AIを使ったアンケート作成 「壁打ち」で調査票の品質を高める方法

対話型生成AIの使い方として「壁打ち」という言葉が取り上げられているのを目にします。AIと対話を重ねることで、考えやアイデア、論点などを整理しながら求める結果に近づくための作業がこれにあたります。アンケート業務においても「壁打ち」は有効な方法です。
アンケート業務に生成AIを使う場合のやり方について、今回は調査票の作成について深堀りします。
やり取りしながら理想に近づけていく
対話型生成AIはプロンプトの作り方が出力結果の品質を左右します。こちらの記事では、アンケートの目的や背景、調査内容について叙述的に記述するプロンプトの例を解説しましたが、生成AIとの1回のやり取りで理想的な結果が得られないことは、既に生成AIを活用している方の多くが経験していることではないでしょうか。
OpenAI(ChatGPT)やGoogle AI(Gemini)をはじめとする生成AIベンダーの公式ガイドラインでは、プロンプトで生成AIとやり取りしながら、求める出力結果に近づけていく「反復的な改良(Interative refinement)」や「対話型プロンプト開発(Interactive Prompt Development)」という考え方が示されています。
出力結果に対して「何ができていて、何ができていないのか」を人間が評価し、新たな指示を与えることを繰り返しながら、求めているものの輪郭を明確にしていくことが、生成AI活用の最も効率的なやり方です。
なぜこの方法が効率的なのか
この反復的な改良アプローチが効率的である理由は、生成AIの根本的な仕組みにあります。LLM(大規模言語モデル)は、膨大なテキストデータから学習した統計的パターンをもとに、次に来る単語を確率的に予測して文章を生成しています。つまり、得られる回答は、完璧な論理で導き出されたものではなく、「最も適切である可能性が高い」ということに過ぎません。
同じプロンプトでも出力結果が毎回異なることや、わずかな言葉の違いでも出力が大きく変わったりという文脈依存性という特徴があるため、ユーザーの意図とモデルの解釈にはギャップが生じやすく、一回のやり取りで理想的な結果を得ることは困難です。
そこで重要になるのが、プロンプトを「対話の材料」として捉える視点です。複雑な要件を一度に完璧に指定するよりも、初回の出力を「たたき台」として受け取り、足りない部分や修正点を段階的に具体化していく方が、はるかに効率的です。これは、ソフトウェア開発における「反復型開発」と同様の考え方で、人間とAIが協働しながら理想の成果物を作り上げていくプロセスといえます。
この手法は、生成AIの確率的な性質を前提とした最も自然で実用的なアプローチであり、モデルの潜在能力を最大限に引き出すことができる方法です。
生成AIが”向いている”工程と”向かない”工程
このような生成AIの性質を踏まえて、生成AIが得意とする工程と不得意な工程を理解しておくと、出力結果に対する理解も深まります。
生成AIに向いている工程
- 文言案の大量生成と比較検討(ニュアンスの強弱・専門語→平易語)
- バイアス検出(誘導・二重質問・暗黙前提・否定疑問などの指摘)
- 尺度の統一・整形(5点⇄7点、極性の揃え、ラベル漏れ検出)
- 分岐ロジックの明文化(IF条件の表形式化、テストケース列挙)
- 多言語化・読みやすさ最適化(モバイル前提の負荷削減)
人間が主導すべき工程
- 測定すべき構成概念の定義(何をKPIにするか)
- サンプリング計画・インセンティブ・倫理/法令適合
- 最終の妥当性判断(内容妥当性・業務適合・リスク許容度)
- 本番前のパイロット設計とカットオフ基準(所要時間、直線回答除外など)
