「読まれる棚づくり」はデータで変わる──全国展開書店におけるQiQUMO活用事例

全国に展開し、オンライン販売や地域イベントも積極的に行っているT社書店では、近年「読者との接点」をいかにデータで捉えるかが大きなテーマとなっていました。
リアル書店としての魅力は“偶然の出会い”ですが、その裏側では日々「何を並べるか」「どんなイベントを開催するか」といった選書と企画の意思決定が迫られています。T社ではこうした現場の判断精度を高めるために、セルフ型アンケートツール「QiQUMO」を導入。
来店者やオンライン購入者の声をリアルタイムで可視化することで、棚づくりやサービス改善に活かされています。本記事では、QiQUMOを活用した具体的な調査と、そこから得られた示唆、施策、そして今後の展望までをご紹介します。
書店業界が直面する“選書のジレンマ”──読者ニーズの可視化が急務に
書店は「文化の発信地」であると同時に、在庫と売上のバランスを常に求められるビジネスでもあります。T社のような全国チェーンでは、地域ごとの嗜好や客層の違いをどれだけ把握できるかが、店づくりの精度に直結します。
しかし従来のようにPOSデータや売上実績だけでは、「なぜ売れたのか」「なぜ手に取られなかったのか」といった背景までは見えませんでした。
さらに、書店の役割が「買う場所」から「過ごす場所」へと変わりつつある中、イベントやカフェスペースの満足度、来店者の声をどう拾うかが課題でした。これらのリアルな“体感価値”をデータ化し、現場で即時に活かせる方法としてQiQUMOに白羽の矢が立ちました。
QiQUMO導入のきっかけと調査設計──「棚の前の気持ち」を拾い上げる
T社ではまず旗艦店を中心に、来店者・オンライン購入者を対象にしたアンケートをQiQUMOで実施しました。主な調査は以下のとおりです。
設問内容(一部抜粋)

【複数選択】最近、以下のジャンルで関心のあるものをすべてお選びください。
- ビジネス書
- 文芸書
- エッセイ・ノンフィクション
- ライフスタイル(料理・インテリア等)
- 子ども向け・教育関連
- アート・写真集

【均等尺度】以下のサービスについて、満足度を教えてください。(1=非常に不満〜7=非常に満足)
- 店内POP・推薦文のわかりやすさ
- イベントの内容と頻度
- 店員の接客や知識レベル

【マトリクス形式】以下の点について、各ジャンルの棚についてご意見をお聞かせください。
- ビジネス 文芸 ライフスタイル
- 興味を引く並び方
- 新刊・話題作の網羅性
- 発見のある選書

【自由入力】「もっとこんな本があると嬉しい」「棚での探しにくさ」など、自由にお聞かせください。
配信は、QRコード付きカードをレジや棚に設置、またオンライン購入者には購入完了メール内にアンケートURLを挿入。スマホでのスムーズな回答体験を意識しました。
“手応え”と“違和感”がデータで浮き彫りに──調査結果と気づき
調査で得られた約1,200件の回答は、書店づくりにさまざまなインサイトをもたらしました。
見えたのは「イベント高評価」と「棚へのモヤモヤ」
均等尺度では「イベントの内容と頻度」への評価が平均6.1と高水準だったのに対し、「棚の並びや選書への満足度」は平均4.2と伸び悩みました。
自由記述では「探している本が見つけづらい」「ポップの情報量が少ない」といった声が目立ち、日々店頭で接しているだけでは気づけない“違和感”が可視化されました。
オンラインとリアルのギャップ
オンライン購入者からは「事前に棚の様子が知りたい」「レビューだけでは選びづらい」といった意見も。来店者とは異なるニーズが明らかになり、店舗のWeb連携の見直しも議論されるようになりました。
気づきからすぐ施策へ──現場が動いた改善ポイント
T社では、QiQUMOで得られた声をもとに、以下のような施策を実施しました。
“発見”を生む棚に──選書基準と導線の見直し
「選書の意図が伝わりにくい」という声を受け、棚ごとにテーマ性を強化し、スタッフ推薦コメントも再設計。さらに棚の導線を逆回遊型に変更することで、自然と多ジャンルに目が留まる構成へ変更しました。
店頭POPとWebを連動──オンラインでも“書店体験”を
ポップの内容をWebサイトでも閲覧可能にする仕組みを導入。オンラインでも「どんな想いでこの本を選んだのか」が伝わるようにすることで、購入率が上がったジャンルも出てきています。
QiQUMO活用の今後──全店舗で「棚の声」を拾う体制へ
現在は都市部の主要店舗を中心にQiQUMOを活用していますが、今後は地域ごとの店舗に広げることで、「地域ニーズに合った棚づくり」を進めていく方針です。
定点調査×即時判断で“棚PDCA”を加速
今後はジャンル別、季節別に定点で調査を行い、その都度棚の見直しやイベント企画に活かしていく予定です。現場スタッフの“肌感”とデータが組み合わさることで、より柔軟な棚づくりが期待されています。
スタッフの声もデータに──内部フィードバックも可視化
また、今後は店員向けのQiQUMO活用も検討中。お客様との接点が多いスタッフだからこそ気づける声を、店舗運営に反映していくことで「現場起点の改善」を推進していく予定です。
本を売るだけじゃない、体験をつくるために──QiQUMOで変わる書店の可能性
社では、QiQUMOを活用することで「本が売れた理由/売れなかった理由」を定量・定性的に把握できるようになりました。それにより、単なる売上データでは見えなかった“来店者の感情”や“選書への評価”が、現場での改善判断を後押しするようになったのです。
単に本を並べるだけでなく、「本と出会う体験をどうデザインするか」が問われるいま、QiQUMOは“棚づくり”の質を高めるパートナーとして、書店の現場にしっかりと根付き始めています。