人事・総務が行う社内アンケート|心理的安全性の測定方法と必要性・活用方法

人事がアンケートで実施する心理的安全性

社内アンケートは人事部門や総務部門が中心となって行われることが一般的であり、それぞれの目的に応じて行われるアンケート調査やサーベイにはさまざまな種類があります。

ほとんどの組織で従来から行われてきたのが従業員満足度調査ですが、生産性向上や離職率の低下といった目的以外にも、さまざまな目的と機能を果たす手段としてアンケート調査が用いられるようになっています。

人事部門や総務部門が実施する社内を対象とした、さまざまアンケートについて解説します。人事・総務向け社内アンケートの解説、第三弾は心理的安全性の測定です。

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心理的安全性の測定

組織の生産性を高める上で「心理的安全性」という概念が注目されています。この概念は、Googleの「Project Aristotle(プロジェクト・アリストテレス)」という研究によって広く知られるようになりました。この研究では、効果的なチームの成功要因の一つとして心理的安全性が重要であるとされています。

心理的安全性とは

組織における心理的安全性とは、メンバーが職場やチームのなかで受け入れられていると感じ、発言や行動に対して拒絶や軽蔑、罰せられるなどの不安を感じない状態を指します。Googleではこれを「対人関係においてリスクのある行動の結果に対する個人の認知の仕方」と表現しています。

心理的安全性が確保されている環境では、個々のメンバーが自由に意見を述べ、リスクを取ることが奨励されます。これにより、チーム内の信頼関係が強化され、生産性の向上に繋がります。

心理的安全性の重要性

心理的安全性が組織において重要視される理由は以下の通りです。

  1. 創造性とイノベーションの促進:心理的安全性が高い環境では、メンバーは新しいアイデアを自由に提案できるため、創造性やイノベーションが促進されます。
  2. ストレスの軽減:心理的安全性が確保されていると、メンバーは精神的なストレスを軽減でき、健康的な職場環境が実現されます。
  3. 離職率の低下:心理的安全性が高い職場では、メンバーの満足度が向上し、結果として離職率が低下します。

心理的安全性の測定方法

心理的安全性を測定するための有効な手段として、「エドモントンの7つの質問」が提起されています。これらの質問は、チーム内の心理的安全性を評価するための尺度として広く利用されています。

  1. チームの中でミスをすると、たいてい非難される。
  2. チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
  3. チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある。
  4. チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
  5. チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。
  6. チームのメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
  7. チームのメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。

これらの質問に対するメンバーの回答を集計し、分析することで、チームや組織内の心理的安全性の現状を把握することができます。

心理的安全性向上のための施策

組織内で心理的安全性を向上させるためには、以下のような施策が有効です:

  1. リーダーシップの役割:リーダーが率先して心理的安全性の重要性を認識し、メンバーが安心して意見を述べられる環境を作ることが重要です。リーダー自身がオープンで誠実なコミュニケーションを心掛けることが求められます。
  2. フィードバックの促進:定期的なフィードバックを通じて、メンバーが自己改善の機会を得ることができる環境を整えることが重要です。フィードバックは建設的かつポジティブなものにすることがポイントです。
  3. チームビルディング活動:チームビルディング活動を通じて、メンバー同士の信頼関係を強化することが効果的です。共同で問題解決に取り組むことで、相互理解と協力が深まります。
  4. トレーニングと教育:心理的安全性に関するトレーニングや教育プログラムを導入することで、メンバー全員がこの概念を理解し、実践することができるようになります。

心理的安全性の具体例

以下は、心理的安全性が高い組織の具体例です:

1. Google:GoogleのProject Aristotleは、心理的安全性の重要性を証明したプロジェクトです。Googleでは、チームメンバーが自由に意見を述べ、リスクを取ることが奨励される環境を作ることで、高い生産性を実現しています。

2. Pixar:アニメーション制作会社Pixarでは、クリエイティブなアイデアを自由に提案できる文化が根付いています。心理的安全性が確保された環境で、従業員が最大限のパフォーマンスを発揮しています。

心理的安全性と従業員エンゲージメントの関係

心理的安全性は、従業員エンゲージメントと密接に関連しています。従業員エンゲージメントが高い組織では、メンバーが仕事に対して高いモチベーションを持ち、自発的に業務に取り組む傾向があります。一方で、心理的安全性が低い環境では、メンバーは発言や行動を控えることが多くなり、エンゲージメントが低下します。

エンゲージメントサーベイ(従業員満足度調査)が従業員の動機づけの部分を深掘りするものだとすると、心理的安全性の測定は衛生要因の対人関係の部分にフォーカスしているアンケート調査と考えることができます。両者を組み合わせて活用することで、より包括的な組織改善が可能となります。

まとめ

心理的安全性は、組織の生産性を向上させるために重要な要素です。エドモントンの7つの質問を活用して心理的安全性を測定し、リーダーシップの強化やフィードバックの促進、チームビルディング活動などを通じてこの概念を実践することが求められます。心理的安全性が高い組織は、創造性やイノベーションが促進され、メンバーの満足度が向上するため、結果として高い業績を達成することができるでしょう。

この記事が、組織における心理的安全性の向上に役立つことを願っています。心理的安全性の確保は、個々のメンバーの成長と組織全体の成功に直結する重要なテーマです。