共分散構造分析(SEM)とは|簡単解説
共分散構造分析(SEM)のカンタン語句解説
共分散構造分析とは、相関関係のあるデータの背後(因子)を分析する手法です。「多変量解析」の分析手法のひとつで、「構造方程式モデリング」もしくは「Structural Equation Modeling」の頭文字を取って「SEM」と呼ばれることもあります。
共分散構造分析(SEM)の詳細解説
共分散構造分析(SEM)は、因子分析と似ている分析手法です。
両者は複数の要素に共通する因子を探索・分析するという共通点がありますが、共分散構造分析(SEM)のほうが因子同士や相関関係同士のデータを扱えるため、要素間の関係性をより深く知ることができます。
そのため、「自社商品・サービスにおける顧客の購買決定要因の特定」や「今後のプロモーションについての施策」などのマーケティングで活用することが可能です。
たとえば、「自社商品・サービスの売上を上げるにはSNSでのプロモーションが重要である」との仮説を立てたとします。共分散構造分析(SEM)を行うと、その仮説の正確性や因果関係の強さなどを解明することが可能です。
なお、共分散構造分析(SEM)は以下のような「パス図」で表されます。
共分散構造分析(SEM)やパス図に使用されている変数や、詳しい名称については以下の通りです。
名称 | 概要 |
観測変数 | アンケートデータや実験データなどの、直接測定することができる変数。(数字で表せる)パス図上では四角形で囲む。 |
潜在変数 | 直接測定することができない変数。(因子)パス図上では楕円で囲む。 |
誤差変数 | 分析対象以外の要因を表す変数。パス図上では円で囲む。 |
外生変数 | その他の変数から影響を受けない変数。 |
内生変数 | その他の変数から影響を受ける変数。 |
片方向矢印 | 原因と結果を示す矢印。 |
双方向矢印 | 相関関係を示す矢印。 |
パス係数 | 変数間の相関関係・因果関係を表す値。観測変数と潜在変数の分散を1(基準化)にして求めた「標準化解」と、基準化しない「非標準化解」に分かれる。 |
共分散構造分析(SEM)の特徴
共分散構造分析(SEM)には、主に以下2つの特徴があります。
直感的に理解できる
共分散構造分析(SEM)では、変数間の因果関係をパス図で表すため、専門知識のない人でも直感的に理解できます。パス図はそのままプレゼンテーションや会議などの場面で使用することが可能です。
難しい統計モデルを可視化できる
先述の通り、共分散構造分析(SEM)は、因子同士や相関関係同士のデータを扱えます。
因子分析の場合は単純な結果になりやすい傾向がありますが、実際は各要素が複雑に影響し合っている場合がほとんどです。複雑なデータを扱える共分散構造分析(SEM)では、より事実に近い結果を表せます。
共分散構造分析(SEM)の注意点
共分散構造分析(SEM)には、先述のような「直感的に理解できる」や「難しい統計モデルを可視化できる」などの特徴がある一方で注意点もあります。
分析にはある程度の知識が必要
共分散構造分析(SEM)の結果だけを見ると、単純な分析に思えるかもしれませんが、実はそれほど簡単ではありません。
共分散構造分析(SEM)を行うには、分析者が変数間の因果関係についての仮説を立てる必要があります。この段階で仮説がズレてしまっていると、最終結果が事実と異なってしまう可能性があるのです。
正確かつ役に立つパス図を作成するには、仮説構築力や統計的な知識などが必要です。
データが必要
共分散構造分析(SEM)を行うにはデータが必要であるため、事前にアンケート調査を行う必要があります。アンケート調査は、多段階の選択肢を用いた「リッカート尺度」を用いるのが一般的です。
アンケート調査方法には、「郵送調査」や「訪問調査」など、さまざまな方法がありますが、最も手軽かつ費用を抑えたい場合はWebアンケート調査を行うのがおすすめです。
Webアンケートツールを使用すると、アンケート表の作成から分析までをすべてオンラインで行えます。自社の顧客に加えて、調査会社のモニターに対してもアンケート調査を行えるため、十分な標本数を集めることも可能です。
共分散構造分析(SEM)を実行できる統計ソフト
共分散構造分析(SEM)を実行できる代表的な統計ソフトは、「Amos(エイモス)」です。「R」を使用する方法もありますが、Rで共分散構造分析(SEM)を行う場合はコードの知識が必要となります。
一方でAmos(エイモス)は、パレット上にパス図を描く作業やデータのマッピングなどマウス操作のみで行えます。プログラミングの知識は必要ありません。
共分散構造分析(SEM)の他、「探索的因子分析」や「確証的因子分析」「重回帰モデル」「多母集団パス解析」などにも対応しています。
※Amosのさらに詳しい解説、利用をご検討の方はこちらをご覧ください。
共分散構造分析(SEM)のまとめ
共分散構造分析(SEM)とは、相関関係のあるデータの背後(因子)を分析する「多変量解析」の分析手法のひとつです。
因子同士や相関関係同士のデータを扱えるため、要素間の関係性をより深く知ることができる特徴があります。共分散構造分析(SEM)を行うにあたってアンケート調査を実施する際は、手軽かつ費用を抑えられるWebアンケート調査がおすすめです。