生成AIは「事実の断定」より「言語の設計と整形」に強みがあります。調査票づくりはまさに言語設計の領域の作業であるといえます。
人間が“何を測るか”を決め、AIが“どう問うか”を最適化し、人間が“最終妥当性を審査する”―この分担を適切に行うことが、速く・漏れなく・中立的な調査票を作成することにつながります。
アンケートの調査票作成のためのアプローチ方法
対話をしながら作っていくということを念頭に置き、最初に目的とするアンケートの調査票作成に必要な情報について生成AIに聞くことで、プロンプトに入力すべき項目が明確になります。
以下は、顧客満足度調査の調査票作成に必要なプロンプトについてGeminiに聞いた例です。
プロンプト例①:顧客満足度調査 調査票作成に必要な情報(Gemini)
顧客満足度調査のためのアンケート調査を実施したいと考えています。調査票の作成をGeminiに依頼したいのですが、依頼するにあたってGeminiに提供すべき情報は何ですか。
以下のような出力結果が返されます。
【出力結果①(Gemini)】
顧客満足度調査のアンケート調査票の作成をGeminiに依頼するにあたり、以下の情報を提供していただくと、より目的に沿った質の高い調査票を作成することができます。
- 調査の目的
- なぜ顧客満足度調査を実施したいのですか? (例: 新サービスの改善点を見つけたい、顧客のロイヤルティを高める施策を検討したい、競合他社との比較をしたい、など)
- この調査で得た結果をどのように活用したいですか? (例: サービス開発部門にフィードバックする、マーケティング戦略の見直しに役立てる、など)
- 調査対象
- 誰を対象とした調査ですか? (例: 過去1年間に商品Aを購入したすべてのお客様、特定のサービスを継続利用しているお客様、など)
- 顧客の属性情報として、どのような項目を収集したいですか? (例: 年齢、性別、職業、居住地、利用歴、購入金額など)
- 調査したい内容・項目
- 具体的に何について満足度を測りたいですか?
- 商品・サービスそのもの (品質、性能、使いやすさなど)
- 接客・サポート (電話応対、メールでの返信速度、店舗での対応など)
- 価格 (妥当性、コストパフォーマンスなど)
- Webサイト・アプリ (使いやすさ、情報量、デザインなど)
- その他 (配送、アフターサービス、ブランドイメージなど)
- 特に深く掘り下げて聞きたいテーマはありますか?
- 他社製品との比較について
- リピート購入の意向について
- 知人への推奨意向について (NPS)
- 新機能や新サービスへのニーズについて)
- 具体的に何について満足度を測りたいですか?
- 回答形式の希望
- どのような形式の質問を主に使用しますか?
- 5段階評価 「非常に満足」〜「非常に不満」
- はい/いいえ
- 自由記述複数選択
- どのような形式の質問を主に使用しますか?
- 調査票の構成・分量
- 調査票の全体的な構成に希望はありますか?
- 最初に満足度を測る質問
- 次に具体的な項目についての質問
- 最後に自由記述など
- 回答にかかる時間の目安はどのくらいにしたいですか?
- 5分程度
- 10分程度など
- 調査票の全体的な構成に希望はありますか?
- その他の要望
- 回答率を上げるための工夫は必要ですか?
- 冒頭に回答への謝意を述べる
- 簡潔な表現を使うなど
- 特定の用語や表現を使用したい、または避けたいものはありますか?
- 業界特有の専門用語
- 自社独自のサービス名など
- アンケートの冒頭や結びに含めるべき文言はありますか?
- 調査の協力へのお礼
- 個人情報の取り扱いに関する注意書きなど
- 回答率を上げるための工夫は必要ですか?
