【レポート作成の型】グラフの羅列を卒業する。「問い→答え→示唆」で構成する“1スライドレポート”の作り方

「グラフをたくさん並べたのに、結局何が言いたいのか伝わらない」という経験はないでしょうか。読み手が求めているのは、数字の羅列ではなく「何が分かり、どう行動すべきか」という意思決定のストーリーです。
本記事では、アンケートで集めたデータから、「問い(Question)→答え(Answer)→示唆(Implication)」という構造を持った“読ませず伝わる1スライド”を作成するための思考フレームと、6つの実践ステップを解説します。
目次
- 1. 導入(この記事で得られること)
- 2. 基礎知識(前提となる考え方)
- 3. 実践ステップ― 7つの観察軸を使って「問い→答え→示唆」にたどり着く手順 ―
- 4. 事例・サンプル(BtoB SaaS無料トライアル後アンケート)
- 5.よくある失敗と対策
- 6.まとめ
1. 導入(この記事で得られること)
アンケート調査において、質の高いレポートに求められるのは「きれいなグラフ」が並んでいることではなく、「意思決定に必要な問い」に答えることであり、「何が分かって」「だからどうするのか」という骨組みです。
本稿では、QiQUMOで集計した結果をもとに、
- 調査企画段階で立てた“元の問い”(何のための調査か)
- RQ(Research Question:全体を通して答えを導き出そうとする、最も根本的で包括的な問いのこと)
- 集計結果を見てから立て直す“二次的な問い”(どう見れば意味が出るか)
- PQ(Primary Question:RQを達成するために最初に解決すべき、あるいは最も重要な具体的な問いのこと)
を区別しながら、
- 「問い → 答え → 示唆」という1枚のスライドに落とし込むための考え方と手順
を解説します。
読み終えていただくと、グラフを並べる前に「どんな問いを、どの順で追うか」を設計できるようになり、QiQUMOの集計結果から、“読ませず伝わる”1スライドレポートを組み立てられるようになります。
2. 基礎知識(前提となる考え方)
この章では、「問い→答え→示唆」にたどり着くための基本フレームを整理します。
本稿では、「二次的な問い(PQ)」をどう立てるかが中心テーマとなるため、その土台となる概念として、次の4つを押さえます。
- RQ(調査企画段階の“元の問い”)
- PQ(二次的な問い)
- 「問い→答え→示唆」の1スライド構造
- 7つの観察軸(PQを考えるためのレンズ)
2-1. RQとPQ:2種類の「問い」
アンケート調査には、ここで扱う2種類の問いがあります。
(1) 調査企画段階の問い(RQ:Research Question)
- 調査を企画したときに最初に立てる「元の問い」
- 例(一般的なイメージ)
- 新制度は、誰にとってどこまで機能しているのか?
- 顧客の継続意向を左右しているのは何か?
- どの接点が満足度を押し下げているのか?
RQは、「この調査は何のためにやるのか?」を一文で表したものであり、レポートではスライドタイトルとしてそのまま置けるレベルまで言語化されていることが望ましい問いです。
(2) 集計結果から立てる問い(PQ:Pattern Question)
- 集計結果を見ながら後から立てる、「どの視点で見ればパターンが浮かび上がるか?」という問い
- 例(一般的なイメージ)
- 満足度が高い人と低い人で、どの評価項目が違うのか?
- 継続意向がある人とない人で、どんな項目に差が出ているのか?
- 不満を感じている層は、どの属性に偏っているのか?
PQは、「集計結果に対する切り口」のことであり、 どんなPQを立てるかによって、同じデータから見えてくるストーリーが大きく変わります。
2-2 「7つの観察軸」:PQを立てるための“レンズ”
では、PQはどのように考えればよいでしょうか。ここで役に立つのが、「観察軸」という考え方です。同じ集計結果でも、「どのレンズで見るか」によって見えるものが変わります。本稿では、PQを立てる際のレンズとして、次の7つの観察軸を使います。

