性別や年代別の比較を目的とするアンケート調査では、分析に必要なサンプル数を担保するため、属性ごとの回収数を均等に揃える設計が一般的です。
しかしこの設計では、回答者の構成比が母集団の構成比から乖離してしまいます。
一方で、最初から母集団の比率に合わせて回収すると、構成比の小さい層で十分なサンプル数を確保できないというジレンマが生じます。
こうした場面で用いる手法が、回収前に区分ごとの回収数を決める割付と、回収後に回答者の構成を母集団の構成比に合わせて補正する重み付け(ウエイトバック集計)です。
均等割付で比較に必要なサンプル数を確保し、全体値を集計する段階で重み付けを行えば、構成の偏りを補正した推計値が得られます。
本記事では、割付の基本概念や使い分けから、集計時に用いるウエイトの算出方法、Excelを用いた処理手順、陥りやすい注意点までを体系的に解説します。
割付と重み付け(ウエイトバック集計)は、回収前の設計と回収後の集計に分かれた作業です。
本記事では、調査目的に合わせた割付の選び方から、ウエイトの算出、補正後の集計、報告書への注記までを、作業の順に沿って説明します。
セルフ型アンケートツールのQiQUMOで提携パネルに配信する場合の割付の設定方法や、モニターの登録属性を扱う際の注意点も取り上げています。
計算の手順は、架空の意識調査の回答データとExcelファイルを使って具体的に示します。人口統計から区分ごとのウエイトを求め、全設問の単純集計とクロス集計を補正後の値で作り直すまでの流れを、式の例とあわせて確認できます。
補正によって変わる値と変わらない値の区別や、補正しても残る偏りについても扱います。あわせて、条件の異なる統計をウエイトの基準に使う、区分を細かく分けすぎて一部の回答者に大きなウエイトが付くといった、陥りやすい失敗と対策も紹介します。
読み終えると補正前と補正後の値を目的に応じて使い分け、使い分けの根拠を報告書で説明できるようになります。
割付(均等割付・比例割付)と重み付け(ウエイトバック集計)の基本的な役割と使い分け
グループ間の比較サンプル数を確保しつつ、母集団全体の傾向を正確に推計する仕組み
公的統計や顧客台帳からウエイト(母集団構成比 ÷ 回収構成比)を算出する計算手順
三大都市圏の意識調査実例に見る、SUMPRODUCT関数等を用いたExcelでの集計表補正方法
ウエイトバック集計で「変わる値(全体値・合計値)」と「変わらない値(区分単体の値)」の区別
条件不一致の基準データ選定や極端なウエイトによる精度低下など、陥りやすい4つの失敗と対策
アンケート調査では、設計段階の割付で属性ごとの回収数を決め、集計段階の重み付け(ウエイトバック)で標本の構成比を母集団に合わせて補正します。
前者は分析したい層のサンプル数を確保するための手段で、後者は全体の集計値の偏りを抑えるための手段です。 それぞれの役割と、登録モニターを利用する際の注意点を確認します。
割付とは、アンケート調査を始める前に、性別・年代・居住地域などの区分ごとに集める回収数をあらかじめ決めておくことです。
調査全体の目標回収数だけでなく回答者の内訳まで設定することで、特定層の偏りやサンプル不足を防ぎます。
割付の方法は調査の目的によって異なり、代表的なものとして均等割付と比例割付(構成比割付)の2種類があります。
方法 | 人数の決め方 | 向いている目的 |
|---|---|---|
均等割付 | 年代や性別などの区分ごとに、同じ人数を設定する | 年代間・性別間などで回答の違いを比較する |
比例割付(構成比割付) | 調査対象全体(母集団)の構成比に合わせて人数を配分する | 対象全体の意識や行動の傾向を把握する |
母集団とは、調査で実態を明らかにしたい対象全体の集まりです。全国の生活者を対象とする調査であれば人口構成比、自社顧客調査では実際の顧客構成比が基準になります。
例えば、母集団の年代構成比が20代 20%/30代 30%/40代 50%のとき、合計600人を集める場合の内訳は次のようになります。
均等割付:各年代200人ずつ配分(年代ごとの比較が主目的の場合)
比例割付:20代 120人/30代 180人/40代 300人に配分(全体推計が主目的の場合)