これらの情報を具体的に提示いただくことで、Geminiは目的に合致した、より実用的で効果的なアンケート調査票を提案することができます。ぜひ、これらの情報を整理してご依頼ください。
上記は顧客満足度調査の調査票を作成するために必要な情報ということになります。あらかじめプロンプトに必要な情報を提示させることで、実施すべきアンケートの設計項目を整理することができます。
以下は、これをもとにした顧客満足度調査の調査票作成のためのプロンプトの例です。
プロンプト例②:顧客満足度調査 調査票作成(Gemini)
あなたは、日本のBtoC企業向けに、顧客満足度を測定するためのアンケート調査票を作成する、専門のマーケティングコンサルタントです。以下の情報を基に、顧客満足度調査票を作成してください。
- 調査の基本情報
- 目的:顧客のロイヤルティを高めるための施策を検討したい。特に、リピート購入につながらない理由を深く探りたい。
- 調査対象者:過去1年間に商品Aをオンラインストアで購入した顧客
- ターゲット像:20〜40代の女性
- 調査票の構成と質問項目
- アンケートの冒頭
- 調査協力への感謝と、調査の目的(サービス改善のため)を明確に記載する。
- 回答時間の目安(5分程度)を提示し、回答への心理的ハードルを下げる。
- 質問項目
- 総合満足度: 最初に、商品Aに対する総合的な満足度を5段階評価で聞く。
- 具体的な満足度評価
- 商品そのもの: 品質、デザイン、使いやすさ
- オンラインストア: サイトの操作性、情報量
- 購入プロセス: 注文のしやすさ、決済方法の種類、配送の速さ・梱包
- カスタマーサポート: 問い合わせ対応の速さ・丁寧さ
- リピート意向: 商品Aを今後も購入したいか、知人に推奨したいか(NPS)を問う。
- 自由記述: 「不満に感じた点」と「改善してほしい点」について、具体的な意見を尋ねる。特に「不満に感じた点」は、リピートにつながらない理由を特定するため、詳細な記述を促す。
- 顧客属性: 年齢、居住地、購入頻度。匿名性を保つため、性別は聞かない。
- 回答形式の指定: 設問に応じて、5段階評価、複数選択、自由記述を適切に組み合わせてください。
- アンケートの冒頭
- 納品形式
- アンケート調査票を、すぐに使える形式で提供してください。
- 設問番号と回答形式(例:[5段階評価]、[自由記述])を明確に記載してください。
- 各設問の意図について、簡単な解説を加えてください。
- 留意事項
- 回答者が回答しやすいよう、専門用語を避け、簡潔で分かりやすい言葉を使用してください。
- 回答者の立場に寄り添った、ポジティブで丁寧なトーンで作成してください。
この例は、アンケートの調査票作成という目的に対して、あらかじめ調査の輪郭が明確になっている場合に可能な方法であり、生成AIとの対話の初期の段階で解像度の高い出力結果を求めることができます。
一方、調査企画の段階では、調査の方向性や明らかにすべき課題が明確になっていないことも実務ではよくあるケースです。その場合には、必要最低限の情報を生成AIに渡すことから始めて、課題解決のためのアイデアを拡張させていくことも生成AIの有効な活用の仕方です。
例えば、以下のような例が挙げられます。
プロンプト例③:課題や仮説、それを検証するための必要な調査項目を検討する(Gemini)
あなたは経験豊富なリサーチャーです。当社の新製品『〇〇』に対する顧客満足度調査を実施します。この調査で明らかにすべき主な課題や、想定される仮説、そしてそれらを検証するための質問項目案を複数提案してください。
以下の出力結果が得られます。
出力結果 ③(Gemini)
調査で明らかにすべき主な課題と想定される仮説
- 製品の基本機能と性能に対する満足度
- 製品『〇〇』の最も基本的な部分が、顧客の期待に応えられているかどうかを検証します。
- 課題:製品の主要機能が顧客のニーズを満たしているか、また性能は安定しているか?
- 仮説:
- 仮説1-A (機能): 顧客は、製品『〇〇』の核心となる機能に満足している。特に、特定の機能(例:〇〇機能)が競合製品と比べて優れていると評価されている。
- 仮説1-B (性能): 顧客は、製品『〇〇』の安定した性能(例:処理速度、耐久性)を高く評価している。
- 仮説1-C (不満点): 一部の顧客は、特定の機能の不足や、予期せぬ不具合に不満を感じている。
- 製品『〇〇』の最も基本的な部分が、顧客の期待に応えられているかどうかを検証します。
- UI/UX (ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)
- 製品の操作性やデザインが、顧客の利用を妨げていないか、むしろ快適な体験を提供しているかを検証します。
- 課題:製品のUI/UXは直感的で、誰でも簡単に使いこなせるか?
