ペルソナとは|簡単解説
ペルソナのカンタン語句解説
ペルソナはマーケティングの対象として想定する人物像のことを指し、典型的な顧客像、理想的な顧客像という意味で用いられます。人物像の生い立ちから現在まで、性格の特徴、ライフスタイル、重視する価値観といった定性的な要素から、商品やサービスが提供すべきより本質的な顧客のゴールを見つけ出すことを目的とします。
ペルソナの概要
ペルソナは古代ローマの俳優が演じる役割という意味に由来し、19世紀の心理学者ユングが社会的な人格を意味する言葉として用いたことが知られています。
マーケティング分野にペルソナという概念が広まるきっかけとなったのは、「Visual Basicの父」として知られるアメリカのソフトウェア開発者アラン・クーパー氏が、著書「The Inmates Are Runnning the Asylum」(邦訳「コンピュータは、難しすぎて使えない」)のなかでペルソナを目標指向デザイン(Goal-Directed design)のためのツールとして紹介したことです。
目標指向デザインはユーザー本位のシステム開発を行うために提唱された方法論であり、現在ではさまざまな製品・サービス開発に広く応用されています。
目標指向デザインでは「誰の、どんな目的を達成するための」デザインかを明確にするために、ペルソナという概念を用います。
マーケティング領域においてペルソナが使われるようになった背景として、消費行動が成熟化・多様化するなかで、従来のデモグラフィック(性別や年齢、職業などの人口統計的)な属性によるセグメンテーションではユーザーの本質を捉えにくくなっていることが挙げられます。
ペルソナを設定する目的
従来のSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)にもとづく定量的な分析結果から得られた消費者特性と、ユーザーニーズの本質的な要素が必ずしも結びつくものではないことは、マーケティングやデザインの現場でも指摘されることがあります。
商品やサービスを「誰の、どんな目的を」達成するために開発すべきかを考えるうえで、これまでの「20代、女性、スポーツ好き」というような解像度のプロファイリングでは抽象的すぎてユーザーの求める本質に気づくためには情報が足りないということです。
ペルソナを構成する要素には、年齢や職業、心理的傾向や行動特性などの定量的な属性要素に加えて、ライフスタイルや価値観を反映する言動や趣味嗜好、商品やサービスの利用に関わるコンテキストやストーリーまでが含まれます。
フォーカスすべきターゲットの人物像を具体的に言語化しイメージを明確化することで、ユーザーの実態とニーズの本質についての理解を深めることがペルソナを設定することの最も大きな目的です。
それに付随し、ペルソナは商品開発プロセスのなかで関係者間の共通言語として機能し、判断材料の基準としてユーザー視点の一貫性を保つための軸となります。
従来の顧客セグメントの軸ではユーザーを理解するための情報が不足していることを挙げましたが、あらゆる情報を取り込むことは、結果としてどのユーザーにとっても中途半端な商品やサービスになってしまう可能性があります。
典型的なユーザーの人物像を絞り込むことで、商品やサービスが達成すべきユーザーのゴールを明確にすることがペルソナを設定する意義といえます。
ペルソナの設定方法
以下の点についてのイメージに具体性を持たせていくことがペルソナの作成プロセスです。
- 属性(性別年齢、家族構成、学歴、職業、年収、住居…)
- ライフヒストリー
- パーソナリティ(性格、価値観、こだわり)
- ライフスタイル(衣食住、仕事、余暇、健康、子育て、家事…)
- 人間関係や情報接触(コミュニティ、情報感・リテラシー、利用メディア、SNS…)
- (自社商品の属する)カテゴリーに対する態度(関心、商品選択態度…)
定量情報と定性的な1次情報から人物像を絞り込む
ペルソナを作成する際には、価値観や性格など人格的な要素まで踏み込んで人物像を描くことになります。また、商品やサービスの購入と使用に関するコンテキスト(文脈)がユーザーのゴールを理解する上で重要な意味を持ちます。
人物の理解という点では、ペルソナを作成する側も人間である以上、属人的な判断が入り込みます。それを前提としてコンテキストを想定することも作成者側の想像の域に収束してしまう可能性は拭えません。
ペルソナの作成では、ユーザーへの「感情移入」や「共感」が強調されるケースも見られますが、それが作成者側の思い込みになってしまうことを避けることが重要です。
そのためには定量情報による客観的な仮説の枠組みと、インタビューから得られる事実としての情報を、複数の担当者によって相互補完的に統合していく作業を行う必要があります。
コンテクスチュアル・インクワイアリ(文脈質問法)を用いる
ペルソナを描くベースとなるのがインタビューによって得られるユーザーからの生の声です。
コンテクスチュアル・インクワイアリとは、社会科学分野で用いられる観察と質問を併用するインタビュー手法のことです。
デザイン分野においては、ユーザーが実際に商品やサービスを利用する状況にインタビュアーが身を置きユーザーの行動を観察する中で、行動の理由や背景を質問により明らかにしていくことを指します。
コンテキスチュアル・インクワイアリを実施する状況としては、既存の同カテゴリの商品やサービスの使用状況を観察するなかで質問を行う、プロトタイプがある場合は実際に使ってもらう、使用状況の観察は行わずに使用状況を想定して質問を行うケースが考えられます。
一般的に行われるインタビューと同様に、非構成的な形で調査対象の行動や反応に応じて質問を行っていきますが、その際にフォーカスすることはユーザーの行動や振る舞いとその理由・背景を引き出すことです。
その結果から、商品やサービスが使用場面のコンテキストを左右する要素やユーザーが求める本質的な価値について考察していきます。
ペルソナはひとつである必要はない
リサーチの結果によっては、典型的なユーザー像が類型化されるケースや有力な属性項目の組み合わせが複数存在するケースが考えられます。
その場合は、複数のペルソナを設定しユーザー層なかでのそれぞれの位置づけを明確にします。位置づけを与えて分類したペルソナの種類をキャストといいます。
キャストは、併存することが望ましい場合や統合することが必要な場合、また、優先順位をつける場合など、ペルソナを設定する側の事情によって異なります。
まとめ
ペルソナの人物像を描くという部分のみに着目すると、商品やサービスを中心としたコンテクストが希薄になり、設定する側のひとりよがりなものになりがちです。だからこそ、量的・質的の両面からの綿密な調査にもとづき、合議を繰り返してペルソナの要件を決めていくことが重要です。