なお、年代単体だけでなく、性別2区分×年代3区分のように属性を掛け合わせて計6区分とし、各区分に人数を割り振るやり方もよく使われます。
均等割付は区分間の比較に必要な回収数をそろえることを優先するため、区分ごとの人数の比率は母集団の構成比と一致しなくなります。
上の例では、母集団に占める割合が20%の20代と50%の40代が、どちらも回答者全体の3分の1にあたる200人ずつです。
この回答をそのまま集計すると、全体値には20代の回答が母集団の割合より強く、40代の回答が弱く反映されます。
均等割付で集めたデータから母集団全体の割合や平均値を求める場合は、重み付け(ウエイトバック集計)による調整が必要です。
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ウエイトバック集計とは、回答者の構成比を母集団の構成比に合わせるために、回答ごとに重み付けをして集計する方法です。
母集団での割合に比べて多く集まった層の重みを小さくし、少なく集まった層の重みを大きくして、全体の割合や平均値を求めます。各層の回答が全体値に反映される割合を調整する仕組みです。
均等割付で集めた回答をそのまま単純集計した場合、全体値に反映されるのは母集団の比率ではなく回収人数の比率です。
母集団(20代20%/30代30%/40代50%)から、各年代200人を均等割付で集め、新商品の認知率を尋ねたとします。
図では、円の%が年代別の認知率を、円の面積が全体値への比重を表し、板がつり合う支点の位置が全体値に当たります。
上段の単純集計では、どの年代も回収数が全体の33.3%を占めています。母集団で50%を占める40代も、20%の20代も同じ比重で反映され、全体値は3つの認知率を単純に平均した45.0%です。
下段では、母集団構成比を回収構成比で割ったウエイトを掛けています。40代は1人を1.5人分、30代は0.9人分、20代は0.6人分として数えるため、重みを掛けた人数は比例割付の内訳(300人/180人/120人)と一致します。
全体値は40.5%となり、支点は認知率の低い40代の側へ動きます。
各年代の認知率は補正前後で変わりません。補正で変わるのは全体値や複数の区分をまとめた値で、区分間に回答差がなければ全体値も動きません。
ウエイトバック集計は、グループ間の比較に必要な回収数を確保しながら、母集団全体の数値も推計したい場合に用います。比例割付の調査で、回収率の差によって構成比が計画からずれた場合の調整にも使えます。
代表的な適用場面と、重み付けの基準となる構成比は以下のとおりです。
調査の種類・目的 | ウエイトバック集計を用いる場面 | 基準となる構成比 |
|---|---|---|
消費者意識・購買行動調査 | 年代間の比較のために均等に集めた回答から、消費者全体の認知率や購入意向も推計する | 調査対象となる年齢・地域の人口構成比 |
市場規模の推計 | 地域別の回収数の割合と人口・世帯数の割合が異なる状態から、対象地域全体の購入額などを推計する | 地域別の人口や世帯数の構成比 |
顧客満足度調査 | 店舗別・会員ランク別の回答構成が実際の顧客構成と異なる場合に、顧客全体の満足度を求める | 顧客台帳などで確認した顧客構成比 |
世論調査・社会意識調査 | 属性による回答率の違いや、一部の属性を多く集める調査設計によって生じた構成比の違いを調整し、対象人口全体の意識を推計する | 調査対象人口の性別・年齢・地域などの構成比 |
市場規模を推計する際は、調査目的に応じて人口構成比と世帯数構成比のいずれを基準に採用するかを選択します。
世帯単位の購入額を推計する場合は世帯数の構成比を基準とし、個人単位の消費行動を推計する場合は人口の構成比を基準とします。
重み付けの適用にあたっては、基準とする母集団の構成比を公的統計や顧客台帳といった客観的根拠のあるデータで事前に確認します。
ウエイトバック集計は、母集団の定義、適切な標本抽出、十分なサンプルサイズの確保と併用することで効果を発揮するデータ処理手法です。
