顧客価値とは|簡単解説

顧客価値の意味とは

顧客価値のカンタン語句解説

顧客価値とは、金額であらわされる経済的価値のほか、機能的価値、情緒的価値、体験価値など、さまざまな要素から構成されます。マーケティングにおける顧客理解の基点となるのが顧客価値であり、どのような切り口が価値につながるかを分析する必要があります。

顧客価値とは

消費行動は個人の価値観にもとづいており、商品やサービスによって提供されるもののどんな要素を価値と感じるかは個々の消費者それぞれに異なります。

市場には競合他社が存在し、差別化の要因となるのは提供される価値の種類と大きさです。また、消費者が感じる満足は、期待していた価値と実際に提供された価値のギャップによって生まれます。

このような点から、顧客価値を理解し、どんな価値を提供するかがマーケティングの基点となります。顧客価値にはさまざまな側面があり、購買行動を左右する価値の要素を知っておくことが重要です。

価値の構成要素

顧客が商品やサービスに対価を支払うことで得るものが顧客価値です。顧客価値には以下のような側面があります。

経済的価値

経済的価値は商品やサービスの価値を金額であらわしたものです。金額は価値のものさしであり、以下に述べる他のさまざまな価値を総合して、顧客がその金額に見合うと感じるかどうかが購入する基準となります。

機能的価値

機能的価値は、顧客にとって商品やサービスによってもたらされる便益のことであり、商品やサービスの顧客ニーズを満たすことができる能力のことを指します。

カテゴリーに共通する基本的な機能、他のブランドにはない独自の機能、また、共通する機能でもパフォーマンスの水準によって価値の大きさが変化します。

情緒的価値

情緒的価値は、商品やサービスを購入・使用することによって得られる精神的な満足や喜びのことであり、顧客の感情や心理的要素に働きかける価値のことです。

ブランドイメージやデザイン、仕様、価格水準などによってもたらされる顧客個人の心理的な満足の度合いが価値の大きさであり、顧客それぞれによって感じる価値の大きさは異なります。

体験価値

体験価値は、商品やサービスを購入・使用するプロセスのなかで付加的に提供される価値のことです。入手・利用するまでのプロセスの違い、店舗の雰囲気や接客の違い、サービスの質の違いなどが体験価値を高めるための要素となります。体験価値はブランドに対するロイヤリティを向上させる要因となります。

自己実現価値

自己実現価値は、顧客が自分らしくあるために、あるいは、理想的な自分になるために必要なものとして商品やサービスに見出している価値です。

例えば、趣味や教養、健康、美容などに関する消費が自己実現価値の対象となるほか、高級ブランドを身につけることでステータス感や自己肯定感を得ることも自己実現価値に当てはまります。

社会的価値

商品やサービスを購入・使用することが、社会貢献や社会的つながりを築くことにつながるのが社会的価値です。

環境に配慮した製品を選択することで社会的責任感を満たしたり、地域の商品を購入することで地域振興に貢献したりすることが該当します。

顧客価値の4段階

サービス・マネジメントの権威カール・アルブレヒトは、顧客の価値に対する感じ方に着目し、顧客価値を4つの段階に分類しています。

顧客が事前に商品やサービスに抱く期待値と実際に提供されたものの差によって、顧客価値の感じ方が異なるという考え方です。

基本価値

商品やサービスに対し、取引の最低限の基本として顧客が期待する価値です。基本的価値を満たしていない場合、クレームにつながる可能性があります。

期待価値

価格やブランドによるイメージから、提供されるであろうと期待している価値です。期待している水準の価値が提供されれば満足を得られますが、期待を裏切られればリピートが見込めなくなると考えられる価値水準です。

願望価値

顧客の最初の期待にはなく、提供されなくても不満にはつながらないものの、提供された場合には高い満足につながる価値のことです。

未知価値(予想外価値)

顧客の当初の期待を大きく上回り、顧客の感動、驚き、喜びを引き起こすことができる価値です。

純顧客価値

コトラーは、顧客が受け取る価値に対する顧客が支払うコストの面にも着目し、総顧客価値と総顧客コストの差分を純顧客価値と定義しています。

純顧客価値の図解

顧客は、それまでの経験や選択の試行錯誤の結果から純顧客価値が最も高くなるものを購入します。総顧客価値が同じであれば総顧客コストの低いもの、総顧客コストが同じであれば、総顧客価値の大きいものが顧客に選ばれるという考え方です。

総顧客価値と総顧客コスト内訳として、以下の要素が挙げられています。

総顧客価値
製品価値性能、デザイン、信頼性、希少性など、製品そのものが持つ価値
サービス価値アフターサービスなど、付帯的に追加される価値
従業員価値従業員の態度・対応力・教育の程度
イメージ価値企業イメージ、ブランドイメージなど
総顧客コスト
金銭的コスト製品価格、手数料、物流費、維持費など
時間的コスト納期、交渉に要する時間、使い方を理解・習得するまでの時間
エネルギーコスト選択・決定に至るまでの手間、店舗までの物理的な距離
心理的コスト初回購入時、金額の大きさによる不安など

金銭的コスト以外の時間的コスト、エネルギーコスト、心理的コストの優先順位が高い場合、それらの要素によって選択される製品が変更される可能性が高まります。これをスイッチングコストと呼びます。

バリュープロポジション

バリュープロポジションは「価値提案」と訳され、自社ブランドを顧客に選んでもらうために必要な価値の考え方を示したものです。

バリュープロポジションの図解

バリュープロポジションで想定する価値の枠組みは、顧客と自社、競合他社の3つです。顧客が求める価値を提供することを、自社・競合他社を含めた企業側が考えます。そのなかで、競合他社が提供できない自社独自の価値を提供することができれば、自社の提供する価値を顧客に選んでもらう可能性を高められるということです。

また、バリュープロポジションの考え方を基本に置いたフレームワークに、バリュープロポジションキャンバスがあります。

バリュープロポジションキャンバスの図解

バリュープロポジションキャンバスにおける顧客価値は、ターゲットとなる顧客層にとっての、顧客が実現したいこと(①Customer Job)を念頭においた場合の、Gains(顧客が得るメリット・恩恵)とPains(顧客の悩みや解決したい課題)に分けたものです。

ジョブ理論

イノベーション研究の第一人者、米ハーバード・ビジネス・スクールのクリステンセンが提唱した「ジョブ理論」では、顧客が受け取る価値を「特定の状態からの進歩」と位置づけています。

ジョブ理論のなかで価値提供の対象となるのは、特定の状態や環境に置かれた顧客であり、そこから顧客が望む状態を実現する(進歩する)ために、商品やサービスの購入に至るという考え方です。

よく引き合いに出されるのがミルクシェイクの例です。ミルクシェイクは子供の飲み物というイメージがありますが、あるファーストフード店のミルクシェイクの購入者を観察した結果、通勤時間帯の車内で、車通勤の退屈を紛らわすことが購入する目的であることがわかりました。他のフードメニューに比べて、手が汚れず、飲み終わるまでに時間がかかるという点が、この店舗だけに適用することができるミルクシェイクの顧客価値ということになります。

まとめ

顧客が商品やサービスを購入する際に、何を価値と感じて選択を行うのかは、顧客それぞれによって異なるほか、さまざまな要素が関連しています。それを解き明かすことがマーケティングリサーチの主要な目的です。

ジョブ理論のミルクシェイクの例のように、実際に調べてみないとわからないのが顧客の購買行動です。顧客価値を明らかにするための最適なツールが、セルフ型アンケートツールQiQUMOです。

消費者調査を実施する際には、クロス・マーケティングにお問い合わせください。