- 仮説:
- 仮説2-A (直感性): 顧客は、直感的なUIとスムーズな操作フローを高く評価している。
- 仮説2-B (学習曲線): 初めて製品を使用する顧客でも、マニュアルなしで主要機能を使いこなせる。
- 仮説2-C (不満点): 複雑なメニュー構造や、分かりにくいアイコンが、ユーザーのストレスになっている。
- 製品の操作性やデザインが、顧客の利用を妨げていないか、むしろ快適な体験を提供しているかを検証します。
- 製品の価格と価値のバランス
- 顧客が支払った金額に対して、製品が十分な価値を提供していると感じているかを検証します。
- 課題:顧客は、製品『〇〇』の価格設定を適正だと感じているか?
- 仮説
- 仮説3-A (価値評価): 顧客は、製品の機能と性能を考慮すると、価格は非常に妥当だと考えている。
- 仮説3-B (不満点): 多くの顧客は、競合製品と比較して価格が高すぎると感じており、価格が購入の障壁になっている。
- 顧客が支払った金額に対して、製品が十分な価値を提供していると感じているかを検証します。
- アフターサービスとサポート体制
- 製品購入後の顧客サポートが、顧客の信頼と満足度を高めているかを検証します。
- 課題:製品に問題が発生した際、サポート体制は顧客の期待に応えられているか?
- 仮説
- 仮説4-A (満足度): 顧客は、サポートセンターの対応スピードや担当者の知識に非常に満足している。
- 仮説4-B (不満点): 問い合わせ窓口が分かりにくい、または問題が解決されなかったという不満がある。
- 製品購入後の顧客サポートが、顧客の信頼と満足度を高めているかを検証します。
仮説を検証するための質問項目案
基本情報
- 製品『〇〇』をいつ、どこで購入しましたか?
- 製品『〇〇』の主な用途(目的)は何ですか?製品『〇〇』の総合的な満足度を10点満点で評価してください。(10点:非常に満足、1点:非常に不満)
製品の基本機能と性能に対する満足度
- 製品『〇〇』の総合的な満足度を10点満点で評価してください。(10点:非常に満足、1点:非常に不満)
- 製品『〇〇』の〇〇機能(最も重要な機能)に対する満足度を10点満点で評価してください。
- 製品『〇〇』の性能(例:動作の安定性、処理速度)について、どのように感じますか?
- 非常に良い / 良い / 普通 / 悪い / 非常に悪い
- 特に気に入っている機能や性能があれば、具体的にお書きください。
- 不満に感じている点や、改善を希望する機能があれば、具体的にお書きください。
UI/UXの使いやすさ
- 製品『〇〇』の操作性は、どのくらい直感的だと感じましたか?
- 非常に直感的 / 直感的 / 普通 / やや複雑 / 非常に複雑
- マニュアルを見ずに、主要な機能を使いこなすことができましたか?
- はい / いいえ
- 製品のデザインや見た目について、どのように感じますか?
- (自由記述)
価格と価値のバランス
- 製品『〇〇』の価格は、提供される価値に対して、妥当だと感じますか?
- 非常に安い / 安い / 妥当 / 高い / 非常に高い
- もし次回、類似製品を購入するとしたら、同じ価格帯の『〇〇』を選びますか?
アフターサービスとサポート体制
- 製品に関する問い合わせやサポートを求めましたか?
- はい(→質問14へ) / いいえ(→質問16へ)
- サポート対応のスピードに満足しましたか?
- はい / いいえ
- サポート担当者の対応や知識に満足しましたか?