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セルフ型アンケートツールのQiQUMOでは、提携パネルへの配信時に、モニターの登録情報を使って回収数を割り付けることができます。割付に使える区分は、性別のみ・年代のみ・性別と年代の組み合わせの3パターンです。
区分ごとの回収数を指定すれば、各区分で指定どおりの人数を回収できます。
たとえば、性別と年代の6区分に100人ずつ割り付けた場合、回収後の内訳も各区分100人です。全体の目標回収数に達した時点で、アンケートは自動的に終了します。
回答者の属性はモニターが登録時に申告した情報であるため、登録情報と回答内容の性別・年齢が食い違う可能性があります。調査票に性別・年代の設問を入れておくと、重み付けの前に登録属性との照合ができます。
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割付とウエイトバック集計の作業は、調査前の設計と回収後の集計の2つのプロセスに分かれます。調査前に決めた区分と基準の構成比を回収後の確認と集計でも使うため、次の4つのステップを順番に進めます。
最初に、調査結果の使い道を整理します。区分間の違いを比べるか、対象全体の割合や平均値を推計するかによって、割付の方法が変わるためです。
調査の目的 | 割付の方法 | ウエイトバック集計 |
|---|---|---|
区分間の比較 | 均等割付 | 不要 |
対象全体の推計 | 比例割付 | 原則不要(回収後の構成比に偏りが出た場合に使う) |
比較と全体推計の両方 | 均等割付 | 必要 |
次に、調査結果を誰の傾向として示すのかを明確にし、ウエイトの基準にする構成比を決めます。
全国の生活者を対象とする調査では総務省統計局の人口推計 、自社サービスの利用者を対象とするような調査の場合は顧客台帳や会員データが候補となります。
基準データは、調査対象の年齢・地域・利用者条件と範囲をそろえて使います。あわせて、母集団の定義、重み付けに使う属性、構成比の出典、基準時点を記録します。回収後に都合のよい基準へ差し替えないよう、調査を始める前に確定させておきます。
割付の区分は、最終的に作成する集計表からの逆算によって設計します。 性別の比較にとどまる場合は男女別とし、性別と年代を掛け合わせて比較する際は男性20代、男性30代、女性20代といった分析単位ごとに細分化を図るのが一般的です。 ウエイトバック集計も原則として同じ区分単位で行います。
区分ごとの回収数は、比較したい区分に必要な回収数を確保できるように設定します。区分を細かくしすぎると、全体の回収数が同じでも1区分あたりの人数が少なくなり、結果を読み取りにくくなります。
必要な区分と全体の目標回収数を見比べ、分析に使わない掛け合わせは増やさないようにします。必要人数の考え方は、サンプルサイズの決め方を解説した記事も参考にしてください。
QiQUMOの提携パネルに配信する場合は、性別のみ、年代のみ、性別と年代の組み合わせから割付の区分を選び 、区分ごとの回収数を入力します。調査票にも性別・年代の設問を入れておくと、モニターの登録属性と回答内容を回収後に照合できます。
回収後は、集計に使う回答を確定させてから、区分ごとの構成を確認します。
採用したルールによって区分ごとの人数が変わるため、判断基準を記録し、集計の途中で変更しないようにします。
有効回答を確定したら、区分ごとの回収数、回収構成比、母集団構成比を1つの表にまとめます。
回収構成比と母集団構成比を並べることで、どの区分を多く回収し、どの区分が不足しているかを確認できます。表に入れる項目は次の4つです。
列 | 内容 |
|---|---|
区分 | 割付に使った性別・年代の組み合わせ |
回収数 | 区分ごとの有効回収数 |
回収構成比 | 区分の回収数 ÷ 全体の回収数 |
母集団構成比 | ステップ1で決めた基準データから算出した区分の割合 |
母集団全体の値を出す場合は、回収構成比と母集団構成比の差をステップ4で補正します。比例割付でも、回収率の違いなどによって計画どおりの構成にならなければ補正が必要です。
回収構成比と母集団構成比に差がある場合は、区分ごとに次の式でウエイトを算出します。
ウエイト = 母集団構成比 ÷ 回収構成比 |
