海外ビジネスに必要なリサーチの種類と方法 / 何を目的に何を調べるか

海外進出を成功させるリサーチ方法

海外への直接投資やインバウンドの受け入れ対策まで含め、海外のマーケットに目を向ける機会は限られた企業だけのものではなくなっています。

企業規模の大小や業種に関わらず、海外の需要を取り込み新しい市場を開拓する取り組みは、ビジネスの成長に新たな可能性をもたらすものです。

海外展開を検討する段階では、カントリーリスクや市場性があるかどうかを調べるリサーチニーズが発生します。これを踏まえ、海外進出のパターンとそれぞれに応じたリサーチの種類、また、実際の手段・方法について解説します。

海外進出の形態・パターン

ひとくちに海外進出といっても直接投資と輸出入では計画を具体的なものにするために必要な情報は異なり、目的に応じたアプローチが必要です。まず、新たに海外進出を図る際の形態について整理します。

海外直接投資

海外直接投資は現地法人の設立や生産拠点の開設、外国法人への資本参加などが代表的なものです。

海外拠点の形態としては、現地法人、支店、駐在員事務所などがあり、自己資本で設立するか、現地企業との合資とするかといった点も検討する必要があります。

直接投資の目的としては以下のようなケースが想定されます。

  • 市場開拓・販路開拓(海外市場での需要開拓、販売先の獲得)
  • 現地生産による生産コスト削減(人件費の低い国で生産することによるコスト削減)
  • 部品・商品・原材料の調達(調達コストの低い国での資材到達)
  • 取引先からの要請(親会社や大口取引先の海外展開への追従)
  • 海外での新規事業立ち上げ(海外でのビジネスチャンスを発掘)
  • 海外人材の活用(海外高度人材の活用)

直接投資を行う場合に行われるリサーチは、市場性の有無や事業性についての評価をもとに進出の可否を判断するために行われるケースが主要なものです。

輸出・輸入

越境ECも含め輸出入は中小企業も含めた裾野の拡大が見込まれる海外展開の形態です。輸出入は、商社等を経由する間接貿易と、すべてを自ら行う直接貿易に分けられます。

間接貿易の形で海外取引に精通する商社等を窓口とする場合は、既に実績のある海外市場にアクセスできると同時に、海外取引に伴うリスクのかなりの部分を回避することができます。

その引き換えとして中間マージンが発生することが価格競争力や販売規模に影響し、海外ビジネスそのものを商社に依存する形になってしまうことがデメリットです。

直接貿易は海外取引の実務とリスク負担を自社で引き受けることで、主体的に海外ビジネスを進めることができ、成功すれば収益の面でも大きな成果が見込めます。すべてを自社で進めなければならない直接貿易では直接投資の場合と同様に綿密なリサーチが必要です。

資本提携・業務提携

海外企業との提携関係を構築し、自社と海外企業の販路や調達のネットワークを相互に活用することで、国内外の販路拡大や商品・サービスの拡充を実現するのが資本提携や業務提携です。

現実的には商慣行や文化的な違いなど、国内企業同士の提携と比べて難易度が高いことは否めませんが、一方で、人材の成長や経営管理手法の高度化など期待以上の成果をもたらすケースも少なくありません。

この場合のリサーチニーズは相手先にフォーカスし、ネットワークや信用情報等についての情報収集を目的とするものとなります。

インバウンド対策

インバウンドを取り込むことを目的として、自治体を中心に海外PR拠点の開設や観光情報の海外への発信といったことが行われています。海外への働きかけや訪日外国人へのマーケティングを行うためのリサーチニーズも存在します。

国別の旅客数や観光目的地などの情報を収集することと合わせて、訪日外国人を対象とするアンケート調査やグループインタビューなどのリサーチを行うケースもあります。

海外リサーチの種類

海外進出の検討段階から進出後のさまざまな局面において、情報収集活動やマーケティングリサーチが必要になります。

海外進出の可否を判断するための情報収集と分析をフィジビリティスタディといいます。そのほか、海外展開に着手した後も、ビジネスの段階や局面に応じて国内で行うのと同様なマーケティングリサーチを行うケースが考えられます。

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海外進出のためのフィジビリティスタディ

国内とは全く異なる環境でビジネスを行わなければならない海外では、自社の商品・サービスが海外で受け入れられるかどうか、進出のためにかけるコストに見合う収益やメリットを実現できるかどうかについて慎重に判断しなければなりません。

海外進出では進出先の相手国に関する以下のような項目を調査することが一般的です。

  • 政治・経済・社会情勢
  • 産業構造・地理的特性
  • 法制度・税制・外資政策
  • 金融制度・資金調達環境
  • インフラ整備状況・物流環境
  • 労働事情・賃金水準・労働法規
  • 市場規模・市場特性・消費傾向
  • 商習慣・流通事情
  • 生活習慣・文化的要素の違い
  • 競合企業・先行企業の状況
  • パートナー企業・信頼できる相手先
  • ローカライズの必要性

これらの外部環境のなかで、商品・サービスの優位性を確保できるかどうか、新規参入にあたっての障害となる要素がないかどうかといった点について検討を行います。

外部環境について分析を行う際には、マクロ環境を分析するためのPEST分析、ミクロ環境を分析するための5フォース分析が役に立ちます。

【PEST分析】ビジネスにおける外部環境を、マクロ的な視点から分析する

Politics:政策、法規制、税制、政局、外交関係 等
Economy:経済成長率、景気・金利・為替動向、失業率、エネルギー価格、個人消費 等
Society:人口動態、文化的特徴、宗教、生活習慣、教育、ライフスタイル、流行 等
Technology:技術レベル、情報インフラ、特許数、R&D投資レベル 等