- はい / いいえ
自由記述
- 製品『〇〇』を友人に薦めたいと思いますか?その理由も教えてください。
- その他、製品『〇〇』に対するご意見やご感想を自由にお聞かせください。
例②のプロンプトでは、あらかじめ必要な調査項目を決めた上でプロンプトを入力して質問文を生成AIに考えさせましたが、例③では課題と仮説、質問文までを考えさせています。生成AIとのやり取りしながら思考を整理する、いわゆる「壁打ち」を行うことで、アンケート調査で解決すべき本質的な課題や調査票に必要な項目を洗い出すことができます。
生成された出力結果の精査
生成された出力結果についても、生成AIに自己評価させて、質問文と選択肢の誤りを発見し、より適切なものに改善していきます。
出力結果③で生成された「仮説を検証するための質問項目案」に対して、問題箇所がないかどうかを生成AIにチェックさせます。
プロンプト例④:質問文と選択肢の精査(Gemini)
以下は新製品〇〇についての顧客満足度調査の調査票です。アンケート調査の調査票として問題のある箇所を指摘して修正案を出してください。
以下の出力結果が得られます。
出力結果④(Gemini)
お示しいただいた新製品〇〇の顧客満足度調査票について、マーケティングコンサルタントの視点から問題点を指摘し、修正案を提案します。
指摘事項と修正案
1. 設問の意図と回答形式の不一致
【問題点】
- 設問10「製品のデザインや見た目について、どのように感じますか?」が自由記述形式になっています。自由記述では、デザインの満足度を定量的に測ることが難しく、データ分析が困難になります。
- 設問12「もし次回、類似製品を購入するとしたら、同じ価格帯の『〇〇』を選びますか?」が、回答形式の指定がありません。回答形式がないと、回答者の解釈にバラつきが生じ、回答結果の信頼性が低下します。
【修正案】
- デザインと見た目に関する設問を修正し、定量的な回答形式を追加します。
- 修正案1: 製品のデザインや見た目について、どの程度満足していますか?
[5段階評価] 5:非常に満足 / 4:満足 / 3:どちらとも言えない / 2:不満 / 1:非常に不満
- 修正案2: 製品のデザインや見た目について、お聞かせください。
[自由記述] (意図を明確にするために、「どんな点が気に入りましたか?」などの補足質問を追加することも有効です。)
- 次回購入意向に関する設問に回答形式を追加します。
- 修正案: もし次回、類似製品を購入するとしたら、同じ価格帯の『〇〇』を再び選びたいと思いますか?
[5段階評価] 5:必ず購入したい / 4:購入したい / 3:どちらとも言えない / 2:購入したくない / 1:絶対に購入したくない
2. 質問の順序と流れ
【問題点】
- 設問13「製品に関する問い合わせやサポートを求めましたか?」の後に、「はい(→質問14へ) / いいえ(→質問16へ)」という誘導が記載されていますが、これはアンケート作成者が使う指示であり、回答者には不要です。回答フォームの設計で自動的に次の設問にスキップさせるべきです。
- 設問16「製品『〇〇』を友人に薦めたいと思いますか?その理由も教えてください。」が自由記述のセクションに含まれていますが、この質問はNPS(ネット・プロモーター・スコア)を測定する上で非常に重要であり、独立した設問として配置し、NPSスコアを算出できる形式にするのが一般的です。
【修正案】
- アフターサービスとサポート体制に関する設問を修正します。
- 修正案: 設問A: 製品に関するお問い合わせやサポートを求めましたか?
[はい / いいえ] ※「はい」と回答した場合のみ、次の設問が表示されるように設定します。
- 設問B: サポート対応のスピードに満足しましたか?
[5段階評価] 5:非常に満足 / 4:満足 / 3:どちらとも言えない / 2:不満 / 1:非常に不満
- 設問C: サポート担当者の対応や知識に満足しましたか?
[5段階評価] 5:非常に満足 / 4:満足 / 3:どちらとも言えない / 2:不満 / 1:非常に不満
- NPS設問を独立させ、自由記述の前に配置します。
- 修正案: 設問D: 製品『〇〇』を友人や知人に、どの程度おすすめしたいと思いますか?