算出したウエイトは回答データの各行に付与し、重みを反映した割合や平均値を再計算します。
QiQUMOから出力したExcel形式のデータでは、回答者の区分に対応するウエイト列を追加して集計できます。基本的な計算方法は次のとおりです。
求める値 | 計算方法 | Excelでの式の例 |
|---|---|---|
選択肢を選んだ人の割合 | 該当者のウエイトの合計 ÷ 全員のウエイトの合計 | =SUMPRODUCT(ウエイト列,該当フラグ列)/SUM(ウエイト列) |
数値回答の平均値 | 回答値×ウエイトの合計 ÷ ウエイトの合計 | =SUMPRODUCT(ウエイト列,回答値列)/SUM(ウエイト列) |
ウエイトバック集計によって変わるのは、全体値や、複数の区分をまとめた集計値です。性別と年代を掛け合わせた6区分で重み付けした場合、男性計や20代計は複数区分の構成を調整するため、補正前後で数値が変わることがあります。
同じ区分内の回答者には同じウエイトが掛かるため、「30代男性」のような区分単体の割合や平均値は変わりません。区分別の比較には補正前の値を使い、母集団全体や複数区分をまとめた値を示す場面では補正後の結果を使います。
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ステップ1〜4の流れを架空の意識調査に当てはめ、Excelでウエイトバック集計を行う手順を示します。人口の数値は公表統計を使い、回答データは説明用に作成した架空のデータです。
Excelファイルは5つのシートで構成しています。
シート | 内容 |
|---|---|
人口 | 三大都市圏の20〜69歳人口(5歳階級・男女別) |
ウエイト算出 | 区分ごとの母集団構成比、回収構成比、ウエイト |
回答データ | 回答者1,000人分の回答とウエイト |
単純集計 | 全設問の補正前・補正後の値 |
クロス集計 | 性年代別と余暇活動の有無別の生活満足度 |
調査の設定は次のとおりです。
項目 | 内容 |
|---|---|
調査テーマ | 余暇活動と生活満足度に関する意識調査(架空) |
対象 | 三大都市圏に住む20〜69歳 |
三大都市圏の範囲 | 東京圏(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)、名古屋圏(岐阜県・愛知県・三重県)、大阪圏(京都府・大阪府・兵庫県・奈良県)の11都府県 |
配信 | QiQUMOの提携パネル。都道府県別の配信設定で11都府県に限定 |
割付 | 性別2区分×年代5区分の10区分に各100人(計1,000人) |
設問 | Q1 定期的に行っている余暇活動(複数回答)、Q2 平日1日あたりの余暇時間(単一回答)、Q3 生活満足度(0〜10点) |
三大都市圏の範囲は、総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告で用いられている区分に合わせています。
調査の目的は、性年代別の違いを比べることと、三大都市圏の20〜69歳全体の傾向を示すことの2つです。
均等割付で集めた回答は、どの区分も回収構成比が10%になるため、単純集計の全体値には人口の構成が反映されません。全体値を示す集計には、ウエイトバック集計を使います。
基準の構成比には、総務省統計局の人口推計(2024年10月1日現在)第10表の都道府県別・年齢5歳階級別・男女別人口を使います。
11都府県の総人口を圏域ごとに合算し、20〜24歳と25〜29歳のように5歳階級を2つずつ足して10歳区分にします。11都府県の20〜69歳人口は、合計で4,160万人です。
ウエイト算出シートでは、3つの式で区分ごとのウエイトを求めています。
列 | 計算内容 | 式の例 |
|---|---|---|
母集団構成比 | 区分の人口 ÷ 20〜69歳人口の合計 | =D5/$D$15 |
回収構成比 | 区分の回収数 ÷ 全体の回収数 | =F5/$F$15 |
ウエイト | 母集団構成比 ÷ 回収構成比 | =E5/G5 |