分析の視点と問いの整理表
| 視点 | 分析のポイント(例) | 問いの例(PQ) |
|---|---|---|
| 時間で見る(改善の流れ) | 前回調査や施策前後と比べて、どこがどう変化しているか? | 「前回と比べて、どの項目の改善/悪化が大きいか?」 |
| 属性で見る(違い) | 年代・職種・部署など、どの層が全体と違う動きをしているか? | 「どのセグメントが、全体平均と大きく異なる評価をしているか?」 |
| 関係で見る(つながり) | 「満足度が高い人/低い人」で、他の項目にどんな違いがあるか? | 「アウトカム指標(満足度・継続意向など)の高低を、何が分けているか?」 |
| 全体から見る(タイプや構造) | 回答パターンから、いくつかのタイプに分けられないか? | 「回答傾向から、“どんなタイプのユーザー”に分かれるか?」 |
| 基準で見る(良し悪しの判断) | 目標値・過去実績・業界平均と比べてどうか? | 「目標水準を下回っている項目はどれか?」 |
| 影響で見る(何が効いているか) | 複数の要因のうち、どれがアウトカム指標に強く効いていそうか? | 「継続意向を最も大きく左右しているのは、どの評価項目か?」 |
| 予想外を探す(気づき) | 事前の想定とは違う動きをしている項目・層はどこか? | 「事前仮説と異なる結果が出ている項目はどこか?」 |
7つの観察軸は、「どのPQを立てるか」を考えるためのフレームワークです。この7つをチェックリストのように眺めながら、
- RQにとって意味のあるパターンが見えそうな軸はどれか
- グラフ1〜2枚でわかりやすく示せそうな軸はどれか
を選んでいくことで、「問い→答え→示唆」までの導線が整理しやすくなります。
2-3. 「問い→答え→示唆」で構成する1スライド
本稿で目指すレポートの単位は、「1つの問いに、1枚で答え切る」1スライドレポートです。
基本構造は次の3要素です。
- 問い(Question)
- スライドタイトルとしての問い
- 多くの場合、RQを少し噛み砕いた形
- 例:「〜を左右しているのは何か?」「〜の改善優先度はどこか?」
- 答え(Answer)
- 選んだPQに対して、集計結果から導かれた“事実としての結論”
- グラフ/集計表は、この「答え」を裏づける“証拠”として使う
- 例:「〜な人ほど、〜の評価が低い」「複数の要因の中で、とくに〜がアウトカムを分けている」
- 示唆(Implication)
- 「だから、何をどうすべきか?」まで踏み込んだ行動提案
- 例:「したがって、〜な層に向けた〜施策を優先すべき」「リソース配分上は〜への投資を優先するべき」
この3つを1枚の中で縦に並べると、構造は次のようになります。
- 上段:問い(スライドタイトル)
- 中段:答え(グラフ+“答えの1文”)
- 下段:示唆(次の一手)

3. 実践ステップ― 7つの観察軸を使って「問い→答え→示唆」にたどり着く手順 ―
ここからは、前章で整理した概念をもとに、実際にレポート1枚分のストーリーを組み立てるための手順を示します。
ポイントは、次の3つです。
- いきなりグラフを増やさず、「どのPQに答えるか」を先に決めること
- PQを考えるときに、7つの観察軸をチェックリストとして使うこと
- 最後は必ず「示唆(次の一手)」まで言い切ること
3-1.ステップ1:RQをスライドタイトルとして1行に整える
まず、調査企画時に定義したRQを改めて確認し、スライドタイトルとして置ける形に1行で書き直します。

- 「〜を左右している要因は何か?」
- 「〜の改善優先度はどこにあるか?」
- 「〜は、誰にとってどこまで機能しているのか?」
といった“問いのかたち”にしておくと、後続の「答え」「示唆」とも接続しやすくなります。
ここはあくまで“土台”なので、深追いはしません。このTipsの主役は、このRQに対して、どんなPQを立てるかにあります。
3-2.ステップ2:単純集計で「数字の地形」をざっと眺める
次に、QiQUMOの単純集計画面やエクスポートした集計表をざっと眺め、 大まかな「数字の地形」を把握します。
- ぱっと見て、どの項目が高く/低く評価されているか
- アウトカム指標(満足度・意向など)の分布はどうか
- 特定の選択肢に偏りがないか
この段階ではまだ分析に踏み込まず、
- 「なんとなく高そうなところ」
- 「なんとなく気になるところ」
をメモしておく程度で十分です。この「地形の感覚」が、次のステップで観察軸を当てるときのヒントになります。
3-3.ステップ3:7つの観察軸をチェックリストとしてPQ候補を出す
「基礎知識」で紹介した7つの観察軸をチェックリストのように眺めながら、 RQにとって意味がありそうなPQ候補を出していきます。

