事例

「売れている理由」を顧客の言葉で再定義する。D2CブランドがCVRを1.2倍に引き上げた“言語化”のプロセス

D2C(Direct to Consumer)モデルを採用するブランドにとって、「売上は立っているが、なぜ売れているのか核心を説明できない」という状態は、成長期に必ずと言っていいほど直面する壁です。デジタル広告の数値(CTRやCVR)は良好で、SNSのインプレッションも右肩上がり。

しかし、ブランドの真の「決定打」がどこにあるのかが曖昧なままでは、次の施策を打つ際の再現性が失われてしまいます。

今回ご紹介する、中堅美容D2Cブランド(以下、B社)の事例は、まさにこの「言語化できない成功」という危うい状況を、セルフ型アンケートツール「QiQUMO(キクモ)」によって突破したケースです。

成功の裏に隠れた「組織の迷走」と「仮説の不一致」

B社が展開する主力製品は、高価格帯の導入美容液です。立ち上げから1年半で月商は数千万円規模に達し、母集団形成は極めて順調でした。社内では「独自の抽出法による高濃度成分」と「3年を費やした開発ストーリー」こそが競合他社に対する最大の優位性であると信じられていました。

しかし、現場のマーケティング担当者はある違和感を抱いていました。どれだけ成分の希少性や開発秘話をランディングページ(LP)で強調しても、新規顧客の獲得コスト(CPA)が下げ止まり、成約率(CVR)も一定のラインで停滞していたのです。

当時の状況について、B社のマーケティング責任者は次のように振り返ります。

「社内の会議では常に、『もっと成分の科学的根拠を強調すべきだ』という意見と、『いや、パッケージのおしゃれさを前面に出すべきだ』という意見が対立していました。どちらももっともらしいのですが、結局は声の大きい人の主観が採用される。顧客が本当に何に惹かれて決済ボタンを押しているのか、誰も確信が持てていなかったのです」

この「解釈の不在」は、クリエイティブ制作の現場にも混乱をもたらしていました。バナー広告の素材一つとっても、成分重視のもの、モデルの美しさを強調したもの、ライフスタイルに寄せたものなど、方向性が定まらず、組織全体のエネルギーが分散していました。

調査設計:ログと心理の「ギャップ」を埋めるセルフリサーチ

B社が解決すべき課題は明確でした。それは「顧客が購入を決定する瞬間の、心理的なトリガーを特定すること」です。ここでB社は、あえて大手調査会社への委託ではなく、自社で設計・配信が可能なQiQUMOを選択しました。

その理由は、外部の専門家による「整いすぎた調査」よりも、現場の人間が抱いている「泥臭い仮説」を直接顧客にぶつけ、高速で検証を回す必要があったためです。

第一次調査:自社パネルによる「既存顧客の深掘り」

まずB社は、過去3ヶ月以内に製品を初回購入した自社ユーザー400名を対象に調査を実施しました。既存の顧客リストに対し、QiQUMOで発行したアンケートURLをメールや同梱物のQRコードで案内する形式です。

特筆すべきは、その設問設計にあります。単なる満足度調査ではなく、顧客の「購入までの迷い」と「最後の一押し」をあぶり出すことに特化したのです。

実際の設問構成(抜粋)


  • 【検討プロセスの可視化】

広告を見てから購入を決めるまで、体感としてどのくらいの期間がありましたか?


  • 【比較構造の特定】

購入にあたって、最後まで迷った他社ブランドはありますか? その上で、最終的に当ブランドを選んだ「最後の一押し」を教えてください。(自由記述)


  • 【期待要素のマトリクス評価】


  • 以下の項目について、購入前にどの程度重視していましたか?(1=全く重視していない 〜 5=非常に重視している)

独自成分の希少性/パッケージのデザイン性/開発者の想いへの共感/SNSでの一般ユーザーの口コミ


  • 【価値の言語化】

この製品を友人に勧めるとしたら、どのようなメリットを伝えますか?(自由記述)


B社が最も重視したのは、設問2と設問4の「自由記述」でした。選択肢を用意してしまうと、顧客は無意識に「企業側が喜ぶ回答」を選んでしまう傾向があります。あえて自分の言葉で語らせることで、顧客の脳内に潜んでいる「生の声」を抽出したのです。

収集データが示した「不都合な真実」と「新たな希望」

QiQUMOを通じて集まった回答は、B社が信じていた「スペック至上主義」を根本から覆すものでした。

衝撃の結果1:成分は“後付けの理由”に過ぎなかった

マトリクス評価の結果、「独自成分の希少性」のスコアは平均3.2と、決して低くはないものの、突出して高くもありませんでした。

一方で、最も高いスコアを叩き出したのは「パッケージの誠実そうな雰囲気(平均4.6)」と「広告に過度な煽りがない安心感(平均4.4)」でした。

衝撃の結果2:顧客が友人に語る「言葉」のズレ

自由記述欄のテキストマイニングを行うと、さらに顕著な事実が判明しました。

顧客は友人に勧める際、「希少な成分が入っている」というスペックではなく、「これを使っていると、毎日のスキンケアが自分を労わる時間になる」という、情緒的なベネフィットを語っていたのです。