算出したウエイトは、0.88〜1.24の範囲に収まります。50代は男女とも1.2を超え、20代・30代・60代は0.9前後の値です。40代は、男女とも1をわずかに上回ります。三大都市圏の20〜69歳人口では、50代の占める割合が最も大きいためです。
回答データシートの列構成は次のとおりです。
列 | 内容 |
|---|---|
B〜D列 | 性別、年代、区分名(性別と年代をつないだ表記。例:男性20代) |
E〜I列 | Q1の各選択肢(選んだ=1、選ばなかった=0) |
J列 | 活動あり(Q1の1〜4のいずれかを選んだ=1) |
K列 | Q2の回答コード(1〜4) |
L列 | Q3の点数(0〜10) |
M列 | ウエイト |
M列のウエイトは、区分名をもとにウエイト算出シートの値を引く式で付与しています。
=VLOOKUP(D2,ウエイト算出!$A$5:$H$14,8,FALSE) |
全員のウエイトを合計すると1,000になり、実際の回答者数と一致します。
回答データのウエイトは、回答者1人を集計上で何人分として数えるかを表す値です。たとえば、ID1の回答者(女性60代)のウエイトは0.891で、この区分に含まれる回答者をすべて0.891人分として数えます。
ウエイトは性年代だけで決まり、設問によって変わらないため、すべての設問を同じウエイト列で補正できます。単純集計シートでは、次の2種類の式で補正後の値を求めています。
求める値 | 式の例 |
|---|---|
選択肢を選んだ人の割合 | =SUMIF(回答コードの列,コード,ウエイト列)/SUM(ウエイト列) |
平均値 | =SUMPRODUCT(点数の列,ウエイト列)/SUM(ウエイト列) |
割合の式は、該当する回答者のウエイトだけを合計し、全員のウエイトの合計で割る計算です。Q1のように0と1で入力した設問では、コードに1を指定します。
補正後に下がったのは、余暇活動がある人の割合(64.2%→63.5%)と、生活満足度の平均点(6.34点→6.30点)です。余暇時間が1時間未満の人の割合は、24.8%から25.6%に上がっています。
いずれも、ウエイトが1を上回る40代と50代の回答が、全体値に強く反映された結果です。
変化の幅は、どの項目も1ポイント未満です。ウエイトの幅が0.88〜1.24と狭いためで、年代による回答の差が大きい項目ほど、補正後の変化も大きくなります。
表1は、生活満足度の平均点を性年代の区分別に示したものです。
男性20代や女性50代のような区分単体の値は、補正前後で変わりません。同じ区分の回答者全員に、同じウエイトが掛かるためです。
複数の区分をまとめた男性計は6.20点から6.16点に、女性計は6.48点から6.45点に下がります。男性計・女性計の中で、ウエイトの大きい40代・50代の比重が上がるためです。
年代計(20代計など)は、補正前後の差が0.01点未満です。同じ年代の男女でウエイトがほぼ等しく、男女の比重がほとんど変わりません。
表2は、余暇活動の有無で分けた生活満足度です。
活動ありの平均点は6.94点から6.91点に、活動なしは5.27点から5.24点に変わります。活動ありと活動なしのグループごとに性年代の構成が異なり、補正によって区分ごとの比重が変わるためです。
活動ありと活動なしの差は1.67点で、補正前後でほぼ同じです。
活動の有無のように性年代以外で分けたグループも、複数の区分をまとめた集計に当たります。グループ間の比較には、補正後の値を使います。
報告書には、ウエイトバック集計を行った条件を注記します。本例の記載例は次のとおりです。
本調査は、QiQUMOの提携パネルに登録している三大都市圏(11都府県)在住の20〜69歳を対象に、性別・年代の10区分に各100人を割り付けて回収(有効回答1,000人)。
全体値と複数の区分をまとめた集計値は、総務省統計局「人口推計(2024年10月1日現在)」の性年代別人口構成比に合わせたウエイトバック集計の値。
割付とウエイトバック集計の失敗は、調査前の設計と回収後の集計のどちらでも起こります。多くは全体値の読み違いや、根拠を説明できない数値の原因になるものです。
代表的な4つの失敗を、対策とあわせて取り上げます。
均等割付で集めた回答を補正せずに集計し、全体値を対象全体の割合や平均値として報告する失敗です。
