パルスサーベイとは?従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイとの違いとアンケートの作り方
従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイの結果をもとに、組織と職場の改善を重ねることが組織の活性化を図り、メンバーの能力を最大限に引き出すことにつながっていきます。
従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイのほか、近年、導入する企業が着実に増加しているのが、質問数を絞り込み、短いサイクルで従業員アンケートを繰り返すパルスサーベイという手法です。
パルスサーベイが注目を集めている理由と他の調査との違い、実施方法について解説します。
パルスサーベイとは
パルスサーベイとは、組織と個々の従業員の関係性を把握するための、従業員を対象とする質問調査のことです。
パルス(pulse)には鼓動や脈拍、集団の心情・態度・意向といった意味があり、日次や週次、月次などの短いサイクルで同じ質問項目のアンケート調査を実施し、従業員のリアルタイムな状態と時間の経過に伴う変化を捉えようとするのがパルスサーベイの目的です。
労務管理の枠組みの中で、従業員と組織のアセスメントにはエンゲージメントサーベイや従業員満足度(ES)調査が行われます。
これらの調査は、中長期的な組織戦略を検討することが目的であることから、年1回など長いスパンのなかで実施されることが多く、仕事そのものや人間関係、社内制度など多角的な面から数十に及ぶ質問数で実施されることが一般的です。
調査実施サイクルが長い調査では、従業員側の回答負荷が高いことに加えて、実施主体である企業側でも集計・分析作業に時間と労力を要します。
調査結果を受けての機動的な改善や対応施策の検討がしにくく、一時的な事象や短期間に生じる変化を捉えにくいといったことが課題とされます。
このような課題を解消するために、数問から10問程度の質問項目で回答する側の負荷を減らし、同じ調査を短いサイクルで繰り返す方法を取るのがパルスサーベイです。
調査の頻度を高めることで、仕事の局面で生じている問題や日々変化する個々の従業員の状態をきめ細かく把握することが可能になります。
パルスサーベイが取り入れられるようになった要因として、スマートフォンのアプリなどを使うことで、回答の際の入力の手間を少なくでき、リアルタイムで回答結果を確認できるなど、従業員側と実施主体側、両者の負担を軽減できるようになったことが挙げられます。
リアルタイムのモニタリングやフィードバックのためのツールとして、サーベイの活用の幅が広がってきたと考えることができます。
従業員を対象とする他の調査との違い
従業員を対象とする調査には、パルスサーベイのほか、従業員満足度調査、エンゲージメントサーベイ、モラルサーベイ、ストレスチェックなどがあります。これらの調査の名称と内容について厳密に区別して運用する必要はありませんが、それぞれに以下のような違いがあります。
従業員満足度調査
従業員満足度調査はES(Employee Satisfaction)調査ともいわれ、仕事と職場環境に対する従業員の満足度を測定するための調査です。
職場に対して満足しているかどうかの要因となるのは、仕事内容そのものや仕事に対する責任、達成感や承認欲求が満たされているか、昇進や給与などの社内制度の公平感、上司や同僚などとの人間関係、労働条件などの衛生要因などが挙げられます。仕事をする上での会社の枠組みに対する満足度を対象とするのが従業員満足度調査です。
従業員満足度調査は、会社と組織の側の課題や問題点を把握することを目的とします。多岐にわたる質問項目を多数設定し、半期ごとや年次など長いスパンで実施することが一般的です。
エンゲージメントサーベイ
会社と組織の側の課題や問題を把握することを目的とする従業員満足度調査に対し、会社と従業員の心理的な関係性に重点を置くのがエンゲージメントサーベイです。
従業員エンゲージメントは、従業員個人が主体的に仕事への意義を見出し、会社の方針に納得し共感した上で、会社に貢献しようとする意欲のことであり、会社に対する信頼感やつながりの強さのことを指します。
エンゲージメントサーベイでは、会社・組織・上司・同僚などとの関係性を問う質問項目を設定します。従業員満足度調査と調査と同様に、多数の質問項目と比較的長いスパンで実施されます。
モラルサーベイ
モラルサーベイは従業員の仕事に対するモチベーションや組織全体の士気を測ることを目的とする調査です。社団法人日本労務研究所(NRK)が開発した質問尺度によるNRK方式モラルサーベイが知られています。
NRK方式モラルサーベイは95の標準質問が設定され、労働条件、人間関係、管理、行動などに大別されます。
組織診断を主眼に置いており、大掛かりな調査となるため年次など長いサイクルで行われます。
ストレスチェック
ストレスチェックは従業員のメンタルヘルスが良好な状態にあるかどうかをチェックするためのテストです。2015年から労働者が50名以上の事業所では、労働安全衛生法により年1回のストレスチェックが義務付けられています。
ストレスチェックの実施者は、医師や保健師、看護師などの有資格者と定められていますが外部委託することが可能です。調査票の集計と評価は有資格者が行い、ストレスチェックの結果は本人に通知されます。
