ベンチマーキング(ベンチマーク)とは|簡単解説

ベンチマークの意味とは

ベンチマーキングのカンタン語句解説

ベンチマーキングは、他社の優れた事例を比較・分析し、自社の製品や事業、組織、プロセスなどの改善点を見つける手法です。業績が伸び悩んでいる商品やサービスなどの改善点を促すための手段として活用できます。

ベンチマーキングの基礎知識をわかりやすく解説

ここでは、ベンチマーキングの基礎知識とベンチマークとの違いを解説します。

ベンチマーキングの語源と意味

ベンチマーキングは、他社の優れた事例や成功事例と自社を比較・分析する手法です。自社の業績向上や効率化などにつながります。

語源は、靴修理の職人がお客さんの足の形をベンチになぞってマークし、それをもとに靴のパターンを作っていたことに由来します。経営のパフォーマンスに印を付けるという意味で、「ベンチマーキング」と呼ばれるようになりました。

ベンチマークとの違い

ベンチマーキングとベンチマークは、似たような言葉ですが、異なる意味を持っています。

先述の通り、ベンチマーキングは自社のパフォーマンスを向上させるために、他社の成功事例と比較しながら自社の強みや課題を明確化し、改善策を見つけ出す手法です。

一方、ベンチマークは、比べる対象となる同類の物やサービスなどとの差を測るための基準や指標を指します。

ベンチマーキングでわかること

ベンチマーキングを行うとさまざまなメリットを得られます。ここでは、ベンチマーキングでわかることを紹介します。

自社商品・サービスを客観視できる

ベンチマークを行うと、自社の商品やサービスの客観的な評価が可能となります。

特に自社の業績が伸び悩んでいる場合は、社内だけで比較を行うと主観的な結果になってしまい、問題点を特定できない場合があるでしょう。

適切なベンチマーキングを行い、競合他社の優れた事例と比較することで、なぜ自社のパフォーマンスが悪いのかが明確になり、改善策を講じやすくなります。

つまり、自社の視点だけでは見つけられない根本的な問題点を浮き彫りにし、製品やサービスの改善に役立てることが可能です。

競合他社の優れている部分を吸収できる

ベンチマーキングを行うと、競合他社の優れている部分を学び取ることが可能です。

たとえば、新規事業を始める場合は多くの課題があり、自社内だけで考案したプロセスでは効率的ではありません。優れた企業をベンチマーク(基準)とし、彼らの手法やプロセスを学ぶと、効率的な業務プロセスを構築できます。

また、競合他社の戦略を分析すると新商品・サービスの将来的な可能性を把握でき、投資判断に役立てることも可能です。

ベンチマーキングの種類

ベンチマーキングにはさまざまな種類があります。ここでは、内部ベンチマーキングと競合ベンチマーキング、機能ベンチマーキングについてそれぞれ詳しく解説します。測定するものや得たいものなどによって、使い分けましょう。

内部ベンチマーキング

内部ベンチマーキングは、自社内やグループ内の別のチームや商品をベンチマークとする手法です。同じような製品・サービスを提供したり、似通っている業務プロセスを持ったりしている場合に有効です。

たとえば、長時間残業が続く部署の中で、経理部だけが定時で帰宅できている場合、その成功事例から緻密なスケジュール管理や集中できる環境作りの取り組みを学べます。組織内なので協力を得やすく、詳細なデータも共有しやすいメリットがあります。

競合ベンチマーキング

競合ベンチマーキングは、優れた競合他社を分析し、優れた点を自社に取り入れる手法です。自社と近い業種の企業を比較すると、参考になる情報を見つけやすいでしょう。

直接ライバルとなる製品やサービスであれば比較しやすく、改善点を取り入れて新たな製品開発につなげられます。

機能ベンチマーキング

機能ベンチマーキングは、企業の「機能」に焦点を当て、顧客へのサービスや商品を提供するための業務プロセスや働き方などを競合他社と比較する方法です。

対象が機能であるため、必ずしも競合他社である必要はありません。異業種の企業を対象にすることで、より広範で革新的なアイデアを生み出せる可能性もあります。

【4ステップ】ベンチマーキングのやり方

ベンチマーキングのやり方は、以下の4つのステップです。

1.改善項目の洗い出し

ベンチマークの対象となる改善項目を洗い出します。大きな経営戦略や事業ドメインから細かな業務プロセスや集客方法まで、自社と競合他社を比較して改善が必要とされる項目をリストアップします。