均等割付では、どの区分にも同じ人数を割り付けます。単純集計の全体値には、人口に占める割合の小さい区分も大きい区分も、同じ比重で反映されます。
たとえば、年代によって認知率に大きな差がある商品を調べると、人口構成比より多く回収した年代の回答が、全体値を人口構成以上に左右します。
三大都市圏の意識調査の例では補正前後の差が1ポイント未満にとどまっているものの、年代による回答差が大きい設問ほど、補正前後の差は広がります。
集計表の一部だけを補正する失敗も起こりがちです。全体値だけを補正後の値に差し替え、男性計や女性計を補正前のまま載せると、補正後と補正前の数値が同じ表に混在します。読み手は、全体値と男女別の値の関係を説明できなくなります。
対策
調査を始める前に、結果を区分間の比較だけに使うのか、対象全体の推計にも使うのかを決めます。全体値を示す予定があれば、割付の設計と同時に基準の構成比を用意し、ウエイトバック集計を集計計画に組み込んでおきます。
集計表では、全体値と、男性計・女性計のように複数の区分をまとめた値を、すべて補正後の値でそろえます。報告書には、どの値が補正後の値なのかを注記してください。
ウエイトの基準にする構成比は、調査対象と同じ条件の母集団から算出します。条件の異なるデータを基準にすると、補正後の値がどの集団を表しているのか説明できなくなります。
起こりやすいのは、次のような組み合わせです。
調査対象 | 条件が合わない基準の例 | 条件をそろえた基準の例 |
三大都市圏に住む20〜69歳 | 全国の人口構成比、全年齢を含む総人口の構成比 | 三大都市圏11都府県の20〜69歳人口から算出した構成比 |
自社サービスの会員 | 全国の人口構成比 | 会員データから集計した性年代の構成比 |
調査時点 | 調査時点から大きく離れた年次の統計 | 公表済みの統計のうち、調査時点に最も近い年次の値 |
たとえば、会員の年代構成が人口と異なるサービスで、人口構成比を基準に満足度を補正したとします。補正後の値は、会員の構成を人口の構成に置き換えた場合の仮の数値で、会員全体の満足度とは別物です。
回収結果を見てから基準データを選び直す行為も、同じ種類の失敗に当たります。基準を差し替えれば、補正後の値を都合のよい方向に動かせてしまうためです。
対策
基準データを決める際は、地域、年齢の範囲、利用者条件、時点の4点が調査対象と一致しているかを照合します。母集団の定義、構成比の出典、基準時点は調査を始める前に記録し、回収後は変更しない運用にします。
ウエイトは、母集団構成比を回収構成比で割って求めます。回収構成比が母集団構成比を大きく下回る区分ほど、ウエイトは大きくなります。
たとえば、回収構成比1%の区分の母集団構成比が5%であれば、ウエイトは5です。回答者1人が5人分として全体値に反映されるため、区分内の少数の回答が全体値を大きく動かします。
大きなウエイトが生じやすいのは、性別・年代に地域や職業などの属性を掛け合わせて区分を増やした場合です。
均等割付で区分ごとに同じ人数を集めても、人口の多い区分と少ない区分の差が開きやすくなり、ウエイトの最大値と最小値の幅も広がります。比例割付でも、回収しにくい区分の回答が不足すると、同じ状態に陥ります。
ウエイトの幅が広いデータは、回答者数が同じでも推計値のばらつきが大きくなります。精度の目安として使われる指標が、有効サンプルサイズです。
重み付けしたデータが、何人を単純無作為抽出(母集団から偏りなく無作為に選ぶ方法)した場合と同程度の精度に当たるかを示し、極端に大きいウエイトや小さいウエイトがあると値が小さくなります。
有効サンプルサイズ = (ウエイトの合計)² ÷ ウエイトの2乗の合計 |
回答データシートのM列にウエイトが入っている場合、Excelでは =SUM(M2:M1001)^2/SUMSQ(M2:M1001) で求められます。
ウエイトの幅が0.88〜1.24と狭い三大都市圏の例では、有効サンプルサイズは回答者数の1,000人に近い値です。
対策