例えば、メモシート上で次のように考えていきます。
- 【時間】
- 前回/施策前後で比較できるデータはあるか?
- もしあれば、「どの項目の変化が大きいか?」というPQは意味があるか?
- 【属性】
- RQに関係しそうな属性(年代・職種・プランなど)はどれか?
- 「どのセグメントが全体と違うか?」というPQは役に立ちそうか?
- 【関係】
- アウトカム指標として見たい設問(満足度・継続意向など)はどれか?
- 「アウトカムが高い人/低い人で何が違うか?」というPQはどうか?
- 【影響】
- 評価項目が複数ある場合、どれが効いていそうか?
- 【予想外】
- 事前の仮説と違う動きをしていそうな項目・層はないか?
このように、7つの観察軸ごとに「もしこの軸で見たら、どんなPQになりそうか?」を書き出し、候補を挙げていきます。
そのうえで、
- RQとのつながりが強い
- 説明したときに「なるほど」と言ってもらえそう
- グラフ1〜2枚で伝えられそう
といった観点から、1〜2個、多くても3個までのPQに絞り込みます。
3-4.ステップ4:PQごとに必要な集計を作り、「答えの1文」を書く
PQが決まったら、はじめてピンポイントの集計設計に入ります。

- 単純集計のみで十分か
- クロス集計が必要か
- アウトカム指標で高群/低群を分けて比較するか
などを判断しながら、このPQに答えるために必要な集計結果だけにフォーカスします。
そしてグラフ/集計表を見ながら、
「このグラフから、RQ(問い)にとって意味のある“答え”として何が言えるか?」
を日本語の1文で書き出します。
例:
- 「アウトカム指標の高低を最も分けているのは、他の項目ではなく〇〇である。」
- 「全体では評価は高いが、△△の層だけは顕著に低い。」
- 「複数の不満要因のうち、とくに□□が離反と強く結びついている。」
この「答えの1文」が書けないグラフは、そのスライドには不要な可能性が高い、と考えて構いません。
3-5.ステップ5:「答え」を示唆(次の一手)に翻訳する
次に、その「答え」が意思決定や施策設計にとって何を意味するかを考えます。

ここでは、事実の説明で終わらせず、「だから、誰に対して・何を・どのように行うべきか?」という行動提案のレベルまで言い切ることがポイントです。
簡易な変換テンプレートは、次のような形です。
[答え(観察された事実)] なので、[誰に対して/何を][優先的に/どのように]行うべきである。
- 答え:「〜な層ほど、〜への評価が低い傾向がある」
- 示唆:「したがって、〜な層に向けた〜施策を優先的に検討すべきである」
- 答え:「複数の項目の中で、〜だけがアウトカム指標を大きく動かしている」
- 示唆:「したがって、リソース配分上は〜の改善に重点を置くべきである」
3-6.ステップ6:「問い/答え/示唆」を1スライドに構造化する
最後に、ここまでの要素を1枚のスライドに配置します。