【5フォース分析】ビジネスにおける外部環境を、参入する市場環境の視点で分析する

競合企業の脅威:同業他社との競合状況
新規参入の脅威:参入障壁の大きさ
代替品の脅威:スイッチングコスト
売り手の交渉力:仕入先との力関係
買い手の交渉力:販売先との力関係

PEST分析と5フォース分析は、国内で新規事業を検討する際などにも用いられる外部環境を分析するためのフレームワークです。ビジネス環境が異なる海外への進出を図る際のリサーチにも活用できます。

海外を対象とするリサーチやサービス

海外を対象とするマーケティングリサーチを手掛ける事業者は数多く存在し、国内でマーケティングリサーチを行う場合と同様な形でリサーチサービスを活用することができます。言語の問題を解消できるスタッフと海外拠点や海外ネットワークを通じて海外リサーチを実施しています。

マーケティングリサーチの実施

アンケート調査やグループインタビュー、ホームユーステストなど海外の消費者を対象としてマーケティングリサーチを実施することができます。海外リサーチを手掛けるマーケティングリサーチ会社では、現地外国人の調査パネルを組織したり、現地在住日本人のネットワークを構築するなど、海外でマーケティングリサーチを実施する際の言葉の壁を解消しています。

コンサルティング、ビジネスマッチング・コーディネーターの活用

例えば、中国での製造拠点開設に強みを持つコンサルティング会社や特定国での貿易業務に特化したコンサルティングサービスなど、特定の国や業種を専門として海外展開の支援を行うコンサルティング会社やコーディネーター、ビジネスマッチングサービスがあります。

海外進出の実務では、現地での人脈やネットワークの広さと深さがビジネスの成否に大きく影響します。

販路開拓や提携先企業の探索を行う場合、幅広いネットワークを持っているキーパーソンやコンサルティングを行う事業者に話を持ち込むほうが、自社でリサーチを行うよりも的確な情報を入手できるケースも少なくありません。

人材紹介会社を活用した現地法人での高度人材の採用

情報システムのオフショア開発など、インドや中国に開発拠点を開設するケースでは人材紹介会社を活用して高度人材の獲得を図ります。新卒の場合はキャンパスリクルートが中心で中途採用の場合は人材紹介エージェントを活用します。

海外の名門大学からの新卒採用を行う場合は、大学の就職課を通じて採用活動を行います。中途採用は人材紹介エージェント、リファラル採用、ソーシャル採用などの方法が考えられますが、バックグラウンドチェックがしっかりしている人材紹介エージェントを活用するのが確実な方法です。

海外リサーチを行う場合の依頼先

海外リサーチを依頼できる事業者は、国内大手リサーチ会社、グローバル専門のリサーチ会社、戦略系コンサルティング会社のほか、海外専門のコンサルティング会社など特定分野に強みを持つリサーチサービス・マッチングサービスなどが挙げられます。

ここまで述べた通り、海外進出の目的によって必要となるリサーチニーズは異なることから、自社の海外展開に合わせた依頼先を選択することが重要です。

海外展開を行う初期の情報収集段階では、JETRO(日本貿易振興機構)の海外ビジネス支援サービスを活用してみることをおすすめします。

JETRO(日本貿易振興機構)のミニ調査サービス

JETROでは貿易に関する相談や海外販路開拓支援、各種海外情報の提供など、ビジネスの海外展開を図る企業に向けてさまざまな支援を行っています。そのひとつが海外ミニ調査サービスで、以下の4つのメニューを提供しています。

海外ミニ調査のメニュー

(1)企業リストアップ(販売代理店等のパートナー候補企業を10社リストアップ)
(2)現地法令等検索(対象国の法令の原文検索依頼)
(3)統計資料検索(海外当局が公表している統計情報の検索依頼)
(4)店頭小売価格調査(指定商品の現地小売店での販売価格を調査)

上記のサービスは数万円の費用と2ヶ月程度の調査期間を要します。また、ジェトロ・メンバーズというJETROの有料会員となることで、海外展開に向けたより手厚い支援を受けることができます。

マーケティングリサーチ会社の活用

大手のマーケティングリサーチ会社のほとんどが海外を対象とするリサーチメニューを用意しています。各社ともに独自の海外ネットワークを保有し、主要国をはじめとした数多くの国々で国内と同様なマーケティングリサーチを実施することが可能です。

マーケティングリサーチ会社はフィジビリティスタディにも対応していますが、他の情報収集手段やコンサルティング会社と異なるのは、まとまった規模でのサンプリング調査ができる点にあります。これから海外進出を図るケースのほか、既に海外展開に着手している企業がマーケティング課題を解決するためにリサーチを実施するケースで活用されています。

海外進出するなら、リサーチと実行方法が肝

海外進出を検討する際には対象国についての情報を段階的に収集しながら、計画の具体化を図っていくことが一般的です。

マーケティングリサーチ会社に依頼する海外リサーチはコストと調査期間の点で国内でリサーチを行う場合と比べて大掛かりなものになってしまいます。初期の段階ではJETROのような公的機関を活用することが現実的な情報収集手段です。

低コストで時間をかけずに消費者調査を可能とするのがQiQUMOです。21カ国の海外現地パネルを活用することで最短翌日までにオンラインで調査票を回収することが可能であり、1アンケート80,000円から調査を実施することができます。

フィジビリティスタディの段階でも消費者調査に踏み込んだ判断材料を入手することが、意思決定の信頼性を高めることにつながります。

さらに詳細な海外リサーチを実施したい場合は、クロス・マーケティングのグローバルリサーチにお問い合わせください。

ネットリサーチならQiQUMO