割付の区分は、分析に使う単位に絞ります。回収後はウエイトの最大値・最小値と有効サンプルサイズを確認し、大きなウエイトが付いた区分があれば、隣り合う年代をまとめるなど区分を統合して計算し直します。統合のルールは、集計に使う回答の判断基準と同じく、事前に決めて記録しておきます。
ウエイトに上限と下限を設けて値を切り詰める方法(トリミング)もあります。
ただし、切り詰めると有効サンプルサイズは増える一方で、補正後の構成比は母集団の構成比から少し離れます。切り詰める範囲は、精度の改善と構成比のずれを比べて決めてください。
性年代でウエイトバック集計をした場合に補正されるのは、回答者の性年代の構成だけです。同じ性年代の中で、モニターと母集団の意識や行動にずれがあれば、補正後もずれは残ります。
たとえば、アンケートモニターとして登録している人は、インターネットの利用頻度やアンケートへの協力意欲が、同じ性年代の人口全体と異なる可能性があります。
対策
報告書には、補正に使った属性と基準データを明記し、結果の表現を補正の条件に合わせます。たとえば、全体値は三大都市圏の20〜69歳の性年代構成に合わせて補正した値として示し、三大都市圏の20〜69歳全体を直接測った値のような書き方は避けます。
公的統計に同じ内容の数値がある設問を調査票に入れておくと、補正後の値と比べて偏りの大きさを確かめられます。設問文や対象の定義が異なる数値とは比較できないため、照合に使う統計は設問を作る段階で選んでおきます。
A. 推奨されません。均等割付では母集団における構成比が小さい層(若年層など)も大きい層と同じ比重で回収されるため、そのまま単純集計すると回答者構成の歪みが全体値に強く反映されてしまいます。母集団全体の傾向として公表する場合は、必ず母集団の構成比(人口動態など)に合わせたウエイトバック集計を行って偏りを補正する必要があります。
A. いいえ、変わりません。「20代男性」のように同じ区分に属する回答者には全員同じウエイトが一律で掛かるため、区分単体の比率や平均値は補正前後で同一になります。ウエイトバック集計によって変化するのは、「全体値」や「男性計」「20代計」のように複数の区分をまとめた集計値のみです。
A. 極端に大きなウエイト(例:1人が5人分以上になるなど)が発生すると、少数の意見が全体値を大きく左右し、推定精度(有効サンプルサイズ)が大幅に低下します。この場合、隣接する年代をまとめたり地域区分を統合したりして区分を広げ、ウエイトのばらつきを抑えるか、ウエイトの上限・下限を設定して値を切り詰める「トリミング」を検討します。
割付とウエイトバック集計では、調査前に決めた区分と基準の構成比を、回収後の確認と集計まで一貫して使います。調査の設計から報告までの確認事項を、5つの手順に沿って整理します。
調査目的から割付の方法を決める
結果を区分間の比較だけに使うのか、対象全体の推計にも使うのかを先に決めます。比較が目的なら均等割付、全体推計なら比例割付を選び、両方を示す場合はウエイトバック集計を集計計画に含めておきます。
調査対象と条件をそろえた基準の構成比を用意する
基準データは、地域・年齢の範囲・利用者条件が調査対象と一致するものを選びます。母集団の定義、構成比の出典、基準時点は調査前に記録し、回収後も同じ基準を使い続けます。
集計表から逆算して区分と回収数を設定する
区分は分析に使う単位に絞り、比較したい区分ごとに必要な回収数を確保します。調査票に性別・年代の設問を入れておくと、回収後にモニターの登録属性と照合できます。
回収後の構成を確かめてからウエイトを算出する
有効回答を確定したら、区分ごとの回収構成比と母集団構成比を1つの表で比べます。ウエイトの合計が回答者数と一致しているか、極端に大きいウエイトが付いた区分がないかも、集計前に確認してください。
補正の範囲を明示して集計結果を報告する
全体値と複数の区分をまとめた値は補正後の値でそろえ、区分単体の比較には補正前の値を使います。報告書には基準データの出典と時点を注記し、補正後の値は基準にした構成比に合わせて調整した値として示します。
調査の目的に応じて回収前の割付と回収後の補正を論理的に連動させることが、歪みのないデータ分析につながります。 本記事の手順と注意点を基準とし、属性比較と母集団推計の双方で検証可能性の高い集計設計を進めてみてください。