構造はシンプルに、次の三段構成です。
- 上段:問い(RQをかみ砕いた一行)
- スライドタイトルに置く
- 中段:答え(PQに対する結論+グラフ/表)
- 選んだPQに対応するグラフ/表を1〜2個まで
- それぞれに「答えの1文」キャプションを添える
- 下段:示唆(次の一手)
- 箇条書きで2〜3点に絞る
このフォーマットをテンプレートとして持っておけば、
- 7つの観察軸を使ってPQを立てる
- 6つのステップに沿って「問い→答え→示唆」を組み立てる
ことで、どんなテーマの調査であっても、QiQUMOの集計結果から再現性のある“1スライドレポート”を作ることができるようになります。
4. 事例・サンプル(BtoB SaaS無料トライアル後アンケート)
ここからは、BtoB SaaSの事例をもとに、単純集計・クロス集計 → PQ → インサイト → 1スライド という流れを具体的に追っていきます。
4-1. 調査概要と企画段階の問い(RQ)
調査の背景
- 対象:BtoB SaaS(業務支援ツール)の無料トライアル利用企業
- 目的:無料トライアル後のアンケートから、 「有料継続意向を左右している要素」を特定し、改善施策の優先順位を決めること
社内では、
- 「価格が高いから、継続してもらえないのではないか」
- 「UIの使いにくさも影響していそう」
といった“なんとなくの仮説”はあるものの、 どの要素がどれだけ効いているかは定量的に把握できていない状態です。
企画段階の問い(RQ)
RQ:無料トライアル利用後の有料継続意向を最も左右しているのは、どの要素か?
4-2. 調査票の構成と単純集計の結果
調査票は継続意向と継続意向に影響する要素を5つ挙げて、それに対する評価を問うものとしています。
無料トライアルを利用したユーザーにQiQUMOでアンケートを実施し、298件の回答が得られました。
設問項目
- Q1:無料トライアル全体の満足度(5段階)
- Q2:初期設定(導入準備)のしやすさ(5段階)
- Q3:自社の業務課題とのフィット感(5段階)
- Q4:サポート・ヘルプ(FAQ/チュートリアル)のわかりやすさ(5段階)
- Q5:価格への納得感(5段階)
- Q6:有料プランを継続利用したいと思いますか?(5択: ぜひ継続したい/おそらく継続したい/どちらともいえない/あまり継続したくない/全く継続したくない)
QiQUMOのダッシュボード画面から得られる単純集計結果は、以下のとおりです。
単純集計結果

単純集計の結果を見ると、全体的な満足度と初期設定のしやすさ、サポートのわかりやすさについては全体的にポジティブな評価が得られている一方で、業務へのフィット感と価格への納得感、継続意向はネガティブな評価が多いことがわかります。
現状の課題(ネガティブな評価)がどこにあるかは見えてきましたが、これだけでは「なぜ継続意向が低いのか」「具体的にどの要素が継続意向を下げているのか」という『理由』までは特定できません。
ここから、ステップ3で選定した「観察軸」を用いてPQ(二次的な問い)を立て、データをさらに深掘りしていきます。
4-3. PQ1:継続意向 高/低で何が違うのか?
まずは、「関係で見る」観察軸からの二次的な問いです。
PQ1:継続意向が高いグループと低いグループで、Q2〜Q5にどんな差が出ているか?
QiQUMO上で、Q6の回答をもとに次のように2群に分けます。
- 高意向群:
「ぜひ継続したい」「おそらく継続したい」 - 低意向群:
「あまり継続したくない」「全く継続したくない」
この2群で、Q2〜Q5の平均値をクロス集計・比較します。
| 項目 | 高意向群 平均 | 低意向群 平均 | 差分 |
|---|---|---|---|
| Q2 初期設定のしやすさ | 3.37 | 2.47 | +0.90 |
| Q3 業務課題とのフィット感 | 3.99 | 2.12 | +1.87 |
| Q4 サポート・ヘルプのわかりやすさ | 3.37 | 2.79 | +0.59 |
| Q5 価格への納得感 | 2.38 | 1.94 | +0.44 |

この結果から、「答え1」は、次のように書けます。
答え1:有料継続意向を最も大きく分けているのは、「業務課題とのフィット感」である。価格やUIも影響しているが、決定的なのは“自社の課題に効いている実感”の有無だ。
社内の「価格が主因では?」という仮説とは少し違う風景が見えてきます。
4-4. PQ2:“価格不満”の中身は同じか?
次に、「基準で見る」+「関係で見る」を組み合わせた二次的な問いを検証してみます。
PQ2:“価格に不満”と言っている人は、同じ理由で不満を感じているのか?
Q3(フィット感)とQ5(価格納得)の2軸で、回答を4つの層に分けてみます。
- Q3:4〜5点 → フィット感「高」
- Q3:1〜3点 → フィット感「低」
- Q5:4〜5点 → 価格納得「高」
- Q5:1〜3点 → 価格納得「低」
業務フィット感と価格納得感の関連

