コーホート分析とは|簡単解説

コーホート分析の意味とは

コーホート分析のカンタン語句解説

コーホート分析は、世代や年齢層に着目した時系列的変化を分析するための手法です。特定の商品の需要動向や時系列での消費傾向の変化などを「時代効果」「年齢効果」「コーホート効果」の3つの要素から各世代の特性を分析することで、ターゲティングや需要予測に活かすことができます。

コーホート分析とは

コーホート(Cohort)は、群、同時発生集団といった意味を持っています。コーホート分析は「団塊の世代」や「Z世代」といったキーワードに代表されるような、生まれた年代をひとつのグループと見なしてライフスタイルや消費行動、価値観などの特徴を明らかにすることを目的とします。

コーホート分析では分析対象とするコーホートの特徴を「時代効果」「年齢(加齢)効果」「コーホート(世代)効果」の3つの要素に分解して把握します。

時代効果

時代効果は、高度成長期やバブル期など、時代そのものが持つ社会的経済的背景が及ぼす要因であり、その時代に社会全体に共通して存在する行動様式や意識が挙げられます。

景気動向や技術革新、流行などによって形成されるもので、スマートフォンの普及といった生活や行動に影響を及ぼす時代的な変化が時代効果に該当します。時代による変化は流動的であり、変化に大きく影響することが特徴です。

年齢(加齢)効果

年齢効果は時代や世代に関わりなく、ライフステージによって共通して起こり、変化していく部分であり、就学や家族構成の変化、肉体的な加齢による行動や意識の変化が当てはまります。

大まかに実年齢に応じて変化していく部分であり、人口構成が安定していれば社会全体に現れる変化はそれほど大きくないと考えられますが、少子高齢化の急速な進行という時代効果のなかでは、若年層の需要が縮小していくことが想定されます。

コーホート(世代)効果

同じ年代に生まれ育った「世代」に共通する、他の世代との違いの部分がコーホート効果です。例えば、1960年代に生まれたバブル世代の好景気のなかでの消費体験がその後の消費傾向に影響を及ぼすといったことが挙げられます。

年齢効果に対してコーホート(世代)が持つ特徴はそれほど変化しないものの、世代交代によって社会全体に現れる変化が徐々に増していくという傾向があります。

コーホート分析の方法

コーホート分析は、一定期間ごとに同じ調査データを取得し、データの時系列的な変化を分析する手法です。年齢階級別・調査時点別のマトリクス(コーホート表)が生成され、それを基に、全体の変化の要因を年齢と時代の変化から出生年ごとのコーホートの特徴を明らかにするものです。

コーホート表を作成するだけでも多くの情報を得ることができますが、「時代効果」「年齢効果」「コーホート効果」を明確に分離するためには、統計的な手法を使った分析を行います。

回顧的方法

調査対象に過去にさかのぼった質問を行い、過去の行動や意識などを聴取する方法です。異なる世代を対象として、それぞれの年代別の行動や意識について調査対象の記憶をもとに明らかにします。

ひとつ注意したいのが、回顧的方法での分析は、定量調査(質的調査)に近いため、統計的(量的)な処理が難しい点です。

標準コーホート表からの考察

年代別の時系列データを配置したコーホート表を作成し、コーホート表のデータから時代別、年齢別、コーホート別の変化を考察する方法です。

コーホート表とコーホート分析のイメージ

データの変化に対して、時代効果、年齢効果、コーホート効果に分解することはできないものの、分析者の主観にもとづいて柔軟な仮説を立てて解釈を加えていくことができる点がメリットです。

ベイズ推計を用いたコーホートモデル

コーホート分析の3つの効果を識別する方法は、統計手法を使ったやり方が開発されており、ダミー変数と最小二乗法を用いた回帰分析やさまざまな統計モデルからベイズ推計を行う方法が用いられます。

コーホート分析の具体例

コーホート分析は人口政策の分野で多く用いられている調査手法です。厚生労働省と内閣府が実施している調査のなかから、コーホート分析の事例をご紹介します。

標準コーホート表をグラフ化

以下は、厚生労働省の「「出生に関する統計」の概況 (2)出生コーホート別の分析(世代による変化)」から、出生コーホート(生まれ年)別の初婚率・出生率のグラフを引用したものです。

各出生コーホート(生まれ年)ごとに19歳を起点とした年齢ごとの「初婚率」「第1子出生率」「第2子出生率」「第3子出生率」をグラフ化しています。

左側の昭和30年生まれと昭和35年生まれを比較すると、初婚年齢、1子、2子、3子の出産年齢はほぼ同じですが、それぞれの率が全体的に低下しています。

右側の昭和40年代生まれでは、30年代と比較して初婚年齢、1子、2子、3子の出産年齢が全体的に高年齢化しているとともに、それぞれの率も低下しています。

標準コーホート表を見るだけでは「時代効果」「年齢効果」「コーホート効果」を識別することはできませんが、コーホート別の特徴を把握することができます。

ベイズ推計を用いたコーホート分析

内閣府が実施している「高齢社会対策に関する調査」では「平成20年度 高齢者の現状・動向についての調査」でコーホート分析を用いた分析を行っています。

「高齢社会対策に関する調査」は5年ごとに実施されるもので、65歳以上の「就業・所得」「健康・福祉」「学習・社会参加」「生活環境」等についての高齢者の意識に関する総合的な調査を行うものです。

その中から、コーホート分析のアウトプットの具体例をご紹介します。

単身世帯の割合(対世帯)

取得データは「国勢調査」から1975〜2005年まで、5年ごと7時点の「世帯主年齢別単身世帯数(男女別)」を「世帯主年齢別全一般世帯数」で除した割合を単身世帯の割合としています。

各調査時点の単身世帯の割合は以下のようになっています。

コーホート分析を行った結果、以下のグラフが得られます。

上記グラフは、上段が男性、下段が女性、左側の列が「時代効果」中央2列が「年齢効果」、右側の列が「コーホート効果」を表しています。

これらの結果から「時代効果」「年齢効果」「コーホート効果」について以下の分析結果が示されています。

効果の種類傾向・考察
時代効果・時代効果は見られない→世帯単位では分母の全世帯数も増加するため時代効果は現れにくい
年齢効果・20代から減少し40歳を底に増加する傾向が見られる→20~30代にかけて結婚により単身世帯は減少し、40代以降は離別・死別等により増加する
コーホート効果・女性は1950〜1980年生まれ、男性は1920~1960年代後半生まれまで増加傾向→1920年代ごろに生まれた世代(戦後に家族形成期を迎える世代)以降、核家族化、世帯の小規模化、未婚化(非婚化)により単独世帯(単身者)が増えたと考えられる

まとめ

少子高齢化が進み人口構成が変化していくなかで、消費者層の変化、需要構造の変化に着目するコーホート分析はマーケットを理解するための大きな助けとなります。

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コーホート分析を行う際にはクロス・マーケティングにご相談ください。

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