グループインタビューとは|簡単解説
グループインタビューのカンタン語句解説
グループインタビューは座談会形式でインタビューを行う定性調査の一手法です。1対1のインタビューに比べて、1回のセッションで多くの生の声を聞くことができるほか、小集団の特性を活かすことで、話題の広がりや思いがけない気づきを得られることがあります。
グループインタビューの概要
グループインタビューは数名の調査対象者を一同に集め、リラックスした雰囲気のなかで調査テーマについてのインタビューを進めていきます。テーマについての問いかけや発言を促すモデレーターと呼ぶ司会進行役が、全体の会話の流れを仕切る役割を果たします。
定性調査(質的調査)とは
マーケティングリサーチにおける定性調査は質的調査ともいわれ、主にインタビューを通して得られる記述的な情報や観察結果のなかから、課題解決につながる ヒントや気づき、解釈などを探る方法です。
定量調査が多くの調査対象から限定した情報を集め、代表性のある数値に集約して把握することが目的であるのに対し、定性調査では限られた調査対象から、あらかじめ想定する調査項目に限定しない、広がりと深さのある情報を得ることを目的とします。
客観性のある情報を検証するために行われるものではなく、調査対象の主観や個別のケースに焦点を当てて情報を引き出すことに主眼が置かれます。
定性調査は以下のような目的を複合的に想定します。
- 概念の把握
- 仮説の探索
- 課題の構造化
- 実態の把握
- 知識の収集
- アイデアの収集
- 事例の収集
- 動機や意識など心理的要素の深掘り
グループインタビュー以外の定性調査
定性調査にはグループインタビュー以外にもいくつかの手法があります。調査会社によって各手法の呼び方や実施の詳細は異なりますが、代表的なものは以下のものです。
デプスインタビュー(深層面接法)
数人の対象者を集めて座談会形式で会話が行われるグループインタビューに対して、デプスインタビューは対象者とインタビュアーが1対1で対話を行います。
個人の意見や意識を深く掘り下げたい場合やあまり人前で話すことのないお金・健康といったセンシティブなテーマを扱う場合に用いられます。
エキスパートインタビュー
特定分野の専門家や欲しい情報をよく知っていると思われる人に対してインタビューを行う方法です。
具体的には、業界団体の担当者に市場全体の動向を尋ねる、特定商品の売り場担当者に顧客の動向を聞く、toB領域の営業担当者に製品の特性を教えてもらうといった例が挙げられます。
ホームユーステスト・ホームビジット
消費者の生活空間の現場からより具体的な情報を得ることを目的とするものです。
実際に家庭で商品を使ってもらい評価を求める、リサーチャーが訪問して実際の生活空間のなかでの消費行動を把握する、家族を含めて面接することでより生活の実態に即した意見を求めるといったことを行います。
ソーシャルリスニング
インターネット上での発言を収集することも定性調査に含まれます。
各SNSプラットフォームからタグやキーワードを指定して発言を収集する方法と、ネット上に独自のコミュニティを開設し参加者を募って発言を収集する方法があります。後者をMROC(Marketing Reserch Online Communities)と呼びます。
グループインタビューの目的
定性調査は与えられたマーケティング課題をより具体的なものにすることを目的に、多くはマーケティングリサーチの探索的段階で活用されるほか、先行する定量調査の解釈をフォローする際にも用いられます。
課題の構成要素は何か、仮説を立てるために必要な情報は何か、誰の何を調べればいいのかといった問題意識のもとで、幅広く情報を収集するために行われるものです。
定性調査の一手法であるグループインタビューは、STPの検討や消費実態・意識の把握、訴求方法の検証、受容性調査などあらゆる調査テーマのなかで、質的情報を収集する目的で行われます。
グループインタビューの効果
1対1でインタビューを行うデプスインタビューに対し、グループインタビューは座談会形式で複数の対象者にインタビューを行うことが大きな違いです。
グループインタビューでは、他人の存在や発言が互いに影響し合うグループダイナミクスが生じるため、その効果を積極的に利用します。グループで会話をすることで以下のような効果を期待できます。
シナジー効果
参加者の発言が相互に影響を与えることから、デプスインタビューの結果を累積した場合よりも、より広がりのあるトピックを集められます。
雪だるま作用
シナジー効果と同様に他の参加者の発言がきっかけとなり、参加者同士の連鎖的な発言が引き出されることがあります。
無意識による発言・思いがけない発言
インタビューが進行するにつれて会話が盛り上がり、参加者が無意識に自分でも気づいていないことを発言する場面があったり、想起が活性化される状況が生まれたりすることがあります。
自発的発言
意図的に同質な参加者を集め、心理的安全性が確保されたなかでより積極的な意見交換が自発的に行われるようにモデレーターが進行していきます。
グループインタビューの実施方法と注意点
グループインタビューを実施する際には、調査対象が少人数であることや同時に話を聞く実施形態を取ることを踏まえて、注意しなければならない点があります。
参加人数の規模
グループインタビューの参加人数はインタビューの運営と成果に大きく影響します。モデレーターが参加者に対して均等に配慮しながら個別の意見を収集できる上限は7〜8名といわれています。欧米の研究では8〜12名が適切であるといった見解もあります。
8名前後よりも少ないと、グループがリーダー的発言者と同調者に分かれてしまい発言が偏ること、反対に、人数が多いと発言できない参加者が出てしまうことが進行する際に配慮しなければならない点です。
いずれにしても、この規模の人数の範囲で活発な発言を引き出すモデレーターのファシリティスキルが求められます。
参加者の特性
各参加者は個別にリクルートされるケースが一般的であり、初対面の人たちが一同に介して会話を行うのがグループインタビューです。
属性や立場の違いが混在するグループでは、対立構造が生まれたり、特定の参加者が発言しにくい状況になったりすることがあります。
同質な参加者で構成されるようにリクルーティングを行い、参加者が同じ仲間が集まっているという意識のもと会話に参加できる状況を作ります。
グループインタビューの実施時間と回数
グループインタビューの実施時間は2時間程度を1セッションとすることが一般的です。
1グループに対し複数のセッションを実施する場合や、複数のグループに同じテーマでセッションを行う場合などさまざまな実施形態が考えられます。
グループインタビューでは会話形式のインタビューと試作品や提示物が持ち込まれるケースのほか、投影法やブレインストーミング、ビジネスゲームなどの創造的手法が組み入れられることもあります。長時間を要するグループインタビューの場合は複数回のセッションを行います。
グループインタビューの成果はモデレーターのスキルに左右される
限られた時間のなかで参加者から多くの情報を引き出すことが求められるモデレーターには、さまざまな角度から積極的に発言してもらうための高いファシリティスキルが必要です。
さらに、調査テーマを深掘りするリサーチャーとしての知識に加え、会話を引き出すインタビュアーとしての能力も併せ持つことが望まれます。
これらのスキルがグループインタビューの成果を左右することから、モデレーターにはスキルの向上と経験を積むことが求められます。
複数のグループに実施することで精度向上を
集団で行うインタビューではグループダイナミクスの効果を期待する反対の側面として、集団になることで態度変容を起こしやすいということが指摘されています。
参加者が自分の本心を述べているのか、他の参加者に影響されて発言しているのかについて注意しながら進行する必要があります。
定量調査のように代表性のある結果を求めるものではないため、調査対象が少人数であるグループインタビューでは、参加者が異なれば結果が異なることも十分に考えられます。より幅広く情報を集めるという点からも、複数のグループに実施することが推奨されます。
グループインタビューの他に、オンラインインタビューについての解説も掲載しています。
グループインタビューについて、さらに詳しい情報はこちらからもご覧いただけます。