ストレスが高いと判断された従業員は医師による面接指導を受けることができ、就業上の対策が必要と判断されれば、労働時間短縮などの措置を実施します。
プライバシーの保護や調査結果へのアクセス制限など厳密な運用が求められるため、実施管理体制を整備する必要があります。
従業員満足度調査とエンゲージメントサーベイ アンケートを行う場合の違いとは
パルスサーベイのメリット
従業員の仕事に対するモチベーションや、職場環境に対する満足度はその時々の状況によって変化していることが普通であり、1年に1回実施される調査では、そういった変化を捉えることができません。
それに対し、例えば日々の仕事の充実度を5段階評価で聴取するパルスサーベイを実施するなかで、通常は平均的な回答しているメンバーに一時的に低いスコアが見られた場合、管理者側がそれに気づいて、タイムリーなフォローアップの契機とすることができます。
前述したように、サーベイの結果をリアルタイムなモニタリングやフィードバックと捉えて、機動的な対応を図ることがパルスサーベイの本質です。アセスメントとしてのサーベイという位置づけから、企業側と従業員側のコミュニケーションを改善するためのツールとして活用できるのがパルスサーベイの大きなメリットです。
パルスサーベイのデメリット
数個の質問であったとしても、回答する側にとっては負担であることに違いはありませんし、パルスサーベイに対して従業員側が「調査」というイメージを強く抱いてしまった場合、多頻度のサーベイはプレッシャーを与えることにもつながります。
結果として従業員に負荷を強いるものになってしまい、回答率の低下や形式的な回答を増やすことにつながり、調査そのものが形骸化してしまう可能性があります。長いインターバルで実施する従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイ以上に、従業員側の理解とコンセンサスを得て実施することが重要です。
また、パルスサーベイでどのような質問項目を設定し、何をパラメータとして対策を行うかという運用側の工夫も求められます。この点については、パルスサーベイを目的としたクラウドシステムが各社からリリースされており、心理学的な知見にもとづいた分析スコアを提供しています。実際には、企業それぞれの組織課題と運用目的の違いが大きく、それぞれの組織に合った運用方法を工夫していくことが求められます。
パルスサーベイが有効な職場
詳細な調査項目について大規模に実施する従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイに対し、パルスサーベイが持つ特性から、次のような組織でパルスサーベイが有効に働くと考えられます。
リモートワークの職場
新型コロナを契機にリモートワークを導入する企業が増加しましたが、コミュニケーションがオンラインに限られることは、オフィス空間でともに過ごす職場と比べて、上司と部下、あるいは、メンバー間で交わされるコミュニケーションの総量は圧倒的に少なくなります。
パルスサーベイによって従業員と会社のコミュニケーションチャネルが設けられることは、顔の見えないリモートワークの弊害を解消することにつながります。
流動性の高い職場
アルバイトや非正規雇用の従業員が多い職場、プロジェクト単位で進められる仕事の場合には、職場やチームを構成するメンバーの入れ替わりによって、組織のコンディションも変わりやすくなります。
特に離職率を低下させることを主眼に置く場合には、組織の課題をきめ細やかに把握して対策を講じるための手段としてパルスサーベイを実施することが有効です。
組織構成が短期間で変化する職場
流動性の高い職場にも共通しますが、スタートアップや組織改革を実施する場合なども組織が短期間に変化する職場に当てはまります。望ましい組織のあり方を試行錯誤するためのツールとしてもパルスサーベイは役立ちます。
オンボーディングでの活用
新卒採用をはじめとして、新しいメンバーが組織に馴染み定着するまでのプロセスには多大なコミュニケーションコストを要します。
フォローアップの取りこぼしを減らし、オンボード担当者の負担を軽減するという意味でも、パルスサーベイによって新メンバーに対するケアの厚みを示すことが、新メンバーのエンゲージメントの向上につながります。
パルスサーベイの実施方法
パルスサーベイを実施する場合の具体的な質問項目は、従業員エンゲージメントを計測する場合の質問項目を中心に、満足度やストレスといった項目を交えて質問数を絞り込みます。また、現在の職場を友人等に推奨できるかどうかを11段階で評価してもらうeNPS(Employee Net Promoter Score)もパルスサーベイに有効とされています。
まとめ
有効性やメリットが理解されるに従い、パルスサーベイの導入事例は着実に増えています。パルスサーベイを運用する際にはHRテックが提供するツールやサービスを導入するケースが一般的ですが、課題の所在や運用の目的が異なれば運用の方法も組織それぞれに異なっており、ツールに備わっている機能を自社の運用に合わせていくためには工夫が必要なケースもあるようです。
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