ここから読み取れる「答え2」は、以下のようになります。
答え2:価格に不満を持つ層(B層・D層)が全体の多数を占めており、割高感を持たれやすいツールであることは事実。
- しかし、業務フィット感さえ高ければ、価格に不満があっても継続意向は極めて高い(B層:平均4.31)。
- 逆に、フィット感が低いと価格不満がそのまま解約意向に直結している(D層:平均2.40)。
- つまり、「高い」と言わせないための値下げではなく、「高くても使いたい」と思わせるための価値伝達(業務フィット)こそが、継続の鍵を握っている。
「価格が高いから解約される」のではなく、「価値が伝わっていないから(割高に感じて)解約される」という構造が見えてきます。
4-5. インサイトと1スライドへの落とし込み
最後に、ここまでのPQ1、PQ2で得られた「答え」を統合し、意思決定者の背中を押す「示唆(アクション)」へと変換して、1枚のスライドにまとめます。
得られた「答え」の統合
まず、2つの分析結果を並べてみます。
- 答え1(要因特定): 継続意向を最も大きく左右しているのは、価格でもUIでもなく「業務課題とのフィット感」である。
- 答え2(構造理解): ユーザーの多くは「価格が高い」と感じているが、それが解約理由の決定打ではない。業務フィット感さえ高ければ、価格に不満があっても継続意向は極めて高い(B層)。逆に、フィット感が低いと価格不満がそのまま解約意向に直結している(D層)。
導き出される「示唆(Implication)」
- 価格改定(値下げ)の優先度は低い。価値さえ伝われば継続されることはB層の継続意向の高さが証明している。値下げは収益性を損なうだけで、本質的な解決にならない。
- したがって、最大の離脱要因である「定着不足(D層)」を解消するために、トライアル期間中のオンボーディング(初期設定支援・ユースケース提案)への人的投資を最優先で行うべきである。
つまり、「価格改定ではなく、オンボーディング(定着支援)への投資」が、正解となります。
これらを「問い→答え→示唆」のフレームに落とし込むと、次のようなスライドになります。