[11段階評価] 0:まったくおすすめしない 〜 10:強くおすすめする
- 設問E: 設問Dでお答えいただいた理由を、具体的にお聞かせください。
[自由記述]
3. 設問の表現と構成
【問題点】
- 設問7「不満に感じている点や、改善を希望する機能があれば、具体的にお書きください。」が1つの設問にまとまっていますが、これらを分けることで、より具体的な意見を引き出しやすくなります。
- 設問17「その他、製品『〇〇』に対するご意見やご感想を自由にお聞かせください。」は、前の設問で回答しきれなかったことを拾うためのものですが、回答者に「他に何を書けばいいのだろう」という負担を与える可能性があります。
【修正案】
- 不満点と改善点を2つの設問に分けます。
- 修正案: 設問F: 製品『〇〇』について、不満に感じた点や課題があれば、具体的にお聞かせください。
[自由記述]
- 設問G: 製品『〇〇』について、改善を希望する点やご要望があれば、具体的にお聞かせください。
[自由記述]
- 最後の自由記述をより具体的に促す表現に変更します。
- 修正案: 設問H: その他、今回の調査で触れられていない点や、製品『〇〇』に対するご意見、ご感想がございましたら、自由にお聞かせください。
[自由記述]
総合的な修正調査票の提案
上記の修正を踏まえた、より洗練された調査票の構成を以下に示します。
- 基本情報
- 製品の総合満足度(10段階評価)
- 各要素の満足度(5段階評価)
- 品質、デザイン、使いやすさ
- オンラインストアの操作性、情報量
- 購入プロセス(注文、決済、配送)
- アフターサービスとサポート体制(条件分岐を設定)
- リピート意向と推奨度(NPS設問を独立させる)
- 自由記述
- 不満点
- 改善希望点
- その他、ご意見
このような構成にすることで、回答者にとって分かりやすく、データ分析も効率的に行える質の高いアンケートを作成できます。
生成AIが指摘した問題箇所のなかで、設問12の回答形式の未指定や設問16のNPSの回答形式の誤りなどは、最初の段階で人の目でもすぐに分かることですが、質問項目が多い場合など、思わぬ見落としを防ぐことにつながります。
設問10の回答形式の変更、設問7の設問の分離などは、人の目では一見妥当に感じられますが、生成AIが得意とする言語設計や矛盾の検出といった特性が生かされた指摘となっています。
上の例は、「問題箇所を指摘」という文言でプロンプトを作成しましたが、以下のような調査票作成における具体的な問題となる条件を与えて、より細かく精査することも方法の1つです。
プロンプト例⑤:具体的な問題箇所の検出と修正
次の調査票について、以下を0/1で判定し、問題箇所を引用して修正案を出してください。
- 二重質問(Yes/No)
- 誘導表現(Yes/No)
- 曖昧表現(Yes/No)
- 暗黙の前提・専門用語(Yes/No)
- 尺度ラベルの欠落/逆転/混在(Yes/No)
- 否定疑問/ダブルネガ(Yes/No)
- 回答不能パターン(該当なしが無い等)(Yes/No)
- モバイル負荷(語数>XX、グリッド列>YY)(Yes/No)
- 分岐の到達不能/矛盾(Yes/No)
- 禁止語/必須表現の遵守(Yes/No)
- 個人情報/センシティブ配慮(Yes/No)
出力:指摘一覧→修正差分(原文/修正)→改善後全文
上記の各項目は、アンケートの調査票作成において避けるべきポイントです。チェック項目を具体的に指定することで、設問設計の質をより客観的に評価できるようになります。
最終チェックとリスク管理の重要性
生成AIはアンケート作成プロセスを劇的に効率化しますが、その回答は絶対ではないことを常に念頭に置く必要があります。AIはもっともらしいが事実と異なる回答(ハルシネーション)を生成したり、学習データ由来のバイアスを含んだりする可能性があります。そのため、最終的な質問文、選択肢、構成の妥当性は、必ず人間が確認しなければなりません。
特に注意が必要なのは、「AIに任せすぎない」ための境界線を明確に設定することです。規制や高リスク領域(医療・金融・未成年・差別に関わる設問)では、専門家と法務のレビューを必須化する必要があります。
また、アンケートデータには個人情報や機密情報が含まれる可能性があるため、プライバシー保護とデータセキュリティは最も重要な考慮事項です。生成AIのモデルに個人情報を入力することは、情報漏洩のリスクを高めるため、データの匿名化や暗号化、閉域ネットワークでの運用といった多層的な対策が有効です。
AIを活用しながらも、人間の専門知識と倫理的判断を組み合わせることで、信頼性の高い調査を実現できます。