2.ベンチマーク企業を決める

対象となるベンチマーク企業を確定する際には、改善すべき項目において優れた取り組みを行っている企業が最適です。

たとえば、顧客の問い合わせ対応を改善したい場合は、優れたカスタマーサポートを提供している企業をベンチマーキングの対象に選ぶとよいでしょう。業界にこだわる必要はなく、幅広い範囲で企業を調査し、ベンチマーキングの見本となる企業を見つけることが重要です。

3.情報収集・分析

対象のベンチマークが確定したら、企業を観察し情報収集・分析を行います。

情報収集の方法は、ベンチマーキングのポイントによって異なります。製品やサービスのベンチマーキングでは、競合する製品やサービスを実際に使用して評価することが重要です。実際に業務を行っている現場を観察し、顧客満足度のデータや財務諸表などの情報を集めると、より有益な結果につながるでしょう。場合によっては、インターネットや新聞、専門誌などの情報源も活用しましょう。

収集した情報をもとに詳細な分析を行い、自社との比較を行います。対象企業の優れた点や成功要因を特定することが重要です。

自社と競合他社の比較ポイントの一例は以下の通りです。

  • 顧客管理
  • 情報活用
  • レイアウト
  • 物流体制
  • 物流コスト
  • サービス技術
  • サービス価格
  • 組織対応
  • 顧客満足
  • 人材育成
  • 品揃え
  • 売れ筋・セール
  • 新規・独自商品 など

上記の項目についてそれぞれ、自社の現状分析とライバル社から学ぶべき点、自社の現実とのギャップ、今後実行すべき目標設定の4つを考えましょう。

4.実施検証・改善計画

改善計画では、目標と方法を明確にすることが重要です。たとえば、SNSを活用した新規集客で月間の見込み顧客を15%増やすという目標を設定したとします。

その後は、改善するための具体的な方法や手段を計画しましょう。改善計画を策定したら、計画に従って確実に実行することが重要です。

なお、目標を設定する際には以下の項目について確認しましょう。

  • 自社で達成可能な目標か
  • 必要な予算
  • 達成までにかかる期間
  • 計画を実行するための人材

ベンチマーキングの注意点

ベンチマーキングは、他社の成功事例を参考にして自社の改善を目指す手法ですが、注意点もあります。たとえば、他社をただ単に模倣してしまうとオリジナリティが失われ、競争優位性を失う可能性があります。

競合調査を適切に行い、自社と他社の優劣を客観的に比較・評価することが重要です。オリジナルな戦略や施策を考えるようにしましょう。

ベンチマーキングは競合他社の成果を観察し、自社商品・サービスなどを改善していく手法です。他社の優れた点を分析し、自社に取り入れることで競争優位性を高められます。

ただし、他社の成功をただ模倣するのではなく、本質を理解することが大切です。正しいデータを収集し、自社のオリジナリティを大切にしながらベンチマーキングを実施しましょう。

ベンチマーク調査の概要

ベンチマーク調査について解説

ベンチマーク調査は、競合他社や他業種の状況を調査し、自社との比較分析を行うものです。自社の現状を把握したい場合や、新たな取り組みを行いたい場合など、さまざまな場面で役立ちます。

ベンチマーク調査は、他社の事例を基準にして自社の経営戦略や商品を客観的に評価し、効果的な改善につなげる手法です。ベンチマークとは「基準」「標準」を意味します。

ベンチマーク調査の具体的な調査項目の例は以下の通りです。

  • 売上や販売戦略
  • 組織体制
  • 広告戦略
  • 商品の売れ筋
  • 接客対応
  • 店舗レイアウト

他社情報の把握と分析を通じて、自社のポジショニングを理解することが重要です。

ベンチマーク調査の目的

ここでは、ベンチマーク調査の主な目的を解説します。

自社の現状を把握する

ベンチマーク調査は、自社の現状を客観的に把握し、戦略立案や改善策を検討する際に役立ちます。

自社だけに目を向けている場合、具体的な課題や解決策を見つけるのが難しい場合があります。しかし、ベンチマーク調査を行うことで競合他社と自社の取り組みとの差異を明確にでき、自社の強みを発見して伸ばすことが可能です。また、自社の弱みを補い、競合他社に追随することもできます。

成功事例から新たな手法やモデルを学ぶ

他社の成功事例の研究は、新たな施策やモデルを学ぶために重要です。

自社だけでマーケティング施策や商品改善を考えて実行すると、大きな労力やコストがかかるうえ成功の確率も低い場合があります。その点、ベンチマーク調査を通じて成功を収めた先進企業の手法やビジネスモデルを学ぶと、同様の成果を得られる確率が高くなります。