B社の担当者は、この結果を見た時の衝撃をこう語ります。

「自分たちは『武器(成分)』を売っているつもりでしたが、お客様は『盾(安心感や自愛の時間)』を買っていたのです。成分は、高価な買い物をする自分を納得させるための“言い訳”に過ぎませんでした。これこそが、ログデータだけでは絶対に辿り着けない真実でした」

さらに、「購入まで1ヶ月以上検討した」と回答した層が40%を超えていたことも判明しました。広告のクリックデータ上は「初回来訪で購入」と記録されていても、実際にはSNSでの口コミを何度も確認し、慎重にタイミングを測っていたのです。

第二次調査:外部パネルによる「市場内ポジション」の確認

自社ユーザーの声によって「売れている理由」の仮説が立ったB社は、その確信を強めるため、間髪入れずにQiQUMOの外部パネル(提携パネル)を利用した市場調査を実施しました。

自社の商品を知らない、あるいは認知しているが購入に至っていない層を含む「一般のスキンケア利用者1,000名」を対象とした調査です。

外部パネル調査の目的

  • 認知経路の特定: 競合ブランドと比較して、自社の認知がどのフェーズで止まっているか。

  • 未購入理由の解明: 自社ユーザーが「誠実さ」と感じている要素が、非ユーザーにはどう映っているか(あるいは届いていないのか)。

  • 市場内シェアとスイッチ意向: 現在他社製品を使っている層が、何をきっかけにブランドを乗り換えるか。

この調査により、B社の「誠実なブランドイメージ」は、一度認知されれば強力な武器になるものの、現在の広告クリエイティブでは「他社の派手な広告に埋もれてしまい、第一想起(最初に思い出すブランド)に入っていない」という新たな課題が浮き彫りになりました。

自社パネルで「深い理由」を掘り下げ、外部パネルで「市場の現在地」を測る。この二段構えのリサーチが、B社の次なる戦略を決定づけました。

QiQUMO活用ポイント:言語化から「実務」への転換

B社はこれら2つの調査結果を、単なるレポートとして終わらせませんでした。得られたインサイトを即座に「勝てるロジック」へと変換し、実務に落とし込んでいきました。

① LPのファーストビューを「スペック」から「体験」へ

「世界初、独自成分配合」という強気なコピーを、LPのメインから外しました。代わりに、朝の光の中で自分の肌と向き合う静かなビジュアルを採用し、「忙しい日々に、自分を慈しむ数分間を」という、顧客の自由回答から抽出した言葉をヘッドラインに据えました。

驚くべきことに、この改修だけで成約率(CVR)は従来の1.18倍に跳ね上がりました。 派手な煽りをやめ、顧客の心理に寄り添うトーンに変えたことで、検討期間中の離脱が劇的に改善したのです。

② SNSクリエイティブの「脱・属人化」

これまで「何となくおしゃれ」という基準で制作されていたSNS広告の素材について、「アンケートで支持された『誠実さ』と『生活への馴染み』が表現されているか」という明確な評価軸を設けました。

具体的には、プロのモデルを使った完璧すぎる写真よりも、一般ユーザーが実際に部屋に置いているような、日常を感じさせる写真の採用を増やしました。これにより、保存数とURLクリック率が大幅に向上し、広告運用コストの最適化に成功しました。

③ コミュニケーションの「優先順位」を変更

顧客が「1ヶ月以上検討する」という性質を持っていることを踏まえ、初回接触で無理に売ろうとする姿勢を改めました。

LINE公式アカウントでは、製品のスペック紹介よりも先に「日々のスキンケアを心地よくするコツ」などの情報発信を厚くし、顧客との信頼関係を醸成するステップを設けました。

B社のマーケティング担当者は、この変化を次のように評価しています。

「QiQUMOを使って自社・外部両方の声を数値化できたことで、社内の議論から『私はこう思う』という主観が消えました。操作が簡単で、思い立った瞬間に外部パネルへもアンケートを飛ばせる機動力があったからこそ、鉄は熱いうちに打つことができました」

6. まとめ:データは「正解」ではなく「意思決定の根拠」

B社の事例は、D2Cブランドにおけるリサーチの本質を突いています。デジタルマーケティングが高度化するほど、企業は「ログ(足跡)」を追うことに終始しがちですが、その裏側にある「心理(動機)」を見失うと、成長は必ず停滞します。

QiQUMOは単なる集計ツールではありません。仮説を検証し、組織内の合意形成を加速させ、迷いなく次の一手を打つための「意思決定装置」です。

  • 「なんとなく」を「ロジック」に変える: 顧客の自由回答からキーワードを抽出し、ベネフィットを再定義する。

  • 組織の視点を統一する: 属人的な判断を排除し、自社・外部両方の顧客の声を共通言語化する。

  • 高速で改善サイクルを回す: セルフ型だからこそ、施策のたびに「なぜ当たったのか/外れたのか」を問い続ける。

離脱の理由は無関心ではなく、企業側のメッセージと顧客心理の「微細なズレ」から始まります。そのズレを特定し、顧客の言葉を借りて語り直すこと。それこそが、飽和するD2C市場で選ばれ続けるための、唯一無二の戦略となるでしょう。

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