が用いられます。

これらを分析する際にもマーケットリサーチによって広く情報を収集します。デモグラフィックデータは官公庁の統計資料が情報源となり、心理的変数や行動変数は消費者調査をもとに情報を集めます。

T(Target):標的とする顧客層

分類した顧客セグメントのなかで、どの顧客層をターゲットとするかを決定します。その際には、ターゲットとする市場に十分な規模があるかどうか、また、市場に成長可能性があるかどうか、競合他社の参入状況とともにそのなかで自社はどういう位置づけにあるかといったことがターゲットを決める際の判断基準となります。

市場の規模や成長性について調べる際には、業界団体や新聞記事等のオープンデータを活用します。また、競合状況についてはオープンデータのほか専門の調査機関に依頼する方法があります。

P(Positioning):自社の商品・サービスの立ち位置

マーケットシェアや企業規模などにおいて自社がどのポジションを占めているのかがポジショニングです。

既に参入済みの市場か新規参入する市場か、競争上で優位な立場にあるか劣勢に立つかによって取るべき戦略は異なってきます。

ポジショニングの切り口はセグメンテーションとターゲティングをもとにして検討します。2つの変数をもとに競合他社と製品を比較するポジショニングマップや、競争状況を明確化するためのSWOT分析などの手法が使われます。

4Pで具体的なマーケティング施策を決める

マーケティング戦略における4Pとは、Product(商品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)のそれぞれについて具体的な方向性を決めることです。

例えば、ペットボトル飲料の緑茶の場合の具体例として以下のような4Pが考えられます。

商品カテゴリー:ペットボトル飲料の緑茶

Product(商品):難消化性デキストリンを配合し血糖値上昇を抑える健康飲料

Price(価格):350mlボトルで190円と高価格帯商品とすることで付加価値を強調

Place(流通):コンビニ限定での販売とし多忙なビジネスマンへの販売を意識

Promotion(プロモーション):TVCMと自社SNSを活用

Product(商品)

商品のコンセプト、仕様、機能やパッケージデザインなど提供方法に至るまでの商品やサービスそのものの詳細を決定するのもマーケティングの役割です。

商品についてのこれらの要素を検討する際に、対象とする消費者に対してどんな商品が受け入れられやすいかを調べるための製品調査が実施されます。

アンケート調査から製品に対するフィードバックを収集するほかに、会場テストホームユーステストなど、消費者に実際に体験してもらう方法なども取られます。

Price(価格)

競合他社と比較した場合の自社商品のポジショニングが価格設定に影響します。低価格戦略で市場浸透を図るケースや、ブランド価値やその他付加価値を訴求することで高価格帯で商品化を図るケースなどが考えられます。

これまでにない新しい商品を販売するケースなどでは、消費者が受容できる価格帯を調べるための価格調査が行われます。価格調査の手法としてはPMS(Price Sensitibity Meter)分析といった手法が用いられます。

Place(流通)

どのような経路で商品を消費者に届けるかを検討するのがPlace(流通)です。どの流通チャネルを選択しどのような販売方法を取るかを決めることがその中味です。

リアル店舗での販売かECを活用するか、リアルでの販売でも量販店・専門店・直販店舗などさまざまな流通チャネルが考えられます。同様にEC以外にもTV通販やカタログ通販といった直販の形態にも種類があります。

既存商品がどのような流通チャネルで販売されているかを把握する際、食品や日用品などではPOSデータを活用できます。POSデータを収集する調査会社があるほか、近年では消費者からレシートの画像データを収集し、データ分析とセットで販売するサービスも増えてきています。

Promotion(販売促進)

プロモーションは、広告、セールスプロモーション、人的販売に分けられ、通常はこれらを組み合わせて行います。この組み合わせをプロモーションミックスといいます。

広告はマス媒体やインターネットを通じた広告のことを指します。どの媒体を選択するか、広告クリエイティブの内容などをターゲットとする消費者に合わせて検討します。

その際にもマーケティングリサーチによって収集したデモグラフィックデータやターゲットの価値観や嗜好性などが判断材料として用いられます。

セールスプロモーション(SP)は消費者や流通業者を対象としたイベントやキャンペーンDMなどを行うことです。

購買意欲を高めるための販売現場での取り組みを指します。SPを行う際には店舗や流通業者に聞き取り調査を行い、現場の意見を取り入れるといったことも行われます。

人的販売は現場の営業・販売担当者が売りやすい方法を検討することです。商品やサービスの特性をわかりやすく伝えるための営業・販売ツールを用意したり、製品コンセプトに応じたセールストークを周知させることなどがマーケティングの関わる領域です。

まとめ

マーケティングの活動は幅広く、それらの活動の判断材料となる情報を集めるのがマーケティングリサーチであり、さまざまな情報を対象とし多くの調査手法が存在します。

そのなかでも、消費者調査の分野で着手しやすく、有用な情報を得られるのがアンケート調査です。QiQUMOは低コストでアンケート調査をはじめることができ、分析結果のアウトプットも充実しています。これからマーケティングリサーチに取り組まれる方にぴったりのマーケティングツールです。

(※)AMAは2004年、2007年にマーケティングの定義を以下のように更新しています。

Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering, and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large.

マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。(慶應義塾大学 高橋郁夫氏訳)

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