ベンチマーク調査でわかることの例

ベンチマーク調査を行うと、特定企業の売上高・利益率や組織体制など、さまざまな視点から自社の状況を把握できます。ここでは、ベンチマーク調査でわかることの例を紹介します。

特定企業の売上高・利益率

ベンチマーク調査を行うと、特定の製品やサービスの販売金額や販売数量、利益率が年ごとにどのように推移しているかを定量的に把握できます。さらに、業績の背景要因として市場環境や競合他社との比較、価格などを定性的に分析することも可能です。

特定企業の詳細な業績分析を行えるだけでなく、製品やサービスの部門別や地域別の情報も把握できます。これらの情報を新規参入や買収の検討、事業戦略や販売戦略の見直しに役立てることが可能です。

特定企業の組織体制

ベンチマーク調査を通して、部署の構成や拠点数、人員数など、組織体制に関する具体的なデータの入手が可能です。

また、役割や評価制度などの組織人事に関する情報も活用することで、自社の組織体制の改善や人事戦略の見直しが可能です。

特定企業の販売戦略

ベンチマーク調査を通じて、販売のターゲット市場や競合他社の認識、営業体制や営業方針など、販売戦略に関する網羅的な情報を入手できます。他社との比較を通じて、自社のターゲット市場や競合状況を把握し、営業体制や方針の改善につなげることが可能です。

ベンチマークの手順

ベンチマーキングの手順は以下のようにまとめられます。

  1. 課題の選択:比較対象企業や製品に関連する項目や課題を選択します。
  2. プロセスの定義:プロセスや活動を明確に定義します。
  3. 比較対象の検討:同業の競合他社となる比較対象を検討します。
  4. 情報源の確認:データの情報源を確認し、適切なデータ収集方法を決定します。
  5. データ収集:自社製品と他社製品のデータを収集します。
  6. 差の分析:収集したデータ結果から、自社製品と他社製品の差を分析します。
  7. 特徴の洗い出し:他社製品と自社製品の特徴を洗い出し、違いを見つけます。
  8. 目標の設定:洗い出した特徴を基に、今後の目標を設定します。
  9. 共有:ベンチマーク結果を社内で共有し、関係者と情報を共有します。
  10. 調整:最終目標に向けて最終調整を行います。
  11. 実践:定めた目標に向けて実践し、経営戦略や製品戦略の改善に活用します。

ベンチマーク手法は、ロバート・C・キャンプ氏によって提唱され、経営戦略の策定や製品性能の評価に活用されています。データの収集や分析を適切に行い、目標の設定と実践に結びつけることが重要です。

ベンチマーク調査の注意点

ベンチマーク調査を行う際は、以下の点に注意しましょう。

データはあくまでも目安として扱う

ベンチマーク調査で得られたデータは、あくまでも目安です。指標や基準、目標を鵜呑みにせず、自社に合った改善策を考えることが重要です。

ベンチマークしている企業を意識しすぎて、自社の強みを失わないように注意しましょう。昨今のビジネス界では、革新的なアイデアや斬新な企画が重要であり、差別化が成長の鍵となっています。

調査対象は慎重に選ぶ

ベンチマーク調査を行う際は、調査対象を慎重に選びましょう。

場合によっては、同じ業界以外の企業も競合先となる可能性があります。適切な競合先を選定する際は、事業規模や取り扱う商材、顧客への提供価値、展開エリアなどの項目を考慮し、自社と類似性の高い企業を調査対象として選びましょう。

データが偏らないように注意する

自社でベンチマーク調査を行う際には、データの偏りに注意する必要があります。特に、アンケート調査では自社に関心が高いユーザーばかりが回答する傾向があり、ヒアリングを行う場合も、対象者がいつも同じ取引先の担当者に偏ってしまう場合があります。

偏りが発生すると、正確な調査結果が得られません。アンケート調査では、自社に関心のない消費者を対象にするために、簡単なプレゼント企画や報酬を併用する方法があります。または、外部にアンケート調査を委託すると、自社で行うよりも偏りの少ない母集団で調査を行えます。

ヒアリング対象が同じ担当者に偏る場合は、複数の社員に協力を依頼し、異なる取引先から新たなヒアリング対象を見つけるようにしましょう。

これらの対策を講じることで、データの偏りを最小限に抑え、より正確なベンチマーク調査の結果を得ることが可能です。

まとめ

ベンチマーク調査は、他社の事例を基準にして自社の経営状況や商品を評価する手法です。

他社との比較によって、現状把握や新施策の成功確率を高めることができます。

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