ラダリングとは|簡単解説
ラダリングのカンタン語句解説
ラダリングは、商品・サービスやブランド選択の潜在的な理由を引き出す手法です。要素をさかのぼりながら、対象者に「なぜそれに価値があるのか」を問いかけます。調査手法は、インタビューや連想写真を使うものなどさまざまです。
ラダリングをわかりやすく解説
ラダリングは、「なぜ、あなたにとってこれは価値があるのか」を掘り下げる質問を繰り替えすことで、特定の製品・サービスやブランドが持つ属性特徴と、生活者の価値観の結びつきを構造的に明らかにしていく手法です。
この手法では、製品・サービスやブランドが持つ「属性」が直接もたらす「機能的な価値」、それによる「情緒的な価値」を経て、生活者の生活における「精神的な価値(価値観や信条)」までを梯子を上るように下位から上位へと繋げていきながら分析し、顧客の選択理由を明らかにします。
ラダリングの例
スマートウォッチとノンアルコールビールを例に挙げて、詳しく解説します。
例1.スマートウォッチ
- 製品:スマートウォッチ
- 属性:心拍計、歩数計、睡眠トラッカー
- 機能的価値:身体状況が記録される、活動が記録される、数値で健康管理
- 情緒的価値:健康意識が高まる、生活リズムを大事にする、モチベーションが上がる
- 生活価値:いつまでも前向きに健康的に暮らす
スマートウォッチの属性としては、心拍計・歩数計や睡眠記録があります。これによって活動と身体状況が記録され、活動の効果が数値化されて健康管理や生活リズム改善へのモチベーションが高まります。その結果、いつまでも前向きな気持ちで健康的に暮らしたいという生活価値の実現に繋がります。
例2.ノンアルコールビール
- 製品:ノンアルコールビール
- 属性:アルコール0、すっきりした苦味、炭酸
- 機能的価値:料理に合う、食が進む、酔う心配なし、誰でも飲める、いつでも飲める
- 情緒的価値:健康的、楽しい食事、楽しい会話、ストレス発散
- 生活価値:健康と楽しさのバランスがとれた生活
ノンアルコールビールの場合、炭酸や苦味の属性が料理に合い、アルコールフリーだからいつでも誰でも飲めて食事の場がより楽しくなる。食事を通して日々健康的にストレス発散もできることで、健康と楽しさのバランスがとれた生活生活といった価値につながります。
関連調査データ
自宅や友人宅で飲酒をする「宅飲み」。「宅飲み」の実態に変化はあるのか? 2009年冬に実施した同調査との結果を比較しています。また、昨年より飲料メーカー各社の新商品投入が相次ぎ、競争が激化している「ノンアルコールビール」の飲用実態についても触れています。
宅飲みに関する調査 ー株式会社 クロス・マーケティングー
ラダリングの特徴
ラダリングを実施すると、以下のようなメリットを得られます。
ブランドの価値構造を明らかにできる
ラダリングを用いると、ブランドの特徴や要素を抽出するだけでなく、それらがどのようなつながりを持ち、価値を生み出しているのかを階層構造で明らかにすることができます。
たとえば、対象者に広告素材を提示し、どのような特徴が読み取れ、それが自分にとってどのようなメリットがあるのかという要素の連鎖を可視化することが可能です。
改善余地に気づきやすくなる
ラダリングを活用すると、価値強化の方向性がわかります。そのため、現在の自社商品・サービスを客観的な視点で改善していくことが可能です。
顧客のニーズや価値観に焦点を当てると、より魅力的で満足度の高い商品やサービスを提供するアプローチ方法を見つけられ、マーケティング戦略の改善に役立つでしょう。
ラダリング実施時のポイント
ラダリングを実施する際は、以下4つのポイントを押さえましょう。
1.「なぜ?」を深掘りする
ラダリングを実施する際は、「なぜ、それに価値があるのか(重要なのか/良いのか)?」の深堀りが重要です。
「なぜ」を深堀りすると、表面的な理由ではなく、購入動機の奥にある本当の価値やユーザー自身も気づいていなかった情緒的な価値を明らかにできます。
たとえば、とあるカフェの常連にインタビューをしたとします。
ユーザー自身ではコーヒーの味が好きでお店に通っていたと思っていたが、深掘りするうちに「長居しても罪悪感なく仕事ができる」という、長居し易いお店の雰囲気にも価値を感じていることが発見できるかもしれません。
2.バイアスに注意する
ラダリングではバイアスに注意することが重要です。
質問をする際に具体的な例から入ると、対象者がそれを前提として回答してしまう可能性があります。そのため、できるだけ抽象的な問いから始めましょう。
たとえば、「この商品はおいしいと思いますか?」と評価にいきなり言及するのではなく、「この商品をどう思いますか?」のような曖昧な問いかけから始めます。
そうすることで、先入観にとらわれないより客観的な回答を得ることが可能です。
3.あいづちはオウム返しがポイント
インタビューを実施する際は、バイアスを与えないためにあいづちはオウム返しを使いましょう。
回答者の発言を繰り返すことで、インタビュアーは自身の考えや感情を示さずに、かつ聞いているという姿勢を示すことができます。
これにより、回答者は主体的に発言しやすくなります。
4.インタビュー内容は客観的な視点で解釈する
同じ言葉でも、受け取る人によって解釈が異なる場合があります。
そのため、調査後には調査実施者や調査の関係者同士が意見を交換し、認識をすり合わせるようにしましょう。
特にラダリングでは対象者の発言をもとに、価値構造を理解するため、自分たちの都合に合わせた解釈にならないよう注意が必要です。
まとめ
ラダリングとは、顧客の真のニーズや重視する要素を明らかにするための調査手法です。属性や結果、価値などの要素を分析し、顧客が「なぜその商品・サービスを選択したのか」、理由を明らかにします。
これにより、ブランドの価値構造を明確にし、改善の余地を発見することが可能です。インタビューを行う際は、購入動機の深堀りやバイアスに注意し、回答を引き出しましょう。
これによって、今後のブランド戦略を考える際の有益なヒントを得られます。消費者がどの要素に反応しているのかを把握することで、より効果的な訴求を生み出せるでしょう。