5.よくある失敗と対策
ここまで見てきたように、「RQを土台に、7つの観察軸からPQを立てて、問い→答え→示唆を1スライドに落とす」流れが作れれば、レポートはぐっと伝わりやすくなります。
一方で、実務ではこの流れのどこかでつまずき、「時間をかけたわりに伝わらないレポート」になってしまうことも少なくありません。
ここでは、アンケートの集計結果からレポートを作るときに起こりがちな失敗パターンと、その回避策を整理します。
5-1. グラフから作り始めて「何を言いたいか」がぼやける
よくある失敗
- まずは単純集計・クロス集計を一通り出して、気になるグラフをどんどん貼っていく。
- スライドができたあとに、「このページでは何を伝えたいんだっけ?」と自分でも迷子になる。
なぜ起こるか
- 「グラフを作る=分析が進んでいる」ように感じられるため、安心感がある。
- RQやPQを文章で書くよりも、可視化する作業のほうが取りかかりやすい。
対策
対策
スライドを作る前に、必ずステップ1〜3(RQの1行化/数字の地形把握/観察軸からのPQ出し)を紙やメモ上で済ませる。「このスライドはどのPQに答えるためのものか?」を、グラフを作る前に1行で書いておく。スライドを見直すときは、「この1枚で、“答えの1文”が言えるか?」をチェックする。
5-2. RQと関係の薄い“おもしろ分析”に寄り道してしまう
よくある失敗
- 集計を眺めているうちに、「この属性で分けても面白そう」「この組み合わせも見てみたい」と、次々とクロス集計を追加してしまう。
- 出てきたパターン自体は興味深いが、企画段階のRQとつながらないため、意思決定に使いにくい。
なぜ起こるか
- 7つの観察軸を「網羅的に全部試すべきチェックリスト」と誤解してしまう。
- 「せっかく集めたデータだから、できるだけ多くの発見を出したい」という心理が働く。
対策
観察軸を使うときは、まず「このRQにとって意味があるのはどの軸か?」を決める。PQ候補を出したあとで、RQとのつながりが弱いもの説明しても「それで何が決められるのか?」と言われそうなもの
を容赦なく削る。迷ったときは、「この分析結果をもとに、何か具体的な“次の一手”が変わるか?」を自問する。変わらないなら、そのPQは今回は採用しない。
5-3. 「答え」で止まり、「示唆」まで言い切れない
よくある失敗
- グラフから読み取れる事実までは整理できるが、
- 「したがって、何をどう変えるべきか」
- 「どこに優先的にリソースを割くべきか」
まで踏み込めず、スライド下部が「考察・コメント」にとどまってしまう。
なぜ起こるか
- データから言えることと、担当者の仮説・意見が混ざるのを恐れ、「客観的な事実」だけを書こうとしすぎる。
- 「示唆」と聞くと、完璧な戦略提案を書かなければならないように感じてしまう。
対策
まずは、「答え」の直下に[答え → 示唆]テンプレートを当てはめてみる。[答え(観察された事実)]なので、[誰に対して/何を]を[優先的に/どのように]行うべきである。迷ったら、「何を省き、何に手を打つべきか」を1文で書いてみる。そのうえで、データから直接言えること仮説・前提に依存する部分をスライド内で分けておくと、「示唆」への心理的ハードルが下がる。
5-4. 観察軸を“全部試す”ことで分析沼にはまる
よくある失敗
- 7つの観察軸それぞれでPQを立て、片っ端からクロス集計を作る。
- 結果として、
- 「何となくいろいろ見たけれど、本当に重要なパターンがどれか分からない」
- 分析時間ばかりが膨らむ
といった状態になる。
なぜ起こるか
- 観察軸を「分析メニューの一覧」として捉え、「全部試さないと抜け漏れがあるのでは」と感じてしまう。
対策
観察軸は「全部やるため」ではなく、「どこに絞り込むかを決めるため」のフレームと割り切る。ステップ3でPQ候補を出したら、必ず1〜2個(多くても3個)まで絞ることをルールにする。「レポートに採用するPQ(本筋)」と「検証のみで終わるPQ(参考)」を明確に分け、スライドには前者だけを載せる。
5-5. 1スライドにメッセージを詰め込みすぎる
よくある失敗
- 「せっかく分析したのだから」と、1枚に複数のPQ・複数の“答えの1文”をまとめて載せてしまう。
- グラフの数が増えすぎて、どれが主役のメッセージなのか分からなくなる。
なぜ起こるか
- 枚数制限や報告時間の制約を意識しすぎて、「1枚でできるだけ多く伝えよう」としてしまう。
対策
対策
1枚のスライドにつき、主役のPQは1つだけと決める。どうしても関連する補足を入れたい場合は、中央の主グラフ:主役のPQに対する「答え」右下の小さな図表:補足的な検証結果(あくまでサブ)といったレイアウトで、「主従関係」が一目でわかるように配置する。スライドを見直すときは、「この1枚を見た人に、どんな1文を口頭で言ってほしいか?」をイメージし、その1文以外の要素は削るか別スライドに分ける。
これらの失敗パターンをあらかじめ知っておくだけでも、レポート作成の途中で「今、自分はどこでつまずいているのか?」を言語化しやすくなります。
6.まとめ
ポイントを整理すると、次の4つになります。
- RQ(Research Question)は“元の問い”
- この調査は「何のために」「何を明らかにしたいのか?」を一文でまとめたもの。
- レポートでは、そのままスライドタイトルに置けるレベルまで言語化しておく。
- PQ(Pattern Question)は“集計結果に対する切り口”
- 同じデータでも、どんなPQを立てるかで見えるストーリーが変わる。
- 7つの観察軸は「PQを考えるためのレンズ」
- 時間/属性/関係/全体/基準/影響/予想外、という7つの視点をチェックリストとして眺め、「このRQにとって意味のある軸はどれか?」を選び取る。
- 6ステップで「問い→答え→示唆」を1スライドに構造化する
- ステップ1:RQを1行に整える
- ステップ2:単純集計で「数字の地形」を把握する
- ステップ3:7つの観察軸でPQ候補を出し、1〜2個に絞る
- ステップ4:PQごとに必要な集計だけを作り、「答えの1文」を書く
- ステップ5:「答え」を意思決定につながる「示唆」に翻訳する
- ステップ6:「問い/答え/示唆」を1スライドに配置する
この流れさえ押さえておけば、QiQUMOの単純集計・クロス集計からでも「グラフを並べるレポート」ではなく、「意思決定を前に進めるレポート」を再現性高く作ることができます。

