CSポートフォリオ分析とは|簡単解説
CSポートフォリオ分析のカンタン語句解説
CSポートフォリオ分析は、顧客満足度に大きく影響する商品やサービスの要素を特定し、顧客満足度を高めるために改善すべき個別要素の優先順位付けを明らかにすることを目的とします。顧客満足度調査の結果から、総合評価と個別要素の評価の相関係数を求め、2次元のマップに落とし込み、その結果から個別要素の優先順位付けを行います。
CSポートフォリオ分析の概要
CSポートフォリオ分析は、顧客満足度を形成する個別の評価要素(サービス、品揃え、など)の重要度(影響度)を構造的に把握し、顧客満足度向上のための効果的な施策を検討するための手法です。
以下の散布図はスーパーマーケットの顧客満足度調査においてCSポートフォリオ分析を行った際のアウトプットイメージです。
グラフの縦軸は個別要素の評価の高さ、横軸は各要素の総合的な顧客満足度への影響の大きさをあらわしています。
このグラフでは、「重点維持項目」「維持項目」「改善項目」「重点改善項目」4つの象限に分けられており、それぞれの象限は以下のように解釈することができます。
重点維持項目[満足度率(高)影響度(大)]
右上の象限は個別の評価も高く、総合的な顧客満足度への影響も高い要素です。総合的な顧客満足度に大きく影響する要素であることから、提供水準を維持すべき重点項目に位置づけられます。
維持項目[満足度率(高)影響度(小)]
左上の象限は個別の評価が高いものの、総合的な顧客満足度に影響する度合いは低いと考えられる要素です。個別評価は高いので現状の提供水準を維持していくべき項目です。
重点改善項目[満足度率(低)影響度(大)]
右下の象限は総合的な顧客満足度に影響する度合いが高いにも関わらず、評価が得られていない項目です。優先的に改善策を講じることが必要な項目です。
改善項目[満足度率(高)影響度(大)]
左下の象限は、現状の評価が低い項目なので改善が必要であることには変わりありませんが、総合的な顧客満足度に影響する度合いは低いため優先順位は低くなります。
CSポートフォリオ分析の手順
CSポートフォリオ分析の基本的な考え方は、総合的な顧客満足度と顧客満足度を構成する個別の評価要素の関連性を定量化して比較し、総合的な顧客満足に大きく影響する個別の評価要素をより重要視するということです。
総合的な顧客満足度と個別の評価要素の相関係数を算出し、個別評価と相関係数の2次元マップに落とし込むことで、個別評価の重要度を可視化します。
顧客満足度調査(アンケート調査)の回答結果を分析の対象とします。
顧客満足度調査(アンケート)の聴取項目
アンケート調査の質問項目と選択肢は、自社の商品やサービスの顧客満足度を個別の評価要素に分解し、各項目について段階評価のスケールを用いた単一回答とします。
5.非常に満足 | 4.満足 | 3.どちらともいえない | 2.不満 | 1.非常に不満 | |
---|---|---|---|---|---|
惣菜がおいしい | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
品揃えが豊富 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
価格が手頃 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
生鮮品が新鮮 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
レジの処理が速い | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
店舗が明るい | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
陳列が見やすい | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
品切れが少ない | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
従業員の対応が良い | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
総合評価 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
個別評価と総合評価の相関係数を算出する
上記の質問項目の集計結果から、縦列の項目の相関係数を求めます。Excelで計算する場合は、「データ分析」の「相関」を使ってデータの範囲を指定します。
Excelの「データ分析」→「相関」から以下の結果が出力されます。
総合評価と各個別評価の相関係数が上の表の赤枠の部分です。
満足度率(「非常に満足」と「満足」の全体に対する割合)と相関係数から以下の表を作成すると、冒頭に挙げた2次元マップとしてあらわすことができます。
満足度率 | 相関係数 | |
---|---|---|
惣菜がおいしい | 55.0 | 0.624 |
品揃えが豊富 | 50.0 | 0.594 |
価格が手頃 | 45.0 | 0.721 |
生鮮品が新鮮 | 40.0 | 0.608 |
レジの処理が速い | 40.0 | 0.556 |
店舗が明るい | 40.0 | 0.286 |
陳列が見やすい | 25.0 | 0.442 |
品切れが少ない | 15.0 | 0.685 |
従業員の対応が良い | 10.0 | 0.238 |
総合評価 | 45.0 | 1.000 |
そもそもポートフォリオとは
ポートフォリオ(portfolio)の意味は書類や作品をまとめて保管するためのケースのことであり、イタリア語の札入れ(portafoglio)を語源としています。
ポートフォリオというと経営戦略を検討する際のPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)や投資をする際の資産の組み合わせ、アーティストの作品集や職務経歴書に添付する成果物をまとめたものなどに対しても使われます。
いずれの場合でも「複数のものの組み合わせとそれぞれの配分」という意味が含まれています。CSポートフォリオ分析の場合は顧客満足度を個別の要素に分解した場合に、それぞれの要素が総合的な顧客満足度にどう影響するのかを指標化します。
「組み合わせと配分」という観点からPPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)についても解説します。
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)
PPMは米コンサルティング大手のボストン・コンサルティング・グループによって開発されたフレームワークであり、製品や事業のライフサイクルに応じた経営資源の配分を検討することを目的とするものです。
参考:クロス・マーケティング「ポートフォリオ分析で算出される4つの象限の活用術」
市場成長率と相対的な市場占有率を切り口として、個別の製品や事業の収益性、成長性、キャッシュフローを評価し、経営資源の配分と戦略を決定します。
第1象限 花形 | 資金流入:大資金流出:大 | 高い収益が得られる一方、成長のための投資が必要でありキャッシュフローは期待できません。投資を行って市場占有率を維持する必要があります。成長期にある製品や事業が該当します。 |
第2象限 問題児 | 資金流入:小資金流出:大 | 成長初期にある製品や事業が該当し、継続した投資によりシェアを獲得することで、花形に移行させることが求められます。 |
第3象限 負け犬 | 資金流入:小資金流出:小 | ライフサイクルの衰退期に当たる製品や事業が該当し、縮小や撤退の判断が迫られます。 |
第4象限 金のなる木 | 資金流入:大資金流出:小 | キャッシュフローの源泉ですが、今後の成長性が見込めない製品や事業が該当します。獲得した資金を花形や問題児、研究開発などに投資します。 |
まとめ
CSポートフォリオ分析を行うことで顧客満足度調査の結果をより深く分析することが可能になります。加えて、総合評価、個別評価の理由を質問項目に組み入れることで、顧客満足度の解像度を高めることができます。
CSポートフォリオ分析に最適なセルフ型アンケートツールがクロス・マーケティングのQiQUMOです。アンケート回答者に表示される画面を表示させながらアンケートを作成できる点が大きなメリットです。
顧客満足度調査をご検討の際にはクロス・マーケティングにお問い合わせください。