デプスインタビュー(個人深層面接)とは|簡単解説
デプスインタビュー(個人深層面接)のカンタン語句解説
デプスインタビューは消費者を対象にインタビューを行う定性調査の一手法です。インタビュー(面接)の形式で行う消費者調査にはデプスインタビューのほかにグループインタビューがあります。グループインタビューが数人の座談会形式で行う手法であるのに対し、デプスインタビューはインタビュアーと調査対象者の1対1で行い、個別のより詳しい情報を得ることを目的とします。
デプスインタビューは定性調査の一手法
マーケティングリサーチでは、消費者を調査対象として情報を集めることが行われます。どんな顧客層をターゲットとすべきか、消費者がどんな商品やサービスを望んでいるのかといったことを調べるためです。
対象とする顧客層全体の傾向や特徴を知ることを目的として、多数の消費者から同じ切り口の情報を集め、数量や割合として分析することを定量(量的)調査と呼びます。代表的なものがアンケート調査です。
それに対し、消費者が取る購買行動の理由や背景、消費行動に影響する価値観や感情といった個別具体的な事象を知ることで、マーケティングリサーチの仮説を立てたり、定量調査の結果を深掘りしたりするために行うのが定性(質的)調査です。
デプスインタビューは定性調査に含まれるインタビュー(面接)調査のひとつです。インタビュー調査には、調査対象と1対1で面接を行うデプスインタビューと、数人の調査対象が一堂に会し座談会形式で面接を行うグループインタビューの2つのやり方があります。
デプスインタビューとグループインタビュー以外の定性調査としては、観察調査やケーススタディ、エスノグラフィー、ソーシャルリスニング、共起ネットワーク分析などが挙げられます。
インタビュー調査の目的
定量調査であるアンケートで集められる情報は、調査票に設定した質問に対する答えに限られるため、選択肢を選んだ理由や背景については知ることができません。※
一方、インタビュー調査は面接の形を取るため、リサーチャーと調査対象者の間で対話をすることが可能であり、対話のなかで調査対象者の答えに応じて柔軟にテーマを掘り下げることができます。
定量調査では聴取する内容が調査票の質問に対して想起されたことに限定されるのに対し、対話を行うインタビュー調査では、調査対象が自分でも気づかなかった行動の理由や動機まで引き出されることもあります。
定量調査と比較してインタビュー調査は、より具体的で詳細な情報を得ることができます。注意しなければならないのは、インタビュー調査で得られた情報は、限られた調査対象の個別の事象であり、その内容が顧客層全体を代表するものではないという点です。
対象とする顧客層の全体像を客観性のある数値で表すことができる定量調査は意思決定の判断材料となるのに対し、定性調査で得られる情報はマーケティング課題に対する仮説や調査の方向性を検討するための材料として用いられます。
この点が定量調査と定性調査それぞれが明らかにできることの違いであり、調べたい事柄に応じて定量調査と定性調査を使い分ける必要があります。
調査プロジェクト全体のなかで、課題が明確になっていない探索的な段階では定性調査をもとに仮説を立て、それを定量調査で検証するという流れを取ることが一般的です。しかし、定量調査と定性調査は相互補完的に使い分けることが必要であり、定量調査の結果をインタビュー調査で検証するといったケースもあります。
※アンケート調査の自由回答について アンケート調査で設定される自由回答に記載されたテキスト情報は定性(質的)情報です。自由回答を共通の内容や含まれる単語などで分類し、数量として集計する場合は定量(量的)情報となります。 |
デプスインタビューとグループインタビューの違い
インタビュー調査で扱うテーマは、購買行動の背景や動機、ブランドや企業に対するイメージや評価の形成過程、ライフスタイルや消費行動に関する意識や信念の形成過程、メディアやコンテンツに対する使用動機や行動パターンなどが典型的なものです。
これらのテーマに関するインタビュー調査はデプスインタビュー、グループインタビューどちらも行われますが、1対1で行うデプスインタビューと1対多で行うグループインタビューは次のような違いがあります。
デプスインタビュー
デプスインタビューは調査対象個人の個別具体的なケースを詳細に掘り下げることを想定します。インタビュアーと調査対象の間だけの会話のやり取りであり、第三者からの影響を排した状況で行われるため、人前では話しにくいより個人的なテーマ(健康問題や資産状況、仕事に関することなど)を扱う場合に適しています。
グループインタビュー
数人の集団でインタビューを行う目的は、他者の発言に影響されて会話が活性化することを期待するところにあります。これをグループダイナミクスといい、話題を拡散させる効果や連鎖的な発言が促される効果が生まれます。
反面、他者に同調するだけの人が出てきたり、意見の対立が生まれたりするケースもあるため、モデレーター(進行役)の適切な介入が大きな役割を果たします。
インタビュアー・モデレーターの重要性
調査対象からの自発的な発言を促すきっかけを与えるのがインタビュアーの役割です。人間同士のコミュニケーションで成立するインタビュー調査から得られる情報は、インタビュアーやモデレーターのスキルと経験に依存しているといっても過言ではありません。
インタビュアーは調査対象への同調と共感を基本的なスタンスとして、調査対象の表情やしぐさ、声の大きさなど発言以外の情報にも気を配り、心理的な距離を縮めていくコミュニケーションスキルが求められます。
デプスインタビューのインタビュアーは謙虚な聞き役であることを念頭に置き、調査対象の話を傾聴します。先入観による質問や調査対象の発言を否定すること、発言を遮ること、発言を誘導すること、発言を要約することなどはインタビュアーの禁止行為にあたります。インタビュアーは、段階を踏みながら調査対象の反応に応じて話題を掘り下げていくインタビューの技術を身につける必要があります。
デプスインタビューで用いられる技法
インタビュー調査は具体的な質問項目をあらかじめ設定し、それを基本にインタビューを勧める構成的アプローチと、質問の大枠だけを決めて調査対象の反応をもとに進行する半構成的アプローチを取ることができます。
インタビューの流れは調査の内容によって異なりますが、消費者が商品やサービスの選択や消費の場面で考えたり感じたりする要素は複雑であり、消費者自身が商品やサービスの課題を認識していないケースも想定されます。
ラダリング法
複雑な消費者心理を明らかにするために、デプスインタビューで使われる技法としてラダリング法があります。
ラダリング法は商品やサービス、ブランドなどの属性的要素が消費者の価値観にどのように結びつくのかを階層構造に示す「手段目的連鎖モデル」にもとづいています。
属性的要素は商品やサービスが持つ競合品と明確に区別される消費者の認識のことを指します。属性的要素に対して調査対象がどんなベネフィットを感じているか、なぜそう感じるのかを繰り返すことで段階的に抽象度を上げて、どんな価値観を形成しているのかを明らかにします。
使い所とインタビュアーのスキルがデプスインタビューを成功させるカギ
デプスインタビューを実施する場合は、定性調査の目的を正しく認識することとともに、グループインタビューとの使い分けを理解したうえで調査を企画・設計することが重要です。
加えて、調査のアウトプットはインタビュアーによって全く異なる可能性も否定できません。インタビュアーにはマーケティング分野に関する洞察と高いコミュニケーションスキルが求められます。